第九十一話 夫の子を孕んだ幼馴染を見せつけられたら、嫉妬まで含めてかなり興奮しました
爆乳令嬢の妊娠が分かってから、少し時間が経った。まだ誰が見ても妊婦だと分かるほどではないものの、腹には以前にはなかった丸みがあり、本人も無意識にそこへ手を添えるようになっている。医師からは母子ともに順調だと言われており、遊ぶ時も以前のような無茶はせず、本人の体調を確認しながら負担を抑える。それでも当人まで大人しくなったわけではなかった。
「オホッ……! オホォッ……!」
別荘の一室で、爆乳令嬢は夫へ背中を預け、すっかり力の抜けた身体を支えられていた。夫は時折「大丈夫か」と確認し、爆乳令嬢は息を乱しながらも「まだ平気ですわ」と自分から答える。そこだけ見れば安全確認を欠かさない夫婦なのだが、爆乳令嬢の方は頬を真っ赤にし、舌まで覗かせ、何度も身体を震わせていた。
「オホォッ……! あなたぁ……!」
「無理はするな」
「分かっておりますわ……でも、まだ……」
しかも例の淫紋が完全に反応している。ただでさえ大きい胸は興奮に連動してさらに張り、乳汁分泌の術式まで働いて、乳白色の雫が断続的に胸元を濡らしていた。
「……大きすぎない?」
「ユキが言いますの……?」
「私はそこまでじゃないし!」
ユキはそう言いながら、ものすごく見ていた。胸も見る。夫に抱かれている顔も見る。そして何より、夫との子を抱いて丸みを帯びた腹を見る。
「ユキ?」
「何?」
「さっきから、わたくしのお腹ばかり見ていますわね」
「……見てない」
「見ています」
「うるさい」
爆乳令嬢は嬉しそうに笑った。
*
やがてユキは我慢できなくなったように立ち上がり、爆乳令嬢の正面へ回った。
「ねえ。その胸、貸して」
「まあ」
「何その顔」
「いえ。ユキから言ってくださるなんて嬉しくて」
「いいから」
夫に支えられた爆乳令嬢の豊かな胸へ身体を押しつけ、その柔らかな谷間を使って自分も遊び始める。普段以上に張った乳房に包まれる感触と、目の前で夫に可愛がられている爆乳令嬢の表情が重なり、ユキの余裕は思った以上の速さで消えていった。
「オホッ……! ちょっと、これ……ヤバい……!」
「ユキまで、いいお声ですわね」
「笑うな……オホォッ……!」
爆乳令嬢の胸が揺れるたび、淫紋に刺激された乳白色の雫が肌を伝う。ユキも夢中になり、自分の痕跡を胸元へ残しては、また同じ場所へ身体を押しつける。
「ユキ、そんなにわたくしへ印を残したいの?」
「残したい!」
「ふふ。嬉しいですわ」
「そういう顔するなって……また来るから……!」
ユキ自身も何度も限界を迎え、そのたびに爆乳令嬢の胸元へ自分の痕跡を重ねた。マーキングという言葉を最初に面白がって使い始めたのはこの二人だったが、今ではほとんど本当に所有印の付け合いになっている。
*
そんなユキを見ていた爆乳令嬢の夫が、ふと落ち着いた声を出した。
「ユキ様」
「……何?」
「よくご覧なさい」
「何をよ」
「あなたの幼馴染を、です」
夫は爆乳令嬢の身体をさらに自分へ預けさせ、その腹へ手を添えた。
「この人は、私の子を宿している」
「……分かってる」
「あなたではなく、私との子です」
「分かってるって」
爆乳令嬢が頬を染めたまま夫を見上げる。
「あなた、わざと煽っていますわね」
「もちろんだ」
「性格悪っ!」
ユキが睨むが、夫はまったく気にしない。
「あなたが昔から愛してきた人が、今は私との子を大事に抱いている。そして私に可愛がられながら、まだ私を求めている」
「……」
「それを見ているユキ様も、随分と興奮しているようですが」
「それ言うな!」
「顔に出ていますよ」
ユキはさらに赤くなる。
「しかも、この人は将来あなたとの子も欲しいと言っている」
「……うん」
「ですが、最初にその腹を満たしたのは私だ」
「……っ」
「あなたが自分との子を産ませたいと望んでいる女が、今は私との子を抱いている。その姿を見ながら、あなた自身も夢中になっている」
爆乳令嬢までうっとりした顔でユキを見る。
「ユキ」
「何よ」
「もっと言われたいでしょう?」
「言われたくない!」
「でも嬉しそうですわ」
「嬉しそうじゃない!」
「では、興奮している?」
「それも言うな!」
*
夫はまだ止めなかった。
「見たまえ、ユキ様。あなたの幼馴染は私の子を孕み、今も私の腕の中で幸せそうにしている。それでも私から離れようとはしない。あなたではなく、私との子を抱いているんだ」
「……」
「それでも、まだこの人が欲しいですか?」
ユキは爆乳令嬢を見る。夫との子を宿した腹。淫紋でさらに大きくなった胸。そこへ残った自分の痕跡。夫に支えられながら、それでも真っすぐこちらを見る幼馴染。
「……欲しい」
夫がわずかに笑う。
「以前より?」
「……かなり」
爆乳令嬢が途端に嬉しそうな顔になる。
「ユキ」
「何」
「愛しておりますわ」
「今そこで言うな!」
「では、よく覚えておいてください」
夫が続ける。
「今は私との子を宿している。でも、いずれあなたとの子も宿すと約束した女です。その時になれば、今度は私が嫉妬する番かもしれませんね」
ユキは一瞬黙り、それから悪い笑みを浮かべた。
「じゃあ、その時は目の前で見せつけてあげる」
「それは楽しみです」
「あなたたちまで張り合わないでくださいませ!」
言いながら、爆乳令嬢本人が一番楽しそうだった。
*
ユキは爆乳令嬢の耳元へ顔を寄せる。
「私の子を産む予定の女がさ」
「ええ……」
「先に夫の子を孕んで」
「ええ」
「お腹まで大きくなって」
「ええ……」
「その夫に可愛がられて、私の目の前でオホ声上げてる」
爆乳令嬢の身体がまた細かく震える。
「オホッ……!」
「それ見てる私までこんなに興奮してんの。正直、かなり来る」
「もっと……」
「何で?」
「もっと言ってくださいませ」
「そっちまでそれで興奮するの!?」
爆乳令嬢は夫へ身体を預けたまま、正面のユキへ腕を伸ばした。
「だって、今のわたくしは愛する夫との子を抱いて、その夫に可愛がられて、その姿を愛する幼馴染に見られて、その幼馴染までわたくしを欲しがってくださっているのですもの」
「……」
「幸せに決まっているでしょう?」
ユキは一瞬言葉に詰まった。
「欲張り」
「知っておりますでしょう?」
「知ってる」
*
ユキはまた爆乳令嬢の胸へ身体を寄せた。胸元には自分の痕跡と、淫紋によって滲み続ける乳白色の雫が混ざっている。
「私の印、もっと残しとこ」
「どうぞ」
「即答」
「夫の子を孕んでいても、わたくしがユキの大切な女であることは変わりませんもの」
「……そういうこと言うな」
「なぜ?」
「また興奮するから!」
爆乳令嬢が笑う。
「でしたら、もっと言いますわ」
「やめろ……オホォッ……!」
*
しばらくして、爆乳令嬢は完全に夫へ体重を預けていた。力の抜けた手足が時折小さく震え、舌が少し覗いたまま、呼吸だけがまだ落ち着かない。
「……可愛い」
ユキがぼそりと言う。
「でしょう?」
夫が即答した。
「あなたが言う?」
「妻ですから」
「それもそうだけど」
爆乳令嬢が薄く目を開く。
「ユキ……」
「何?」
「今のわたくし、夫の子を孕んで、夫に可愛がられて、ユキにもこんなに印を残されて……とても幸せですわ」
「……うん」
「だから次は、ユキのお腹をわたくしとの子で丸くしたい」
「急にそっちへ戻るな!」
「その姿を夫と一緒に眺めるのも楽しみですわね」
「病み成分まで戻ってる!」
夫が苦笑する。
「私は、ユキ様が望まれるなら止めませんよ」
「最後に条件つければ何言っても許されると思ってない!?」
少し離れたところにいた騎士まで頷いた。
「私も非常に楽しみです」
「お前まで!」
*
そこでエリーが静かに割って入った。
「皆様、そろそろ終わりになさってください」
「えー」
「爆乳令嬢様は妊娠中です」
「……はい」
爆乳令嬢付きのメイドもすぐに動き、身体を拭き、服を整え、水分を用意する。
「お嬢様、今日は十分でしょう」
「まだ元気ですわ」
「元気でも終わりです」
「厳しいですわね」
「お腹の中にお子様がいらっしゃるのですから当然です」
興奮が収まっていないためか、胸はまだ普段より明らかに大きい。
「それ、戻るの時間かかるの?」
「本人の興奮がおさまれば戻ります」
「じゃ当分無理じゃん」
「ユキがまだそんな目で見ていますもの」
「私のせい!?」
*
服を整え終わった爆乳令嬢は、また自分の腹へ手を添えた。
「ユキ」
「何?」
「羨ましい?」
「……少し」
「なら早く」
「急かすな!」
「次はユキの番ですもの」
「順番まで決めるな!」
「そして、その次はわたくし」
「だから気が早い!」
それでもユキは、完全には否定しない。
爆乳令嬢も、それを知っている。
夫も知っている。
マコトも少し離れたところから苦笑していた。
*
「ところでユキ」
「何?」
「今日、かなり嫉妬していましたわね」
「してない」
「していました」
「してない」
「夫の子を孕んだわたくしを見て、ものすごく興奮していましたわ」
「……」
「可愛かったですわよ」
「うるさい!」
爆乳令嬢の夫まで笑う。
「私も同意します」
「煽った張本人が言うな!」
*
帰りの馬車では、ユキとマコトが並んで座っていた。
「……」
「……」
「何?」
「いえ」
「何よ」
「ユキ、かなり楽しそうでしたね」
「……」
「特に爆乳令嬢様が私ではなく夫君との子を宿していると意識してから」
「言うな!」
マコトは少し笑った。
「でも、悪くないと思います」
「何が?」
「将来、本当にあの方との子を望むのであれば、嫉妬も興奮も、格好の悪い感情まで含めて互いに話せる関係であることは」
「……真面目なこと言うなぁ」
「婚約者ですから」
ユキは窓の外を見る。
「私の子を産む予定の女が」
「はい」
「先に夫の子を孕んでる」
「はい」
「それであんな幸せそうな顔してる」
「はい」
「しかも旦那から『君じゃなく私の子だ』ってわざわざ煽られる」
「はい」
少し間を置いて。
「……やっぱ結構来る」
「ユキ」
「何」
「それ、次にご本人へ言えば絶対に喜びますよ」
「絶対言わない!」
*
もちろん。
次に会った爆乳令嬢から。
「ユキ、この前の嫉妬したお顔、もう一度見せてくださらない?」
と、真っ先に言われた。
「誰が見せるか!」
「では夫に、もう一度同じことを言ってもらいましょう」
「やめろ!」
「喜んで」
「旦那も乗るな!」
妊娠して。
少し大人しくなるかと思った爆乳令嬢だったが。
少なくとも。
性格については。
何一つ。
大人しくなっていなかった。




