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種付けオッサンとビッチギャル ~二日に一度ヤらないと死ぬ二人の異世界転生~【注目15位、日間217位ありがとうございます】  作者: 黒瀬 量衡
第一章 種付けオッサンとビッチギャル

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第九話 木杯と木剣を放置して、受付嬢に罵倒管理されましたぞ

 町へ戻るころには、日が傾き始めていた。


「いやぁ~……妙に身体が軽いですなぁ」


「そりゃそうでしょ」


 隣を歩くギャルが、おじさんを横目で見る。


 ゴブリンに殴られた肩も、転んだときの擦り傷も、もう消えている。


 第八話で初めて二人が関係を持った結果だった。


「性交回復、マジで強すぎ」


「性神様の加護は性能だけなら素晴らしいですなぁ」


「性能だけね」


「お嬢さん、そこを強調します?」


「だって神本人の趣味が最悪じゃん」


「それには同意しますぞ」


 しばらく歩く。


 ギャルが、またおじさんを見る。


「……」


「何ですかな?」


「おっさん」


「はい」


「昨日よりキモくなってない?」


「そんな馬鹿な!」


「いや、マジで」


 顔。


 腹。


 髭の影。


 体毛。


 脂っぽさ。


 何となくだが、全体的に「中年男性としての濃さ」が増している。


「オッサン度上がってる」


「そんな能力値はいりませんぞ!」


「あと臭い」


「戦闘後ですからなぁ」


「そうじゃなくて。前よりオッサン臭い」


「四十代後半ですぞ」


「だから年齢の話じゃないって!」


 ギャルが一歩近づく。


 鼻をひくつかせる。


「……最悪」


「何がですかな?」


「前より汚い感じするのに」


「はい」


「前より身体が気になる」


「……」


 二人が黙る。


「ドゥフフ」


「笑うな!」


「いやぁ、昨日の結果でしょうかなぁ」


「うちらがヤったから?」


「相互適合進化というやつでは?」


「それで何で若返らずにオッサン度上がんの!?」


「性神様へお問い合わせくださいなぁ」


「絶対したくない」


 ギャルは腕を組む。


「でも、うち以外にも効きそう」


「何がです?」


「雌引き付け度」


「また嫌な能力値が増えましたなぁ」


「だって何か、女が気にしそうな匂いになってる」


「見た目は?」


「最悪」


「即答!」


「脂っこい」


「はい」


「腹たるんでる」


「はい」


「ハゲかけ」


「もう結構ですぞ!」


「なのに、身体だけは前より雌に刺さりそう」


「オッサン度と雌引き付け度が同時上昇……」


「字面キモ」


「おじさんもそう思いますなぁ」


     *


「ただいま戻りましたぞ~」


「戻ったー」


 冒険者ギルド。


 受付にいた成人女性が顔を上げた。


 いつもの受付嬢だ。


 髪はきれいにまとめられている。


 姿勢もいい。


 声も落ち着いている。


 知的で、仕事が速く、初心者相手でも説明を省かない。


 このギルドで一番まともな人間かもしれない。


「お帰りなさい。まず依頼品を確認します」


 受付嬢は淡々と言った。


 ギャルの薬草袋を見る。


「……かなり潰れていますね」


「戦ったから」


「何と?」


「ゴブリン」


 受付嬢の手が止まった。


「場所を」


「北側街道の近く」


「数は?」


「十匹以上でしたなぁ」


「大型個体もいた」


「武器は?」


「錆びた剣」


 受付嬢の顔から、一瞬で仕事以外の感情が消える。


「少々お待ちください」


 別の職員を呼ぶ。


「北側街道付近にゴブリンの群れ。大型個体一。巡回班へ連絡をお願いします」


「分かった」


「それと街道を通る商人へ注意喚起を」


「了解」


 職員が走っていった。


「それで」


 受付嬢が二人を見る。


「どうやって逃げたんです?」


「倒した」


 ギャルが胸を張る。


「……はい?」


「うちが」


「ほとんどお嬢さんが倒しましたなぁ」


 受付嬢がおじさんを見る。


「あなたは?」


「おじさんも勇敢に」


「枝振って外した」


「お嬢さん!」


「殴られて吹っ飛んでた」


「全部言わなくても!」


「……」


 受付嬢が眼鏡の奥からおじさんを見る。


「本当に役に立っていませんね」


「受付のお姉さんまで!」


「怪我は?」


「治りましたぞ」


「治った?」


「はい」


 受付嬢が首を傾げる。


「帰還時点で治療院へ寄ったのですか?」


「いやぁ」


「では、性神の祝福?」


「ご明察ですなぁ」


 受付嬢の視線が。


 ギャル。


 おじさん。


 またギャル。


「……まさか」


「何?」


「お二人で?」


「……」


 ギャルが横を向く。


「しましたなぁ」


「おっさん!」


「事実ですぞ!」


「……なるほど」


 受付嬢は額を押さえた。


「何となく納得しました」


「何がですかな?」


 受付嬢がおじさんを見る。


「昨日より酷くなっています」


「酷いとは!?」


「汚い」


「はい」


「臭い」


「はい」


「脂っこい」


「はい」


「中年男性としての圧が強い」


「お嬢さんと同じことを!」


「でしょ?」


 ギャルが受付嬢へ同意を求める。


「はい」


「受付のお姉さんまで!」


「ただ」


 受付嬢が言葉を止めた。


「何です?」


「……」


 おじさんを見ている。


「……何ででしょう」


「はい?」


「昨日より不快なのに、昨日より気になります」


「ほら!」


 ギャルが指を差した。


「雌引き付け度!」


「何ですか、その頭の悪い名称は」


「うちらが今つけた」


「ドゥフフ」


「笑わないでください」


「はい」


 受付嬢が、おじさんへ一歩近づく。


「……臭い」


「またですかなぁ」


「本当に臭いです」


「申し訳ありませんなぁ」


「なのに」


「はい?」


「妙に離れたくない」


「おや」


「喜ばない」


「まだ何も!」


「顔が喜んでいます」


「顔は生まれつきですぞ!」


 受付嬢が小さく息を吐く。


 そして。


 いつもの冷静な声で言った。


「確認が必要ですね」


「何を?」


「あなたの祝福です」


「おじさんの?」


「はい」


「どうやって?」


「二人きりで確認します」


「……」


 ギャルの目が細くなった。


「お姉さん」


「何です?」


「成人だよね?」


「当然です」


「自分でやるって決めてる?」


「はい」


「じゃいいや」


「軽いですなぁ!」


「だって本人が決めてんじゃん」


「おじさんの意思は!?」


 受付嬢が見る。


「嫌ですか?」


「いやぁ」


「嫌ならしません」


「……嫌ではありませんなぁ」


「では来てください」


「はい」


「ドゥフフ」


「笑うな」


「もう始まっております!?」


     *


 ギルド奥の休憩室。


 扉が閉まる。


 カチャリ。


「……」


「受付のお姉さん?」


「脱げ」


「ドゥフ?」


 おじさんが固まった。


「今、何と?」


「聞こえなかったのか、デブ」


「口調が!」


「早くしろ、クソ豚」


「別人ですぞ!?」


 つい数秒前まで。


 冷静。


 知的。


 敬語。


 完璧な受付嬢だった。


「何をぼさっとしている」


「はい」


「汚い顔でこっちを見るな」


「酷い!」


「臭い」


「はい」


「デブ」


「はい」


「ハゲ」


「はい」


「クソ豚」


「はい!」


「返事だけはいいな」


「普段のお姉さんはどこへ!?」


「外に置いてきた」


「置いてきた!?」


「二人きりだろう」


「はい」


「なら私の好きにする」


「性格が強すぎますなぁ!」


「寝ろ」


「おやおや」


「早くしろ、デブ」


「はい!」


 押し倒された。


「これは」


「何だ」


「おじさんの種付けプレスとは上下が逆ですなぁ」


「知るか」


「逆種付けプレス」


「黙れ!」


「はい!」


     *


 そして。


 受付嬢は。


 最初から全開だった。


「オホッ……! 何だこれは、変態!」


「始まってすぐ罵倒ですかなぁ!」


「黙れ、クソ豚! オホッ……!」


「声も大きい!」


「誰のせいだ、デブ!」


「おじさんでしょうかなぁ」


「貴様以外に誰がいる!」


「はい!」


「汚い!」


「はい」


「臭い!」


「はい」


「脂っこい!」


「はい!」


「その腹も邪魔だ!」


「申し訳ありません!」


「そのくせ――オホッ!」


「そのくせ?」


「無駄に身体だけ元気なのが腹立つ!」


「褒められております?」


「褒めてない!」


「はい!」


「オッホォォォッ!」


 休憩室へ響いた。


「お姉さん」


「何だ!」


「かなりオホ声が」


「実況するな、ハゲ!」


「すみません!」


「デブが! もっとやれ!」


「はい!」


「何だその顔!」


「いやぁ」


「笑うな!」


「ドゥフ」


「笑うなと言っている!」


「はい!」


 受付嬢は。


 本当に罵倒しかしていない。


「クソ豚!」


「はい!」


「変態!」


「はい!」


「臭い!」


「はい!」


「もっとだ!」


「要求だけどんどん強くなっておりますぞ!」


「うるさい! オホッ……!」


 声が崩れる。


「お゙っ……お゙っ……!」


「おや」


「見るな!」


「いやぁ」


「見るなと言って――オッホォォォォォッ!」


「見事ですなぁ」


「感想を言うな!」


「はい!」


「もっと激しくしろ、ハゲ!」


「はい!」


「デブが! こんなに気持ちいいのが一番腹立つ!」


「とうとう言いましたなぁ!」


「黙れ!」


「はい!」


「汚いくせに!」


「はい!」


「臭いくせに!」


「はい!」


「オッサン臭いくせに!」


「はい!」


「身体だけ私に合うな!」


「そこはおじさんの責任では!」


「黙れ、クソ豚!」


     *


 一度。


 大きな声が止んだ。


「……」


「……」


 おじさんが息を整える。


「いやぁ」


「何だ」


「終わりましたかな?」


 受付嬢の目が。


 すっと細くなった。


「は?」


「ドゥフ?」


「誰が終われと言った?」


「いや、今」


「まだできるだろ、クソ豚」


「できますなぁ」


「なら続けろ!」


「即二回目ですかなぁ!?」


「口答えするな!」


「はい!」


「もっとだ、デブ!」


「はい!」


「さっきより激しく!」


「はい!」


「私が終われと言うまで勝手に終わるな!」


「お姉さん、非常に元気ですなぁ」


「貴様が言うな!」


「ドゥフフ」


「笑うな!」


 そして。


「オホッ……!」


「またですなぁ」


「実況するな!」


「はい!」


「もっと寄越せ、クソ豚!」


「何をですかな?」


「聞き返すな!」


「はい!」


「身体の奥までいっぱいになるくらいだ!」


「随分な要求ですなぁ!」


「うるさい!」


「はい!」


「変態が……オホッ!」


「お姉さん?」


「貴様のせいで、身体の奥からあふれそうじゃないか!」


「それでも続けます?」


「当たり前だ!」


「ほう!」


「調子に乗るな、ハゲ!」


「はい!」


「もっと濃く!」


「はい!」


「もっと重く!」


「はい!」


「身体の奥に残るくらい寄越せ!」


「いやぁ、要求が具体的ですなぁ!」


「黙れぇぇぇ!」


「はいぃ!」


「オッホォォォォォッ!」


     *


 三回目。


「まだできるだろ、デブ!」


「できますぞ!」


「なら休むな!」


「はい!」


 四回目。


「ハゲ! もっと激しく!」


「はい!」


「オホッ……! それだ!」


「受付のお姉さん」


「何だ!」


「もはや罵倒なのか応援なのか」


「黙れ、クソ豚!」


「はい!」


 五回目。


「勝手に終わった顔をするな!」


「顔まで管理ですかなぁ!?」


「全部管理する!」


「全部!?」


「その汚い身体も!」


「はい!」


「臭い汗も!」


「はい!」


「妙に雌を引き寄せる匂いも!」


「はい!」


「全部だ!」


「いやぁ」


「何だ!」


「お姉さん、おじさんを相当気に入って」


「殺すぞ」


「すみません!」


「私は管理しているだけだ!」


「はい」


「危険物を!」


「危険物!」


「こんな汚い変態を野放しにできるか!」


「おじさん、人間扱いされております?」


「ギリギリだ!」


「厳しい!」


「オホッ……!」


「でもまだ続くんですなぁ」


「黙れ、クソ豚!」


     *


 どれくらい経ったか。


 分からない。


 ようやく。


 受付嬢が立ち上がった。


「……」


「終わりました?」


「黙れ」


「はい」


 髪を直す。


 服装を整える。


 一度。


 深呼吸。


 そして。


「確認は終了しました」


「……」


 戻った。


 完全に。


 いつもの冷静で知的な受付嬢だ。


「お姉さん」


「何でしょう?」


「切り替えが怖いですぞ」


「何のことでしょう」


「記憶まで!?」


「外へ出ますよ」


「はい」


     *


 扉が開く。


「お待たせしました」


 受付嬢はいつもの声だった。


 外で待っていたギャルが見る。


「……普通じゃん」


「何がです?」


「いや」


 その後ろ。


 おじさんが出てくる。


「いやぁ~……」


 ギャルが鼻をひくつかせた。


「おっさん」


「はい?」


「何か、さらに濃くなってない?」


「何がですかな!?」


「オッサン」


「オッサンそのもの!?」


 ギャルが近づく。


「うわ」


「何です!?」


「匂いも強くなってる」


「そんな!」


「雌引き付け度も上がってない?」


 受付嬢が静かに答える。


「可能性はあります」


「お姉さんも感じる?」


「業務上、確認しました」


「業務?」


「業務です」


 おじさんが。


「ドゥフ」


「笑わないでください」


「はい!」


 ギャルが首を傾げる。


「何でおっさん、受付のお姉さんにそんなビビってんの?」


「世の中には知らない方がいいこともありますぞ」


「?」


 受付嬢は涼しい顔のまま帳簿を開いた。


「それより依頼報告を続けます」


「はい」


「はいですぞ」


     *


 その時。


「オホォォォォッ!」


「オッホォォォォォッ!」


「……」


 三人が振り向いた。


 ギルドの隅。


 木剣と木杯。


 また勝手にくっついている。


「またやってんじゃん!」


「目を離すとすぐですなぁ」


「オホッ! オホォォォッ!」


「オッホォォォォォッ!」


 受付嬢が額を押さえる。


「これは何です?」


「うちの木剣」


「おじさんの木杯ですぞ」


「なぜ交尾しているんです?」


「雄化物と雌化物だから」


「相性抜群ですなぁ」


「性能は?」


「木剣は鉄剣折った」


「木杯は毒まで浄化しますぞ」


「……」


 受付嬢は二つを見る。


「オホォォォォッ!」


「オッホォォォォッ!」


「……性能は最高」


 ギャルが言う。


「私生活は最悪ですなぁ」


「おっさん真似すんな!」


 受付嬢は長く息を吐いた。


「あなたたち」


「はい?」


「はいですぞ?」


「全員、管理対象です」


「全員!?」


     *


 結局。


 薬草依頼は減額。


 ゴブリンの群れについては情報提供料が出た。


 討伐証明は持ち帰っていないため、討伐報酬はなし。


「次回からゴブリンは右耳です」


「はい」


「大型個体の場合は、武器や特徴も確認してください」


「おっけー」


「危険区域へ勝手に入らない」


「はい」


「木剣と木杯を放置しない」


「はい」


「あなたは入浴する」


「おじさんだけ!?」


「ネクタイも洗ってください」


「相棒が!」


「洗う」


「はい」


「それから」


 受付嬢がおじさんを見る。


「その妙な引き付ける性質」


「はい?」


「さらに強くなるようなら、必ず報告してください」


「了解ですなぁ」


「勝手に近づいて試さない」


「はい」


「汚いので」


「最後それ必要です!?」


「必要です」


 ギャルが笑う。


「めっちゃ管理されてんじゃん」


「お嬢さんも対象です」


「え」


「雄化木剣を持っていますから」


「……はい」


「二人ともです」


「はいですぞ」


 受付嬢は。


 いつもの知的な顔で。


 淡々と書類へ記入していく。


 おじさんは思った。


 人前では。


 完璧な受付嬢。


 二人きりでは。


 デブ。


 ハゲ。


 クソ豚。


 変態。


 そして。


「まだできるだろ」と際限なく続行を要求する。


「いやぁ……」


「何です?」


「いえ、何でもありませんぞ」


「そうですか」


 笑顔。


 怖い。


 ゴブリンより。


 絶対。


 受付のお姉さんの方が怖い。


「ドゥフフ……」


「何を笑っているんです?」


「何でも!」


「まず風呂へ」


「はい!」


 ギャルとの種付けプレスによって。


 おじさんは。


 格好良くなるどころか。


 さらにオッサンらしくなった。


 オッサン度上昇。


 雌引き付け度上昇。


 そして。


 それを最初にまともに食らった受付嬢は。


 人前では何事もなかった顔をしながら。


 二人きりになった時だけ。


 とんでもないドSになった。


「オホォォォォッ!」


「オッホォォォォッ!」


「木剣! 木杯! またやってる!」


「元気ですなぁ」


「おっさんも黙れ!」


 異世界生活。


 まだ始まったばかり。


 なのに。


 管理対象だけが。


 順調に増えていた。

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