↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
種付けオッサンとビッチギャル ~二日に一度ヤらないと死ぬ二人の異世界転生~【注目15位、日間217位ありがとうございます】  作者: 黒瀬 量衡
第一章 種付けオッサンとビッチギャル

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

10/96

第十話 聖書の四隅を雄化して、童貞神父まで食べちゃった

 夜。


 教会の裏手。


 石造りの建物が月明かりを遮る、ちょうど人目につきにくい場所。


「……ここなら平気っしょ」


 うちは壁にもたれて座り込んだ。


 今日は長かった。


 薬草採取。


 ゴブリン。


 おっさん。


 木剣と木杯。


 そして。


 おっさん。


「……思い出すな、うち」


 最悪。


 あの脂っこい中年ハゲデブチビ。


 見た目は本当に無理。


 なのに。


 身体だけ思い出す。


「マジ最悪……」


「オホォ……」


「お前も黙れ」


 隣では、布でぐるぐる巻きにされた木剣が低く鳴いた。


 布には、もう新しい白濁した染み。


「何で今日あんなにやったのに、まだ元気なん」


「オホッ」


「聞いてねーし」


 うち自身だって同じだった。


 四十八時間なんて全然迫っていない。


 でも、性神の祝福はそんなことを気にしない。


 身体の奥が。


 また。


「……来てんじゃん」


 じわじわ熱い。


「今日もう十分じゃない?」


 十分。


 何が十分なのか知らないけど。


 身体はそう思っていない。


「はぁ……」


 教会の中でするわけにはいかない。


 前回、裸の男神像を雄化させたばかり。


 ただでさえ若い神父から、最近やたら視線が痛い。


「何か使えるもん……」


 袋を見る。


 特にない。


 木剣。


「いや、お前は今日はいい」


「オホォ……」


「不満そうにすんな」


 そして。


 目に入った。


 本。


「……」


 夕方。


 教会の女性神官から渡されたものだ。


『この世界の文字に慣れるなら、まずこれを』


 そう言われた。


 聖書。


 というか、この世界の聖典。


 分厚い。


 革張り。


 角は金具で補強されている。


「……」


 見る。


「……いや」


 さすがに。


 これは。


「罰当たりじゃん」


 数秒。


「……でも性神も正式な神なんだよね」


 言い訳を始めた。


「生命維持だし」


 まだ期限は遠い。


「練習も大事だし」


 何の練習だ。


「……」


 十分後。


     *


「来る……!」


 石壁に声が反響した。


「ちょ、待って……!」


 誰に言っているのか分からない。


「来る来る来る……っ!」


 そして。


「あっ、ダメ!」


 身体が跳ねる。


「お゙っ……!」


 嫌な予感。


「お゙っ、お゙っ……!」


 止まらない。


「オッホォォォォォッ!」


 教会裏に盛大に響いた。


「……」


 静かになる。


「最悪」


 その瞬間。


「オホォ……」


「……え?」


 低い成人男性の声。


「木剣?」


「オホッ」


 木剣は横。


 じゃあ。


「まさか」


 聖書を見る。


「……」


 四隅。


 表紙の四つの角。


 全部。


 明らかにおかしい。


「は?」


 右上。


「オホォォォ……」


 左上。


「オホッ」


 右下。


「オホォォォッ」


 左下。


「オッホォォォォッ!」


「四つとも!?」


 うちは聖書を持ち上げた。


「ちょ、待って! 一冊で四体扱い!?」


 四隅がそれぞれ勝手に雄化している。


 しかも。


「オホォッ!」


「オホォォォッ!」


「オッホォォォォッ!」


「うるさ!」


 四方向から男声。


「何この地獄!」


 さらに。


 聖書そのものは。


 何ともない。


 ページは破れていない。


 文字も読める。


 革表紙まで前より丈夫そうだ。


「……性能上がってんじゃん」


 まただ。


 性能は最高。


 挙動は最低。


「返せないじゃん、これ!」


「何を」


 背後から。


 男の声。


「返せないんです?」


「……」


 固まった。


 ゆっくり振り返る。


 いた。


 若い神父。


 二十代前半。


 黒髪。


 細身。


 清潔な法衣。


 普段から姿勢も良くて、真面目。


 たぶん。


 というか、ほぼ絶対。


 童貞。


「……こんばんは」


「何をしているんですか」


「夜風?」


「その聖書は?」


「……読書?」


「四隅が鳴いていますが」


「オホォォォォッ!」


「タイミング!」


 神父の眉間に皺が寄った。


「それ」


「うん」


「教会の聖典ですよね」


「うん」


「私が今日、あなたへ貸した」


「うん」


「何をしたんですか?」


「……」


「答えてください」


「生命維持?」


「疑問形で言うな!」


 珍しく声を荒げた。


     *


「まず」


 神父は。


 怒っていた。


 かなり。


「裸の神像」


「あれは初日」


「今も毎朝鳴きます」


「元気じゃん」


「褒めていません!」


「はい」


「次に木剣」


「強いよ」


「そういう問題ではありません!」


「はい」


「夜中に帰ってくる」


「冒険者だし」


「泥だらけ」


「ゴブリンいたし」


「教会裏で奇声」


「それは祝福」


「そして今度は聖書!」


「……はい」


 神父が聖書を指差す。


「四隅ですよ!」


「四隅だね」


「なぜ全部なんですか!」


「うちも知らない!」


「オホォォォォッ!」


「お前も黙れ!」


 神父が頭を抱えた。


「私は」


「うん」


「あなたを、異界から来た性神の祝福者として尊重しようと思っています」


「ありがと」


「ですが!」


「はい」


「限度があります!」


「ですよねー」


「軽い!」


 怒っている。


 なのに。


「……」


 神父の視線が。


 時々。


 うちへ落ちる。


「何?」


「何でもありません」


「今見た?」


「見ていません」


「見たじゃん」


「見ていません!」


「三回目」


「数えないでください!」


「神父さん」


「何です」


「最近さ」


「はい」


「うちのこと、めっちゃ意識してない?」


「していません」


「即答」


「していません!」


「顔赤いけど」


「怒っているからです!」


「ふーん」


 うちは立ち上がる。


 一歩。


 神父が。


 一歩下がる。


「ほら」


「何がです?」


「女慣れしてない」


「関係ありません!」


「あるでしょ」


「ありません!」


 もう一歩。


 また下がった。


「……」


「……」


「神父さん」


「何です」


「童貞?」


「なっ!」


「当たり」


「そんなことを聞くな!」


「別に悪くないじゃん」


「良い悪いの話ではありません!」


「じゃ童貞なんだ」


「……」


「沈黙は肯定」


「あなたという人は……!」


 耳まで真っ赤。


「かわい」


「からかわないでください!」


「だって分かりやすすぎ」


「私は神職です!」


「神職って恋愛禁止?」


「この教会では禁止ではありません」


「じゃ性行為禁止?」


「……禁止では」


「じゃいいじゃん」


「良くありません!」


「何で?」


「節制というものが!」


「性神も神じゃん」


「それとこれとは別です!」


「違う?」


「違います!」


「でもさ」


 一歩近づく。


 今度は。


 神父が下がらなかった。


「うちのこと」


「……」


「したくない?」


「……」


「ちゃんと答えて」


 さすがに。


 そこは。


 からかわない。


「嫌ならやめる」


「……」


「触んない」


「……」


「何もなかったことにする」


 沈黙。


 長い。


 そして。


「……したいです」


「聞こえない」


「したいです!」


「お」


「笑わないでください!」


「笑ってないって」


「笑っています!」


「ちょっとだけ」


「帰ってください!」


「今から教えたげようと思ったのに」


「……」


 神父が止まる。


「ほら」


「……」


「やっぱしたいんじゃん」


     *


「確認ね」


 うちは言った。


「嫌になったら言う」


「はい」


「分かんないことも言う」


「はい」


「痛いとか怖いとかも」


「……はい」


「格好つけない」


「それは」


「つけない」


「はい」


「よし」


 神父は。


 すごく真面目に頷いた。


「学校みたい」


「あなたがそうしているんでしょう!」


「初めてなんだから教えた方がいいじゃん」


「……」


「緊張してる?」


「しています」


「正直でよろしい」


「先生みたいに言わないでください」


「じゃ先生ね」


「やめてください!」


「かわい」


「だから!」


「オホォォォォッ!」


 聖書の四隅。


 突然。


 四つとも鳴いた。


「……」


「……」


「こいつら空気読まない」


「本当に全部あなたのせいです!」


「はいはい」


     *


 神父は。


 本当に。


 何も知らなかった。


「固まりすぎ」


「仕方ないでしょう!」


「大丈夫だから」


「本当に?」


「うん」


「……」


「神父さん」


「はい」


「顔怖い」


「緊張しているんです!」


「力抜いて」


「はい」


「そう」


 少しずつ。


 教える。


 無理をしない。


 確認する。


 神父も。


 ちゃんと答える。


「これで?」


「うん」


「大丈夫ですか?」


「大丈夫」


「本当に?」


「何回聞くん」


「初めてなんです!」


「知ってるって」


「言わないでください!」


 それでも。


 だんだん。


 神父の緊張が解けていく。


「そうそう」


「……」


「上手くなってきたじゃん」


「本当ですか?」


「うん」


 そして。


 うちの身体も。


 普通に反応する。


「……来る」


「え?」


「そのまま」


「何を」


「止まんないで」


「はい」


「来る来る来る……っ!」


「大丈夫ですか!?」


「大丈夫だから!」


「あっ、ダメ……!」


「え、何が」


「止まんないでって!」


「は、はい!」


「お゙っ……!」


 神父が固まる。


「お゙っ、お゙っ……!」


「……」


「見るな!」


「いや、でも」


「今はいいから!」


「どっちですか!」


「オッホォォォォォッ!」


 教会裏へ。


 また。


 盛大に響いた。


「……」


「……」


 神父が。


 完全に固まっている。


「何その顔」


「今の」


「うちのオホ声」


「……」


「性神の祝福だから」


「そういう問題なんですか?」


「そういう問題」


「オホォォォッ!」


 聖書。


「お前らまで鳴くな!」


「オホッ!」


 木剣。


「お前も!」


 神父が。


 ついに。


 笑った。


「何笑ってんの」


「いえ」


「言えし」


「あなた、本当に騒がしい人ですね」


「今さら?」


「今さらです」


 でも。


 さっきまでより。


 ずっと自然な顔だった。


     *


 しばらくして。


「……」


 神父が。


 地面を見ていた。


「何?」


「終わってしまいました」


「うん」


「……」


「初めてなんだから普通じゃない?」


「そうなんですか?」


「たぶん」


「たぶん?」


「うち男じゃないし」


「……」


「でも」


「はい?」


「嫌だった?」


「……」


 神父が首を振る。


「いいえ」


「じゃよくない?」


「……はい」


「またしたい?」


「なっ」


「正直に」


「あなたはどうして!」


「したい?」


「……」


「神父さん」


「……したいです」


「素直じゃん」


「笑わないでください!」


「じゃ」


 うちは笑う。


「また教えたげる」


「……」


「何その顔」


「いえ」


「何」


「教会で、こんなことをしていいのかと思って」


「ここ外じゃん」


「そういう意味ではありません!」


「でも自分で決めたんでしょ?」


「……はい」


「なら、うちはそれでいいと思うけど」


 神父は少し黙った。


「あなたは」


「何」


「性神の祝福を受けてから、ずっとこうなのですか」


「こうって?」


「自由というか」


「適当って言いたい?」


「そこまでは」


「顔が言ってるし」


「……」


「まあ」


 聖書を見る。


 四隅。


「オホォ……」


「これ見て言うのも何だけど」


「はい」


「やらなきゃ死ぬし」


「……」


「やったら変なの増えるし」


「はい」


「だったら、危なくないようにして生きるしかなくない?」


「……」


「悩んでも四隅戻らんし」


「戻らないんですか!?」


「たぶん」


「この聖書、どうするんです!」


「返す?」


「返されても困ります!」


「じゃ神父さん使う?」


「何に!?」


「読む」


「普通に読むんですか!?」


「ページ無事じゃん」


「オホォォォッ!」


「四隅はうるさいけど」


「最悪です!」


「性能は最高」


「何の性能です!?」


     *


 翌朝。


「おはよ」


「……おはようございます」


 食堂。


 若い神父。


 いつもの法衣。


 いつもの真面目な顔。


「神父さん」


「何です」


「目合わせないじゃん」


「普通です」


「昨日――」


「言わないでください」


「まだ何も」


「絶対言うでしょう!」


「童――」


「言うな!」


 近くの別の神父が振り返った。


「どうした?」


「何でもありません!」


 若い神父が即答。


「ふーん」


「あなたも黙ってください」


「はいはい」


 席へ座る。


 そこへ。


「オホォォォォッ!」


「……」


「……」


 聖書。


 四隅。


 全部雄化したまま。


「オホッ!」


「オホォォォッ!」


「オッホォォォォッ!」


 別の神父が目を丸くする。


「その聖典は、どうした?」


「……」


 若い神父が。


 ゆっくり。


 うちを見る。


「何?」


「あなたが説明してください」


「昨日使ったら雄になった」


「説明が雑すぎます!」


「でも事実じゃん」


「オホォォォォッ!」


「ほら」


「ほら、ではありません!」


 うちはパンを齧る。


 寝床。


 飯。


 雄化神像。


 雄化木剣。


 雄化聖書。


 そして。


 めちゃくちゃ真面目で。


 清廉潔白で。


 昨日まで童貞だった若い神父。


「……教会生活、結構楽しくなってきたかも」


「何か言いました?」


「何でもない」


「オホォォォッ!」


「お前はちょっと静かにして!」


 教会へ帰る理由が。


 また一つ。


 増えた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。