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種付けオッサンとビッチギャル ~二日に一度ヤらないと死ぬ二人の異世界転生~【注目15位、日間217位ありがとうございます】  作者: 黒瀬 量衡
第五章 種付けオッサンとビッチギャル

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第八十七話 排卵魔法を作ったあとで気づいたんだけど、うちずっと生理来てなくない?

 排卵補助。避妊。受精と着床の補助。妊娠初期の母子安定。


 性神の神殿と診療所が急にまともな生殖医療を始めてから数日後、うちは女将の宿で朝飯を食べながら、ふと思った。


「……あれ?」


 パンを持ったまま止まる。


 女将がこっちを見る。


「何だい」

「ちょっと待って」

「待ってるよ」

「……うち、生理来てなくない?」


 女将。


 娘。


 オッサン。


 全員。


 止まった。


「は?」


     *


「いや、マジで」


 うちは指を折り始めた。


「こっち来た日があって、そのあとオッサンと会って、街来て、神殿でいろいろやって、神獣来て、神獣死んで、御神像がふたなりになって、子神像生まれて、お守り売って、街が観光地になって――」


「途中の出来事が濃すぎて日付の確認になってないよ」


 女将に言われた。


「でも結構経ってるよね?」

「経ってるね」

「一月どころじゃないよね?」

「全然だね」


「……」


 うち。


 固まる。


「来てない」


 娘。


「一度も?」


「たぶん」


「たぶんって」


「だって異世界来てから毎日なんか起きてんだもん!」


     *


 オッサンが木杯を置いた。


「ギャルさん」


「何」


「それは診療所へ行った方がよろしいのでは?」


「……」


「妊娠の可能性も」


「待って」


 うち。


 腹。


 見る。


「待って待って待って」


「落ち着きなさい」


 女将。


「だって!」


 うちはオッサンを見る。


 オッサンもこっちを見る。


「オッサン」


「はい」


「もし」


「はい」


「もし妊娠してたら」


「……」


 オッサンの顔から。


 いつもの。


 ドゥフフ。


 消えた。


     *


「診療所ですな」


「急に真顔!」


「これは冗談を言っている場合ではありませんぞ」


「そうだけど!」


 女将が立ち上がる。


「食べ終わったら行ってきな」

「食えるかな、これ」

「食べな。妊娠しててもしてなくても、腹は減る」

「強い」


     *


 診療所。


 受付。


「生理が来ない?」


「うん」


「最後はいつですか?」


「……異世界来る前?」


「それは何日前です?」


「分かんない」


「だいぶ前ですなぁ」


「オッサン黙って!」


     *


 診察。


 まず。


 妊娠しているか。


 調べる。


 うち。


 椅子。


 座る。


 落ち着かない。


 オッサン。


 隣。


 珍しく。


 静か。


 治療師。


 神官。


 二人。


 魔法。


 確認。


「……」


「……」


「……」


「長くない?」


「少し待ってください」


「その『少し』が怖いんだけど!」


     *


 治療師が顔を上げた。


「妊娠はしていません」


「……」


 うち。


「マジ?」


「はい」


「本当に?」


「現時点では妊娠反応はありません」


「……はぁぁぁぁぁぁぁぁ」


 力。


 抜ける。


     *


 オッサンも。


 妙に。


 大きく。


 息。


 吐いた。


「何?」


「いやぁ」


「残念?」


「安心が先ですなぁ」


 少し。


 間。


「子供を持つなら、お互いに分かった上での方がよろしいでしょう」


「……」


「急にまともなこと言うじゃん」


「おじさんを何だと思っておりますかな」


「種付けオッサン」


「否定できませんなぁ」


     *


「でも」


 うち。


 治療師。


 見る。


「じゃあ何で生理来ないの?」


「そこです」


 診察。


 続行。


 子宮。


 卵巣。


 血流。


 魔力。


 性神の祝福。


 いろいろ。


 調べる。


 そして。


 治療師と神官。


 途中から。


 妙に。


 真剣。


「何?」


「少し特殊です」


「病気?」


「いえ」


「じゃ何?」


     *


 神官。


 うちの腹の辺りを示す。


「健康です」


「うん」


「生殖機能にも、今のところ問題は見当たりません」


「うん」


「むしろ非常に良好です」


「じゃあ何で?」


「月経周期そのものが、通常の女性と違います」


「……」


 うち。


「は?」


     *


 性神の祝福。


 それも。


 うちに直接与えられた。


 かなり強いもの。


 その影響で。


 身体が。


 普通の周期で。


 毎月。


 排卵準備。


 子宮内膜形成。


 月経。


 それを繰り返していない。


「必要がないから?」


「かなり乱暴に言えば」


「はい」


「そうです」


「……」


     *


 神官が説明する。


「あなたの身体は、妊娠を望んでいない状態では、生殖に必要な準備を最低限に抑えているようです」


「省エネ?」


「言い方は軽いですが、近いですね」


「じゃ排卵してない?」


「通常の周期では、していない可能性が高いです」


「マジで?」


「ただし、生殖能力そのものが失われたわけではありません」


「……」


「必要な条件が揃えば、排卵から受胎準備まで一気に移行できるような祝福反応があります」


「……」


 うち。


 止まる。


「それ」


「はい」


「この前うちらが作った排卵魔法より上じゃない?」


「……」


 神官。


「おそらく」


     *


「先に言えよ性神!」


 診療所。


 響く。


「ギャルさん、神に怒鳴っても」


「だってうち本人だよ!?」


「祝福を受けた時に説明は」


「性欲とかオホ声とか変な道具のことばっかり目立ってたんだもん!」


「神の説明不足というより、あなたが気づかなかった可能性も」


「神官どっちの味方!?」


     *


 さらに。


 月経が起きない理由。


 もう一つ。


「不要な出血や痛みを避ける作用もあるようです」


「……」


「あなたの祝福は、生殖と性行動に適した健康状態を非常に強く維持しています」


「生理痛も?」


「通常の月経そのものがありませんから」


「ない」


「はい」


「経血も?」


「ありません」


「ない」


「はい」


 うち。


 椅子。


 座ったまま。


 天井。


 見る。


「性神」


 一拍。


「そこだけはマジでありがとう」


     *


 女。


 月一。


 腹痛。


 腰痛。


 だるい。


 眠い。


 出血。


 生理用品。


 服。


 漏れ。


 旅行。


 予定。


 そういう。


 面倒。


 全部。


 ない。


「……」


「ギャルさん?」


「これめっちゃ便利じゃん」


「健康上の問題がないことを確認した上でなら、確かに」


「うち、生理用品探してすらなかった」


「今ごろ気づいたのですか?」


「こっち来てから人生濃すぎんだよ!」


     *


 でも。


 そこで。


 うち。


 気づく。


「待って」


「何でしょう」


「じゃあ」


 この前。


 作った。


 避妊守。


「うちには必要ない?」


「いいえ」


「え?」


「そこは別です」


     *


 神官。


「あなたの身体が通常周期で排卵しないことと、妊娠可能性がないことは同じではありません」


「……」


「祝福によって、条件次第で生殖状態へ移行する可能性があります」


「条件って?」


「現段階では完全には分かりません」


「怖っ!」


「ですから、妊娠を望まないなら避妊はしてください」


「はい!」


     *


 オッサン。


 横。


「おじさんとの場合も?」


「当然です」


 神官。


 即答。


「そこを例外扱いしないでください」


「いやぁ、確認ですぞ」


「顔が少し残念そうなんだけど」


「気のせいですなぁ」


「こっち見ろ」


     *


 診療。


 終了。


 結果。


 妊娠。


 なし。


 病気。


 なし。


 身体。


 超健康。


 普通の月経周期。


 なし。


 性神祝福による。


 特殊な生殖制御。


「……」


 うち。


 診療記録。


 見る。


「これ」


「はい」


「研究対象じゃない?」


「かなり」


「やっぱ?」


「あなたの身体そのものが、先日開発した生殖補助魔法の参考になる可能性があります」


「……」


「排卵制御、避妊、受胎準備、母体保護。性神の祝福がそれらをどのようにまとめて制御しているか調べれば」


「待って」


「はい」


「うちから魔法作る?」


「可能性はあります」


「……」


     *


 うち。


 笑う。


「じゃ金取れる?」


「なぜそこへ行くのです!」


     *


 神殿。


 戻る。


 マジメメガネ。


 話。


 聞く。


「つまり」


「うん」


「あなた自身が、かなり高度な生殖制御の祝福を受けていたと」


「そうっぽい」


「それを知らずに排卵補助魔法を作ろうと言い出した」


「うん」


「……」


 眼鏡。


 外す。


 拭く。


 戻す。


「先に自分を調べてください」


「それな!」


     *


 元童貞神父。


 隣。


「しかし、何事もなくてよかったですね」


「うん」


「妊娠ではなかった」


「うん」


「病気でもなかった」


「うん」


「そして生理も来ない」


「超楽」


「そこだけ急に俗ですね」


「女には重要なの!」


     *


「童貞神父には分かんないでしょ」


「もう童貞ではありません!」


「そこ関係ないし!」


     *


 その日の夜。


 うち。


 宿。


 ベッド。


 寝転ぶ。


 オッサン。


 隣。


「今日」


「はい」


「ちょっと怖かった」


「おじさんもですぞ」


「オッサンも?」


「はい」


「意外」


「妊娠そのものが嫌というわけではありません」


「……」


「ただ」


 オッサン。


 少し。


 真面目。


「もしギャルさんが妊娠するなら、気づかないうちではなく、二人でそうすると決めた時の方がよろしいですなぁ」


「……」


 うち。


 天井。


 見る。


「それは」


「はい」


「うちもそう思う」


     *


 少し。


 静か。


「でも」


 うち。


「もし子供作るなら」


「はい」


「オッサン?」


「……」


「何その顔」


「いやぁ」


「ニヤけんな!」


「ドゥフフ」


「さっきまで真面目だったじゃん!」


     *


 翌日。


 神殿。


 新しい。


 研究計画。


『性神祝福による月経・排卵制御の研究』


 被験者。


『性女』


「だからその名前で記録すんな!」


「通称として最も分かりやすいので」


「本名使え!」


「皆が性女で覚えております」


「最悪!」


     *


 さらに。


 うち。


 一つ。


 思いつく。


「ねえ」


「何でしょう」


「生理痛とか出血で困ってる人向けに」


 神官。


 嫌な予感。


「月経を安全に軽くする魔法」


「……」


「作れない?」


 神官。


 止まる。


「それは」


「うん」


「かなり需要があると思います」


「でしょ?」


     *


 排卵補助。


 避妊。


 受精着床補助。


 母子安定。


 そこへ。


 新しく。


『月経負担軽減』


 研究項目。


 追加。


     *


 うち。


 腕。


 組む。


「性神なんだからさ」


「はい」


「エロい時だけ仕事してないで、こういう女の面倒も見てなんぼでしょ」


「その表現はともかく」


 神官。


 頷く。


「まったく同感です」


「よし」


     *


 そして。


 うちは。


 その夜。


 風呂。


 入って。


 もう一度。


 思った。


「……」


 生理用品。


 いらない。


 周期。


 気にしなくていい。


 生理痛。


 ない。


「性神」


 一拍。


「やっぱそこだけはマジ感謝」


 なお。


 その性神が。


 うちへ与えた。


 それ以外の。


 大量の。


 面倒。


 については。


 今後も。


 別件として。


 文句を言うつもりだった。

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