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種付けオッサンとビッチギャル ~二日に一度ヤらないと死ぬ二人の異世界転生~【注目15位、日間217位ありがとうございます】  作者: 黒瀬 量衡
第五章 種付けオッサンとビッチギャル

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第八十六話 排卵・避妊・受精着床・安定期のお守りを作ったら、性神が急にまともな医療神みたいになったんだけど

 御神像。お守り。巡礼者。歓楽街。虎と女戦士の宿。


 うちが思いつきで何か言うたび、なぜかこの街では本当に商売になっている。


 だから今回も、神殿の売店を眺めていたら思いついた。


「ねえ」


「嫌な予感がします」


 神官が即答した。


「まだ何も言ってないじゃん」

「最近は顔で分かるようになりました」

「排卵魔法、避妊魔法、受精着床魔法、安定期魔法作ろう」

「……」


 神官が止まった。


 横で木杯を傾けていたオッサンまで止まる。


「ギャルさん」

「何?」

「今回は、かなりまともでは?」

「でしょ?」


     *


 うちは売店のお守りを一つ摘まみ上げた。


「だって性神だよ?」

「はい」

「子宝、妊娠、出産も守備範囲なんでしょ?」

「もちろんです」

「なのに、お守り売って祈るだけじゃもったいなくない?」


 神官の眉が動く。


「排卵しにくい人には、排卵を助ける魔法」

「……」

「今は子供いらない人には避妊魔法」

「……」

「子供欲しい人には、受精と着床を助ける魔法」

「……」

「妊娠したら、最初の不安定な時期を無事に越えるための安定期魔法」


 うちは指を四本立てた。


「ここまで揃えて、なんぼの性神だと思う?」


     *


 神官はしばらく黙っていた。


「……言葉遣いはともかく」

「うん」

「発想そのものは、性神信仰の本来の領域です」

「ほら!」


 オッサンも頷く。


「望まない妊娠を防ぐことと、望む妊娠を助けることの両方が必要ですなぁ」

「そうそう。片方だけじゃ駄目じゃん」

「珍しく非常に筋が通っています」

「珍しく言うな!」


     *


 問題は、そんな魔法が作れるかどうかだった。


 神殿にはすでに妊娠や出産を助ける術がある。ただし、それらは神官が患者ごとに状態を確認して使う治療術で、誰でも簡単に持ち歩けるものではない。


「なら、お守りに入れれば?」

「簡単に言いますね」

「今のお守りより高いやつ」

「商売の話へ戻りましたね」

「だって高機能なんだから高くていいでしょ」


 普通のお守りは祈祷と加護を込めたもの。


 その上に、実際の魔法機能を仕込んだ上位版を作る。


「例えば避妊守り」

「名称が直接的ですね」

「分かりやすいじゃん。本人が起動してる間だけ有効。やめたら戻る」

「恒久的な身体変化にはしない、と」

「そう。勝手に起動も駄目」

「当然です」


 神官の顔がだんだん仕事の顔になってきた。


     *


「排卵守りは?」


「必要な時だけ使う。診療所で状態見てもらってから」

「それなら安全性を確保しやすいですね」

「受精着床守りも同じ。欲しい人が使う」

「本人の意思確認は必須です」

「あと勝手に他人につけても発動しない」

「それは絶対条件でしょう」


 オッサンが感心したように眼鏡を直す。


「ギャルさん、こういう時だけ非常に慎重ですなぁ」

「命とか身体に関わるやつは別でしょ」

「その感覚は大事です」


     *


「で、安定期守り」


「これは少し慎重に考える必要があります」


 神官が言う。


「妊娠初期を無理やり飛ばすような術ではなく、母体と胎児の状態を整え、不安定な時期を支える方向がよいでしょう」

「それでいいじゃん」

「異常があるのに無理に維持するのも危険です」

「じゃあ診療所で確認してから」

「それなら実用化の余地があります」


 うちは机を叩いた。


「決まり!」


「まだ試作です!」


     *


 そこから急に、話が大きくなった。


 神殿。


 産婆。


 治療師。


 薬師。


 魔道具職人。


 性神系統の術に詳しい神官。


 全員を集めて、四種類の術をどう安全に使うか検討する。


「避妊は、自分で解除できる」

「はい」

「本人以外には操作できない」

「はい」

「期限切れ前に分かる」

「必要ですね」


「排卵補助は?」

「診察後のみ」

「勝手に何度も使えない」

「回数制限を設けましょう」


「受精着床補助は?」

「妊娠を望む本人が起動」

「はい」

「診療所でも状態確認」

「はい」


「安定期補助は?」

「定期診察と組み合わせる」

「それがよいでしょう」


 神官が資料を書きながら、ふと顔を上げた。


「……本当に、あなたの案ですよね?」

「何その確認」

「最近のあなたの発案としては、あまりにもまともで」

「失礼すぎる!」


     *


 うちとしては、別に難しく考えたつもりはなかった。


「女の子がさ」

「はい」

「子供欲しいなら、ちゃんと子供持てるようにして」

「はい」

「今はいらないなら避妊できて」

「はい」

「妊娠したら安心して育てられるようにして」

「はい」

「そうやって、望む人がちゃんと子育てまでできるようにしてなんぼの性神じゃん」


 神官は少しだけ笑った。


「その言い方なら、私もかなり賛成です」

「でしょ?」

「ただし」

「何?」

「性神は女性だけの神ではありません」

「あー」


 オッサン。


「男性側の相談も必要ですなぁ」

「精子とか?」

「言葉は直接的ですが、その辺りも含みます」

「じゃ男も女もまとめて、子供欲しい人を助ける神」

「そういう理解で構いません」


     *


 問題は値段だった。


「高い」


「高機能ですから」


 試算表を見たうちが言うと、神官が答える。


 普通のお守りとは違う。魔道具職人が作り、神官が術式を確認し、安全機構を入れ、診療所で使うものまで含めれば当然高くなる。


「でも売れると思う」

「また商売人の顔になりましたね」

「必要な人には価値あるでしょ。普通のお守りより高めの特別版にしてさ」


 うちは指で分けた。


「普通の祈願守りは今まで通り安く」

「はい」

「魔法機能付きは高級品」

「はい」

「お金ない人は診療所で必要なら安く使えるようにする」

「……」


 神官が止まった。


「何?」

「最後まで商売だけで終わらなかったことに驚いています」

「性女ナメんな」

「ご自分でその呼び方を使うようになりましたね」

「今だけ!」


     *


 さらに。


 うちは思いついた。


「診療所にも売ればいいじゃん」

「売る?」

「個人用のお守りじゃなくて、何回か使える医療用の魔道具」

「……なるほど」


 神官の目が変わる。


「診療所で管理できるなら、個人用より強い術式も安全に扱える可能性があります」

「でしょ?」

「排卵補助、受精着床補助、妊娠初期の安定化支援……」

「避妊も」

「もちろんです」


 産婆。


 治療師。


 神官。


 話が。


 どんどん。


 専門的になる。


 うち。


 途中から。


 分からない。


「……ねえ」

「何です?」

「もううちいらなくない?」

「発案者でしょう」

「技術の話、全然分かんない」

「そこは我慢してください」


     *


 試作品。


 第一号。


『避妊守』


 外見。


 普通。


「普通じゃん」

「何を期待していたのです」

「チンポとかマンコの形」

「絶対にしません」


 本人が魔力を通して起動。


 有効中。


 小さな青い紋。


 解除。


 紋。


 消える。


「分かりやすい」

「誤操作防止のためです」


     *


 第二号。


『排卵補助守』


「これは診療所で渡します」

「店頭に置かないんだ」

「状態を確認せず使わせるべきではありません」

「なるほど」


 第三号。


『受精着床補助守』


 これも。


 診療所管理。


「本人の意思確認をしてから」

「うん」


 第四号。


『母子安定守』


「安定期守りじゃないの?」

「その名称だと効果を誤解されます」

「固い」

「安全性優先です」


     *


 販売。


 開始。


 というより。


 相談受付。


 開始。


     *


 最初に売れたのは。


 避妊守。


「やっぱそこ人気なんだ」


「必要な人は多いでしょう」


 旅人。


 夫婦。


 歓楽街で働く者。


 恋人。


 冒険者。


 いろんな人が買う。


「これ、男が持っても意味ある?」

「本人側の生殖機能へ作用する型もあります」

「男女別?」

「用途別です」


 うち。


「性神、急にちゃんとしてんな」

「元々ちゃんとしています!」


     *


 次に。


 子供を望む夫婦が。


 診療所へ。


 来た。


 診察。


 相談。


 排卵補助。


 必要なら受精着床補助。


 全部。


 いきなり魔法。


 ではなく。


 状態を見ながら。


 使う。


「……」


 うち。


 外。


 待つ。


 オッサン。


 隣。


「何ですかな?」

「いや」


 診療所。


 見る。


「うち、最初はお守りで金儲けようと思っただけなんだけど」

「結果として人助けになりましたなぁ」

「なんか複雑」

「良いことでは?」

「まあね」


     *


 数週間後。


 神殿へ。


 報告。


 来る。


「妊娠しました」


 夫婦。


 泣く。


 神官。


 笑う。


 うち。


 ちょっと。


 困る。


「……おめでと」


「ありがとうございます、性女様」


「その呼び方だけはやめて!」


     *


 評判。


 広がる。


『性神の街には、望まない妊娠を防ぐ守りがある』


『子を望む夫婦を助ける診療所がある』


『妊婦を支える魔法がある』


 それまで。


 御神像。


 オホ声。


 チンポ守り。


 マンコ守り。


 歓楽街。


 虎と女戦士。


 そんな話ばかりだった街に。


 初めて。


 かなり。


 まともな。


 評判が。


 加わった。


     *


「……」


 うち。


 掲示板。


 見る。


『性神の街――子宝と母子の守護』


「かっこよくなってる」


「よいことです」


 神官。


「でも夜になったら」


 遠く。


「オホォォォォッ……!」


 御神像。


 さらに。


「オホォォォォォッ……!」


 虎と女戦士の宿。


「全部台無しじゃん!」


     *


 それでも。


 魔法付きのお守り。


 高い。


 売れる。


 診療所用の魔道具。


 近隣の町。


 問い合わせ。


 増える。


 神殿。


 収入。


 増える。


 その一部。


 貧しい妊婦。


 無料診療。


 薬。


 産婆。


 支援。


 戻る。


     *


「ギャルさん」


「何?」


 オッサン。


「また街を変えましたなぁ」

「うち?」


「はい」

「でもアイデア出しただけだし」

「最初は大抵そうですぞ」


 うち。


 少し。


 考える。


「次なんか作る?」


 後ろ。


 神官。


「しばらく何も思いつかないでください!」


「まだ何も言ってない!」


「お願いですから!」


     *


 その日の。


 新商品案。


 うち。


 紙。


『産後回復のお守り』


 神官。


 見る。


「……」


「何?」

「これは」

「うん」

「検討します」


「通った!」


 性神。


 ようやく。


 エロだけではなく。


 妊娠。


 出産。


 子育て。


 そこまで含めて。


 街の暮らしへ。


 本格的に。


 入り始めていた。

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