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種付けオッサンとビッチギャル ~二日に一度ヤらないと死ぬ二人の異世界転生~【注目15位、日間217位ありがとうございます】  作者: 黒瀬 量衡
第五章 種付けオッサンとビッチギャル

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第八十四話 御神像で街が観光地になったら、宿も店も歓楽街も増えて性女まで野盗狩りすることになったんだけど

 気づいたら、街が変わっていた。


「……ここ、こんな人多かったっけ?」


 朝の神殿前には、もう長い列ができている。馬と牛の御神像へ参拝する夫婦、子宝守りを買いに来た旅人、腰袋へ小さな子馬神像をぶら下げた商人、荷車を引く行商人、それを目当てに商売を始めた露店まで並んでいた。以前なら朝からこんなに人が歩いている通りではない。


「性女様だ」

「本当だ。金髪の」

「え」


 振り返る。


 知らない夫婦と目が合った。


「性女様!」


「やめろ!」


 うちは逃げた。


     *


 神殿の裏へ回ると、オッサンが木杯で水を飲んでいた。


「何でお前だけ優雅なん」

「朝食後の一杯ですぞ」

「表でまた性女って呼ばれたんだけど」

「人気者ですなぁ」

「嬉しくねえし」

「しかし、ギャルさんのおかげで街へ人が集まっているのは事実ですぞ」

「うちのおかげ?」

「ギャルさんと、馬と牛の御神像と、子神像と、御守りですな」

「石像に人数負けしてんじゃん」


 だが、本当に人は増えていた。御神像の噂を聞いて一度見てみたいという者だけでなく、子を望む夫婦、家畜の繁殖を願う農民、夫婦円満を祈る者、単純に珍しいものを見たい旅人まで来る。参拝客が増えれば食事が必要になる。泊まる場所も必要になる。馬を預ける場所もいるし、土産も買う。


 そして、人が増えれば金が落ちる。


 その流れへ一番早く食いついたのは、女将だった。


     *


「二軒目?」


「そうだよ」


 宿へ戻ると、女将が帳場で紙を広げていた。横には娘。二人とも妙に忙しそうである。


「この先の空き家。持ち主が別の町へ移ってから、ずっと使われてなかったろ」

「そうなん?」

「お前は自分が泊まってる街くらい見ろ」

「うち宿と神殿とギルドくらいしか行かんし」

「自慢するな」


 女将が借りることにしたのは、宿から歩いてすぐの古い家だった。元は商家だったらしく、一階が広い。そこを食事と酒を出す店へ直し、二階は巡礼者向けの簡素な宿泊部屋にするらしい。


「こっちは今まで通りの宿。向こうは泊まりより飯を中心にする」

「二店舗経営じゃん」

「何だい、その言い方」

「店二個持つってこと」

「そういうことだよ」


 娘が胸を張る。


「向こうは私が見るから」

「マジ?」

「何、その顔」

「いや、娘ちゃん店長じゃん」

「店長?」

「店任される人」

「ああ。まあ、そんな感じ」


 女将が鼻で笑った。


「こいつ一人に全部任せたら三日で帳簿が死ぬけどね」

「そこまで馬鹿じゃない!」

「昨日、麦酒の仕入れ数を一桁間違えただろ」

「……あれは」

「だから帳簿は私が見る。店は娘が回す」

「めっちゃちゃんと多店舗経営してんじゃん」


 以前なら、この宿一軒で十分だった。だが今は、夕方になると部屋が足りない。神殿へ泊まり込めない参拝者が宿を探し、近所の民家まで部屋を貸し始めている。


「この調子なら、もう一軒くらい借りてもいいかもね」

「三店舗?」

「人が続けばね」

「女将、商売人じゃん」

「宿屋の女将を何だと思ってたんだい」


     *


 ギルドも酷かった。


「次の方、こちらへお願いします。護衛依頼は三番窓口、採取依頼は掲示板右側です。街道北側の野盗情報については――」


 受付のお姉さん。


 早い。


 めちゃくちゃ早い。


 書類を確認しながら冒険者へ指示を出し、そのまま隣の職員へ別の書類を渡し、さらに待っている商人へ顔を向ける。


「荷馬車三台でしたら、護衛は最低でも二組を推奨します。最近は巡礼者を狙った野盗も出ていますので」


 以前より受付が一つ増えている。


 職員も増えた。


 それでも列が消えない。


「忙しそうじゃん」

「誰のせいだと思っているんです?」


 笑顔。


 普通の声。


「うち?」

「街が繁盛すること自体は歓迎しています」


 書類を一枚。


 こっちへ。


「ただし、参拝者、商人、護衛、行商人、見物客が一気に増えれば、依頼も揉め事も増えます」

「大変じゃん」

「他人事ですね」


 笑顔のまま。


 少しだけ。


 顔。


 近い。


「あと、そこの脂ぎった豚」


「はい?」


 オッサンが反応した。


「朝から暇そうに歩いていたな」

「いやぁ、おじさんも街の繁栄を」

「なら働け、クソ豚」

「急に裏の顔ですなぁ」

「声は小さいでしょう」


 そして一瞬で離れる。


「では、お二人ともこちらを」


「うちらも?」


 紙。


 街道周辺の簡単な地図だった。


     *


「野盗?」


「はい」


 人が集まる。


 金が集まる。


 当然。


 それを狙う奴も増える。


 特に街へ続く二本の街道で、巡礼者や小規模な商隊を狙った野盗が出始めているらしい。まだ大きな集団ではないが、このまま放っておけば「性神の街へ行く途中は危険だ」という噂が立つ。


「それは困るんです」

「ギルドが?」

「街全体がです」


 受付のお姉さんは真顔だった。


「参拝者が来る。宿が潤う。商人が来る。依頼が増える。農家も商品を売れる。神殿への寄進も増える。その流れが、街道の治安一つで止まります」

「なるほど」

「そこで」


 うちを見る。


「何」

「性女様にも働いていただきます」

「その呼び方やめろ!」

「ではギャルさん」

「何でうちが野盗狩り?」

「有名だからです」

「意味分かんない!」


     *


「性女本人が街道を見回っている」


 受付のお姉さん。


「という話が広がれば、かなりの抑止になります」

「うち観光看板?」

「ほぼ」

「認めんな!」


 オッサン。


「おじさんは?」

「あなたも行ってください」

「ついでですかな」

「クソ豚一人では看板になりませんが、戦力にはなります」

「評価が実用一点ですなぁ」

「十分でしょう」


 うち。


 地図。


 見る。


「報酬は?」

「野盗の討伐報奨と、ギルドからの巡回手当」

「やる」

「早いですね」

「金出るならやるし」


     *


 神殿は神殿で。


 もっと酷かった。


「御守りはこちらです! 子馬神像は本日分が残り十二体! 祈祷希望の方は先に受付を!」


 神官。


 完全に。


 繁盛店の人。


「お前、慣れたな」

「慣れざるを得ません!」


 参拝者。


 増えた。


 祈祷。


 増えた。


 相談。


 増えた。


 御守り。


 売れる。


 小神像。


 売れる。


 寄進。


 増える。


 そして。


 神官。


 減る暇。


 ない。


「応援来ないの?」

「近隣神殿から二名お願いしています」

「マジ?」

「このままでは本来の神殿業務が回りません」

「御神像すげえ」

「誰がこうしたと思っているのです!」


 奥。


「オホォォォォッ……!」


 親馬。


「オホォォォォッ……!」


 親牛。


「今日も元気だな」

「聞こえないふりをしてください」


 参拝客。


 手。


 合わせる。


「ありがたい……」

「今日も御神威が……」


「だからそれオホ声!」


     *


 街の端も。


 変わっていた。


「……何あれ」


 夕方。


 街道から少し外れた一角。


 見慣れない灯り。


 新しい看板。


 酒場。


 浴場。


 宿。


 そして。


 どう見ても。


 大人向けの店。


「増えましたなぁ」


 オッサン。


「増えたね」


 性神。


 子宝。


 夫婦円満。


 男女健勝。


 そんな御利益を求める人間が集まる。


 ついでに。


 性そのものへ開放的な旅人も集まる。


 結果。


 街の中心ではなく。


 少し離れた端の一角に。


 成人向けの歓楽街みたいなものが。


 自然発生。


「最初一軒だったよね」

「今は六軒ほどありますかな」

「増殖早くない?」

「需要ですなぁ」


 もちろん。


 何でもありではない。


 街側も。


 ギルドも。


 神殿も。


 放置はしなかった。


 営業するなら成人だけ。


 本人の意思。


 料金を明示。


 暴力禁止。


 借金で無理に働かせるのも禁止。


 揉めたらギルドや衛兵へ。


 神殿も健康相談に応じる。


「なんか」


 うち。


「街全体が性神に適応してない?」


「生活とはそういうものですかなぁ」

「お前、妙に達観してんな」


     *


 歓楽街ができたことで。


 さらに人が来た。


「御神像を見に来ました」


 昼。


「夜はこちらで遊んで帰ります」


 夜。


「旅行として完成してんじゃん!」


 宿。


 繁盛。


 酒場。


 繁盛。


 飯屋。


 繁盛。


 露店。


 繁盛。


 ギルド。


 仕事増加。


 神殿。


 参拝者増加。


 街の入口では。


 馬車待ち。


 列。


「もう観光地だよね、これ」

「巡礼地です」

 後ろ。


 神官。


「まだ言う?」

「巡礼地です!」


     *


 その翌日。


 うち。


 オッサン。


 街道。


 歩く。


「で」


 うち。


「野盗どこ?」


「受付のお姉さんの情報では、この先の林ですなぁ」


「うち、異世界来て何してんだろ」

「性女」

「言うな」

「御神像の発案」

「うん」

「土産物企画」

「うん」

「観光振興」

「うん」

「そして治安維持」

「性女の仕事じゃねえ!」


     *


 その時。


 林。


 動く。


 男。


 三人。


 成人。


 武器。


「荷物置いてけ」


「……」


 うち。


 オッサン。


 見る。


「来たね」

「来ましたなぁ」


 野盗。


「何だ、その女」


 もう一人。


 うち。


 顔。


 見る。


「……金髪?」


「まさか」


「性女?」


「おい」


 うち。


「何で野盗まで知ってんの!?」


     *


 三人。


 顔。


 変わる。


「逃げろ!」


「待て!」


 全員。


 走る。


「何で!」


「抑止力、効いておりますなぁ」

「まだ何もしてないし!」


 追う。


     *


 結果。


 三人。


 捕縛。


 ギルド。


 引き渡し。


「早かったですね」


 受付のお姉さん。


「うちら見て逃げた」

「評判は役に立つでしょう?」

「性女ブランドを犯罪抑止に使うな」


「明日もお願いします」


「明日も!?」


「別の街道です」


「観光地って大変じゃん!」


     *


 その夜。


 宿。


 女将。


 帳簿。


「野盗捕まえたんだって?」

「うん」

「ご苦労さん」

「めっちゃ歩いた」

「飯多めにしといたよ」

「マジ? ありがと」


 娘。


 向こうの店から。


 帰ってくる。


「今日も満室!」

「こっちもだよ」

「すごくない?」

「街に人が来てるからね」


 女将。


 うち。


 見る。


「まあ」


「何」


「あんたらが来てから、変なことばっかりだけど」


「うん」


「前より景気はいいよ」


「……」


「だから」


 一拍。


「明日も野盗狩ってきな」


「そこまでうちの仕事!?」


     *


 神殿。


 参拝者。


 増加。


 ギルド。


 冒険者。


 増加。


 女将。


 二店舗。


 娘。


 新店舗の現場責任者。


 歓楽街。


 店。


 増加。


 街道。


 護衛依頼。


 増加。


 性女。


 野盗狩り。


 開始。


     *


 異世界へ来た時。


 うちは。


 こんなことになるとは。


 全然。


 思ってなかった。


 性神の祝福で。


 オホ声出して。


 変な物を雄化させながら。


 生きる。


 それだけだと思ってた。


 なのに。


 今。


 街一つ。


 観光地になり。


 宿屋が店を増やし。


 神殿が巡礼地になり。


 歓楽街まででき。


 うちは。


 街道の治安まで守っている。


「……」


 隣。


 オッサン。


 木杯。


 持つ。


「ギャルさん」


「何」


「立派な性女ですなぁ」


「ぶっ飛ばすぞ」


「ドゥフフ」


「笑うな!」


 その向こう。


 神殿。


「オホォォォォォッ……!」


 夜。


 御神像。


 いつもの声。


 街の人。


 誰も。


 驚かない。


「……慣れすぎだろ、この街」

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