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種付けオッサンとビッチギャル ~二日に一度ヤらないと死ぬ二人の異世界転生~【注目15位、日間217位ありがとうございます】  作者: 黒瀬 量衡
第五章 種付けオッサンとビッチギャル

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第八十一話 遠くの貴族に性神の話をしてきたマジメメガネが、帰ってきてからずっと疲れた顔してるんだけど

 マジメメガネが戻ってきた。


 数週間前。


 遠方の有力貴族から、性神について講話をしてほしいという正式な依頼が神殿へ届いた。


 神殿側で誰を派遣するか話し合った結果。


 最近。


 性神の祝福による特殊事例に。


 嫌というほど詳しくなっている男。


 マジメメガネが選ばれた。


 そして今日。


 長旅を終えて。


 ようやく帰還。


「お帰り」


「ただいま戻りました」


「どうだった?」


「……」


「何その間」


「まず」


 マジメメガネは眼鏡を外した。


 布で。


 ゆっくり拭く。


「疲れました」


「講義しただけじゃないの?」


「講義そのものは、です」


     *


 教会の食堂。


 うち。


 マジメメガネ。


 元童貞神父。


 三人。


 机。


 お茶。


「もう童貞ではありません」


「まだ何も言ってないし」


「あなたの顔を見ると、先に訂正しておく必要を感じるのです」


「被害妄想じゃん」


「積み重ねです!」


 マジメメガネが。


 また。


 ため息。


「元気ないね」


「あります」


「じゃ何でそんな疲れてんの」


「だから説明します」


     *


「最初は」


 マジメメガネ。


「極めて正式な招聘でした」


「うん」


「公爵家を含む複数の有力家から、神殿を通して依頼が来た」


「マジで上の方じゃん」


「はい」


「何の講義?」


「性神信仰の基礎。祝福。性愛と信仰。身体と健康。妊娠や出産など」


「めっちゃまとも」


「私もそう思っていました」


「過去形?」


「過去形です」


     *


 元童貞神父。


 首を傾げる。


「何か問題でも?」


「最初に、興味のある内容を確認したのです」


「ええ」


「そうしたら」


 マジメメガネ。


 無言。


「何?」


 うち。


「言って」


「……男性側を増やす方法」


「は?」


「生やす方法」


「うん?」


「大きくする魔法」


「おお」


「豊胸魔法」


「ほう」


「身体の一部を任意に変化させる術」


「それ普通に気になる」


「気にならないでください」


     *


「さらに」


 マジメメガネ。


「神殿に伝わる淫靡な秘儀」


「あるの?」


「ありません」


「即答じゃん」


「地下聖堂」


「うん」


「全裸の神官」


「うん」


「特殊な媚薬」


「うん」


「一晩中続く謎の儀式」


「うん」


「全部、期待されました」


「ないの?」


「ありません!」


     *


 元童貞神父。


「なぜ、そのようなことを……」


「性神だからだそうです」


「……」


「……」


 二人。


 沈黙。


 うち。


「まあ」


「何です」


「分からなくもない」


「分からないでください!」


「だって性神じゃん」


「あなたまで!」


     *


「で」


 うち。


「ちゃんと講義したん?」


「しました」


「何話した?」


「性神は性愛だけでなく、繁殖、妊娠、出産、豊穣、夫婦関係、身体の健康などを広く司る」


「うん」


「欲望そのものを悪とはしない」


「うん」


「しかし相手の意思を無視してよいわけではない」


「うん」


「自分が何を望むかを認め、相手が何を望むかを聞き、互いに納得できる形を探す」


「それ大事」


「嫌なら断る。途中で嫌になったなら止める」


「めっちゃまとも」


「だから最初からまともな講義なのです!」


     *


 元童貞神父。


 安心した顔。


「それならよかったではありませんか」


「途中までは」


「また過去形ですね」


「質問時間になった途端、戻りました」


     *


「拘束は?」


「本人同士が理解し、了承しているなら、それ自体を神殿が一律に禁じるものではないと答えました」


「複数人は?」


「同様です」


「同性は?」


「同様」


「夫婦以外」


「婚姻契約や家の事情は別として、性神の教義だけで一律禁止するものではない、と」


「へえ」


 うち。


「神殿、意外と自由じゃん」


「自由なのではなく」


「うん」


「他人の寝室へ神殿が必要以上に介入しないだけです」


「もっと自由じゃん」


「言い方!」


     *


 元童貞神父。


「では、その辺りで納得されたのでは?」


「納得はされました」


「よかったですね」


「その結果」


「はい」


「今度は、自分たちがやろうとしていることを一つずつ質問されました」


「……」


「どのような?」


「身体へ絵を描く」


「はい」


「全裸で」


「……」


「複数人で組み合わせる」


「……」


「大勢の前で行う」


「……」


「周囲では別の参加者も自由に遊ぶ」


「……」


 元童貞神父。


「ずいぶん具体的ですね」


「私もそう思いました」


     *


 うち。


「面白そうじゃん」


「あなたは黙っていてください」


「何で!」


「話が増えます!」


     *


「でも」


 うち。


「貴族なんでしょ?」


「はい」


「そういうのするんだ」


「私も詳しくは聞いていません」


「秘密の会?」


「そこも聞いていません」


「怪しい」


「だから余計な詮索はしていません」


「マジメ」


「神官ですから」


     *


「ただ」


 マジメメガネ。


 少し。


 考える。


「妙な集まりではありましたが」


「うん」


「一つだけ、感心した部分もあります」


「何?」


「参加者の間では、爵位や家格を、相手へ何かを強制する理由にしないよう徹底しているらしい」


「へえ」


 元童貞神父。


「貴族なのにですか?」


「外では身分秩序を守る。ですが、その集まりの中では別だそうです」


「何か変」


「私もそう思いました」


「でも良くない?」


 うち。


「少なくとも上だから断れないとかないんでしょ」


「それは、かなり強く否定されていました」


「じゃまともじゃん」


「質問内容以外は」


     *


「で」


 うち。


「男側を増やす方法は教えた?」


「教えていません」


「知らない?」


「知りません」


「生やすのは?」


「知りません」


「大きくするのは?」


「知りません!」


「豊胸」


「美容術師へ行ってください!」


「性神役に立たなくない?」


「何を神へ求めているのです!」


     *


 そこで。


 元童貞神父。


「ですが」


「はい」


「身体機能を調整する性神系統の魔法はありますよね」


「……」


 マジメメガネ。


 見る。


「何です?」


「余計なことを言わないでください」


「しかし事実でしょう」


「お」


 うち。


 食いつく。


「あるじゃん」


「治療用です!」


「何ができる?」


「身体の回復。妊娠補助。出産時の負担軽減。乳汁分泌の補助などです」


「母乳出せる?」


「産後支援!」


「そこ応用したら」


「しないでください!」


     *


 うち。


 ニヤ。


「貴族に同じこと聞かれた?」


「聞かれました」


「やっぱ考えること一緒じゃん」


「一緒にならないでください!」


     *


 マジメメガネ。


 お茶。


 一口。


「最終的には」


「うん」


「性神信仰において、欲望を持つこと自体は恥ではない。ただし、相手の意思を尊重し、安全へ配慮する」


「うん」


「そこへ落ち着きました」


「いい講義じゃん」


「講義自体は最初からそうです」


「質問が変だっただけ?」


「極端に」


     *


「そういえば」


 うち。


「向こうの人、なんであんた呼んだの?」


「それですが」


 マジメメガネ。


 止まる。


「何?」


「調査の過程で」


「うん」


「この街のことを知ったそうです」


「へえ」


「性神に関係する複数の奇跡が起きている街として」


「……」


 うち。


 止まる。


「え」


「そして」


「うん」


「異世界から来た」


「……」


「金髪の」


「……」


「性神の祝福者がいると」


「……」


     *


 うち。


「待って」


「はい」


「そこまで伝わってんの?」


「かなり遠くまで」


「は?」


「さらに」


 マジメメガネ。


「一部で」


「嫌な予感」


「『性女』と呼ばれていることも」


「最悪!」


     *


 元童貞神父。


「……」


 口元。


 押さえる。


「笑ってんじゃん!」


「笑っていません」


「肩震えてるし!」


「性女……」


「言うな!」


「もう童貞では――」


「今それ関係ない!」


     *


「何で!」


 うち。


「なんで遠くの貴族まで知ってんの!」


「この街で奇跡が多すぎるからでしょう」


「何の!」


 元童貞神父。


 一つずつ。


 指。


「神像」


「……」


「聖書」


「……」


「道具」


「……」


「魔法的な回復」


「……」


「その他」


「その他でまとめんな!」


     *


 マジメメガネ。


「安心してください」


「何を」


「あなた個人の詳しい情報は話していません」


「マジ?」


「当然です」


「聞かれた?」


「聞かれました」


「何て?」


「本当に異世界人なのか」


「うん」


「どのような祝福なのか」


「うん」


「どのような人物なのか」


「うん」


「すべて、本人の情報なので答えられないと」


「……」


     *


 うち。


 少し。


 黙る。


「ありがと」


「神官として当然です」


「でもありがと」


「……はい」


     *


 元童貞神父。


「性女本人を招聘しよう、という話には?」


「少なくとも私のいる場では出ませんでした」


「よかった」


 うち。


「めんどいし」


「仮に依頼があっても、本人の意思次第です」


「絶対行かない」


「即答ですね」


「遠いんでしょ?」


「かなり」


「じゃ無理」


     *


「ていうか」


 うち。


「その貴族たち、どんな人だった?」


「普通の若い貴族です」


「普通?」


「少なくとも外見は」


「その言い方」


「講義中も礼儀正しい」


「へえ」


「質問だけが異常です」


「やっぱ変じゃん」


     *


 マジメメガネ。


「公爵家の方までいらっしゃいました」


「公爵」


「はい」


「超偉いじゃん」


「そうですね」


「そんな人が」


「はい」


「チンポ生やす方法聞いてたの?」


「表現!」


「でも聞いてた?」


「……近い内容は」


「ウケる!」


     *


 元童貞神父。


「あなた」


「何」


「人のことを笑える立場ですか?」


「何で?」


「神像」


「最初だから!」


「木剣」


「相棒!」


「聖書」


「お前の教会だろ!」


「オホ声を上げる聖書を作ったのはあなたです!」


「事故!」


「何度事故を起こせば気が済むのです!」


     *


 マジメメガネ。


「……」


 二人を見る。


 また。


 ため息。


「何?」


「遠方の貴族の方々が」


「うん」


「妙な質問ばかりするので」


「うん」


「かなり特殊な集団だと思っていました」


「うん」


「戻ってきたら」


「うん」


「こちらも何も変わっていませんでした」


「失礼じゃん」


「比較対象として同程度です」


「貴族と一緒にすんな!」


「先方も同じことを言うと思います」


     *


「でもさ」


 うち。


 机。


 頬杖。


「ちょっと面白いね」


「何がです?」


「うちら、会ったこともないじゃん」


「はい」


「向こうは向こうで性神について変なこと調べて」


「はい」


「うちらはこっちで勝手に変なこと起こして」


「はい」


「その噂だけ届いて」


「はい」


「あんたが行った」


「その通りです」


「何か」


 少し。


 考える。


「世界広いのに繋がってんな」


     *


 元童貞神父。


 頷く。


「性神の信仰自体は各地にありますから」


「うん」


「同じ神を信仰していれば、直接会わなくても繋がることはあるでしょう」


「マジメ」


「神父ですから」


「元童貞だけど」


「もう童貞ではありません!」


「久しぶりに聞いた」


     *


 マジメメガネ。


「それで」


「何?」


「先方から、次回の講話希望もいただきました」


「また行くの?」


「正式な依頼があれば」


「何聞きたいって?」


「……」


 眼鏡。


 外す。


 拭く。


「何その動作」


「心を落ち着けています」


     *


「第一希望」


「うん」


「身体改造魔法の応用」


「おお」


「第二」


「うん」


「男性側を生やす、または増やす方法」


「やっぱ!」


「第三」


「うん」


「豊胸および男性側の大型化」


「需要あるじゃん」


「第四」


「うん」


「性神神殿に本当に淫靡な秘儀が存在しないのか」


「まだ疑ってんの!?」


「疑われています」


     *


 うち。


 笑う。


「次行ったらさ」


「嫌な予感しかしません」


「うちから質問持ってって」


「嫌です」


「まだ言ってない!」


「絶対嫌です」


「一個だけ!」


「聞きません」


「性神の加護で――」


「聞きません!」


     *


 元童貞神父。


「ちなみに、どのような質問を?」


「お前まで興味持つな!」


「純粋な確認です」


「絶対嘘」


「もう童貞ではありませんので、ある程度は」


「関係ないじゃん!」


     *


 マジメメガネ。


 二人。


 見る。


「いいですか」


「はい」


「はい」


「私は講師です」


「うん」


「変態魔法の仲介人ではありません」


「うん」


「この街の特殊事例を、遠方の貴族へ紹介する役でもありません」


「うん」


「まして」


「うん」


「性女から質問を預かって届ける使者でもありません」


「性女言うな!」


     *


 その日。


 マジメメガネから。


 遠方の貴族たちについて聞けたこと。


 礼儀正しい。


 身分の高い者が多い。


 性神信仰へ本気で興味を持っている。


 合意や相手の意思については、かなり真面目に考えている。


 そして。


 身体改造魔法への興味だけ。


 異常に強い。


     *


「結論」


 うち。


「何です?」


「貴族も変態」


「全貴族を一括りにしないでください」


「でもあんたが会った奴らは?」


「……」


「変態?」


「……特殊でした」


「ほぼ同じじゃん」


     *


 元童貞神父。


「私としては」


「何?」


「遠くの方々にも、性神について正しく理解していただけたのなら、よいことだと思います」


「お前いい奴だね」


「ありがとうございます」


「元童貞だけど」


「もう童貞ではありません!」


     *


 マジメメガネ。


 天井。


 見る。


「なぜ私は」


「何?」


「長旅から戻った直後に」


「うん」


「またこの会話をしているのでしょう」


「性神の神官だから?」


「違います」


「性女の知り合いだから?」


「もっと違います」


「じゃマジメメガネだから」


「それが一番納得できない!」


     *


 その日の夜。


 神殿の報告書には。


『遠方有力貴族への性神信仰講話、無事終了』


 とだけ。


 非常に。


 簡潔に。


 記録された。


 男側を何本増やせるか。


 豊胸魔法は存在するのか。


 巨根化は可能なのか。


 淫靡な秘儀は本当にないのか。


 そんな質問を。


 延々されたことは。


 マジメメガネの判断により。


 一切。


 正式記録へ残されなかった。

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