第七十八話 淫紋の魔術師を見つけたら、自分の身体で実験しすぎた完全なマッド女でした
淫紋のデザインは完成した。
正式会員の候補一覧も、エリーを中心とした事務局で作成が始まっている。
そして最大の問題だった、あの淫紋を実際の魔法として成立させられる魔術師も見つかった。
*
公爵令嬢の別荘。
今日はユキ、爆乳令嬢、エリー、爆乳令嬢付きのメイドの四人で、紹介された女魔術師から話を聞いていた。
「つまり、これを一生消えない第一の淫紋にする」
「はい」
「秘密の符号を使うと、第二の淫紋が魔法で浮かぶ」
「はい」
「本人が希望すれば、そこへ追加機能も付けられる?」
「可能です」
ユキが身を乗り出す。
「感度上昇」
「可能です」
「興奮増加」
「可能です」
「限界を迎えたくても、条件を満たすまでできなくする」
「可能です」
「下腹部の奥を魔法で震わせ続ける」
「可能です」
「この人、当たりじゃん!」
ユキが嬉しそうに言う一方、爆乳令嬢は女魔術師をじっと見ていた。
「ずいぶん即答なさいますのね」
「研究済みですから」
「どなたで?」
「自分で」
「……」
*
女魔術師は成人女性だった。
見た目だけなら地味である。髪を後ろでまとめ、眼鏡をかけ、簡素な研究服を着ている。話し方も落ち着いている。
少なくとも、見た目だけなら。
「実物をご覧になります?」
「見る」
「公爵令嬢様」
「研究成果の確認だから」
「その顔では説得力がございません」
女魔術師は気にもせず、その場で服を脱いだ。
全裸。
四人が黙る。
「……多くない?」
理由はすぐ分かった。
胸元。
脇腹。
腰。
下腹部。
太腿。
背中。
女魔術師の身体には、小さな魔法刻印がいくつも彫り込まれていた。
「試作品です」
「全部、自分で?」
「はい。他人へ施す前に、自分で安全性を確認しました」
「考え方だけならまともなのに、結果が怖いな」
*
「では、こちらから」
女魔術師が胸の横にある小さな紋へ指を触れた。
魔力を通す。
淡く光る。
「乳汁分泌促進型です」
「名前そのままだね」
「分かりやすさを優先しています」
しばらくすると、女魔術師の乳房がわずかに張った。
「……ん」
さらに。
乳首から白い母乳が滲み、そのまま胸を伝って落ちる。
「おお」
ユキが近づいて見る。
「本当に出るんだ」
「はい。強度も調整できます」
爆乳令嬢が眉をひそめた。
「何のために作りましたの?」
「出るかどうか興味がありまして」
「医学目的ではなく?」
「興味が研究動機です」
「この方、すでに危険では?」
*
「次です」
女魔術師は平然と下腹部の別の紋へ触れた。
「子宮刺激型」
「名前からして危ない」
「内部の筋肉へ魔法的な収縮刺激を発生させます。強度は十段階」
「今いくつ?」
「三です」
発動。
「……っ」
女魔術師の膝が、かくんと折れた。
太腿に力を入れ、どうにか立ったまま耐える。
「何もしてないのに?」
「はい。刻印だけで刺激を発生させています」
「もっと上げたら?」
「こうなります」
「待って。その言い方絶対上げるやつ――」
「七」
*
「オホッ……!」
女魔術師が膝から崩れた。
「早っ!」
「オホォッ……! あっ……オホッ……!」
床へ両手をつく。
腰が跳ねる。
脚が痙攣する。
「まだ……七です……!」
「何で報告しながら嬉しそうなんだよ!」
「実験ですから……オホッ……!」
次の瞬間。
「オホォォォォッ……!」
全身が大きく震えた。
潮吹き。
さらに我慢できず失禁まで混ざり、床へ広く飛び散る。
「ちょっ、床!」
「八……!」
「上げるなって!」
「オホォォォォォッ……!」
何も触っていない。
自分で動いてもいない。
それなのに女魔術師は膝をついたまま何度も身体を痙攣させ、そのたびにオホ声を響かせた。
「この人」
爆乳令嬢が一歩引く。
「明らかに研究者として駄目な方向へ進んでおりますわ」
「楽しい……です……オホッ……!」
「本人が認めましたわ」
*
しかし。
しばらくすると。
突然。
光っていた淫紋がすべて消えた。
「……あ」
女魔術師がそのまま床へ倒れる。
「止まった?」
「はい……」
荒い息を整えながら、眼鏡を直す。
「心拍、呼吸、魔力消費量、筋肉の痙攣、意識状態。このうち複数が設定値を越えた場合、全機能を強制停止します」
エリーが初めて少し安心した顔になる。
「安全装置はあるのですね」
「必須です」
「そこだけはまとも」
「以前、止まらなくなりましたから」
「……以前?」
「三時間ほど」
「やっぱりまともじゃなかった」
「それ以降、安全装置を三重化しました」
爆乳令嬢が深く頷く。
「完全なマッド女ですわね」
「褒め言葉でしょうか」
「違いますわ」
*
人格には若干問題がある。
だが。
技術は本物だった。
一生消えない第一刻印。
普段は見えず、秘密の符号でだけ浮かび上がる第二刻印。
本人の意思による起動。
希望者だけが付与する追加機能。
三重の安全停止。
すべて実現可能。
「なら」
爆乳令嬢が言う。
「最初の施術は、わたくしたちから受けましょう」
「私もそう思ってた」
ユキも頷く。
表の世界では、公爵令嬢と、別派閥の有力令嬢。
若手の謎の会の中心でもある二人が、自分から一生消えない淫紋を刻む。
それなら。
後から受ける会員に対しても、覚悟を示せる。
「それに」
ユキ。
「面白そう」
「結局そちらですのね」
*
「施術前に、一点だけ」
女魔術師が言う。
「何?」
「刻印を定着させる際、魔力を身体へ深く浸透させます」
「うん」
「今回の淫紋は性に強く関係する術式ですので、定着のたびに強い快感反応が発生します」
「どのくらい?」
「線を一つ定着させるたびに、絶頂へ近い反応が起きる可能性があります」
「……」
ユキの顔が輝いた。
「さすが淫紋!」
「何故喜びますの?」
「だって淫紋彫るのに、ただ痛いだけだったら普通の刺青じゃん」
「その理屈は初めて聞きましたわ」
*
「じゃあ私から」
ユキは服を脱いだ。
全裸になり、用意された寝台へ仰向けになる。
下腹部。
画家二人が完成させた正式な淫紋を、女魔術師が確認する。
「始めます」
「どうぞ」
最初の魔力が触れた。
「……っ」
ユキの腰が僅かに浮く。
「お」
「まだ最初の線です」
「これで?」
二本目。
「オホッ……!」
身体が跳ねた。
三本目。
「オホォッ……!」
脚が震える。
しかし魔法によって直接定着しているため、どれだけ身体が動いても紋様の位置はまったくずれない。
「すご……オホッ……!」
「身体の動きに合わせて自動補正しております」
「便利……オホォッ……!」
*
線が増える。
そのたび。
「オホッ……!」
「オホォォッ……!」
女性側の快感が高まる。
腰が何度も浮き。
潮吹きで寝台が濡れる。
「オホォォォォッ……!」
さらに一度。
我慢が崩れ。
失禁。
「公爵令嬢様、大丈夫ですか?」
エリーが聞く。
「大丈夫……オホッ……!」
「本当に?」
「むしろ最高……!」
「聞いた私が馬鹿でした」
*
そして。
ユキには。
もう一つ。
男側の身体がある。
「……っ!」
その反応も。
施術が進むにつれて。
明らかに強くなっていた。
「来る……!」
「オホ声ではない?」
爆乳令嬢が気づく。
「そっちは別……!」
女魔術師がさらに一線を定着させる。
その瞬間。
「オッ……! オッ……! オッ……!」
射精。
短い息が。
三度。
腹から押し出されるように漏れた。
「オホォォォッ……!」
そして女性側も同時に限界を迎え、ユキの全身が大きく跳ねる。
「なるほど」
女魔術師。
観察。
「女性側の絶頂反応はオホ声。男性側の射精時には短い呼気となるのですね」
「今……分析する……!? オホッ……!」
「重要な資料です」
「やっぱマッドだ……!」
*
「最後の定着です」
「来い……!」
完成直前。
淫紋全体が。
一度。
淡く光る。
「オホッ……! 来る来る……!」
女性側。
先に。
「オホォォォォォォッ……!」
潮吹き。
失禁。
全身が大きく反り。
直後。
「オッ……! オッ……! オッ……!」
男側も射精。
そのまま。
最後の魔力が収束した。
「オホォォォォォォォッ……!」
完成。
*
ユキは。
しばらく寝台の上で動かなかった。
「……生きてる?」
爆乳令嬢。
「生きてる……」
「感想は?」
「……最高」
「やはり?」
「さすが淫紋……」
エリー。
「その感想しかないのですか」
*
少しして。
ユキが身体を起こす。
下腹部。
そこには。
完成した淫紋。
紙の上で見たものより。
はるかに身体へ馴染んでいた。
「エロい」
「第一声がそれですの?」
「だってエロいじゃん」
爆乳令嬢も覗き込む。
「確かに、身体へ入ると印象が違いますわね」
「でしょ?」
*
「では」
爆乳令嬢が服を脱ぐ。
「次は、わたくしですわ」
全裸。
寝台へ。
仰向け。
「……」
ユキが見る。
「何?」
「寝ても爆乳」
「当たり前でしょう」
張りのある大きな乳房は、仰向けになっても存在感を失わない。
「始めます」
「お願いしますわ」
*
最初の一線。
「……オホッ」
爆乳令嬢の眉が動く。
「まだ余裕?」
ユキが笑う。
「当然ですわ……オホッ……!」
二本目。
「オホォッ……!」
三本目。
「オホッ……!」
乳房が大きく揺れる。
腰が浮く。
「思っていたより……これは……!」
「いい?」
「かなり……!」
さらに。
一線。
「オホォォォッ……!」
潮吹き。
寝台が濡れる。
「おお」
「見ないでくださる……オホッ……!」
「さっき私の見てたじゃん」
「それとこれは……オホォッ……!」
さらに強く身体が震える。
今度は我慢できず。
失禁。
「……っ!」
爆乳令嬢が顔を赤くする。
「何?」
「何でもありませんわ……!」
「見た」
「黙りなさい!」
*
ところが。
まだ終わらない。
魔力が身体を巡った瞬間。
「……あ」
爆乳令嬢の乳房が。
さらに張った。
「何?」
「胸が……」
次。
乳首から。
母乳が噴き出した。
「オホォォォッ……!」
爆乳令嬢自身も、その反応へ引っ張られるように身体を跳ねさせる。
「母乳まで出てる!」
「これは……聞いてませんわ……!」
女魔術師。
眼鏡を直す。
「乳腺の反応が強い体質のようです」
「冷静に言わないで……オホッ……!」
「興味深い」
「その顔で言うと怖いですわ!」
*
最後の線。
「完成します」
「来なさい……!」
魔力。
淫紋全体へ。
収束。
「オホッ……! あっ……!」
胸が張る。
乳首が硬くなる。
「オホォォォォォォッ……!」
潮吹き。
失禁。
さらに母乳。
三つの反応がほとんど重なり。
爆乳令嬢の全身が大きく跳ねた。
「オホォォォォォッ……!」
そして。
完成。
*
静かになった。
数秒。
ユキ。
爆乳令嬢。
二人とも。
寝台の上。
荒い呼吸。
「……どう?」
ユキ。
「……最高ですわね」
「でしょ?」
「何故あなたが得意げなのです」
「先にやったから」
「それだけ?」
「それだけ」
*
しばらくして。
二人とも呼吸が整った。
起き上がる。
全裸。
下腹部には。
同じ意匠の。
一生消えない淫紋。
「似合う」
ユキが言う。
「あなたも」
爆乳令嬢がユキの淫紋へ指を伸ばす。
「ここ」
「ん……」
「身体の線へ綺麗に沿っていますわ」
「そっちも」
ユキも爆乳令嬢の淫紋へ触れる。
「……」
「……」
近い。
*
一拍。
爆乳令嬢が。
ユキへ口づけた。
「んっ……」
ユキも。
すぐ。
抱き返す。
長い。
激しい。
キス。
唇を離す。
また重ねる。
胸。
腹。
腰。
身体同士がぴったり密着する。
新しく刻まれた淫紋同士まで、擦れ合うほど近い。
「……また身体熱くなってきた」
「わたくしもですわ」
「もう一回遊ぶ?」
「よろしいですわね」
二人の腕がさらに強く回る。
*
「よくありません」
「……」
「……」
二人。
止まる。
エリーが。
真顔。
「施術直後です」
「はい」
「まず休む」
「はい」
「安全確認」
「はい」
「術後説明」
「はい」
爆乳令嬢付きのメイドが小さく笑う。
「エリー様、完全に事務局長ですね」
「あなたも事務局員になるなら止める側です」
「はい」
*
女魔術師が眼鏡を直した。
「施術後十二時間は、追加機能を発動させないでください」
「えー」
「駄目です」
エリー。
「はい」
「第二淫紋の確認は明日以降」
「はい」
「強度試験も明日」
「はい」
「勝手に追加機能を自分へ足さない」
「……」
「公爵令嬢様?」
「はい」
*
こうして。
正式会員用の淫紋。
第一号。
公爵令嬢ユキ。
第二号。
爆乳令嬢。
無事。
完成。
*
「では、今後について」
エリーが事務局用の紙へ記録していく。
「正式会員へ順番に意思確認を行います」
「うん」
「希望者から施術日を決める」
「うん」
「無理に受けさせない」
「当然」
「一生消えない印であることを、施術直前にも再確認する」
「必要」
「施術前後の健康確認」
「必要」
「安全装置の説明」
「必要」
「追加機能は本人が希望したものだけ」
「絶対」
会員証だったはずの淫紋は。
いつの間にか。
かなり本格的な魔法技術になっていた。
*
「なお」
女魔術師が言う。
「私も正式会員へ加わってよろしいでしょうか」
「……」
四人。
女魔術師を見る。
身体中。
実験用の隠し淫紋。
さきほど自分で子宮刺激型を発動させ。
オホ声を上げ。
潮吹き。
失禁。
最後には安全装置で強制停止された女。
「……適性」
爆乳令嬢。
「ありすぎませんこと?」
「私もそう思う」
ユキ。
「むしろ研究開発担当」
「それは必要でしょうね」
エリーまで否定しなかった。
女魔術師の目が輝く。
「では、希望者向けの追加淫紋についてですが」
「もう仕事始めた!」
*
淫紋。
完成。
術者。
確保。
施術方法。
確立。
安全装置。
実証済み。
そして。
正式会員への。
順次施術が。
とうとう始まる。
問題があるとすれば。
その技術を担当する女魔術師が。
会員の誰よりも。
新しい変態魔法を自分の身体で試したがっている。
完全なマッド女だったことくらいだった。




