第七十五話 爆乳令嬢の屋敷へ行ったら、メイドが旦那と騎士に縛られて遊ばれていました
数日後。
ユキ。
マコト。
エリー。
三人は、爆乳令嬢の屋敷を訪れていた。
家同士で見れば、別派閥の有力者同士。
だから表向きの理由も用意してある。
若手貴族間で進めている街道沿いの商取引について。
領地間の調整について。
次の社交期について。
非常に真面目。
非常に政治的。
だったのだが。
「……あれ?」
応接室へ入ったユキが首を傾げた。
いるのは爆乳令嬢一人。
「旦那さんは?」
「いないわ」
「騎士は?」
「いないわ」
「メイドちゃんも?」
「いないわ」
「全員いないじゃん」
「ええ」
爆乳令嬢は平然と紅茶を飲んでいた。
*
「出かけてるの?」
「いいえ」
「じゃあ、どこ?」
「上」
「上?」
その時だった。
かすかに。
二階から。
「オホッ……!」
三人。
止まる。
「……」
「……」
「……今の」
「うちのメイドよ」
爆乳令嬢。
平然。
「オホォッ……!」
また。
今度は少し大きい。
そのあと。
何かが軋む音。
荒い息。
「……何してんの?」
ユキが聞く。
「本人の希望で」
爆乳令嬢は。
一拍。
「旦那様と騎士に縛ってもらって、二人がかりで滅茶苦茶に遊んでもらってるところ」
「今日、私たち来るよね?」
「知ってるわよ」
「止めなかったの?」
「本人が今日がいいって言ったの」
*
エリーの眉が動いた。
「本人の希望なのですね?」
「もちろん」
爆乳令嬢が即答する。
「嫌なら止める。合図も決めてある。途中で水も休憩も入れる。それでも本人が『今日はできるだけ酷くしてください』って」
「……あの子」
エリー。
頭を押さえる。
心当たりしかない。
「それから」
爆乳令嬢がエリーを見る。
「あなたへの伝言もあるわ」
「私に?」
「終わったあと、部屋へ来てほしいそうよ」
「……何故です?」
*
爆乳令嬢。
紅茶を飲む。
「どうせ」
一拍。
「散々遊ばれて、ぐちゃぐちゃになった自分をあなたに見てほしいのよ」
「……」
「それで」
さらに。
「そのまま縛られたまま放置されて」
「はい?」
「目の前であなたが旦那様と騎士に遊ばれるところを見たいんでしょうね」
ユキ。
「ああ」
マコト。
「ああ……」
エリーだけ。
「何故お二人まで納得しているのです」
*
爆乳令嬢が肩をすくめる。
「寝取られ遊びでしょう?」
「メイドが?」
「ええ」
「自分を散々相手にした男二人が、その直後にエリーへ行くところを、縛られたまま見る?」
「たぶんそれ」
「趣味悪っ」
「あなたが言う?」
「私も好きだけど」
「でしょう?」
マコト。
小声。
「かなり良いシチュエーションですね」
「旦那様」
「はい」
「食いつかないでください」
「すみません」
*
二階。
「オホッ……! オホォォォッ……!」
また声。
そして。
しばらく静かになる。
少しして。
「まだ……大丈夫です……!」
聞こえた。
エリー。
天井を見る。
「元気ですね」
「いつも頑張ってるから」
爆乳令嬢が言った。
「今日はいいんじゃない?」
「……」
「朝から晩まで私の身の回りを整えて、屋敷のこともして、最近は事務局の手伝いまでしたがってる」
「それはそうですが」
「たまには」
一拍。
「何も考えず、好きなように壊される日があってもいいでしょう?」
エリーは。
少しだけ黙った。
「本人が望んでいるなら」
「でしょ?」
*
「というわけで」
爆乳令嬢が。
机の上を指す。
「お茶の準備はしてあるから」
「はい?」
「エリー」
「……はい」
「お茶入れて」
「私は客側なのですが」
「うちのメイドが使用不能なのよ」
「使用不能という言い方をしないでください」
「事実でしょう」
「あなたの旦那様と騎士がそうしたのでしょう!」
「本人が頼んだのよ」
*
結局。
エリーが立つ。
「もう」
茶器を確認する。
湯。
茶葉。
菓子。
「公爵令嬢様は?」
「飲む」
「旦那様は?」
「いただきます」
「あなたは?」
爆乳令嬢。
「当然」
「なぜ私が全員分を」
「事務局長だから?」
「関係ございません!」
*
それでも。
手際は完璧だった。
茶葉を量る。
湯を注ぐ。
蒸らす。
カップへ。
「どうぞ」
「ありがとう」
爆乳令嬢が一口。
「美味しい」
「当然です」
「やっぱり欲しいわね」
「何がです」
「あなた」
「差し上げません」
ユキ。
即答。
「まだ誰もあんたに聞いてない」
「エリーはうちの側室になる予定だから」
「知ってるわよ」
爆乳令嬢が笑う。
「だから欲しいのよ」
「駄目」
「ヤキモチ?」
「うん」
「即答ね」
*
二階から。
「オホォォォォッ……!」
かなり大きな声。
ユキ。
カップを持ったまま止まる。
「……これ聞きながらお茶するの?」
「もう慣れたでしょう?」
「まあ」
マコト。
「紅茶は美味しいです」
「旦那様も順応しないでください」
*
しばらくして。
音が止まった。
静か。
それから。
階段を下りてくる足音。
一人。
筋肉質な騎士。
上半身に服を着ながら。
「失礼」
「終わった?」
爆乳令嬢が聞く。
「一度休ませている」
「旦那様は?」
「まだそばにいる」
「本人は?」
「水を飲んだ。意識もはっきりしている」
エリー。
即座に聞く。
「怪我は?」
「ない」
「無理は?」
「止めるか確認したが、まだ続けたいそうだ」
「……」
エリー。
ため息。
「元気ですね、本当に」
*
騎士が。
エリーを見る。
「それと」
「何でしょう」
「あなたが来たら、必ず呼んでほしいと」
「……聞いております」
「かなり楽しみにしていた」
「それも聞きました」
ユキ。
にやにや。
「エリー人気者」
「公爵令嬢様」
*
さらに少しして。
細身の夫も降りてきた。
髪が少し乱れている。
「お待たせしました」
「メイドは?」
「休ませています」
「満足した?」
爆乳令嬢。
「かなり」
夫。
苦笑。
「最後まで『もっと』と言っていました」
「でしょうね」
「そして」
夫がエリーを見る。
「次は、あなたに来てほしいそうです」
「……」
*
爆乳令嬢が笑う。
「ほら」
「何がです?」
「私の予想通り」
「まだ何をさせるかまでは」
「分かるわよ」
爆乳令嬢は。
自分のメイドの性癖を。
完全に理解していた。
「あなたに、自分がどれだけ酷い有様になったか見せる」
「……」
「褒めてもらう」
「褒めるのですか?」
「たぶん本人はそれだけでも喜ぶ」
「……」
「それから」
爆乳令嬢。
夫。
騎士。
順番に見る。
「自分はそのまま」
一拍。
「あなたがこの二人と遊ぶところを見る」
エリー。
「私は参加するとまだ言っておりません」
「嫌?」
「……」
「嫌ならやめればいいわ」
爆乳令嬢。
そこだけは真面目だった。
*
エリーは。
夫を見る。
騎士を見る。
そして。
二階を見る。
「本人が、それを望んでいるのですね」
「ええ」
夫が答える。
「何度も確認した」
騎士も。
「終わった後も同じ希望だった」
「……そうですか」
エリー。
紅茶を一口。
「では」
「行く?」
「まず」
一拍。
「本人の様子を確認します」
*
階段を上る。
ユキ。
マコト。
爆乳令嬢。
三人。
見送る。
「……」
「……」
「……」
ユキが。
爆乳令嬢を見る。
「絶対ついていきたい顔してる」
「あなたもでしょう?」
「うん」
マコト。
「僕も」
二人。
見る。
「マコトは駄目」
「何故!?」
「メイドちゃん、エリーに見られるのが目的なんでしょ」
「……はい」
「そこは邪魔しない」
「分かりました」
*
爆乳令嬢が。
カップを持ち上げる。
「まあ」
「何?」
「私のメイドも」
一拍。
「相当、この会向きよね」
「間違いなく」
「事務局員志望なんでしょう?」
「そう」
「秘密も守る」
「うん」
「他人の性癖も否定しない」
「うん」
「自分の性癖は」
二階から。
小さく。
「エリー様……」
聞こえる。
爆乳令嬢。
「隠す気すらない」
「それな」
*
政治では。
別派閥。
屋敷へ来た理由は。
一応。
政治的な相談。
なのに。
その家の夫と騎士は。
朝からメイドの願望に付き合い。
そのメイドは。
散々遊ばれたあと。
今度は事務局長予定のエリーを呼びつけている。
そして屋敷の主人である爆乳令嬢は。
何事もないように。
紅茶を飲んでいた。
「この会」
ユキが言う。
「やっぱ人選基準、必要だね」
「ええ」
爆乳令嬢が頷く。
「普通の方を入れたら」
一拍。
「たぶん三日で逃げますわ」
後書き
後書きは書かれていません




