第七十三話 幼馴染の爆乳ライバル令嬢が、旦那と騎士とメイドを連れて別荘へやって来ました
公爵令嬢の所有となった別荘へ、また客が来た。
「……何で四人?」
玄関前に停まった馬車を見ながら、ユキが言う。
「私一人で来ると思った?」
降りてきたのは、ユキの幼馴染。そして昔から何かと張り合ってきたライバル令嬢だった。
胸元を強調したドレスでも隠しきれない爆乳。腰から下も豊かで、ユキとはまた違った方向に目立つ身体つきである。
その後ろから、細身で端正な夫。身体を鍛え上げた護衛騎士。そして主人付きの若いメイド。
合計四人。
「家同士の会談じゃないよね?」
「だったら父が来るわ」
「だよね」
「今日は私たちよ」
ライバル令嬢が笑う。ユキも笑う。
家で見れば、二人はそれぞれ別の大きな派閥に属する令嬢である。親世代だけを見れば、気軽に相談し合えるような関係ではない。
だが、本人たちは。
「久しぶり」
「この前の夜会以来?」
「その後、一回会ったでしょう」
「あれは会ったっていうか」
「何?」
「……遊んだだけじゃん」
「同じよ」
乱痴気騒ぎの仲間だった。
*
応接室。
ユキ。
マコト。
エリー。
向かいには、爆乳ライバル令嬢。細身の夫。筋肉質な騎士。付き添いのメイド。
普通なら領地、派閥、婚姻、王都情勢。
そういう話をする面子である。
「それで」
爆乳令嬢が紅茶を飲む。
「最近、手紙が増えているそうね」
「増えてる」
「うちにも来るわ」
「政治?」
「半分くらい」
「やっぱり」
「残りは?」
マコトが聞くと、爆乳令嬢が笑った。
「分かってるでしょう?」
*
空気が変わった。
ユキが爆乳令嬢を見る。
爆乳令嬢もユキを見る。
マコトは細身の夫と騎士を見る。
エリーはメイドを見る。
「……」
「……」
全員。
思い出した。
婚約発表の夜。
*
あの夜。
ユキと爆乳令嬢は、それぞれ背後から男に抱え上げられるように支えられていた。
互いに相手へもたれかかり、肩と肩を重ね、頬が触れそうな距離。
「オホッ……!」
「オホォッ……!」
背後の男たちの動きに合わせて身体が揺れる。
それでも、ライバル同士。
相手から手を離さない。
「そっち……まだ平気そうじゃん……!」
「あなたこそ……オホッ……!」
胸を撫でる。
腰へ腕を回す。
汗ばんだ肌を指先でなぞる。
どちらが先に余裕を失うのか確かめるように、互いを好き勝手にまさぐる。
「オホッ……! 待って……また……!」
「私も……!」
「オホォォォォッ……!」
二人の身体が同時に大きく震えた。
大量の水気が散る。
背後の男たちに支えられていなければ、そのまま床へ崩れてしまいそうなほどだった。
「……見た?」
「見たわよ……」
「そっちも酷いじゃん……」
「あなたに言われたくない……!」
互いが崩れる瞬間を。
すぐ隣で。
真正面から見る。
それが余計に競争心へ火をつけた。
「今の、あんたの方が酷かった」
「何を基準に言ってるのよ……!」
「声」
「あなたの方が大きかったでしょう!」
「じゃあ次で決着」
「望むところよ……!」
「オホッ……!」
すぐに。
また。
始まる。
*
そして、その最中。
爆乳令嬢は初めて、ユキの身体に普通の女性にはないものがあることへ気づいた。
「……あら」
「何」
「あなた、それ」
「今さら気づいた?」
一瞬だけ。
爆乳令嬢は目を丸くした。
だが。
本当に、それだけだった。
「へえ」
「……それだけ?」
「それ以外に何があるの?」
「普通もっと驚くだろ」
「今さら身体の一つや二つ増えていたくらいで、あなたに驚くと思う?」
「言い方!」
爆乳令嬢は、むしろ面白そうに笑った。
「それに」
「何」
「私とも、もっと遊べるじゃない」
「お前……」
*
次の瞬間。
「オホッ……!」
今度はユキの声が跳ねた。
「ちょっ……お前、そこ……!」
「何?」
「初見で普通に触るな……!」
「嫌なの?」
「嫌じゃないけど……オホッ……!」
「なら問題ないでしょう?」
爆乳令嬢は完全に面白がっていた。
ユキがどこまで平静を保てるのか。
どこで声が崩れるのか。
いつもの強気な顔を、どこまで崩せるのか。
「ほら」
「オホッ……!」
「さっきまで私のこと笑ってたでしょう?」
「うるさ……!」
「もう余裕ないじゃない」
「お前が……変なことするから……オホォッ……!」
「変なこと?」
爆乳令嬢が笑う。
「あなたの身体でしょう?」
「そういう意味じゃ……!」
「だったら我慢してみなさいよ」
「オホッ……!」
*
だが。
爆乳令嬢はそこで止めなかった。
「ねえ」
「何……?」
「これ」
「……」
「せっかくあるんだから、私にも使わせなさいよ」
「お前、本気?」
「嫌?」
「……嫌じゃない」
「なら決まり」
「勝手に決めんな……!」
言いながら。
ユキ自身も、もう断る顔ではなかった。
互いに身体を寄せる。
爆乳令嬢の腕がユキの首へ回る。
「オホッ……!」
「ほら」
「お前……!」
「もっと」
「オホッ……!」
「まだ我慢するの?」
「負けたくない……!」
「無理でしょう?」
「うるさ……!」
「ほら」
耳元で。
さらに煽る。
「イケ」
「オホッ……!」
「まだ?」
「お前……!」
「もっと無様に」
「オホォッ……!」
「私の前で」
「……っ」
「イケ!」
「オホォォォォッ……!」
ユキの身体が大きく震えた。
力が抜ける。
爆乳令嬢へ縋るように抱きつく。
「オホッ……! オホォッ……!」
爆乳令嬢は、その崩れた顔をすぐ目の前で見ながら満足そうに笑った。
「はい」
「……何」
「私の勝ち」
「……次」
「何?」
「次は絶対、あんたをもっと酷い顔にする」
「楽しみにしてる」
幼馴染。
ライバル。
そして。
互いの身体に何が増えていようが、もう大して気にもしない程度には。
酷い遊び仲間でもあった。
*
それだけではない。
別の夜会。
二人はごく普通に政治の話をしていた。
「お父様は、そちらの案に反対しているわ」
「知ってる」
「私は全部反対ってわけじゃないけど」
「じゃあ後で話そう」
「後で?」
「二人きりで」
「……政治の?」
「さあ」
*
結果。
人気のない廊下の奥。
互いにスカートを少し持ち上げる。
「本当にここでやる気?」
「言い出したのあんたじゃん」
「あなたが先に反応していたからでしょう」
「そっちも」
「……」
「……」
顔を見合わせる。
「短時間だからね」
「同感」
そのまま身体を密着させた。
誰か来れば、すぐに離れなければならない。
それが余計に悪い。
「オホッ……!」
「声……!」
「あんただって……オホォッ……!」
脚が震える。
壁へ手をつく。
互いの腰を支える。
「待って……また来る……!」
「私も……!」
「オホォォォォッ……!」
二人同時に崩れ。
足元まで大量の水気が散る。
「……これ、絶対ばれる」
「床は見ないことにしましょう」
「無理あるだろ」
それでも、しばらく後には何事もなかったようにドレスを整える。
「じゃあ政治の続き」
「普通に戻るなよ」
「あなたもでしょう」
*
マコトにも。
当然。
思い出がある。
爆乳令嬢の細身の夫。
そして筋肉質な騎士。
二人。
同時。
「……」
マコトが顔を覆う。
「旦那様?」
「思い出しました」
「何を?」
「二人に挟まれた夜を」
ユキが笑う。
「嬉しそうだったもんね」
「いや、その」
細身の夫がさらっと言った。
「私も楽しかったですよ」
マコト。
止まる。
「言わないでください」
「騎士殿もでしょう?」
筋肉質の騎士が少し黙る。
「……否定はしない」
マコトの顔がさらに赤くなった。
*
しかも。
夫と騎士。
この二人同士も普通ではない。
あの夜。
マコトの目の前。
細身の夫が筋肉質な騎士へ自分から身体を預けていた。
「……」
マコト。
見る。
「……」
ずっと見る。
「代官殿」
「はい?」
「見すぎです」
「すみません」
「嫌なのですか?」
「逆です」
「でしょうね」
夫が笑う。
騎士が呆れる。
「お前も煽るな」
「あなたも満更ではないでしょう」
「……」
そのやり取りだけで。
マコトの妄想は止まらない。
「最高……」
「声に出ていますよ」
*
エリーと、爆乳令嬢付きのメイドも似たようなものだった。
「エリー様」
「何でしょう」
メイドが今日も妙に嬉しそうに呼ぶ。
「今日は」
「はい」
「私を、どう扱ってくださいます?」
「ここへ来て早々に何を聞いているのです」
「だって」
メイドが少し笑う。
「あの夜は、散々ひどい呼び方をしてくださったでしょう?」
「それは」
「嫌ではありませんでした」
エリーが黙る。
「むしろ」
一歩、近づく。
「また、同じように扱われたいです」
「……」
ユキが横から。
「エリー、顔」
「公爵令嬢様は黙ってください」
*
一度思い出し始めると。
駄目だった。
ユキは爆乳令嬢を見る。
胸。
腰。
尻。
あの夜の声。
別の宴で、誰にも見つからないように遊んだ記憶。
身体がすぐに熱を持つ。
「……」
爆乳令嬢も同じだった。
「何?」
「別に」
「反応してる?」
「あなたこそ」
「……」
「……」
二人。
睨み合う。
だが。
顔は笑っている。
*
マコトも細身の夫を見る。
筋肉質の騎士を見る。
あの夜、二人に挟まれたこと。
さらに二人同士の絡みを間近で見たこと。
「……」
男側の身体が、あっさり反応した。
「旦那様」
「はい」
「分かりやすいです」
「仕方ないでしょう」
「何がです?」
「二人とも顔がいいので」
「そこですか」
*
爆乳令嬢も身体が熱い。
ユキも同じ。
胸が張り、肌が敏感になる。
あの夜のオホ声を思い出しただけで。
「……オホッ」
ユキ。
思わず漏れた。
「今、声出たわよ」
「聞くな」
「あなたもでしょう」
「……オホッ」
「ほら」
「黙りなさい」
少し姿勢を変えただけで。
互いに何を思い出しているのか。
全部分かる。
*
「……ねえ」
ユキが言う。
「何?」
「今日、政治の話しに来た?」
「一応」
「一応なんだ」
「あなたは?」
「……一応」
エリーが頭を抱えた。
「つまり、家同士では別派閥の中心に近い者同士」
「はい」
「若手の謎の横断組織でも中心人物同士」
「はい」
「その上、乱痴気騒ぎ仲間」
「そうなるね」
「何故そこだけ即答なのです」
*
爆乳令嬢が紅茶を置いた。
「でも、便利ではあるわ」
「何が?」
「親同士が対立していても、私たちは直接話せる」
「それはそう」
「政治で完全に一致する必要もない」
「うん」
「それでも」
少し笑う。
「困った時は、あなたに相談できる」
ユキも笑った。
「こっちも」
「でしょう?」
*
マコト。
細身の夫。
騎士。
エリー。
メイド。
全員、それぞれ妙な繋がりがある。
政治だけでは作れない。
家格だけ




