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種付けオッサンとビッチギャル ~二日に一度ヤらないと死ぬ二人の異世界転生~【注目15位、日間217位ありがとうございます】  作者: 黒瀬 量衡
第四章 腐女子男爵とエロゲ公爵令嬢

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第七十二話 謎の若手派閥について父に聞かれましたが、その長が自分たちだとは言えませんでした

 数日後。


 ユキとマコトは、公爵と夕食を共にしていた。


 場所は公爵邸の小食堂。公式の晩餐ではなく、家族やごく近しい者だけが使う部屋である。


「まずは」


 公爵が杯を置く。


「婚約発表の宴が無事に終わって良かった」


「……はい」


「はい」


 ユキとマコトは揃って答えた。


 無事。


 その言葉に。


 二人とも微妙な顔になる。


「何かあったか?」


「いいえ」


「何も」


 即答。


     *


「代官殿も、もう遠慮する必要はない」


 公爵がマコトを見る。


「正式な婚姻はまだ先だが、すでに家族の一員だと思っている」


「ありがとうございます」


「領地のことも聞いている。特別代官という立場になってからも、よく務めてくれているそうだな」


「周囲に助けられてばかりですが」


「それでよい。人を使える者が上に立つべきだ」


 普通の話。


 非常に。


 まともな話。


 だからこそ。


 二人は油断していた。


     *


「ところで」


 公爵が肉料理を切りながら言った。


「最近、妙な話を聞く」


「……妙な?」


 ユキの手が止まる。


「若い貴族たちの間で、一部、家の派閥を越えた協力関係ができているらしい」


「……」


 マコトも止まった。


「知っているか?」


「知らない」


 ユキ。


 早い。


「私も存じません」


 マコト。


 こちらも早い。


 公爵が二人を見る。


「そうか」


「うん」


「はい」


     *


「妙なのだ」


 公爵は気づいた様子もなく続ける。


「親同士が対立している家の子女まで、妙に仲がいい」


「へえ」


「そうなのですか」


「街道整備ではこちらに協力し、商取引では別の家へ話を通し、他方では自分の親の政策に反対することさえある」


「若い世代だからじゃない?」


「それだけならよいのだがな」


 公爵が首を傾げる。


「どうも横の連絡が異様に早い」


 ユキ。


 水を飲む。


 マコト。


 黙ってパンを食べる。


「誰か中心人物がいるのではないかと調べている者もいるが」


「へえ」


「まだ分からない?」


「分からん」


 公爵は少し面白そうに笑う。


「組織の名前すら分からん。そもそも本当に組織なのかも怪しい。代表者も、派閥の長も見えてこない」


「不思議だね」


「不思議ですね」


 二人とも。


 知っている。


 長らしいもの。


 自分たちである。


     *


「ただ」


 公爵が続ける。


「今のところ悪い動きではない」


「そうなの?」


「ああ。若い者同士で話を通し、親世代の対立を避けて実務協力する。結果だけ見れば有益だ」


 ユキとマコト。


 目を合わせる。


「なら、放っておけば?」


「私もそう思っている」


「うん」


「ただし」


「何?」


「妙に仲が良すぎる」


「……」


「宴席などでもな」


「……」


「何か共通の秘密でもあるのかもしれん」


「さあ」


 ユキが。


 ものすごく自然な顔で肉を食べた。


     *


 話題が変わったところで。


 ユキは以前から考えていたことを切り出した。


「お父様」


「何だ」


「婚約発表に使った別荘」


「ああ」


「あれ、私がもらっていい?」


「構わんぞ」


「早っ」


 ユキの方が驚いた。


「いくつもある別荘の一つだ。最近はほとんど使っていなかった。管理費もこちらで持っていたから、お前が使うならその方がよい」


「本当に?」


「ああ。婚姻後の私的な滞在先にでもすればいい」


「ありがとう」


 マコト。


 横で。


 嫌な予感。


 あの別荘。


 すでに。


 普通の私的滞在先ではない。


     *


「それと」


 ユキがもう一つ。


「エリーのこと」


「メイド長か」


「うん」


 マコトも姿勢を正す。


「以前話した通り、将来的には側室として正式に迎えたい」


 公爵はしばらく考えた。


「身分の問題か」


「そう」


「平民のまま側室とすることもできなくはないが、公爵家との関係を考えれば面倒が多いな」


「だから、どこかの貴族家の養子にできないかなって」


「分かった」


「できる?」


「候補を探しておこう」


 また。


 あっさり。


「そんな簡単?」


「名だけ必要なら、方法はいくらでもある。家格については調整が必要だがな」


 公爵がマコトを見る。


「代官殿も異存は?」


「ありません」


「なら進めよう」


 ユキ。


 少し笑う。


「エリー、驚くだろうな」


「先に本人へ話しておけよ」


「はい」


     *


 その日の夜。


 離れへ戻る。


 エリーへ報告。


「……私を?」


「うん」


「貴族家の養子に?」


「お父様が候補探すって」


「その後、側室として?」


「そう」


 エリー。


 しばらく。


 黙る。


「嫌?」


「いいえ」


「じゃあ」


「ただ」


 一拍。


「公爵令嬢様が、そこまで本気で考えていらしたことに少々驚いております」


「前にも言ったじゃん」


「言っておりましたが」


 エリーがマコトを見る。


「旦那様も?」


「もちろん」


「……そうですか」


 ほんの少し。


 笑った。


     *


 そして。


 もう一つ。


 三人で決めた。


「手紙」


 ユキが机を見る。


 すでに。


 かなりの束。


「こっちに集めよう」


「別荘へ?」


「うん」


「理由は?」


「この離れに置いておくと、お父様の使用人とかに見られる可能性あるし」


 マコトも頷く。


「別荘なら、あの夜の参加者も場所を知っていますし」


「管理人も限定できる」


 エリーが考える。


「では、三人宛ての私的な手紙のうち、あちら側の関係者から届いたものは別荘へ集約しましょう」


「決まり」


     *


 数日後。


 三人。


 改めて。


 別荘へ来た。


 婚約発表の宴以来。


 あの大広間を見ると。


 どうしても。


 三人とも。


 少し黙る。


「……」


「……」


「……」


「掃除、大変だったんだろうな」


「公爵令嬢様」


「ごめん」


     *


 使っていなかった書斎を。


 三人専用の手紙置き場にした。


 政治。


 領地。


 商取引。


 若手貴族同士の連絡。


 そういう手紙が。


 当然。


 集まる。


 はずだった。


「……」


 ユキ。


 一通目。


 読む。


「何と?」


 エリーが聞く。


「『先日はありがとうございました。婚約者と話し合った結果、今後は月に一度、互いの趣味を自由に試す日を設けることになりました』」


「……」


 次。


「『夫が友人の旦那様と非常に仲良くしております。二人を眺めながらお茶を飲むのが最近の楽しみです』」


 マコト。


「その続きは?」


「食いつくな」


     *


 エリー。


 別の手紙。


「こちらは」


「何?」


「『以前教えていただいた遊びを夫婦で試しました。夫が思った以上に素直で可愛らしく、今後も続ける予定です』」


 ユキ。


「詳細は?」


「読みません」


「気になる」


「読みません」


 マコト。


 また別の封筒を開く。


「これは……」


「政治?」


「『次回は男性だけで集まる予定ですが、代官殿もぜひ』」


「政治じゃない」


「参加したい」


「即答するな」


     *


 さらに。


「『今度、以前の女性陣だけで集まりませんか』」


「行く」


「公爵令嬢様」


「だって誘われてるし」


「こちらは」


 エリー。


「『前回より広い屋敷を用意できます。男女とも参加可能。宿泊設備あり』」


 三人。


 沈黙。


「……これ」


「はい」


「完全に次の乱交パーティの誘いでは?」


「そのようですね」


「政治的な手紙は?」


「こちらです」


 マコトが。


 一枚。


 持ち上げる。


「『西街道修繕について伯爵家との調整が完了しました。詳細は別紙。ところで次回の集まりですが――』」


「後半!」


     *


 開けても。


 開けても。


 似たようなものだった。


 前半。


 政治。


 後半。


 性癖。


 あるいは。


 前半。


 昨夜の感想。


 後半。


 政治。


 酷いものになると。


 最初から最後まで。


 何の政治もない。


「『あの夜に知り合った騎士と正式に交際を始めました』」


「おお」


「『婚約者も了承済みです』」


「おお?」


「『むしろ婚約者から、今度三人で遊びたいと言われています』」


「……」


 ユキ。


 手紙を置く。


「自由だなあ」


     *


 マコト。


 別の一通。


「『先日、妻が私を――』」


 読む。


 止まる。


「何?」


「……楽しそうですね」


「何が書いてあるの」


「個人的な報告です」


「さっきまで読み上げてたじゃん」


「これは僕だけで」


「マコト」


「はい」


 ユキが奪う。


 読む。


「……ああ」


「何です?」


 エリー。


 受け取る。


「……」


 返す。


「御夫婦が幸せなら何よりです」


「感想それだけ?」


     *


 結局。


 三人への手紙は。


 日に日に増えた。


 政治的な相談。


 三割。


 派閥を越えた調整。


 二割。


 変わった遊びを試した報告。


 二割。


 誰と誰が最近仲良くなったという報告。


 一割。


 次の集まりへの誘い。


 二割。


「百パーセント超えてない?」


「複数項目を一通に書いてくる人がいるから」


「なるほど」


     *


 ユキが。


 手紙の山を見る。


「お父様」


「はい」


「謎の若手派閥に中心人物がいるか分からないって言ってた」


「そうでしたね」


「これ見たら泣くかな」


 マコトが。


 一番上の封筒を見る。


 表には。


 非常に立派な貴族の筆跡。


 中身。


『次回の乱痴気会について』


「……」


「……」


「……」


 エリーが。


 無言で。


 封筒を裏返した。


「見なかったことにしましょう」


「いや、管理しないと」


「そうでした」


     *


 こうして。


 公爵令嬢所有となった別荘は。


 表向き。


 婚約した二人の私的な滞在先。


 そして。


 若手貴族たちが派閥を越えて連絡を取る。


 謎の拠点。


 さらに。


 三人へ届く。


 変態的な近況報告。


 相談。


 次の乱痴気騒ぎへの招待状。


 それらをまとめて保管する。


 もっと謎の場所になった。


「政治拠点としては」


 マコトが言う。


「かなり優秀ですよね」


「政治の手紙より変態報告の方が多いけどね」


「公爵令嬢様」


「事実じゃん」


 エリーが。


 机の上へ届いたばかりの新しい封筒を見る。


「また来ました」


「政治?」


「表に『至急』と」


「大事なやつじゃん。開けて」


 エリー。


 開く。


 読む。


 黙る。


「何?」


「……」


「エリー?」


「『今夜、急遽集まれる者だけで遊びませんか』」


「至急の使い方!」


 別荘の書斎には。


 今日も。


 新しい手紙が。


 積み上がっていった。


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