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種付けオッサンとビッチギャル ~二日に一度ヤらないと死ぬ二人の異世界転生~【注目15位、日間217位ありがとうございます】  作者: 黒瀬 量衡
第四章 腐女子男爵とエロゲ公爵令嬢

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第七十話 婚約発表の宴が、最終的に乱痴気騒ぎになりました

「とりあえず」


 小部屋へ逃げ込んだ三人は、しばらく黙ったあと。


 ユキが言った。


「全員、酔わせる?」


「駄目です」


 エリーが即答した。


「すでに判断がおかしくなっているところへ、さらに強い酒を入れてどうするのです」

「だよね」

「公爵令女様」

「言ってみただけ」


 マコトも頭を抱える。


「そもそも、原因が僕たちのフェロモンみたいなものなら、今の状態で誰かに何かさせるのはまずいですよね」

「その通りです」


 三人は会場を見る。


 距離感の壊れた貴族たち。


 腰へ手を回す男女。


 肩を抱き合う男同士。


 頬を赤らめて手を握る令嬢同士。


「……一回、頭冷やしてもらおう」


     *


 別荘中の窓を開けた。


 庭へ人を出した。


 酒を止め、水と軽食を配った。


 夜風に当て、座らせる。


 そして何より、三人自身がしばらく会場の中心から離れた。


 一時間ほどすると、甘い気配は明らかに薄くなっていた。


「……あ」


 伯爵令息の一人が、自分が別の男の腰へ腕を回していることに気づく。


「すまない」

「いや」

「離れるか?」

「……君は?」

「私は、別に嫌ではない」

「私もだ」


 結局。


 離れなかった。


 似たことが、あちこちで起きた。


「さっきまで私たち、おかしかったわよね」

「ええ」

「それでも、まだ私に触れたい?」

「……触れたいわ」

「私も」


 もちろん、帰りたい者は帰した。休みたい者は客室へ。まだ頭がぼんやりしている者には何もさせない。


 そこまでやった上で。


 自分の意思で残った者だけを見る。


「……結構残ったね」

「残りましたね」

「何で?」

「元々、この方々にも相当に興味がおありだったのでしょう」


 エリーが淡々と言った。


     *


 そして。


 政治の話が。


 本当に消えた。


「あなた、どこの派閥?」


 ではなく。


「あなた、すごく肩が広いのね」


「え?」


「礼服の上からでも分かる。好き」


 令息が目を丸くする。


「そんなことを言われたのは初めてだ」

「じゃあ私が最初ね」


 そのすぐ隣では。


「あなたの腰、綺麗」


 令嬢が別の令嬢の腰へ手を回していた。


「細いでしょう?」

「うん。なのにお尻はちゃんと丸い」

「あなたの胸も好きよ」

「本当?」

「近くで見たらもっと好きになった」


 二人。


 笑う。


 そして。


 そのまま距離がなくなった。


     *


「オホッ……!」


 どこかから。


 声。


 三人が。


 同時にそちらを見る。


「……始まった?」

「始まりましたね」

「本人たち、正気だよね?」

「確認済みです」


 さらに。


「オホォッ……!」


 別方向。


 そして。


「オッ……! オッ……!」


 男の短い息。


「……」


「……」


「……婚約発表の宴ですよね」

「今さら?」


     *


 男性側でも。


 もう。


 家名も立場も関係なかった。


「お前、腕すごいな」

「鍛えているからな」

「触っていいか?」

「……いいぞ」


 腕を掴む。


「硬い」

「お前は細いな」

「嫌か?」

「逆だ。腰が細いの、かなり好きだ」


「……男に言われるとは思わなかった」

「俺も言うとは思わなかった」


 少し。


 顔を見合わせる。


「顔も好きだ」

「お前、今それ言うのか」

「今だから言う」


 そして。


 近づく。


     *


 マコト。


 見る。


「……」


 完全に。


 見る。


「旦那様」

「はい」

「顔」

「何です?」

「嬉しそうです」

「いや、だって」


 向こうで。


 長身の騎士が、細身の貴族子弟の顎へ手を添えている。


「お前、睫毛長いな」

「そんなところを見るのか?」

「近いからな」

「じゃあもっと近くで見る?」

「……いいのか?」

「いいから言ってる」


 マコト。


 息を呑む。


「最高」


「旦那様」

「実物ですよ」

「旦那様」

「しかも両想いっぽい」

「マコト」

「はい」


 ユキが笑う。


「自分も行ってくれば?」

「……」

「その顔」

「……行ってきます」

「素直」


     *


 一方。


 女性側も。


 かなり率直になっていた。


「あなた、脚長いね」

「ドレスだと分からない?」

「分かってた。でも近くで見るともっと綺麗」

「あなたこそ、胸すごい」

「触って確かめる?」

「いいの?」

「今さら聞く?」


「オホッ……!」


 ほどなく。


 片方が声を上げる。


「そこ、好き?」

「好き……オホッ……!」

「可愛い」

「今それ言う……?」

「言いたいから」


 その少し向こうでも。


「お尻、すごく好き」

「さっきからそこばっかり見てたでしょう」

「ばれてた?」

「ずっと」

「怒った?」

「逆」


 一拍。


「嬉しかった」


     *


 そして。


 ユキとエリーのところへ来る令嬢も。


 政治的な計算など。


 ほとんど消えていた。


「公爵令女様」

「はい?」

「もう一度お聞きします」

「うん」

「今夜、私と遊んでいただけませんか」

「家のため?」

「違います」


 即答。


「あなたが綺麗だからです」

「……」

「胸も、腰も、顔も好きです。でも」


 令嬢が少し恥ずかしそうに笑う。


「さっきから人の胸ばっかり見ている顔も、ちょっと好きです」


「見てたのばれてる!?」


     *


 エリーにも。


「メイド長殿」

「何でしょう」

「あなたの身体、すごく好きです」

「ずいぶん直接的ですね」

「胸も」

「はい」

「お尻も」

「はい」

「あと、怖そうな顔も」

「それは褒めておりますか?」

「すごく」


 一歩。


 近づく。


「近くで見ると、本当に綺麗」

「……」


 エリー。


 少しだけ。


 言葉に詰まる。


「エリー照れてる」

「公爵令女様は黙ってください」


     *


 そして。


 女性たちは。


 ユキとエリーの身体に普通の女性にはない部分があると知っても。


 最初こそ驚いた。


「……え?」

「驚いた?」

「はい」

「嫌ならやめるよ」


 しばらく。


 見る。


「……いいえ」

「本当に?」

「むしろ」


 顔を赤くしたまま。


 一歩。


 近づく。


「もう、それより待てません」


 ユキがエリーを見る。


「だって」

「聞こえております」


     *


 待っている女性たちも。


 おとなしく待ってはいなかった。


「オホッ……!」


「あなた、声大きい……!」


「だって……!」


「もっと聞かせて」


「オホォォッ……!」


 別のところでは。


「胸、ほんと綺麗」

「あなたも」

「どこが?」

「全部」

「ずるい答え」

「じゃあ、特にお尻」

「そこなの?」


 二人で笑う。


 そのまま。


 また。


 声が崩れる。


「オホッ……!」


     *


 男性側も。


「オッ……! オッ……!」


 どこかで。


 誰かが限界を迎えるたび。


 別の男が。


「今の声、結構好きだ」

「言うな……」

「恥ずかしい?」

「当たり前だ」

「でも、また聞きたい」

「……お前もそのうち出すだろ」

「なら聞けよ」


 少しして。


「オッ……! オッ……!」


「ほら」

「……笑うな」

「笑ってない。好きだって言ってる」


     *


 マコトに至っては。


 もう。


 かなりご満悦だった。


 自分のところへ来る男もいる。


 その向こうでは。


 男同士が抱き合う。


 さらに向こう。


 別の男同士。


「……天国?」


「旦那様」


「いや、だって」


「旦那様」


「あの騎士、さっきから細身の方の腰しか見てないんですよ」


「旦那様」


「しかも本人に『腰が好き』って言った!」


「マコト」


「はい」


「婚約発表の日だからね?」


「分かってるけど」


 もう一度。


 見る。


「最高」


「駄目です、この人」


     *


 どこを見ても。


 政治の話など。


 完全に消えていた。


「あなたの髪、綺麗」

「触る?」

「うん」


「その胸板、好き」

「お前、そこばかりだな」

「好きだから仕方ない」


「首筋が綺麗」

「そんなところ褒められたことない」

「じゃあ覚えておいて。私は好き」


「尻、かなり好み」

「直接言うのね」

「今夜くらいいいでしょう?」

「……もっと言って」


 そして。


「オホッ……!」


「オホォォッ……!」


「オッ……! オッ……!」


 あちこちから。


 声。


 息。


 笑い。


     *


 いつの間にか。


 男側。


 女側。


 そんな区別すら。


 なくなっていた。


 別室から戻ってきた者。


 庭から戻った者。


 大広間に残っていた者。


 互いに顔を合わせ。


 さらに相手が増える。


「彼も入れていい?」

「いいよ」

「彼女も?」

「私は構わない」

「私も」


 そこまで来ると。


 三人にも。


 止める気力がなくなった。


「これ」


 マコトが。


 大広間を見る。


「完全に」


「言わないで」


「乱痴気騒ぎ」


「言った」


     *


 深夜。


 婚約発表の会場だった大広間は。


 完全に。


 別の場所になっていた。


 椅子は倒れている。


 テーブルは端へ寄せられている。


 絨毯の上。


 ソファ。


 壁際。


 庭へ続く扉の前。


 あちこちに。


 半裸。


 あるいは全裸の貴族たち。


「……」


 抱き合ったまま眠る男女。


 男同士。


 女同士。


 誰かの胸を枕にしている者。


 床へ転がっている者。


 疲れ果てているのに。


「……オホッ」


 まだ時々。


 余韻だけで声を漏らす令嬢。


 少し離れたところでは。


「……オッ……」


 男が。


 最後の息を吐くように声を漏らし。


「まだやるの?」

「無理だ……」

「じゃあ寝よ」

「お前の肩、借りる」

「どうぞ」


     *


 室内には。


 酒。


 香水。


 汗。


 それに。


 一晩中、大勢の男女が騒いだあとの濃い匂いが。


 完全に籠もっていた。


「……婚約発表だったよね」


 ユキが言う。


「はい」


「私とマコトの」


「はい」


「公爵家の」


「はい」


「何で乱痴気騒ぎになってんの?」


 マコトが。


 小さく答える。


「性神?」


「それで全部済ませようとしないでください」


 エリーが。


 深いため息をついた。


     *


 ただ。


 一時しのぎにはなった。


 帰りたい者は帰した。


 判断が戻っていない者は休ませた。


 そして残った成人たちは、自分の意思で残った。


 その結果が。


 これ。


「少なくとも暴走そのものは収まりました」


 エリーが言う。


「収まったって言うの、これ?」

「欲求不満で会場中が爆発するよりは」

「比較対象が酷い」


 マコトが。


 床に倒れている美青年二人をちらっと見る。


「……でも」


「旦那様」

「何も言ってません」

「顔に書いてあります」

「最高だったな、と」

「ユキまで!」


     *


 問題は。


 明日だった。


「全員」


 マコトが。


 大広間を見回す。


「自分が何したか、覚えてますよね」


「全員正気に戻してからですから」


「つまり」


「覚えているでしょう」


「……」


 三人。


 沈黙。


「逃げる?」


「公爵家の別荘です」


「無理か」


「無理です」


 エリーが。


 近くのソファを見る。


「私は寝ます」


「エリー!?」


「メイド長にも限界はございます」


 本当に。


 倒れ込む。


 残されたユキとマコトは。


 もう一度。


 大広間を見る。


「……マコト」

「何」

「明日の朝」

「うん」

「地獄だね」

「はい」


 婚約発表の宴は。


 とうとう終わった。


 だが。


 本当の地獄は。


 全員が目を覚ましてからだった。


続く


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