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種付けオッサンとビッチギャル ~二日に一度ヤらないと死ぬ二人の異世界転生~【注目15位、日間217位ありがとうございます】  作者: 黒瀬 量衡
第一章 種付けオッサンとビッチギャル

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第七話 薬草籠を孕ませていたらゴブリンですぞ

 翌朝。


「オホォ……」


「朝から元気ですなぁ」


 おじさんは安宿の硬いベッドで目を覚ました。


 腰の横には木杯。


 昨日、何度も種付けプレスした結果、また少し膨らんでいる。


「いやぁ。今日もいい艶ですなぁ。ドゥフフ」


「オホッ」


「しかし、おじさんは腰が痛い」


 身体を起こす。


「いたたた……」


 性神の加護で傷や疲労は回復する。


 だが、四十代後半の身体そのものが若返るわけではないらしい。


「異世界でも中年は中年ですなぁ」


 顔を洗う。


 手をネクタイで拭く。


 眼鏡にも水滴。


 同じネクタイで拭く。


「うむ」


 宿の主人が通りかかった。


「……昨日、それ洗ってなかったか?」


「洗いましたぞ」


「もう汚してるじゃねえか」


「布とは使うためにあるものですなぁ」


「ネクタイだろ?」


「相棒ですぞ」


「知らん」


 そして。


「オホォォォッ!」


「おや」


 木杯が震えた。


「これは……」


 ぽこん。


「朝からですかなぁ」


 小さな木杯が一つ。


 ぽこん。


 二つ。


 ぽこん。


 三つ。


 宿の主人が固まった。


「……何だ?」


「出産ですなぁ」


「何の?」


「木杯の」


「帰ってくれ」


「まだ宿代払ってませんぞ!?」


「もっと悪い!」


 結局、三つの子木杯は宿の主人へ譲った。


「普通に杯として使えますぞ」


「本当に普通なんだろうな?」


「たぶん」


「たぶん!?」


「親ほど変な挙動はしないようですなぁ」


「親ほど?」


「細かいことは気にしない方が長生きしますぞ」


 親木杯だけ腰へ。


 水差しから水を注ぐ。


 淡く光る。


 ただの井戸水が、甘く澄んだ甘露へ変わった。


「いただきますぞ」


 一口。


「いやぁ~、朝の一杯が染みますなぁ」


「オホォ……」


「お前の声さえなければな」


 宿の主人まで同じことを言った。


     *


 冒険者ギルド。


「おはようございますぞ!」


「おはようございます」


 昨日の受付嬢。


「いやぁ、今日もお綺麗ですなぁ。ドゥフフ」


「ありがとうございます。本日は?」


「強い」


「はい?」


「いやぁ、鉄壁の接客ですなぁ」


「依頼をお探しですか?」


「お願いしますぞ」


 初心者向け依頼。


 倉庫整理。


 掃除。


 家畜小屋修理。


 薬草採取。


「やはり冒険者といえば採取ですかなぁ」


「昨日まで冒険者ではなかった方が言う台詞ではありませんが……初心者にはおすすめです」


 必要な薬草を教わる。


 葉の形。


 赤い筋。


 茎の細かな毛。


「似た毒草がありますので注意してください」


「毒ですかな?」


「はい」


「では間違えても、この木杯へ煮汁を入れれば――」


「最初から間違えないでください」


「ごもっとも」


 採取用の籠も必要だった。


「籠はお持ちですか?」


「ありませんなぁ」


「貸出用があります」


「借り物……」


 おじさんの顔が曇った。


「どうされました?」


「いやぁ」


 他人の物。


 これはまずい。


「使用後に返却する籠ですかな?」


「はい」


「それでは……」


 おじさんは小声になった。


「何か、捨てる予定の籠はありませんかな?」


「捨てる?」


「壊れかけとか」


「なぜです?」


「おじさんが使いますと、場合によっては返却が難しくなりましてなぁ」


「……」


 受付嬢は木杯を見る。


「オホォ……」


「なるほど」


「理解が早くなりましたなぁ」


「こちらに一つ、底の編み目が切れた古い籠があります。処分予定ですので差し上げても構いません」


「ありがたい!」


 古い籐籠。


 底に穴。


 取っ手も片方が割れている。


「これなら、おじさんの所有物ですな?」


「はい」


「完璧ですぞ」


「何が完璧なのかは聞かないことにします」


「受付のお姉さん、学習が早いですなぁ」


     *


 同じ頃。


「これとこれね」


「はい」


 少し離れた受付ではギャルも薬草採取の説明を受けていた。


 背中には雄化木剣。


 布でぐるぐる巻き。


 しかし。


「……」


 じわ。


「また染みてる」


「どうされました?」


「何でもない!」


 白い布に白濁した染み。


「昨日替えたばっかなんだけど……」


「オホォ……」


「お前は黙ってて!」


 受付嬢が目を逸らした。


「北側の森へは入らないでください」


「何いるの?」


「ゴブリンやウルフなどです」


「ゴブリン!」


「入らないでください」


「見るだけ」


「駄目です」


「ちょっとだけ」


「駄目です」


「分かったって」


「本当ですか?」


「信用なくない?」


「昨日、町外れの資材小屋から非常に大きな声が聞こえたという報告がありまして」


「……」


「何かご存じですか?」


「知らない」


「そうですか」


「絶対その顔信じてないじゃん!」


 木剣。


「オホッ!」


「お前のせいで説得力なくなるんだって!」


     *


「いやぁ~、平和ですなぁ」


 街道沿い。


 おじさんは薬草を探していた。


「これは違う」


 次。


「これも違う」


 次。


「お」


 葉の裏。


 赤い筋。


 茎に細かな毛。


「これですなぁ」


 採る。


 籠へ。


 だが。


「……」


 籠を見る。


 穴がある。


「やはり使いにくいですなぁ」


 薬草が一本落ちた。


「修理できればいいんですが」


 おじさんにそんな技術はない。


 そして。


 性神の祝福には。


 別の方法がある。


「……」


 籠。


「……」


「いやいや」


 おじさんは首を振った。


「仕事中ですぞ」


 薬草を採る。


 三分。


 籠を見る。


「……」


 身体の奥。


 むずむず。


「またですかなぁ」


 四十八時間には余裕がある。


 昨日だって、木杯を何度も相手にした。


 だが。


 性神の祝福はそんなことを気にしない。


「やりたいですなぁ」


 自分で言った。


「ドゥフフ……救いようがありませんなぁ」


 籠。


 大きい。


 中空。


 置けば仰向け相当にできる。


「しかもおじさんの所有物」


 誰にも迷惑はかからない。


「……」


 十分後。


 街道から少し離れた茂み。


「オホッ……!」


「やはりそうなりましたなぁ!」


 籠が淡く光った。


 切れていた編み目が修復されていく。


 割れた取っ手まで繋がる。


 艶のある丈夫な籐籠へ。


「性能向上ですなぁ」


「オホォォォ……!」


 成人女性の艶っぽい声。


「声までつきましたか」


 透明な液体が滴る。


「これで薬草が濡れるのは困りますなぁ」


 しかし。


 籠の方から。


 ころん。


 仰向け相当に転がった。


「……」


「オホッ」


「誘っております?」


「オホォ……」


「ドゥフフ」


 おじさんは眼鏡を押し上げた。


「では、お言葉に甘えまして」


     *


 ズンッ!


「オホォォォッ!」


 鳥が飛び立った。


「いやぁ、森は静かですから響きますなぁ!」


 ズンッ!


「オッホォォォォォッ!」


「薬草採取中に何をしているんですかなぁ、おじさんは!」


 自分で言う。


 だが止めない。


 昨日。


 ギャルに見られながらやったせいなのか。


 妙に調子が出る。


「……お嬢さんが見ていないのが少し物足りませんなぁ」


 言った瞬間。


「それは気持ち悪すぎますぞ、おじさん!」


 自分でツッコんだ。


 ズンッ!


「オホォォォォッ!」


 さらに。


「出ますぞ」


「オホッ!」


「濃いのが……オッ! オッ! オッ!」


「オッホォォォォォォッ!」


 籠が激しく震えた。


 液体が飛ぶ。


「ドゥフフ……」


 静かになる。


「さて」


「オホォ……」


「抜かずの二回戦ですかなぁ」


「オホッ!」


「元気ですなぁ!」


 また始めた。


 そして。


 三回。


 四回。


「いやぁ……昨日の見せ合いから回数が増えておりませんかな?」


「オホォォォッ!」


「おじさんも人のことを言えませんがなぁ!」


     *


 しばらくして。


 おじさんは薬草採取へ戻った。


 籠は。


 膨らんでいる。


「また孕みましたなぁ」


「オホォ……」


「ですが」


 薬草を入れる。


 底は抜けない。


 多少乱暴に扱っても形が崩れない。


「性能は最高」


「オホッ」


「挙動は最低」


 いつもの結論。


「これは依頼が終わったら誰かへ譲りますかなぁ」


 籠までずっと持ち歩く気はない。


 木杯だけで十分である。


「明日には何か産むでしょうしなぁ」


 薬草を探す。


 もう一つ。


 また一つ。


「意外と楽しい仕事ですなぁ」


 その時だった。


「……ん?」


 妙な感じ。


 昨日から時々ある。


 誰かが。


 妙に意識へ引っかかる。


「……あのお嬢さんですかなぁ」


 方向は分からない。


 距離も分からない。


 ただ。


 近くにいるような気がする。


「いやいや」


 頭を振る。


「おじさん、若い娘を気にしすぎですなぁ」


 薬草へ戻る。


     *


「よし」


 ギャルの袋も半分以上埋まっていた。


「普通に余裕じゃん」


 木剣を背負ったまましゃがむ。


 採る。


 入れる。


「冒険者向いてんじゃない? うち」


 まだ薬草を採っているだけ。


 だが本人は満足している。


「……」


 ふと顔を上げる。


「また」


 あの感じ。


 おっさん。


 いや。


「なんであいつ出てくんの」


 昨日。


 見せ合った。


 最悪だった。


 脂っこい。


 腹たるんでる。


 ハゲかけ。


 デブ。


 チビ。


 好みじゃない。


 なのに。


 あの妙に騒々しい種付けプレスが頭から消えない。


「……マジ最悪」


 木剣。


「オホォ……」


「お前は関係ないから」


 すると。


 茂み。


 ガサッ。


「ん?」


 緑色の小柄な影。


 棍棒。


「ギィ……」


「……」


 ギャルの目が輝いた。


「ゴブリンじゃん!」


 木剣を抜く。


 布は巻いたまま。


「ついに魔物!」


「ギィィ!」


 ゴブリンが襲いかかる。


「よっ!」


 木剣を横へ振った。


 ゴッ!


「ギャッ!」


 ゴブリンが数メートル飛んだ。


「……」


 ギャル。


 木剣を見る。


「強っ」


「オホッ!」


「お前マジで育ってるじゃん!」


 ゴブリンは倒れた。


 だが。


 ガサ。


 ガサガサ。


「……え」


 一匹。


 二匹。


 三匹。


「ちょ」


 さらに奥。


「増えすぎじゃない?」


     *


「いやぁ、順調ですなぁ」


 おじさんは薬草を採りながら歩いていた。


 いつの間にか。


 街道からかなり離れていた。


「……これは」


 周囲を見る。


「少し奥へ来すぎましたかな?」


 ガサッ。


「ドゥフ?」


 緑色。


 小柄。


 棍棒。


「ギィ」


「……」


 ゴブリン。


「いやぁ」


 おじさんは眼鏡を押し上げた。


「受付のお姉さんに危ない場所へ入るなと言われたばかりなんですがなぁ」


「ギャアッ!」


 走ってくる。


「待って! おじさん話し合いを希望しますぞ!」


 棍棒。


 ゴッ!


「いったぁぁぁぁぁぁぁ!」


 腕に直撃。


「普通に痛い!」


 おじさんは逃げた。


「神様! おじさん、もっと強いと思ってましたぞ!」


「ギィィ!」


「いやいや! 追わないで!」


 走る。


 腹が揺れる。


「はぁ! はぁ!」


 革靴。


 土。


「走りにくいですぞ!」


 木の根。


「ドゥフッ!」


 転倒。


 眼鏡が飛んだ。


「眼鏡ぇ!」


 視界。


 ぼやぼや。


「これは非常にまずいですなぁ」


 ゴブリンの影。


 棍棒が上がる。


 その瞬間。


「そこ邪魔!」


 聞き覚えのある声。


 ぶんっ。


 ゴッ!


「ギャアッ!」


 ゴブリンが吹っ飛んだ。


「……ドゥフ?」


「は?」


 おじさんは地面を探る。


「眼鏡……眼鏡……」


「あったよ」


「おお!」


 渡された。


「ありがとうございますぞ」


 そして。


 ネクタイで拭く。


「今地面に落ちただけじゃん!」


「汚れましたからなぁ」


「そのネクタイの方が汚いって!」


 眼鏡をかける。


 金髪。


「お嬢さん!」


「なんでおっさんいんの!?」


「それはおじさんの台詞ですぞ!」


「薬草採取!」


「おじさんもですなぁ!」


 二人。


 黙る。


「……」


「……」


「同じ依頼?」


「そういうことですかなぁ」


「マジ?」


「偶然ですなぁ」


 まだ。


 互いの方向が分かるわけではない。


 身体が相手を追跡できるわけでもない。


 ただ同じ場所へ来た。


 それだけ。


「つか」


 ギャルが膨らんだ籠を見る。


「何それ」


「薬草籠ですぞ」


「なんで孕んでんの?」


「ドゥフフ」


「今日もうやったの!?」


「四回ほど」


「は!?」


「昨日お嬢さんに見られてから、妙に回数が増えましてなぁ」


「うちのせいにすんな!」


「お嬢さんは?」


「……」


「その木剣、また布が濡れておりますが」


「見るな!」


「ほほう」


「二回だけ!」


「やっておりますなぁ」


「お互い様じゃん!」


「ドゥフフ」


「ムカつく!」


 その時。


「ギィィィ!」


 倒したゴブリンが立ち上がった。


「うるさっ!」


 ギャル。


 木剣。


 ゴッ!


 今度は完全に沈黙。


「……」


 おじさんは口を開けた。


「お嬢さん」


「何?」


「木剣、かなり危険な強さになってません?」


「だよね」


「昨日より明らかに」


「育ってる」


「伝説級、本当に行くのでは?」


「うちも思ってる」


 だが。


 ガサ。


 ガサガサ。


 周囲の茂みが揺れた。


 一匹。


 二匹。


 三匹。


 五匹。


 もっと。


「……」


「……」


 おじさんとギャルは並んだ。


「お嬢さん」


「何」


「薬草採取ですよなぁ?」


「そのはず」


「ゴブリン討伐依頼では?」


「ない」


「ですよなぁ」


 ギャルが木剣を構える。


「おっさん、戦えんの?」


「ドゥフフ」


「その笑い何」


「まったく戦えませんぞ」


「はぁ!?」


「会社員歴二十年以上!」


「役に立たな!」


「しかし」


 おじさんは孕んだ籠を大事そうに木の陰へ置いた。


 そして落ちていた太い枝を拾う。


「お嬢さん一人に任せて逃げるほど、おじさんも恥知らずではありませんぞ」


「へー」


「少しは見直しましたかな?」


「いや別に」


「即答!」


 ゴブリンたちが走る。


「来た!」


「いやぁぁぁぁ! やっぱり怖いですぞぉぉぉ!」


「カッコつけた直後にそれ!?」


 ギャルが木剣を振り抜く。


 ゴッ!


 一匹が飛ぶ。


 おじさんは枝を振る。


「えい!」


 すかっ。


「当たりませんぞ!」


「ちゃんと見て!」


「眼鏡かけておりますぞ!」


「そういう意味じゃない!」


 異世界生活。


 冒険者としての初依頼。


 本来なら。


 ただの薬草採取だった。


 だが。


 おじさんの背後では。


「オホォォォ……」


 孕んだ薬草籠が鳴き。


 ギャルの手の中では。


「オホォォォッ!」


 伝説へ向かって育ち始めた木剣が鳴いている。


 そして目の前には。


 大量のゴブリン。


「お嬢さん!」


「何!」


「これ、生きて帰れますかなぁ!」


「うちに聞くな!」


 ゴブリンの群れが、一斉に襲いかかってきた。

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