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種付けオッサンとビッチギャル ~二日に一度ヤらないと死ぬ二人の異世界転生~【注目15位、日間217位ありがとうございます】  作者: 黒瀬 量衡
第三章 種付けオッサンとビッチギャル

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第六十七話 明日、神の獣の子を産むことになったので、オッサンに先に謝っておきました

「オッサン」


「はい?」


「私さ」


「はい」


「今度、神の獣と交尾することになった」


「……はい?」


 薬草を摘んでいたオッサンの手が止まった。


「もう一度お願いできますかな」


「神の獣と交尾する」


「聞き間違いではありませんでしたな」


「うん」


     *


 話が来たのは教会だった。


 性神に関係する神獣が、かなり久しぶりにこの地方へ現れたらしい。


「二匹いるんだって」


「どのような?」


「なんかすげえムキムキ」


「そこが最初に来るのですな」


「だってムキムキなんだもん」


 姿は人に近い。


 二本の脚で立ち、腕もあり、人と同じように言葉も理解する。


 ただし。


「片方が馬みたいな頭」


「ほう」


「もう片方が牛みたいな頭」


「ほう……」


「身体だけ見たら、どっちも筋肉すげえ男」


「性神様の御関係は、どうしてこう……」


「分かりやすいよね」


「大変分かりやすいですな」


 単なる動物ではない。


 古くから性神に仕える、知性を持った雄の神獣。


 教会に残る古い記録にも、何度か同じような神事が書かれていた。


     *


「でね」


「はい」


「こいつら、代替わりするんだって」


「代替わり?」


「うん」


 長く生きた神獣は、ある時期になると性神の祝福を持つ女性を選ぶ。


 そこで交わる。


 すると。


「その場で孕むらしい」


「その場で?」


「うん」


「そしてですかな」


「腹もその場で大きくなる」


「はい」


「産む」


「早い!」


「超早い」


 しかも。


 二頭なら。


 それぞれの子を一人ずつ。


「つまりギャルさんが」


「馬頭の方の子と、牛頭の方の子を産む」


「一日に?」


「たぶんその場で」


「性神様!」


「私に言うなよ」


     *


 そして。


 子が無事に生まれると。


 古い神獣は役目を終える。


「死ぬみたい」


「……」


「で、産まれた子が次の神獣になる」


「なるほど」


 オッサンは少しだけ真面目な顔になった。


「では」


「うん」


「単なる遊びではないのですな」


「そだね」


「命を繋ぐための神事」


「そんな感じ」


 親が死ぬ。


 子が後を継ぐ。


 また長い年月。


 性神に仕える。


 そして次の代替わりの時。


 また別の誰かへ命を託す。


「意外とちゃんとした話ですな」


「だろ?」


「性神様なのに」


「そこは余計」


     *


 ギャルは。


 そこで。


 急に薬草を摘む手を止めた。


「……でさ」


「はい?」


「だから」


「はい」


「明日なんだよね」


「何が?」


「その神事」


「明日!?」


「うん」


「急ですな!」


「神獣の方にも時期があるんだって」


「なるほど」


「だから明日」


 ギャルは。


 自分の腹を見る。


「私、他の雄に種付けされて」


「……」


「孕んで」


「……」


「そのまま子供産む」


 オッサンが黙った。


     *


「なんかさ」


「はい」


「変なんだけど」


「何がですかな」


「別にオッサンと私、恋人じゃないじゃん」


「はい」


「付き合ってもない」


「はい」


「私が誰とするかも自由」


「もちろん」


「オッサンだって他の女と散々してるし」


「ドゥフフ」


「今笑うところじゃねえ」


「すみません」


 ギャルは。


 少し考える。


「獣人とやる時とか」


「はい」


「全然こんなこと思わないんだよ」


「ほう」


「楽しいし」


「はい」


「オッサンが女戦士とやってても、ちょっと寝取られっぽくて面白いくらい」


「昨日のお話ですな」


「うん」


「ですが今回は?」


「違う」


     *


 交尾する。


 そこまでは。


 別にいい。


 ギャルにとっては、今さらだった。


 問題は。


「孕むんだよ」


「……」


「確実に」


「はい」


「他の雄の子」


「はい」


「しかも産む」


「はい」


「明日」


「……はい」


 それを考えた途端。


 妙に。


 オッサンの顔が浮かんだ。


「何でだろ」


「おじさんに聞かれましても」


「なんか悪いことする感じがして」


「……」


「だから」


 ギャルが。


 オッサンを見る。


「ゴメン」


     *


「何故謝るのですかな?」


「知らん」


「ギャルさんは、おじさんの妻でも恋人でもありませんぞ」


「分かってる」


「それに、神獣さんとの神事なのでしょう?」


「分かってる」


「御本人が納得されているのなら」


「納得してる」


「なら問題は」


「だから」


 ギャルが。


 少し苛立った。


「理屈じゃねえんだって」


「……」


「明日」


 自分の腹を。


 軽く叩く。


「ここにオッサン以外の雄の子が入って」


「はい」


「大きくなって」


「はい」


「私が産む」


「はい」


「そう考えたら」


 一度。


 言葉が止まった。


「なんか」


 もう一度。


「ゴメンって言っときたくなった」


     *


 オッサンは。


 しばらく何も言わなかった。


「……」


「何だよ」


「いやぁ」


「何」


「おじさんも」


「うん」


「少々変な気分になりましてな」


「ほら」


「何がほらなのですかな」


「オッサンも嫌なんじゃん」


「嫌というより」


「じゃあ何」


「……」


 オッサンは。


 眼鏡を直した。


「ギャルさんが」


「うん」


「本当に他の雄の子を孕んで産むと聞きますと」


「うん」


「胸の辺りが」


「うん」


「もやっと」


「それ嫉妬じゃね?」


「違いますぞ!」


「即答すんな」


「おじさんとギャルさんは恋人では!」


「はいはい」


「本当に!」


     *


 ギャルが笑う。


「じゃあさ」


「はい」


「私が明日」


「はい」


「馬頭のムキムキと牛頭のムキムキに種付けされて」


「言い方!」


「二人の子を孕んで」


「はい……」


「腹パンパンになって」


「はい」


「二人の子供産んで帰ってきても」


「はい」


「全然平気?」


「……」


「オッサン?」


「……神事ですからな」


「質問に答えろ」


「ドゥフフ」


「誤魔化した」


     *


「でも」


 オッサンが言った。


「一つだけ」


「何?」


「帰ってきますよな?」


「は?」


「神事が終わりましたら」


「当たり前じゃん」


「本当に?」


「子供は神獣として教会側が面倒見るんでしょ。私は産むところまで」


「そうですか」


「終わったら帰るよ」


「そうですか」


 オッサンは。


 露骨に。


 ほっとした。


 ギャルが。


 それを見る。


「……」


「何ですかな」


「いや」


「はい?」


「なんか今」


 にやり。


「彼氏みたいだった」


「違いますぞ!」


「私が他の男の子供産みに行くって聞いて不安になって」


「神獣です!」


「帰ってくるって聞いて安心した」


「安全確認ですぞ!」


「へえ」


「ギャルさん!」


     *


 少し歩く。


 二人で薬草を摘む。


 いつもの時間。


 いつもの草原。


 明日になれば。


 ギャルは。


 ここにはいない。


 神殿で。


 二頭の神獣と。


 その命を次へ繋ぐ。


「オッサン」


「はい?」


「やっぱゴメン」


「ですから」


「言わせて」


「……」


「何となくだから」


「はい」


「明日、他の雄に種付けされて」


「はい」


「孕んで」


「はい」


「産んでくる」


「はい」


「ゴメン」


     *


 オッサンは。


 少しだけ困った顔をした。


 そして。


「では」


「うん」


「おじさんも」


「何?」


「いってらっしゃい、と言っておきますかな」


「まだ今日だけど」


「明日は会えないかもしれませんからな」


「ああ」


「いってらっしゃい」


「……」


「無事に帰ってきてくださいな」


 ギャルは。


 少しだけ黙る。


「うん」


「はい」


「帰ってくる」


「はい」


「絶対」


「では」


「何?」


「帰ってきたら」


 オッサンが。


 少しだけいつもの顔に戻る。


「おじさんにも構っていただければ」


「……」


「ドゥフフ」


「結局それかよ豚!」


     *


 ギャルは笑った。


 だが。


 何故か。


 少しだけ安心した。


 恋人ではない。


 約束もしていない。


 互いに他の相手もいる。


 それでも。


 明日。


 別の雄の子を孕んで。


 別の雄の子を産む。


 その前に。


 オッサンへ。


 ゴメンと言っておきたかった。


 そして。


 帰ってくると。


 約束しておきたかった。


「オッサン」


「はい?」


「帰ってきたらさ」


「はい」


「いっぱいしよ」


「ドゥフフ!」


「その笑い方したから今のなし」


「何故ですかな!?」


「キモいから」


「ギャルさん!」


 いつもの声が。


 草原に響いた。


 明日。


 ギャルは。


 神の獣の子を産む。


 それでも。


 その次の日には。


 たぶんまた。


 この気持ち悪いオッサンと。


 いつものように薬草を摘んでいる。


 何となく。


 そう思えた。


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