第五十九話 腐女子代官を爆乳メイド長に奪わせたら、公爵令女のBL妄想まで完全に壊れました
「やりたいシチュエーションがありますわ」
離れの寝室で、ユキが唐突にそう言った。
マコトは仕事帰りで、まだ代官としての服を着たままだった。エリーも給仕を終えたばかりで、いつものメイド服である。
「嫌な予感しかしない」
「旦那様、私もです」
「聞いてくださいませ」
「はい」
ユキは妙に真剣な顔で、まずマコトを指さした。
「マコトは、その格好のまま」
「普通の代官服ですけど」
「私の脳内では男装です」
「私は男ですよ?」
「そこは雰囲気」
「雑だなあ」
続いてエリーを指さす。
「エリーは、ずっとマコトが女だと思っていたメイド」
「実際には?」
「最近、男としての身体まで手に入れた爆乳メイド」
「はい」
「そして私は」
「公爵令女」
「ずっと女だと思われていたのに、今では男としての身体も持っている公爵令女」
マコトが嫌な予感をさらに強めた。
「それで?」
ユキが笑った。
「この三人で、BLとエロゲをぐちゃぐちゃに混ぜたいですわ」
*
「最近ですね」
ユキはベッドへ腰掛けたまま続けた。
「私、BLもありだと思うようになったんです」
「誰の影響でしょうね」
「間違いなくマコト」
「やっぱり」
「以前なら、男同士を見て何が楽しいんだと思っていたのに」
「はい」
「今は」
エリーを見る。
「気の強い年上に、男が徹底的に翻弄されるの」
「……」
「ちょっと分かる」
マコト。
目が輝いた。
「ユキ!」
「何です?」
「成長した!」
「その方向の成長を喜ばないでくださいませ」
エリーが呆れる。
「それで私が旦那様を翻弄するのですか」
「そう」
「どういう設定で?」
「マコトは、エリーをずっと自分に仕える女だと思っていた」
「実際そうでしたね」
「なのに、ある日」
ユキがにやりとする。
「そのメイドに男としての身体があると分かる」
「ありますね」
「しかも、そのメイドに自分の四十八時間の条件まで握られる」
マコトの表情が。
急速に腐女子になった。
「……それ、いい」
「でしょう?」
*
「そして私は」
ユキが自分を指す。
「それを見ながら楽しむ」
「最低ですね」
「褒め言葉?」
「違います」
「マコトが」
ユキは楽しそうに続ける。
「ずっと女だと思っていたエリーに、男として徹底的に翻弄される」
「はい」
「しかも」
「はい」
「ずっと女だと思っていた私まで、それを見て興奮している」
「……」
「そしてマコトは」
「……」
「二人から男としての反応を全部見られる」
マコトの耳まで赤くなった。
「ユキ」
「何?」
「それ」
「はい」
「かなり好き」
「でしょうね」
*
「旦那様」
エリーがマコトを見る。
「本当に?」
「はい」
「かなり意地悪な内容ですが」
「それがいい」
「途中で嫌になったら?」
「止める」
「必ず?」
「はい」
ユキにも確認される。
「私が横から煽るのも?」
「お願いします」
「エリーに散々可愛がられてるところを、私に眺められるのも?」
「むしろそこが大事」
「腐女子」
「元!」
「今もですわ」
*
始まると。
マコトの上半身の服は、そのまま残された。
「ここ重要ですの」
「何で?」
「服を着た代官が」
ユキが指を立てる。
「下だけ乱されて、普段自分へ仕えているメイドに立場を逆転される」
「ユキ」
「何?」
「分かってきましたね」
「褒められても困ります」
エリーはマコトの背後へ回った。
「旦那様」
「はい」
「では」
耳元へ。
「今日は私にお任せくださいませ」
「……はい」
その声だけで。
マコトの身体が反応する。
*
エリーは背後からマコトを抱え、男としての身体も含めて、逃げ場がないほど近くへ身体を寄せた。
ユキは少し離れたところから。
それを。
完全に楽しんで見ている。
「マコト」
「何……?」
「今どんな気分?」
「かなり」
「かなり?」
「BL」
「やっぱり!」
「だって!」
背後には。
普段はメイド長。
しかし今は。
男としての身体まで持っている年上。
しかも。
マコトの四十八時間の秘密まで知っている。
「旦那様」
「はい……!」
「私なら」
エリーが耳元で囁く。
「今後、ユキがいなくても旦那様を助けられます」
「……」
「旦那様が生きるために必要なことを」
「はい」
「私がして差し上げられる」
「エリー……」
「嬉しいですか?」
「ものすごく」
*
そこから。
エリーはマコトの男としての反応まで。
何度も引き出していった。
「オホッ……!」
「旦那様」
「エリー……!」
「もう?」
「まだ……!」
「本当に?」
「もっと……!」
ユキが横から笑う。
「マコト、完全に受けの顔ですわよ」
「言わないで……!」
「いつもは領地で偉そうに代官してるのに」
「偉そうじゃない!」
「今はメイドに好き放題」
「ユキ……!」
その言葉が。
余計に効く。
「オホォッ……!」
*
マコトが限界へ達するたび。
声が変わる。
「オッ! オッ! オッ! オッ……!」
身体から力が抜ける。
エリーが背後から支える。
「旦那様」
「……はい」
「まだ立てます?」
「無理」
「では私が支えます」
「それ」
「何でしょう」
「かなり好き……」
「知っております」
*
しかも。
ユキは見ているだけでは終わらなかった。
「マコト」
「何?」
「こっち向いて」
エリーに支えられたまま。
マコトが顔だけ向ける。
ユキは近づき。
その頬へ手を添えた。
「可愛い」
「……」
「エリーに男として散々可愛がられて」
「はい」
「それを私に見られて」
「はい」
「まだ嬉しい?」
「……嬉しい」
「本当に変態」
「ユキに言われたくない!」
そのまま。
唇が重なる。
*
途中からは。
三人とも。
設定と現実の境目が曖昧になった。
エリーがマコトを背後から抱く。
ユキは正面へ回る。
マコトの上半身だけは。
代官服のまま。
「オホッ……!」
「マコト」
「ユキ……」
「こっち見て」
ユキとキスをしている間も。
背後のエリーは。
マコトを休ませない。
「オホォッ……!」
「旦那様」
「エリー……!」
「私も」
今度は。
エリーが横から顔を寄せる。
マコトとエリー。
次には。
ユキとマコト。
そして。
ユキとエリー。
三人の唇が。
順番もなく重なっていく。
*
「旦那様」
「何……?」
「本当に」
エリーが笑う。
「私にも旦那様の四十八時間を任せてくださいますか」
「はい」
「ユキだけではなく?」
「エリーにも」
「なら」
もう一度。
ぎゅっと。
背後から抱きしめる。
「今後は」
「うん」
「私にも頼ってくださいませ」
「エリー」
「はい」
「すごく嬉しそう」
「当然です」
エリーは。
少しだけ声を落とした。
「旦那様が生きるために必要なことまで、私が担えるのですから」
*
やがて。
マコトは。
完全に二人へ身体を預けた。
「オホッ……!」
「マコト」
「もう?」
「また……!」
そして。
「オッ! オッ! オッ! オッ……!」
何度目か分からない限界。
上半身には。
まだ。
代官の服が残っている。
しかし。
その服も。
顔も。
髪も。
ユキが残した白い行為の痕跡で汚れていた。
「……ひどい」
マコトが自分を見る。
「似合ってますわよ」
「何が!?」
「服だけは代官」
「ユキ!」
「顔は完全に遊ばれた受け」
「最高じゃないですか」
「マコトが喜ぶんですの!?」
*
エリーも。
背後から少し離れた。
だが。
マコトの身体には。
彼女と何度も重なった余韻が。
まだ強く残っている。
身体を動かすたび。
その痕跡が。
少しずつこぼれた。
「……エリー」
「はい」
「やりすぎ」
「旦那様が止めなかったので」
「それはそう」
*
最後には。
三人とも。
もう設定を続ける余裕もなかった。
エリーがマコトの頬へ口づける。
「旦那様」
「何?」
「満足されましたか」
「はい」
今度はユキ。
「マコト」
「何?」
「BL?」
「すごくBL」
「私も女ですけど」
「分かってる」
「エリーも女ですわよ」
「分かってる!」
「じゃあ何がBLなんですの」
「雰囲気!」
「雑!」
*
ユキが笑いながら。
マコトへ口づける。
離れると。
今度はエリー。
またユキ。
またエリー。
「二人とも」
「何?」
「何でしょう」
「キス多くない?」
「嫌?」
「全然」
だから。
三人とも。
そのまま。
何度も。
繰り返し口づけた。
男として。
女として。
どちらでもない三人として。
そして最後には。
誰が攻めで誰が受けだったのかもどうでもよくなって。
三人で。
ただ笑っていた。
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