第五十八話 寝室で三人とも男として果て続けたら、性別を越えた関係になりました
その夜、エリーが望んだのは湯浴みではなく、離れの寝室だった。
「旦那様。今日は三人とも、男として向き合ってみたいのです」
エリーが性神へ執念深く願い、男性側の身体を得てからまだ日が浅い。だが、彼女が嬉しいのは単に新しいものが増えたからではなかった。
「私も旦那様を喜ばせられる。四十八時間の祝福についても、必要なら私がお助けできます。それに……旦那様とユキのように、男とか女とかではなく、互いの全部を預けられる関係へ私も入れる。それが嬉しいのです」
普段ならすぐ茶化すユキも、その言葉には少しだけ表情を柔らかくした。
「それなら今日は、三人とも同じ立場ですね」
「はい」
「マコトも?」
「もちろん」
そう答えた直後には、三人とも相手の服へ手を伸ばしていた。マコトがエリーの上着を外せば、エリーはマコトのシャツを脱がせ、ユキが横からエリーのスカートを手伝えば、今度は二人がかりでユキの服が外される。
途中からは、誰が誰を脱がせているのかも分からない。
「んっ……」
マコトとユキが口づける。その横からエリーが顔を寄せれば、今度はマコトとエリー。次にはユキとエリー。
「旦那様、私も」
「エリー……」
「私を忘れないでくださいませ」
「ユキも」
三人とも裸になる頃には、服を脱がせるためだった手は相手の背や腰へ回り、唇も舌先も、次の相手を探してほとんど休まなくなっていた。
*
寝室の中央で、三人は立ったまま向き合った。
エリーが真っ先にマコトへ身体を寄せる。豊かな胸元までぴったり押しつけ、さらに男として強く反応している身体まで重ねるように近づけた瞬間、エリーの顔が嬉しそうに緩んだ。
「旦那様……これです」
「何が?」
「旦那様と同じものを持つ者として、こんなふうに触れ合えることです。自分の一番恥ずかしい反応まで旦那様へ委ねられる。旦那様も、私へ委ねてくださる」
「エリー」
「女だからでも、男だからでもなく。私と旦那様として」
そこへユキが身体を押し込んできた。
「二人だけの世界へ行かないでくださいませ」
「少しくらいよろしいでしょう」
「駄目です。今日は三人です」
ユキも二人へ密着する。三人とも男としての身体を持ち、三人ともそれを隠そうとしない。
「マコト」
「何?」
「これ、かなり好きでしょう?」
「何が?」
「三人とも男として反応していて、裸でくっついて、しかも前世腐女子のマコトが見る側じゃなく当事者」
「ユキ」
「何?」
「ものすごく効くから、それ以上言わないで」
エリーまで笑った。
「旦那様。今日は好きなだけBLだと思ってくださいませ」
「エリーまで!」
「私は女ですが」
「そこは忘れてません!」
*
笑っていられたのも最初だけだった。
三人は立ったまま身体を寄せ、片手では誰かの腰や背を支え、もう片方では互いの男としての反応を預け合うように刺激していく。誰か一人だけを一方的に追い込むのではない。自分も相手へ委ね、相手の反応も手の中で確かめる。
「オホッ……!」
「マコト……」
「エリー……! ユキも……!」
「こっち見て」
ユキがマコトへ口づけ、その途中でエリーの舌先が横から割り込む。今度はエリーとマコト。そこへユキが顔を寄せる。
片手は誰かを支えたまま。
もう片方では互いの男としての熱を煽り続け。
口では絶えず誰かと舌を絡める。
三人の身体は、ほとんど離れなくなった。
「オホッ……! ユキ……!」
「マコト、もう?」
「二人が……同時に……!」
「隠さなくていいですよ」
ユキの言葉に、エリーも頷いた。
「旦那様。私たちに全部見せてくださいませ」
その瞬間、マコトの声が変わる。
「オッ! オッ! オッ! オッ……!」
男として限界を迎え、身体から一気に力が抜ける。
だが倒れない。
ユキとエリーが両側から抱き留めている。
「旦那様」
「はい……」
「嬉しいです」
「何が?」
「旦那様が、男として果てるところまで私へ預けてくださったことが」
エリーはそう言いながら、力の抜けたマコトへ自分の身体を擦り寄せた。行為の白い痕跡まで、隠すのではなく二人へ分けるように。
「エリー……」
「旦那様のものも、私の身体へくださいませ」
「私にも」
ユキまで反対側から身体を寄せる。
胸、腹、腰。
肌同士がぬるりと触れ、マコトが男として残した痕跡が三人の身体へ広がっていった。
*
次はユキだった。
「オホッ……! ちょっと、二人同時は……!」
「嫌?」
「逆……もっと……!」
マコトが支え、エリーもユキの身体を抱き留める。
「オホォッ……! エリー……マコト……!」
限界へ近づくにつれて、オホ声が続く。そして本当に果てる瞬間だけ。
「オッ! オッ! オッ! オッ……!」
短く息を吐き出す声へ変わった。
今度はユキの力が抜け、マコトとエリーへ身体を預ける。
「ユキ」
「まだ……」
「まだ?」
「もっと……」
「では次も」
「エリー、容赦ない……!」
そして、最後に余裕を見せていたエリーも二人に囲まれた。
「私はまだ大丈夫です」
「本当に?」
「当然です」
マコトとユキの顔が同時に悪くなる。
「じゃあ」
「試しましょうか」
「何を――オホッ……!」
エリーの余裕が消えるまで、それほど時間はかからなかった。
「オホッ……! オホォッ……! 旦那様……ユキ……!」
「エリー、こっち見て」
「旦那様……!」
「まだ余裕?」
「ありません……! もう……!」
そして。
「オッ! オッ! オッ! オッ……!」
エリーも男として果てる姿を、二人へ隠さず見せた。
*
それで終わりにはならなかった。
一人が果てれば残り二人が支える。少し力が戻れば、さっきまで支えられていた者が今度は二人を支える側へ回る。そのまま、また三人で互いを煽る。
「オホッ……!」
「マコト……!」
「ユキ……オホォッ……!」
「エリー、舌……」
「旦那様……んっ……」
誰かと舌を絡めながら、片手で別の誰かを支える。もう片方の手は、三人の男としての反応を絶えず確かめ続ける。
誰かが限界へ達するたび。
「オッ! オッ! オッ!」
「オッ! オッ……!」
「オッ! オッ! オッ……!」
同じように息を吐き出し、力が抜ける。
そのたびに二人が抱き留める。
そして、果てた本人は離れるどころか、残った二人へ身体を擦りつける。
「旦那様、こちらにも」
「ユキ……」
「エリーも」
三人の胸や腹に残った白い痕跡は、抱き合うたびに互いの身体へ伸ばされ、次第に誰のものだったのか分からなくなっていった。
それでも。
三人とも。
それを嫌がるどころか、相手が自分へ委ねた証のように喜んでいた。
*
何度目かの限界を迎えたあと、最初に床へ座り込んだのはユキだった。
「ちょっと休憩……」
「大丈夫?」
「休むとは言いましたけど、終わるとは言ってません」
「さすが淫――」
「マコトいるでしょう!」
エリーが言い切る前に、ユキが腕を伸ばした。
「二人とも、こっち」
マコトとエリーがユキの前へ近づく。
ユキは二人へ手を伸ばし、まだ男として強く反応している二人を順番に可愛がる。頭上では、マコトとエリーが互いの胸元へ手を回しながら口づけていた。
「んっ……エリー」
「旦那様……」
「二人でいちゃつきながら私まで構うの、かなり好き」
「ユキ」
「何?」
「本当に休憩?」
「全然」
床へ座ったユキが笑う。
そのまま、また三人の声が崩れていった。
「オホッ……!」
「旦那様……!」
「ユキ……!」
そして再び。
「オッ! オッ! オッ……!」
三人の身体に、新しい白い痕跡が増えた。
*
やがてユキがベッドへ移ると、今度はマコトが真ん中へ座らされた。
「何する気?」
「さっきからマコトが一番楽しそうなので」
「旦那様には、もう少し男としての姿を見せていただきます」
「二人とも怖い」
ユキとエリーが左右から密着する。
「嫌?」
「全然」
「では」
二人から同時に可愛がられ、限界が近づいたところで、わざと一度止められる。
「待って……!」
「何です?」
「もう出るのに……!」
「まだです」
「エリー!」
「ユキも賛成」
「何で!?」
二人は楽しそうに笑う。
マコトは本気で涙目になった。
「お願い……」
「何を?」
「出したい……」
「もっと」
「二人に……いっぱい……!」
その言葉を待っていたように、二人の手が再び動く。
「オホッ……! オホォッ……!」
「マコト」
「旦那様」
「二人とも……!」
そして。
「オッ! オッ! オッ! オッ! オッ……!」
今度は長かった。
二人が支えなければ座っていることもできないほど、マコトの身体から力が抜ける。
「……満足?」
ユキが聞く。
「……はい」
「旦那様?」
「ものすごく」
「ではよろしい」
二人の顔にも、マコトが残した白い痕跡が増えていた。
*
次はエリーだった。
ベッドへ横になったエリーを、マコトとユキが左右から囲む。
「旦那様」
「何?」
「二人がかりですか」
「嫌?」
「いいえ」
エリーが両腕を伸ばし、二人の腰を掴む。
「むしろ、離れないでくださいませ」
そこからはエリーが真ん中になった。
ユキがエリーを翻弄し、マコトも別の側から可愛がる。エリーも黙って受けるだけではなく、二人へ手を伸ばし続ける。
「オホッ……! 旦那様……!」
「エリー」
「離れないで……!」
「離れませんよ」
「ユキも……!」
「いますわ」
三人はまた口づける。
舌先を探し。
片手で誰かを支え。
もう片方で別の誰かを喜ばせる。
「オホォッ……!」
「エリー、来る?」
「来ます……!」
「一緒に?」
「はい……!」
最後には。
三人の短い声が。
重なった。
「オッ! オッ! オッ! オッ……!」
*
終わる頃には。
三人とも。
酷い有様だった。
胸。
腹。
肩。
腕。
太腿。
誰かが男として果てるたびに、残った二人へ身体を擦り寄せてきたせいで、三人とも三人分の白い痕跡を全身へ残している。
「……これ」
マコトが自分の腕を見る。
「誰のです?」
「分かりませんわ」
「旦那様のものも、ユキのものも、私のものも全部混ざっておりますね」
「……すごい」
さらに酷いのは髪だった。
何度も抱き合い、顔を寄せ、互いの身体を擦り合わせたせいで、髪にまで痕跡が残っている。
ユキが自分の髪を摘まんだ。
「……カピカピ」
「私もです」
エリーも髪へ触れる。
「旦那様も」
「本当だ」
三人で。
しばらく。
互いの姿を見る。
「……今から風呂?」
マコトが聞いた。
「無理ですわ」
「私も、もう動きたくありません」
「同感」
「では」
ユキがベッドへ倒れ込む。
「明日の朝、三人で綺麗にしましょう」
「賛成」
「旦那様がそう仰るなら」
*
三人とも。
全身に互いの行為の痕跡を残したまま。
髪まで少しカピカピのまま。
もう気にせず、同じベッドへ潜り込んだ。
マコトが真ん中。
ユキとエリーが左右から身体を寄せる。
「エリー」
「はい、旦那様」
「今日はどうでした?」
エリーは少し考えた。
そして。
満足そうに。
「嬉しかったです」
「何が?」
「旦那様を男として喜ばせられたことも。旦那様が男として果てる姿を私へ見せてくださったことも。そして」
ユキを見る。
「三人とも、自分が男なのか女なのかなど気にせず、全部を預け合えたことも」
「もう完全にこっち側ですね」
ユキが笑う。
「ええ」
エリーも。
マコトへ抱きついた。
「今後も旦那様の四十八時間については、遠慮なく私をお使いくださいませ」
「監禁は禁止ですよ」
「健康管理です」
「まだ言ってる」
三人で笑う。
「じゃあ」
マコトが目を閉じた。
「明日の朝にお風呂」
「はい」
「三人で」
「約束ですわ」
「おやすみ、ユキ」
「おやすみなさい、マコト」
「エリーも、おやすみ」
「おやすみなさいませ、旦那様」
こうして。
三人は。
三人分の痕跡を全身へ残したまま。
互いに身体を寄せ合い。
そのまま眠りに落ちた。
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