第五十七話 爆乳メイド長が性神にゴネ続けたら、本当にチンポが生えてきました
ある日。
離れで茶を飲んでいたマコトとユキの前へ、エリーがやって来た。
「旦那様」
「何?」
「ユキも」
「何です?」
「ご報告がございます」
妙に真剣だった。
マコトが茶器を置く。
「屋敷で何か?」
「いいえ」
「領地?」
「いいえ」
「では?」
エリーは答えず。
スカートの裾を掴んだ。
「……エリー?」
そのまま。
ばっ。
めくった。
「……」
「……」
マコトとユキ。
二人とも。
完全に止まった。
そこには。
昨日まではなかったものが。
堂々と存在していた。
「……チンポ」
ユキが呟く。
「生えてる」
マコトも呟く。
「はい」
エリーは。
ものすごく満足そうに頷いた。
「生えました」
*
「待って!」
最初に復活したのはユキだった。
「何したんですの!?」
「祈りました」
「性神に!?」
「毎日」
「毎日!?」
「はい」
エリーは平然としている。
「旦那様のお役に立てる身体になりたいと」
「そこまでなら分かりますけど!」
「私にも男性側の身体を授けてください、と」
「前の話、本気だったんですか!?」
「当然です」
マコトが。
頭を抱えた。
「エリー」
「はい、旦那様」
「具体的に何したの?」
「祈りながら」
「はい」
「張り型も使って」
「……はい」
「一心不乱に自慰を」
「待って」
「毎日二時間ほど」
「二時間!?」
「それを何日も」
「執念が怖い!」
*
「そして昨日」
エリーは続ける。
「いつものように祈っておりましたら」
「はい」
「途中で意識を失いました」
「それ大丈夫!?」
「目を覚ますと」
「はい」
「神のおられる場所らしきところに」
マコトとユキが。
同時に黙る。
「性神?」
「おそらく」
「どんな姿でした?」
ユキが聞く。
エリーは。
マコトを見る。
「旦那様そっくりでした」
「……私?」
「はい」
ユキが。
ゆっくりマコトを見る。
「性神って、見る人の好みの姿になるんですよね」
「そうでしたね」
二人。
今度は。
ゆっくりエリーを見る。
「……何でしょう」
「いや」
「別に」
「旦那様が好きなのは否定しておりません」
「潔い」
*
「それで」
マコトが聞く。
「性神にお願いした?」
「はい」
「普通に?」
「最初は」
「最初は?」
エリーが真顔になる。
「断られそうになりました」
「ほう」
「ですので」
「はい」
「足にすがりつきました」
「……」
「『叶えてくださるまで離しません』と」
「エリー!?」
「ゴネたんですの!?」
「はい」
「性神相手に!?」
「旦那様のお役に立つためです」
「怖い!」
*
ユキが腹を抱える。
「それで神様が折れたんですか?」
「途中から」
エリーが少しだけ顔をしかめる。
「非常に面倒そうな顔をされました」
「でしょうね!」
「旦那様のお顔で」
「嫌だなあ!」
「最後には」
エリーが。
性神の真似をするように。
「『分かった。分かったから離せ』と」
「負けてる!」
「性神が押し切られてますわ!」
「そのあと目が覚めました」
「で?」
「生えていました」
沈黙。
「……性神」
「……性神ですわね」
*
「ちなみに」
エリーがまだめくったままなので。
マコトが。
そっと視線を逸らす。
「スカート下ろしてもらっていい?」
「旦那様」
「はい」
「下着がありません」
「何で!?」
「新しい身体に、今までのものが合わなくなりました」
「ああ……」
「今日はとりあえず」
エリーがスカートを下ろす。
「何も着けずに来ました」
「それで歩いてきたの!?」
「誰にも見られておりません」
「そういう問題では」
*
そして。
三人とも。
改めて。
この事態を考える。
「つまり」
ユキが指を一本立てる。
「今ここには」
「はい」
「男でも女でもあるマコト」
「はい」
「男でも女でもある私」
「はい」
「男でも女でもあるエリー」
「はい」
「三人」
「……」
「……」
ユキの目が。
だんだん。
輝き始める。
「マコト」
「何?」
「組み合わせ、また増えましたね」
「考えない」
「もう考えてる顔ですわよ」
「ユキこそ!」
*
しかし。
マコトの腐女子脳は。
別方向へ走り始めた。
「待って」
「何です?」
「これで」
「はい」
「例の騎士を入れた時の構図」
「……」
ユキが嫌な顔をする。
「また始まった」
「だって!」
マコトが机へ身を乗り出す。
「騎士はずっと、ユキを公爵令女だと思ってる」
「実際そうですわ」
「女だと思ってる」
「はい」
「憧れてる」
「多分」
「そこへ」
マコトが両手を広げる。
「実はお嬢様にも男性側の身体がありました!」
「はいはい」
「しかも!」
「何?」
「目の前では、別の男と倒錯した関係になってる!」
「マコト」
「騎士の精神がぐちゃぐちゃになる!」
「嬉しそうですわね」
*
「女だと思っていた憧れのお嬢様が」
「はい」
「自分の知らない男の一面まで持っている」
「はい」
「さらにそのお嬢様を、私が独占してる」
「はい」
「騎士は嫉妬する」
「でしょうね」
「鬱」
「はい」
「でも興奮」
「そこまで勝手に決めない」
「そして」
マコトの目が。
完全に腐女子。
「お嬢様を後ろから徹底的に責める!」
「やっぱりそこへ行く!」
「鬱BL!」
「だから私は女ですって!」
*
そこで。
エリーが。
静かに口を開いた。
「旦那様」
「何?」
「その騎士の話はともかく」
「はい」
「今後は」
一歩。
近づく。
「私のものも」
「……」
「ご使用くださいませ」
「エリー」
「何でしょう」
「生やした理由」
「旦那様のお役に立つためです」
「本当にそれだけ?」
「もちろん」
即答。
ただし。
その顔。
どう見ても。
それだけではない。
*
ユキが笑う。
「絶対、マコトを監禁する気ですよ」
「しません」
「本当に?」
「健康管理するだけです」
「ほら!」
「食事」
「はい」
「睡眠」
「はい」
「仕事量」
「はい」
「そして旦那様の生存条件」
「最後だけ管理の意味が違う!」
「すべて健康管理です」
「監禁エロゲだ!」
*
「でも」
ユキが。
エリーのスカートへ視線を落とす。
「本当に生えたんですね」
「はい」
「性神に頼み込んで」
「はい」
「ゴネて」
「はい」
「足にすがりついて」
「はい」
「神を根負けさせて」
「はい」
「……エリー」
「何でしょう」
「強い」
「旦那様への忠誠心です」
「重いとも言います」
マコトが言う。
「旦那様」
「はい」
「今後」
「はい」
「必要な時には」
エリーは。
とても穏やかに。
「遠慮なく、私をお使いくださいませ」
「……」
マコト。
ユキ。
目が合う。
「ユキ」
「何?」
「騎士にも生えたら」
「四人全員ですね」
「……」
「……」
そして。
二人同時に。
「性神には頼まない」
「それがいいですわね」
少なくとも。
今のところは。
そう決めた。
性神へ一日二時間祈り続け。
最後には神の足へすがりついて要求を通した爆乳メイド長を見たあとでは。
軽い気持ちで願うのは。
あまりにも危険だった。




