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種付けオッサンとビッチギャル ~二日に一度ヤらないと死ぬ二人の異世界転生~【注目15位、日間217位ありがとうございます】  作者: 黒瀬 量衡
第二章 腐女子男爵とエロゲ公爵令嬢

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第五十六話 護衛騎士まで仲間にしようとしたら、爆乳メイド長までふたなりになりたいと言い出しました

 別邸の午後。


 三人は普通に茶を飲んでいた。


 マコトとユキが向かい合って座り。


 エリーは二人の杯へ茶を注ぎ、皿から焼き菓子を取って添える。


「旦那様」


「ありがとう」


「淫――」


 エリーが一瞬止まる。


 今はマコトもいる。


「ユキも」


「今、淫売って言いかけたでしょう」


「気のせいです」


「絶対言いかけた」


 こうしているだけなら。


 有能なメイド長。


 公爵令女。


 公爵家の特別代官。


 実にまともだった。


 この三人が昨夜、朝の湯浴みを諦めるくらい疲れ果てて同じベッドで寝ていたとは、とても思えない。


     *


「それで」


 マコトが菓子を一つ取る。


「エリーにも相談しておきたいことがあります」


「何でしょう」


「あの護衛騎士」


 エリーの目が少し細くなる。


「公爵令女付きの?」


「そう」


 ユキが頷いた。


「以前話しましたでしょう。公爵家そのものへの忠誠とは別に、私個人への忠誠心がかなり強い騎士」


「覚えております」


「できれば」


 マコトが続ける。


「彼も、ここの秘密を知る仲間にできないかと」


「理由を伺っても?」


「一番は」


 マコトが自分を指す。


「私の生存条件です」


 エリーが察する。


「ああ」


「ユキだけに頼るのは、いずれ無理が出る可能性があります」


「公爵令女には公務がありますからね」


「私も領地へ戻ることがあります」


「つまり」


 エリーが真顔で確認する。


「旦那様の特殊な条件を満たせる者を、もう一人確保しておきたい」


「かなり端的に言えば」


「そうなります」


     *


 エリーは。


 少し考えてから。


「私にも」


「はい?」


「生えればよろしいのでは?」


 マコト。


 停止。


 ユキ。


 停止。


「エリー」


「何でしょう」


「今、何て?」


「私にも男性側の身体が増えれば」


「……」


「旦那様のお役に立てます」


「発想が急!」


 ユキが机を叩く。


「というか」


「何です?」


「エリーにそれが生えたら」


 ユキの顔が。


 完全にエロゲオタクのものになる。


「マコト、監禁されるんじゃない?」


「何故です?」


「だってエリーですよ?」


「はい」


「旦那様大好き」


「当然です」


「嫉妬深い」


「否定しません」


「しかも性神仕様の身体まで手に入れたら」


 ユキが指を立てる。


「マコトを離れに閉じ込めて、ずーっと自分だけで可愛がりそう」


「……」


「監禁エロゲ」


「ユキ!」


「絶対似合う」


     *


 エリーは。


 怒るどころか。


 数秒考えた。


「悪くありませんね」


「エリー!?」


「旦那様は無理をして働きすぎますから」


「監禁理由が健康管理!」


「食事も」


「はい?」


「睡眠も」


「はい」


「旦那様の身体のお世話も」


「はい?」


「すべて私が管理します」


「最後だけ意味違いますよね!?」


 ユキが腹を抱えて笑う。


「ほら! 監禁エロゲ!」


「淫売」


「何?」


「その時は」


 エリーの目が。


 すっと細くなる。


「二人がかりで旦那様を散々喜ばせているあなたの口を、私が塞いで差し上げます」


「何で私まで!?」


「邪魔なので」


「怖っ!」


     *


「二人とも」


 マコトが割って入った。


「私を題材に喧嘩しない」


「旦那様」


「はい」


「私は喧嘩しておりません」


「監禁計画立ててましたよね?」


「健康管理です」


「言い換えても駄目です」


 マコトがため息をつく。


「そもそも」


 話を戻す。


「あの騎士を入れるのは、エリー以上に難しいと思います」


「何故です?」


「エリーの場合」


「はい」


「私への嫉妬が中心だったでしょう」


「……まあ」


「騎士の場合」


 マコトがユキを見る。


「ユキ推しです」


「その言い方」


「つまり」


「はい」


「私とエリーを見た瞬間」


 マコトが指を立てる。


「『お嬢様を穢した連中』判定される可能性がある」


「……」


 エリーも。


 少し真面目になった。


     *


「最悪」


 マコトが続ける。


「私」


「はい」


「エリー」


「はい」


「二人まとめて斬られます」


「私は?」


 ユキが聞く。


「救出対象」


「そんな」


「あり得ます」


「でも」


 エリーがユキを見る。


「淫売が自分から股を開いて手懐ければよいのでは?」


「エリー!」


「二人きりじゃない!」


「失礼」


 まったく反省していない。


「いやいや」


 マコトが首を振る。


「そうはならんでしょう」


「そうですわね」


 ユキも同意する。


「むしろ」


「はい」


「身体を見せた瞬間」


 ユキが自分を見る。


「『偽物め!』ってなる可能性ありますわね」


「ある」


「かなりある」


     *


 何しろ。


 騎士が知っている公爵令女は。


 生まれた時から女。


 高貴な公爵家の娘。


 身持ちも固い。


 そこへ。


 突然。


『実は性神の祝福で身体が変わりました』


 と言われる。


 さらに。


『この代官とメイド長は全部知っています』


 まで加わる。


「怪しさしかない」


 マコトが言った。


「私でも疑います」


「でも」


 ユキが言う。


「マコトの条件を理解してもらわないと困るでしょう?」


「そこ」


「騎士が」


「はい」


「男同士のそういう関係へ、抵抗がある人だった場合」


「……」


「旦那様が死にますね」


 エリーが真顔で言った。


「そうなんです」


     *


「だから」


 マコトが指折り数える。


「第一段階」


「秘密を守れるか」


「第二段階」


 ユキが続ける。


「性神と身体の変化を信じてもらえるか」


「第三段階」


 エリー。


「旦那様の生存条件を理解できるか」


「第四段階」


 マコト。


「本人が自分から協力したいと思うか」


「……」


「……」


「……」


 三人とも黙る。


「難易度高いですね」


「高いですわ」


「面倒ですね」


     *


「もうさ」


 ユキが。


 突然。


 投げやりになった。


「何?」


「性神にお願いして」


「嫌な予感」


「エリーと騎士も」


 腕を広げる。


「ふたなりにしてもらえばいいんですよ!」


「解決してない!」


「身体の問題はかなり解決しますわ!」


「人間関係が悪化する!」


「でも考えてくださいよ」


 ユキの目が輝く。


「四人」


「はい」


「全員、男でも女でもある」


「はい」


「もう誰が誰を相手にしてもいい」


「……」


「いろんな組み合わせで」


「ユキ」


「みんなで好きなように種付け大会!」


「話が雑!」


     *


 しかし。


 マコトは。


 一瞬。


 本気で考えてしまった。


「……」


「マコト?」


「確かに」


「旦那様!?」


「組み合わせは増える」


「でしょう!?」


「ユキとエリー」


「はい」


「エリーと騎士」


「はい」


「私と騎士」


「はい!」


「私とエリー」


「もう済み」


「ユキと騎士」


「それもあり」


「四人全員」


「最高!」


 エリーが。


 呆れた顔で二人を見る。


「旦那様」


「はい」


「公爵令女に毒されすぎです」


「淫売に?」


「そうです」


「エリー!」


     *


 ところが。


 ユキが。


 急にマコトを見る。


「そういえば」


「何?」


「前から気になってたんですけど」


「はい」


「マコト」


「何です?」


「私がエリーに責められてる時」


「はい」


「絶対」


 ユキが。


 自分の胸。


 それから。


 エリーの爆乳。


 二つを指す。


「これの存在、忘れてますよね?」


「……」


 マコトが止まる。


「何のこと?」


「おっぱい」


「忘れてない」


「嘘」


「忘れてません」


「じゃあ」


 ユキが詰め寄る。


「エリーが私を押さえつけて、淫売だ何だって罵ってる時」


「はい」


「何として見てます?」


「……」


「マコト」


「……」


「正直に」


     *


「……気の強いメイド長に」


「はい」


「生意気な若い貴族が」


「はい」


「懲罰されてる感じ」


「やっぱり!」


「違うんです!」


「何が!?」


「脳内でちょっとだけ」


「はい!」


「中性的な男同士っぽく変換される時が」


「ほら!」


「腐女子フィルター!」


 ユキが。


 エリーを指す。


「この爆乳ですよ!?」


「分かってます!」


 次に。


 自分を指す。


「私だって女の身体ですよ!?」


「分かってる!」


「なのに」


「はい」


「マコトの頭の中では」


 芝居がかった声。


「『気の強い年上の使用人に懲罰される生意気な貴族の美少年』」


「……」


「でしょう?」


 マコト。


 沈黙。


     *


「旦那様」


 エリーが。


 静かに。


 マコトを見る。


「私の乳房」


「はい」


「忘れておられたのですか?」


「忘れてない!」


「先日は随分お好きだと」


「好きです!」


「それなのに」


「エリー」


「何でしょう」


「BLフィルターと爆乳は両立するんです!」


「意味が分かりません」


「私もですわ!」


     *


 ユキが笑う。


「つまり」


「何?」


「私がエリーに淫売って罵られて」


「はい」


「二人で張り合ってる時」


「はい」


「マコトは興奮しながら」


「はい」


「おっぱいを認識しつつ」


「はい」


「男同士にも変換してる」


「……」


「最低ですね」


「何で!?」


「性癖が節操なさすぎ」


「前世腐女子なので!」


「またそれ!」


     *


 エリーが。


 静かに茶を注ぎ直した。


「旦那様」


「何?」


「騎士を仲間にする件」


「はい」


「もう少し慎重にした方がよろしいかと」


「ですよね」


「ただし」


「はい?」


「もし騎士まで身体を変えられ」


「はい」


「私にも同じものが授けられたなら」


「……」


「旦那様の管理は」


 にっこり。


「私にお任せくださいませ」


「まだ監禁エロゲ諦めてない!」


「健康管理です」


「絶対違う!」


 ユキが笑う。


「その時は私も一緒に監禁されようかな」


「淫売は不要です」


「エリー!」


 結局。


 護衛騎士を本当に巻き込むかについては。


 またしても。


 ほとんど何も決まらなかった。


 増えたのは。


 四人全員ふたなり案と。


 マコトのBLフィルター疑惑だけだった。

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