第五十三話 爆乳メイド長エリーを迎えたら、旦那様を巡って公爵令女との争奪戦が始まりました
三人とも。
すでに裸だった。
マコトとユキは、性神の祝福によって変化した身体を説明するために。
そしてメイド長は。
「旦那様。私を慰み者にしていただけますか」
そう言って、自分の意思で衣服を脱ぎ捨てたばかりだった。
普段は屋敷を取り仕切り、主人にすら容赦なく小言を飛ばす厳格な女。
その姿からは想像しづらいほど、身体つきは豊かだった。
大きな胸。
丸みの強い腰。
成熟した女らしい身体。
女性側の身体を得てから胸元そのものは以前より女らしくなったものの、膨らみは相変わらずほとんどないマコトとは、あまりにも対照的だった。
「……旦那様」
「はい」
メイド長が一歩近づく。
そして。
そのまま、マコトへ抱きついた。
「……っ」
柔らかな身体が、平らな胸元へ密着する。
マコトも自然に両腕を回し、メイド長の腰を抱いた。
「不足どころか」
「はい?」
「昨日さんざん話題にしてた本人が、本当に目の前にいるので現実感がないです」
「昨日?」
「何でもありません」
少し離れた場所で。
ユキが笑った。
「最初はマコトがリードしてあげてくださいませ」
「ユキは?」
「私は見ています」
「全裸で?」
「今さらですわ」
ユキはそのままベッドの端へ腰掛けた。
*
「その前に」
マコトが言った。
「もう一つだけ、秘密を増やしてもいいですか」
「秘密ですか?」
「ここでは、公爵令女をユキと呼んでいます」
メイド長がユキを見る。
「前世に関係する名前ですわ」
「前世……」
「詳しい話はまた今度」
マコトが続ける。
「私も、この部屋ではマコトです」
「夜だけのお名前、ということでしょうか」
「だいたいそんな感じ」
メイド長は少し考えた。
「でしたら」
「はい?」
「私も、この場所ではエリーとお呼びくださいませ」
「エリー?」
「はい」
「では」
マコトが少し笑う。
「よろしく、エリー」
「……はい。マコト様」
*
最初は。
驚くほど静かだった。
マコトがエリーの頬へ触れる。
「キスしていい?」
「ここまで来て、今さら確認なさるのですか?」
「ここまで来たからこそ」
エリーが少し微笑む。
「お願いします」
唇が重なる。
一度。
離れて。
もう一度。
「んっ……」
「エリー」
「もう少し」
今度は長く。
マコトの手が腰から背中へ回る。
やがて。
あまりにも存在感のある胸へ。
「……んっ」
エリーが小さく息を漏らした。
「嫌なら」
「嫌でしたら」
エリーが目を細める。
「自分から裸になって、旦那様へ抱きついたりいたしません」
「確かに」
手の中へ収まりきらないほど豊かな感触に。
マコトが。
つい。
「……すごい」
「旦那様」
「褒めてます」
「なら」
エリーの頬が赤くなる。
「もう少し、好きにしてくださいませ」
*
二人はベッドへ移った。
ユキは約束通り、最初は手を出さなかった。
ただ。
ものすごく楽しそうに見ていた。
「ユキ」
「何です?」
「視線がすごい」
「爆乳メイド長と平たい胸の旦那様」
「比較しない!」
「でもマコトの胸も好きですわよ」
「後付け!」
エリーが思わず笑う。
緊張が。
少しだけ解けた。
そこからは。
抱き合い。
キスをして。
互いの身体へ触れながら。
初めての相手だからこそ、急がず。
どこまでなら大丈夫かを確かめる。
「エリー」
「はい」
「続けてもいい?」
「お願いします」
正面から。
互いの顔を見ながら。
身体を重ねた。
「んっ……!」
「大丈夫?」
「はい……」
エリーがマコトの背中へ腕を回す。
「もっと近くに」
「エリー」
「マコト様……」
その声が。
少しずつ熱を帯びていく。
「んっ……ぁ……!」
やがて。
「マコト様……!」
「エリー……!」
二人とも。
一度。
大きく限界を迎えた。
*
しばらく。
抱き合ったまま。
動かなかった。
「……どう?」
マコトが聞く。
「旦那様」
「マコト」
「……マコト様」
「はい」
「思っていたより」
「うん」
「ずっと、嬉しいです」
それから。
エリーが。
ベッドの端を見る。
「ただ」
「何?」
「公爵令女が、ずっとこちらを見ています」
「当然ですわ」
ユキが立ち上がった。
「ここから」
「はい?」
「私たちの日常が始まりますもの」
「日常?」
エリーが怪訝な顔をする。
ユキは。
その背後へ回った。
そして。
ぎゅっと。
後ろから抱きつく。
「……ユキ?」
「そう。それでいい」
豊かな胸の上から。
ユキの腕が回る。
「さっきまで」
耳元。
「ずいぶん旦那様を喜ばせてましたね」
「……」
「いやらしいメイド長」
「ユキ!」
「褒めています」
「褒め方が悪い!」
「爆乳を揺らして御主人を喜ばせるなんて」
「ユキ!」
「はいはい」
エリーの顔は。
耳まで赤くなった。
*
だが。
そこで。
ユキの声が少しだけ真面目になる。
「エリー」
「はい」
「ここから先は」
抱いていた腕を少し緩める。
「本当に嫌なら止めてください」
「……」
「私たちは」
ユキがマコトを見る。
「かなり変わったこともします」
「それは」
「想像より多分、かなり」
「……」
「それでも」
一度。
聞く。
「続けたい?」
エリーは。
マコトを見る。
次に。
ユキを見る。
「続けたいです」
迷いは。
それほど長くなかった。
「旦那様が」
「はい」
「私の知らないところで、どう生きておられるのか」
「はい」
「もっと知りたいです」
ユキの口元が。
にやり。
「では」
再び。
エリーへ抱きつく。
「ここからは三人です」
*
マコトが正面。
ユキが背後。
二人でエリーを支えるように。
前後から密着する。
「ちょ、ちょっと……」
「エリー」
「はい……!」
「無理なら止めて」
「まだ、大丈夫です」
「なら」
ユキが耳元で囁く。
「ここからですよ」
「っ……!」
今まで。
旦那様だけを見ていたエリー。
その旦那様に正面から抱かれ。
背後からは。
公爵令女に翻弄される。
「んっ……ぁ……!」
「エリー」
「マコト様……!」
「私もいますよ」
「ユキ……!」
声が。
少しずつ。
崩れる。
「オホッ……!」
「出た」
「言わないで……!」
「昨日まであんなに厳格だったのに」
「オホッ……!」
「旦那様の前で、こんな声」
「オホォッ……!」
エリーの口が。
だんだん。
まともな言葉を作れなくなる。
息を求めるように開いて。
舌が僅かに覗く。
「エリー」
マコトが。
口づける。
「んっ……」
そこへ。
「私も」
ユキまで顔を寄せる。
三人の距離が。
ほとんどなくなった。
*
「オホッ……! オホォッ……!」
「エリー」
「はい……!」
「もう普通のメイド長の顔じゃない」
「旦那様ぁ……!」
しばらくして。
三人とも。
再び。
大きく限界を迎えた。
エリーは。
二人に支えられなければ。
まともに立っていられない。
「……マコト様」
「はい」
「ユキ」
「はい?」
「お二人は」
荒い息のまま。
「いつも、こんなことを?」
「もっと酷い時もありますわ」
「ユキ!」
「事実でしょう?」
エリーが。
何とも言えない顔になる。
*
そして。
ここで。
ユキの嫉妬が。
遅れてやって来た。
「マコト」
「何?」
「さっきから」
「はい」
「エリーばっかり」
「……やっぱり?」
「やっぱりです」
ユキが。
マコトへ近づく。
「今度は私の番」
「エリーの前ですよ」
「だから」
エリーが見ている前で。
ユキはマコトへ口づける。
「んっ……」
さっきまでの行為の余韻を。
互いに確かめるように。
長く。
深く。
「ユキ」
「何?」
「嫉妬してます?」
「かなり」
「素直」
*
さらに。
ユキは。
マコトの前へ背を向けるように腰掛けた。
「……何する気?」
「いつもの」
「エリー見てますよ」
「だからですわ」
マコトが。
後ろから抱きしめる。
エリーの前で。
二人は。
普段の離れでしているように。
身体を重ね始めた。
「んっ……!」
「ユキ」
「もっと」
「本当に?」
「ええ」
ユキが。
エリーを見る。
「見て」
「……」
「君の御主人」
少し悪い笑顔。
「私にこうして求められるのが、もう大好きなんですよ」
「ユキ……!」
「男なのに」
「はい……!」
「女として感じるのも好き」
「オホッ……!」
「それでも男の身体まで、こんなに素直」
「オホォッ……!」
「マコト」
「何……?」
「もっと欲しい?」
「欲しい……!」
「何が?」
「ユキ……もっと……!」
エリーの目が。
細くなる。
*
「旦那様」
「エリー?」
立ち上がる。
「これは」
「何?」
「いけません」
「何が?」
エリーが近づく。
「旦那様には」
一歩。
「女の良さを」
もう一歩。
「きちんと思い出していただく必要があります」
「……」
「エリー?」
「このような淫売に惑わされて」
「誰が淫売ですの!?」
「あなたです」
「言った!」
ユキが笑う。
だが。
エリーは真顔だった。
「旦那様」
「はい」
「私も」
「……」
「お使いくださいませ」
マコトの手を取る。
そして。
自分の胸へ。
「旦那様」
「はい」
「私の乳房」
「……」
「お好きでしょう?」
むにっ。
「好きです」
「即答ですの!?」
ユキが横から叫ぶ。
*
そこから。
また。
三人になった。
エリーが上から。
ユキが下から。
真ん中にマコト。
「オホッ……!」
「マコト」
「無理……!」
「旦那様」
「エリー……!」
「私の胸」
「はい……!」
「もっと好きになさって」
「好き……!」
マコトは。
だんだん。
何をされているのか。
考える余裕すらなくなる。
エリーの豊かな胸を揉み。
口づけ。
軽く噛み。
また舐める。
「んっ……旦那様……!」
「オホォッ……!」
「マコト、こっちも」
「ユキ……!」
三人の声が。
重なった。
*
そして。
また。
三人とも。
限界を迎える。
「オホォォッ……!」
「マコト様……!」
「ユキ……!」
終わった後。
しばらく。
誰も動けなかった。
エリーは。
足に力が入らず。
ベッドへ倒れ込む。
「……旦那様」
「はい」
「私」
「何?」
「とんでもないことを」
「今さら?」
「今さらですわ」
「ユキは黙って」
*
マコトは。
考えるより先に。
エリーへ近づいていた。
「旦那様?」
「そのまま」
「何を?」
「綺麗にします」
汗や。
行為の余韻が残った身体を。
口づけるようにしながら。
丁寧に整えていく。
「旦那様……」
「嫌?」
「……いえ」
エリーが。
目を閉じる。
「お願いします」
その様子を。
少し離れたところから。
ユキが。
じっと見ていた。
「……」
「ユキ」
「何?」
「また嫉妬?」
「かなり」
「じゃあ後で」
「後で?」
「ユキも」
「……」
ユキの顔が。
すぐに緩んだ。
「約束ですわよ」
*
結局。
爆乳メイド長エリーは。
その日。
マコトとユキだけが知っていた秘密を知った。
そして。
知っただけでは。
終わらなかった。
「旦那様」
「何?」
「今後も」
「はい」
「必要でしたら」
エリーが。
まだ赤い顔で。
「私をお使いくださいませ」
「……」
マコト。
ユキ。
目が合う。
「エリー」
「はい?」
「その言い方」
「何でしょう」
「昨日、私たちが妄想してたまんま」
「ユキ!」
「言うな!」
「妄想?」
「何でもないです!」
「非常に気になります」
「今度!」
こうして。
二人だけだった離れに。
三人目の。
夜だけの仲間が増えた。




