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種付けオッサンとビッチギャル ~二日に一度ヤらないと死ぬ二人の異世界転生~【注目15位、日間217位ありがとうございます】  作者: 黒瀬 量衡
第二章 腐女子男爵とエロゲ公爵令嬢

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第四十六話 可愛い男の子をBLで責める妄想だったのに、いつの間にか私が調教エロゲのヒロインになっていました

 マコトは思った。


「……女の子の特徴まで持った、可愛い男の子を責めるのは、かなりありなのでは?」


 公爵家から戻り、自分の領地で代官としての仕事を片付けている最中だった。


 もちろん口には出さない。


 書類へ署名しながら、頭の中だけで考える。


 相手はユキ。


 今世では公爵令嬢。


 前世では男。


 そして性神によって、男女双方の特徴を持つ身体になった。


 BLとして考えるなら。


 かなり反則的な存在である。


(見た目は完全に可愛い女の子。でも前世まで含めれば男の要素もある)


 そこを、都合よくBLフィルターへ通す。


(可愛い男の子)


 成立。


「……うん」


 マコトは小さく頷いた。


 侍従が不思議そうな顔をした。


「何かございましたか?」


「何でもない」


「では、こちらの書類も」


「ああ」


 危ない。


 公務中だった。


     *


 だが。


 いったん始まった腐女子の妄想は、公務程度では止まらなかった。


(可愛い男の子が、普段は強気)


 いい。


(でも二人きりになると、快感に弱い)


 もっといい。


(必死に耐えようとしているのに、身体の方は正直で)


 非常にいい。


 マコトの頭の中では、ユキが完全にBL漫画の登場人物になっていた。


『マコト……!』


『何?』


『そんなにされたら……!』


『嫌?』


『嫌とは言っておりません!』


「……かわいい」


 思わず漏れた。


「閣下?」


「書類の話だ」


「こちらの徴税報告書が?」


「……よくまとまっていて可愛い」


「可愛い?」


「忘れてくれ」


 侍従が首を傾げた。


     *


 仕事を終え。


 ようやく一人になる。


 すると妄想はさらに加速した。


「ユキって」


 改めて思い出す。


 胸。


 柔らかい。


 だが、若い身体らしい張りもある。


 寝転んでも、動いても、印象が大きく崩れない。


「反則では?」


 尻もそうだった。


 女らしい柔らかさ。


 それでいて、身体を動かした時にはきちんと筋肉が支えているのが分かる。


 柔らかいだけではない。


 若く。


 健康で。


 弾む。


「……性神、身体作りだけは妙に仕事が丁寧なんですよね」


 それに。


 オホ声。


『オホッ……!』


 思い出した。


「可愛い」


 完全に腐女子の顔になっていた。


     *


 最初は。


 ここまでは。


 マコトがユキを責める妄想だった。


 可愛い男の子扱いしたユキを。


 言葉で追い込む。


 余裕をなくさせる。


 普段は公爵令嬢として毅然としている相手が、自分の前だけで崩れる。


「……最高」


 ところが。


 マコトは一つ。


 重大なことを思い出した。


「ユキ、あれで結構強いんですよね」


 性神に与えられた男性側の身体。


 生命維持の条件。


 そして。


 一度その気になった時の遠慮のなさ。


 昨夜。


 言葉で責められた。


 低い声まで使われた。


「……」


 頭の中の構図が変わった。


     *


『マコト』


 今度はユキが後ろにいた。


『何?』


『さっきまで随分楽しそうでしたわね』


『何の話?』


『私を可愛い男の子扱いする妄想』


『何で知ってるの!?』


『顔に書いてありましたもの』


『嘘!』


『では』


 妄想のユキが笑う。


『実際に試してみます?』


 そこまでは。


 まだいい。


 腐女子的には。


 むしろ望むところだった。


 問題はその次。


 妄想のユキが。


 何故か。


 物凄く強気だった。


『マコト』


『はい』


『逃げませんわよね?』


『……』


『自分から始めた妄想でしょう?』


「……あれ?」


 現実のマコトが止まる。


 何故。


 私が追い込まれている?


     *


 しかも今のマコトには。


 昨日までなかった女性側の身体まで追加されている。


「……」


 そこへ意識が向いた。


 駄目だった。


 妄想がさらに変質する。


(もしユキが主導したら)


 自分は男。


 でも女性側の身体もある。


 そこをユキに利用される。


(後ろから押さえ込まれて)


 そこまで考えたところで。


 マコトは顔を覆った。


「いやいやいや」


 私は腐女子。


 攻めを妄想していたはずだ。


「何で自分が受けになってるの?」


 しかも。


 BLの受けですらない。


 新しく増えた女性側を意識した瞬間。


 妄想のジャンルが。


 急速に変わり始めていた。


     *


『マコト』


 妄想のユキが言う。


『男なのに』


『……』


『女の身体までこんなに素直なんですのね』


『ユキ』


『何です?』


『その言い方やめて』


『嫌?』


『……もっと』


「待って!」


 現実のマコトが叫んだ。


「何で私、自分から続けさせてるの!?」


 誰もいない。


 当然答えもない。


 そして妄想は止まらない。


     *


 目隠し。


 手をまとめられる。


 ベッド。


 ユキの声。


『マコト』


『はい……』


『見えないの、怖い?』


『少し』


『止めます?』


『……止めない』


『いい子』


「……っ」


 現実のマコトまで反応した。


「それは卑怯」


 何が卑怯なのか。


 自分の妄想である。


 しかも。


 妄想のユキはどんどん調子に乗る。


『男なのに』


『……はい』


『こんなに女の身体まで欲しがって』


『言わないで』


『どうして?』


『恥ずかしいから』


『でも』


 ユキが耳元で笑う。


『そう言われるの、好きでしょう?』


「……」


 否定できなかった。


     *


 そして。


 妄想の中の自分が。


 何故か。


 もっと酷い方向へ進み始めた。


『ユキ』


『何です?』


『……欲しい』


『何が?』


『言わせるの?』


『言えたら考えますわ』


『……』


『マコト?』


『もっと、私を女として扱って』


「…………」


 マコトは机へ突っ伏した。


「誰だ、これ」


 自分である。


「絶対私だ」


 しかも。


 さらに想像が続く。


 欲しいと頼んだのに。


 すぐには欲しい方を与えられない。


 わざと焦らされる。


 別の場所ばかり構われる。


 自分は我慢できなくなって。


 とうとう。


 自分から身体を見せる。


『ここ』


『どこです?』


『……分かってるでしょう』


『ちゃんと言って』


『ユキ……!』


『お願いできないの?』


「……」


 マコトが頭を抱えた。


「これ」


 もう。


 完全に。


「BLじゃない」


     *


 BLから。


 いつの間にか。


 調教系のエロゲになっている。


 しかも。


 ヒロインは自分。


「おかしいなぁ」


 最初は。


 ユキを。


 女の子みたいに可愛い男の子として責める話だった。


 間違いない。


 快感に弱いユキ。


 オホ声を出すユキ。


 柔らかい身体なのに男の特徴まで持つユキ。


 そこをマコトが好き勝手に責める。


 そういう妄想だった。


 なのに。


 途中から。


 ユキが強い。


 自分が押さえられている。


 目隠しまでされている。


 手まで自由を奪われている。


 新しく増えた女性側を散々意識させられている。


 しかも。


 妄想の自分は。


『お願い……』


 などと。


 自分からねだっている。


「……おかしいなぁ」


     *


 夕方。


 離れへ戻る。


 ユキは先に来ていた。


「お帰りなさいませ」


「……ただいま」


「どうしました?」


「何でもない」


「顔が赤いですわ」


「仕事で疲れただけ」


「性神の加護があるのに?」


「精神的に!」


 ユキが首を傾げる。


「何か考えておりました?」


「考えてません」


「本当に?」


「本当に」


 ユキが近づく。


 その顔を見る。


 妄想の中で。


 散々自分を追い込んできた顔。


「……」


「マコト?」


「ユキ」


「はい」


「一つ聞いていい?」


「何でしょう」


「私」


「はい」


「もし目隠しされて、手も自由にできない状態で」


「……」


「その」


 言いかけて。


 マコトは止まった。


「やっぱりなし」


「待ってください」


 ユキの目が輝いた。


「今、ものすごく面白そうな話を途中で止めましたわよね?」


「気のせい」


「目隠し?」


「気のせい!」


「手も?」


「忘れて!」


「マコト」


「何!」


 ユキが少しだけ声を低くする。


「その先は?」


「……」


 また。


 妄想と同じ声だった。


「マコト?」


「おかしいなぁ……」


「何がです?」


「何でもない!」


 腐女子代官は。


 可愛い男の子を責めるBLを妄想していたはずなのに。


 気づけば。


 自分が元エロゲオタク公爵令嬢に調教されるヒロイン役を、かなり具体的に妄想していた。

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