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種付けオッサンとビッチギャル ~二日に一度ヤらないと死ぬ二人の異世界転生~【注目15位、日間217位ありがとうございます】  作者: 黒瀬 量衡
第二章 腐女子男爵とエロゲ公爵令嬢

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第四十五話 女なのにチンコが生えた腐女子代官を妄想していたら、なぜか私がBLで責められていました

 ユキは思った。


「……女なのに、突然チンコが生えて戸惑っているマコトというのは、かなり良いのでは?」


 公爵家の離れ。


 昼過ぎ。


 マコトは代官としての仕事へ戻っており、離れにはユキしかいない。


 昨日まで散々騒いだというのに、性神の加護のおかげで身体の疲れはほとんど残っていなかった。


 その代わり。


 元エロゲオタクの頭だけが、朝から猛烈な勢いで余計な方向へ動いていた。


「マコトは前世では女」


 ユキは寝台へ腰掛け、ぶつぶつと整理する。


「しかも腐女子」


 ここまでは事実。


「そこで、前世のマコトの姿を使います」


 ここから妄想。


 前世の日本人女性だったマコト。


 当然ながら女の身体。


 そこへ。


 ある朝突然。


 男性側の特徴まで追加される。


『何これ!?』


 想像の中のマコトが叫ぶ。


『私、女なんだけど!?』


「……いいですわね」


 ユキの目が輝いた。


     *


 妄想のマコトは混乱している。


 鏡の前。


 身体は女のまま。


 なのに、今までなかったものが増えている。


『どうして!?』


『性神のせいですわ』


『何でこんなもの生やすの!?』


『便利でしょう?』


『便利かどうかの問題じゃない!』


「……ここで私が出てくる」


 ユキは一人で頷いた。


 想像の中の自分は。


 今世の公爵令嬢。


 女。


 そして性神によって、同じように男女双方の特徴を持っている。


 つまり先輩。


『マコト』


『何!?』


『そんなに慌てなくても』


『ユキにはもうあるから言えるんでしょう!』


『でも』


 妄想のユキが、少し意地悪く笑う。


『さっきから、かなり反応しておりますわよ』


『見ないで!』


「……いい」


 ユキは唇へ指を当てた。


「かなりいいですわ」


 女なのに。


 突然男性側の身体を与えられ。


 本人は戸惑っている。


 なのに身体だけは健康そのもの。


 しかも元腐女子。


 知識だけは妙な方向へ豊富。


「そこを責める」


 ユキの中のエロゲオタクが、完全に目を覚ました。


     *


『マコト』


『何……?』


『女なのに』


『……』


『男みたいに反応するの、どんな気分ですの?』


『言わないで……!』


『でも気になるのでしょう?』


『何が』


『自分に生えたものが』


『……』


『どう感じるのか』


「……ふふ」


 ユキは一人で笑う。


「これは良い」


 前世の男としてなら。


 女性へ男性側の特徴が生えるというシチュエーションは、エロゲでも何度も見た。


 ふたなり物。


 変身物。


 身体変化物。


 本人だけが戸惑っている。


 そこを事情を知っている相手がからかう。


「マコト、絶対顔真っ赤にしますわね」


 しかも。


 腐女子だ。


 自分がそういう身体になった瞬間。


 頭の中で妙な知識が次々と蘇るに違いない。


『違うの! これはそういう趣味じゃなくて!』


『何も聞いておりませんけれど』


『顔が言ってる!』


『どんな妄想をしたのです?』


『言えるわけないでしょう!』


「……可愛い」


 ユキは笑った。


     *


 ところが。


 妄想を続けているうちに。


 何かが変わり始めた。


「それで、私がマコトを責めて……」


 そのはずだった。


 女なのに男性側まで生えて戸惑うマコト。


 そこをユキが、元エロゲオタクらしく言葉で追い込む。


 そういうシチュエーションだった。


 なのに。


『ユキ』


 突然。


 妄想の中のマコトの声が低くなった。


「……あれ?」


 ユキが止まる。


 さっきまで。


 妄想のマコトは前世の女の姿だった。


 それが。


 いつの間にか。


 今世のマコトになっている。


 若い男。


 代官。


 整った顔。


 落ち着いた低い声。


 そして。


 前世で腐女子だった男。


『ユキ』


『何ですの?』


『さっきから』


 マコトが笑っている。


『俺のこと、随分好き勝手に妄想してたね』


『……』


『女なのにチンコが生えて戸惑う俺?』


『違います。前世のあなたを使った想像で』


『ふうん』


「……何故」


 現実のユキが小声で呟く。


「マコトが男に戻っておりますの?」


 自分の妄想なのに分からない。


     *


 しかも。


 妄想のマコトが近づいてくる。


『ユキ』


『はい』


『楽しかった?』


『何がです?』


『俺を女の子扱いして』


『前世は女だったでしょう』


『今は男だけど』


『……』


『それに』


 声が低くなる。


『ユキは前世、男だったよね』


『そうですけれど』


『じゃあ』


 マコトが距離を詰める。


『今度はBLっぽく考えてみる?』


「待って」


 現実のユキが声を出した。


「何故そうなりますの?」


 当然。


 妄想なので誰も答えない。


     *


 気づいた時には。


 ユキは妄想の中で寝台へ追い込まれていた。


 上にマコト。


 今度は完全に男のマコト。


 前世腐女子。


 今世代官。


 あの妙にいい声まで再現されている。


『ユキ』


『何ですの……』


『前世は男だったんだよね』


『はい』


『じゃあ俺となら』


 マコトが耳元へ近づく。


『男同士ってことにしてもいい?』


『私は今世では女ですわ!』


『さっき、自分で俺の前世を女扱いしてたのに?』


『それとこれは違います!』


『何が違う?』


『全部です!』


『でも』


 マコトが笑う。


『顔、赤いよ』


「……」


 現実のユキまで顔を押さえた。


「おかしいなぁ」


 どうして。


 自分がマコトを責める妄想だったはずなのに。


     *


 妄想は止まらなかった。


 マコトが上。


 ユキが下。


 しかもマコトは。


 昨日ユキが見た。


 腐女子として完全にたぎっていた時の顔をしている。


『ユキ』


『はい……』


『前世は男』


『……はい』


『今は女』


『はい』


『その上、性神のせいで男の身体の特徴まである』


『そうですわ』


『便利だね』


『あなたまで性神みたいなことを言わないでくださいませ!』


『だって』


 マコトの顔が近づく。


『BLとしても』


『……』


『男女としても』


『……』


『何でもできる』


「……」


 ユキの身体が現実でも熱くなる。


「待ってくださいませ」


 しかし妄想のマコトは待たない。


『ユキ』


『何』


『さっきまで俺を責めるつもりだった?』


『そのつもりでしたわ』


『じゃあ今は?』


『……』


『俺に責められてる』


『これは私の妄想です!』


『だったら』


 低い声。


『何で俺をこんな役にしたの?』


「……っ」


 現実のユキが枕を掴んだ。


     *


「おかしいなぁ……」


 本当におかしい。


 最初は。


 女だった頃のマコトへ、突然男性側の特徴が追加される。


 本人が困惑する。


 そこをユキがからかう。


 完全にユキが攻める側だった。


 なのに。


 今では。


 今世の男のマコトに、自分が寝台へ押し倒されている。


 しかも。


 妄想の中のマコトは。


 完全にBLの攻め役だった。


『ユキ』


『何ですの』


『俺を見て』


『見ております』


『本当に?』


『……』


『前世男だったユキが』


 マコトが笑う。


『今は男の俺に責められてる』


『……っ』


『どう?』


『知りませんわ!』


『嫌?』


 そこだけ。


 妄想のユキは答えに詰まった。


「……」


 現実のユキも。


 答えに詰まった。


     *


「嫌では……ない」


 小さく呟く。


 そこが一番問題だった。


 むしろ。


 かなり良い。


 前世は男。


 同性に責められる趣味などなかった。


 でも今世は女。


 男に求められること自体に違和感はない。


 その上。


 相手は前世女。


 腐女子。


 今世男。


「頭がおかしくなりそうですわ」


 男女が何重にも入れ替わる。


 でも。


 マコト相手なら。


 どの組み合わせでも妙に成立してしまう。


「……性神」


 ユキは天井を見る。


「これ、あなたのせいですわよね?」


 返事なし。


「絶対そうですわよね?」


 ない。


「答えなさい!」


 静かだった。


     *


 夕方。


 仕事を終えたマコトが離れへ戻ってきた。


「ただいま」


「……」


「ユキ?」


「お帰りなさいませ」


「何です、その顔」


「何でもありません」


「絶対何かあったでしょう」


「ありません」


 マコトが近づく。


 ユキはその顔を見る。


 昼間。


 妄想の中で。


 自分をBL的に追い詰めてきた男。


「……」


「ユキ?」


「一つ聞いていいです?」


「はい」


「マコト」


「何?」


「前世の自分が、女の身体のまま突然チンコまで生えたら、どう思います?」


「……はい?」


 マコトが完全に止まった。


「何の話?」


「妄想です」


「また?」


「またです」


「それで?」


「私がそのマコトを責めるつもりだったのです」


「つもりだった?」


「はい」


「何で過去形なんです?」


 ユキが視線を逸らす。


「気づいたら」


「はい」


「今世の男のマコトに」


「私に?」


「BL的に責められておりました」


「……」


「妄想の中で」


 数秒。


 マコトが黙った。


「ユキ」


「何です?」


「それ」


「はい」


「続き聞いていい?」


「どうして嬉しそうなんですの!?」


「腐女子なので」


「やっぱり!」


 マコトの目が完全に輝いていた。


「どんな攻め方でした?」


「言いません!」


「私、何て言ってました?」


「絶対言いません!」


「再現します?」


「しません!」


「少しだけ」


「しませんわ!」


「ユキ」


「何です!」


 マコトが声を低くした。


「本当に?」


 ユキが固まる。


 昼間の妄想と。


 ほとんど同じ声だった。


「……」


「ユキ?」


「おかしいなぁ」


「何が?」


「何でもありません!」


 元エロゲオタク公爵令嬢は。


 自分が思っていたよりずっと深く。


 腐女子代官にBL的に責められる妄想へ、飲み込まれ始めていた。

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