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種付けオッサンとビッチギャル ~二日に一度ヤらないと死ぬ二人の異世界転生~【注目15位、日間217位ありがとうございます】  作者: 黒瀬 量衡
第一章 種付けオッサンとビッチギャル

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第三十四話 高級宿のベッドを借りて、今日は生きるためじゃなく番として全力でヤりたいんだけど

朝一番。


 まだ町の商店も半分ほどしか開いていない時間に、うちはオッサンの泊まっている宿へ向かった。


 四十八時間の期限が近いわけじゃない。性神の祝福に何か異常が起きたわけでもないし、絶頂しなければ死ぬという切羽詰まった状態でもない。


 ただ、目が覚めた瞬間から。


「……オッサンとしたい」


 そう思ってしまった。


「最悪」


 自分で呟いて、さらに腹が立つ。


 若くない。


 イケメンじゃない。


 腹は出てる。


 頭は薄い。


 汗臭い。


 何なら顔を見るたび「何でこいつなんだろ」と思う。


 なのに身体は、もう答えを知っていた。


 雄として一番欲しいのは、あいつだった。


     *


 宿へ入ると、オッサンは朝飯を食べていた。


「おや、ギャルさん。朝から珍しいですなぁ」


「食べ終わったら来て」


「どこへ?」


「ホテル」


 オッサンの口からパンが落ちた。


「……はい?」


「だから、ホテル」


「朝から?」


「朝から」


「生命維持ですかな?」


「違う」


「祝福の検証?」


「違う」


「何か雄化物が暴れましたかな」


「違うって!」


 うちはオッサンの向かいへ座った。


「今日は、ただヤりたい」


「……」


「お前と」


 オッサンが完全に固まる。


「何その顔」


「いやぁ……ギャルさんから、理由なしでおじさんとしたいと言われる日が来るとは」


「理由あるし」


「何ですかな?」


「快楽」


「……」


「単純に、お前とするのが一番気持ちいいから」


 オッサンが眼鏡を直した。


「顔は?」


「嫌い」


「腹は?」


「嫌い」


「頭は?」


「嫌い」


「そこまで即答されますかな」


「でも身体は好き」


「おじさんもギャルさんの身体は非常に好きですぞ」


「うち清楚じゃないけど?」


「そこが惜しい」


「死ね」


     *


 選んだのは、商人や貴族の旅客も利用する上等な宿だった。


 部屋は広い。


 大きなベッド。


 厚い壁。


 浴室。


 水差し。


 食事も酒も部屋へ運んでもらえる。


 値段は高い。


 でも今日は、それでよかった。


「料金」


「うちが出す」


「なぜそこまで」


「本気でやりたいから」


 部屋の扉を閉める。


 そこで、うちは改めてオッサンを見る。


「今までさ、うちらがヤる時って、だいたい何か理由あったじゃん」


「生命維持」


「種付け」


「祝福の確認」


「他の相手で満たされなかった」


「マーキング」


「そういうの」


 どれも嘘じゃない。


 それぞれ必要だった。


 それぞれ楽しかった。


 でも今日は違う。


「今日は、全部なし」


「では何を目的に?」


「だから快楽」


 一歩近づく。


「お前としたい」


 もう一歩。


「お前と全力でヤったら、どこまで気持ちよくなれるのか試したい」


「試験?」


「そういう理屈っぽいのもなし」


「では?」


「番として」


 言って、自分で少し顔をしかめた。


 オッサンは見逃さなかった。


「番という言葉は嫌いでは?」


「嫌い」


「ではなぜ」


「身体がそう思ってるから」


「正直ですなぁ」


「うるさい」


     *


「一応、確認」


 うちはオッサンのネクタイを掴んだ。


「今日はかなりやる」


「はい」


「途中で嫌になったら止める」


「当然ですな」


「お前も嫌なら止める」


「もちろん」


「無茶はする」


「はい」


「でも嫌なことはしない」


「了解ですぞ」


「じゃ、始めよ」


 最初の口づけから長かった。


 いつもみたいに急ぐ理由がない。


「んっ……」


「……んお゛っ」


 一度離れる。


 また近づく。


「もっと」


「まだ最初ですぞ」


「だからいいの」


 もう一度唇を重ねる。


 頬。


 耳。


 首筋。


 肩。


 互いに何度も触れた場所を、今日は改めて確かめるみたいに舐めたり、噛んだり、擦り合わせたりする。


 ぺたっ。


 ぬちゃっ。


 汗ばんだ肌同士が触れる音がする。


「んっ……オホッ……」


「もうオホ声ですかな」


「うるさい……」


「まだほとんど何もしておりませんぞ」


「匂いが効くんだって」


 オッサンの身体へ近づくと、例の匂いが鼻へ入る。


 脂っぽい。


 汗っぽい。


 普通なら絶対に好きな匂いじゃない。


 それなのに今は、身体から余計な力が抜けていく。


 肩。


 腹。


 腰。


 全身が自然に熱を受け入れる準備へ変わっていく。


「……ほんと最悪」


「何がですかな」


「お前の匂い好きになってる」


「それは雄として喜んでも?」


「顔は嫌い」


「またそれですかな!」


     *


 そこから、二人とも遠慮をやめた。


「オホッ……! オホォォッ……!」


「んお゛っ……!」


「もっと!」


「最初からかなり全力ですぞ!」


「まだ足りない!」


「ギャルさんも来てくだされ!」


「言われなくても!」


 抱き合う。


 押し返す。


 また引き寄せる。


 立ったまま。


 ベッドの上。


 向かい合って。


 背中を預けて。


 姿勢を変えるたび、肌がぶつかる。


 ぺたっ。


 ぬちゃっ。


 ぱしゃっ。


「オホッ……! もっと……!」


「んお゛ぉっ……!」


「その声!」


「何ですかな!」


「耐えてる声、もっと聞かせて!」


「おじさんは必死ですぞ!」


「だからいい!」


「ギャルさんも酷いですなぁ!」


「今日は酷くていい!」


 ギャルのオホ声。


 オッサンの歯を食いしばるような息。


 ベッドの軋み。


 汗ばんだ身体が触れ合う湿った音。


 何度も重なる。


「オホォォォォッ……!」


「んお゛ぉぉっ……!」


     *


 昼前には、二人とも汗だくだった。


 水を飲む。


 果物を食べる。


 少し休む。


 それでも、目が合う。


「……」


「……」


「まだする?」


「ギャルさんは?」


「する」


「おじさんも」


「じゃ来て」


「はいですぞ」


 再開する。


 ぺたっ。


 ぬちゃっ。


「オホッ……!」


「んお゛っ……!」


 息が整ったと思った直後には、また荒くなる。


「オッサン」


「はい?」


「もっと雄になって」


「おじさんは最初から雄ですぞ」


「そういう意味じゃない!」


「では?」


「欲望隠すなってこと!」


「ギャルさんも?」


「うちはもう丸出し!」


「まだ出せそうですなぁ」


「じゃあ出させろ!」


「了解ですぞ!」


 オッサンの目つきが変わる。


 それだけで、うちの背筋がぞくりとした。


「……その顔」


「何ですかな」


「雄の顔」


「嫌ですかな?」


「逆」


「では?」


「もっと見せて」


     *


 何度目かの休憩のあと。


 うちはベッドの端へ座った。


「オッサン」


「はい?」


「ちょっと違う遊びしたい」


「今日は本当に色々出ますなぁ」


「手首縛って」


 オッサンの顔が真面目になる。


「嫌になったら?」


「すぐ言う」


「痺れたら?」


「止める」


「目隠しも?」


「して」


「分かりましたぞ」


 柔らかな布が手首に巻かれる。


 指が動く。


 きつすぎない。


 目隠しをされる。


 真っ暗になる。


「……オッサン?」


 返事がない。


 代わりに、衣擦れの音。


 近づいてくる気配。


 呼吸。


 匂い。


「……っ」


 胸が高鳴る。


「自分から縛ってほしいとは」


 耳元へ、いつもより低い声が落ちた。


「随分と変態ですなぁ」


「……っ」


「目隠しまで」


「もっと言って」


「淫乱」


「んっ……」


「欲しがり」


「もっと……」


「朝から男を高級宿へ連れ込んで、それでも足りないと?」


「足りない……」


「本当にどうしようもない雌ですなぁ」


「オホッ……!」


 思わず声が出た。


「それ」


「何ですかな?」


「もっとなぶって」


「変態」


「オホッ……!」


「淫乱」


「オホォッ……!」


「そんな言葉で喜びますかな」


「今日はそれがいいの!」


 目が見えない。


 だから余計に、声だけが身体へ響く。


「もっと」


「本当に欲深いですなぁ」


「もっと!」


「雄に欲望を全部ぶつけてほしい雌」


「オホォォォッ……!」


     *


 目隠しを外したあとも、ギャルの欲は収まらなかった。


「次」


「まだありますかな」


「うちのこと、今だけ肉便器って呼んで」


「……」


「何その顔」


「ギャルさん、今日の欲望開放が想像以上ですなぁ」


「いいから」


「本当に?」


「うん」


「では」


 オッサンが少し低い声になる。


「おじさんの性欲を受け止めたくて自分から来た肉便器」


「オホッ……!」


「変態」


「もっと!」


「淫乱」


「もっと!」


「どれだけ欲しがれば気が済みますかな」


「満足するまで!」


「もう何度も満足しているでしょう」


「まだ欲しい!」


 ギャルはオッサンのネクタイを掴んで引き寄せる。


「ほかの女に遠慮してできないこと、うちには全部ぶつけて」


「全部?」


「全部」


「おじさんの性欲を?」


「全部!」


「本当に欲張りですなぁ」


「そうだよ!」


 ギャルは笑う。


「今日は変態で淫乱な肉便器でいい!」


「随分と開き直りましたなぁ」


「その代わり」


「はい?」


「お前も道具」


「やはり」


「うちの肉バイブ」


「酷い」


「うちが気持ちよくなるために全力で働け」


「おじさんにも人権を」


「今だけない」


「横暴ですなぁ」


「嫌?」


「……嫌ではありませんぞ」


「じゃ決まり」


     *


 そこからは、本当に勝負みたいになった。


「うちをもっと気持ちよくしろ、肉バイブ!」


「んお゛っ……!」


「ほら、耐えた!」


「ギャルさんも、おじさんの性欲をもっと受け止めてくだされ!」


「そのためにいるって言ってる!」


「淫乱!」


「オホッ……!」


「変態!」


「オホォォッ……!」


「もっと!」


「どちらがどちらへ言っているのか分かりませんなぁ!」


「どうでもいい!」


 抱き合う。


 口づける。


 頬を舐める。


 耳へ息をかける。


 首筋へ噛み跡を残す。


 互いがどこで反応するのか、もうかなり知っている。


 だからこそ容赦がない。


「んっ……! オホッ!」


「んお゛ぉっ……!」


「そこ効く!」


「ギャルさんもそこですかな!」


「もっと!」


「おじさんも!」


 汗。


 唾液。


 それまで何度も重なった行為の痕跡。


 全部が肌の上で混ざる。


 ぺたっ。


 ぬちゃっ。


 ぱしゃっ。


「オッサン」


「はい?」


「うち、もう何の匂いか分かんない」


「おじさんもですぞ」


「お前の匂いと、うちの匂い、ぐちゃぐちゃ」


「番ですなぁ」


「今だけそれ言っていい」


「では番」


「うん」


     *


 夕方。


 食事を頼んだ。


 肉。


 パン。


 果物。


 水。


 少し酒。


 オッサンは肉を山ほど食べる。


「食いすぎ」


「体力を使っておりますからなぁ」


「腹もっと出るよ」


「今言いますかな」


「だって出てるし」


「ギャルさんも随分食べますぞ」


「うちは若いし」


「おじさんもまだ四十代ですぞ」


「オッサンじゃん」


「否定はしませんが」


 食べ終わる。


 少し休む。


 ベッドへ横になる。


 ギャルが横を見る。


「……」


「……」


「もう一回?」


「当然」


     *


 夜。


 もう回数は数えていなかった。


「オホッ……! 来る……っ、来る来る来る……!」


「ギャルさん!」


「あっ、ダメ……オホォォォォォッ!」


「んお゛ぉぉっ……!」


 また限界。


 また息が止まりそうになる。


 また抱き合う。


 そのたび、二人とも笑っていた。


「まだ?」


「ギャルさんは?」


「まだ」


「おじさんも」


「じゃあ続けよ」


「一体何をもって終わりにしますかな」


「二人とも、もう十分って笑えるまで」


「なるほど」


「身体がほんとに動かなくなる前には休む」


「そこは大事ですぞ」


「分かってる」


「水も」


「飲む」


「食事も」


「した」


「では?」


 ギャルがにやりと笑う。


「もっと」


「まだですかなぁ」


「もっとオッサン欲しい」


 オッサンが黙った。


「何」


「それが一番効きますな」


「何が?」


「ギャルさんが、おじさんを欲しいと普通に言うこと」


「……今日は言う」


「はい」


「お前欲しい」


「はい」


「もっと雄として欲しい」


「はい」


「他の誰かじゃなくて、今はお前」


 オッサンの腕が強く回る。


「おじさんもですぞ」


「うちを?」


「ギャルさんを」


「一番?」


「身体なら一番」


「顔は?」


「タイプ外」


「死ね!」


「ギャルさんもでしょう!」


 二人で笑った。


 その直後。


「オホォォォォッ……!」


「んお゛ぉぉっ……!」


 また声が重なる。


     *


 深夜。


 ようやく二人で風呂へ入った。


 湯の中で、首筋や肩に残った噛み跡を見て笑う。


「ひど」


「ギャルさんもですぞ」


「お前のせい」


「お互い様ですなぁ」


 ギャルはオッサンの肩へ頬を擦りつけた。


「今日さ」


「はい」


「めっちゃ満たされた」


「おじさんも」


「なのに」


「はい?」


「まだ、お前欲しい」


「まだ?」


「今すぐじゃなくていい」


「なるほど」


「でも明日起きたら、またしたいと思うかも」


「それは嬉しいですなぁ」


「前まで、何か理由つけてたじゃん」


「生命維持」


「祝福」


「種付け」


「マーキング」


「上書き」


「はい」


「でも今日分かった」


「何が?」


 ギャルは少しだけ考えた。


「うち、単純にお前とセックスするの好き」


 オッサンが止まった。


「……」


「何」


「もう一回言ってくだされ」


「嫌」


「なぜ!」


「キモい顔してるから」


「酷い!」


 ギャルは笑う。


「でも本当」


「はい」


「好きなタイプじゃない」


「はい」


「付き合う気もない」


「はい」


「顔も嫌い」


「もう十分ですぞ」


「でも」


 ギャルはオッサンの胸へ頭を預けた。


「番として全力でヤるなら、お前が一番」


 少しの沈黙。


「おじさんもですぞ」


「うん」


「番?」


「今日だけ」


「明日は?」


「明日起きてから決める」


「ドゥフフ」


「笑うな!」


     *


 翌朝。


 目を覚ます。


 隣を見る。


 オッサン。


 寝顔。


「……うわ」


「何ですかな」


「起きてたの?」


「今起きましたぞ」


「寝起きの顔、最悪」


「第一声がそれですかな!」


「でも」


「はい?」


 ギャルは毛布の中からオッサンを見る。


「またしたい」


「……」


「何」


「いやぁ」


「何」


「幸せですなぁ」


「キモ」


「またそれ!」


「でもする」


「はい」


「今日も生きるためじゃない」


「はい」


「種付けの義務でもない」


「はい」


「上書きでもない」


「はい」


 ギャルはオッサンの手を掴む。


「ただ、お前としたい」


 眼鏡を探していた手が止まった。


「……おじさんもですぞ」


「じゃあ近く来い」


「眼鏡が」


「後でいい」


「見えませんぞ」


「うち見える?」


「近ければ」


「じゃあ近く」


「はいですぞ」


 もう、生きるためだからではない。


 祝福の条件だからでもない。


 他の誰かを消したいからでもない。


 ただ、この雄とするのが一番気持ちいい。


 この雌とするのが一番満たされる。


 それだけの理由で、二人はまた笑いながら抱き合った。

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