第三十一話 木杯と薬草袋、木剣と黒鞘、聖書と手甲まで番になってたんだけど
その日の朝、うちは魔物狩りへ出る前から、すでにかなり身体を使っていた。
最初は元童貞神父。次にマジメメガネ。それから、この前教会へ死にかけで担ぎ込まれてきたムキムキの虎獣人。
三人とも向こうから望んできたし、うちも嫌じゃなかった。嫌なら止める。それだけ確認すれば、あとは遠慮なし。
「……今日、魔物狩り行くんだよね」
自分へ確認しながら教会を出る。
行く。
行くんだけど。
「朝からオホ声出しすぎた……」
元童貞神父は、前よりずっと素直になった。真面目なのは変わらない。でも欲しい時には欲しいと言うし、恥ずかしそうに赤くなりながらも逃げなくなった。
マジメメガネは相変わらず確認が多い。始める前も途中も「大丈夫ですか」と聞いてくる。そのくせ一度始まれば、以前より明らかに体力がある。
虎はもっと分かりやすかった。この前まで腹を裂かれて死にかけていたくせに、今朝会ったら一回りデカくなっていた。肩も腕も背中も筋肉が増えて、普通に立っているだけで筋の線が見える。
「……性神、絶対なんかしてるっしょ」
しかも変わったのは身体だけじゃない。
三人とも、性に対する遠慮が減ってる。
嫌なことまで受け入れるようになったわけじゃない。そこはむしろ前よりはっきりしてる。嫌なら嫌。止めるなら止める。
でも、好きな相手に欲しい時に欲しいと言う。そこへの抵抗が薄くなってる。
「うちのせいかな」
たぶん。
半分くらい。
*
一方、後で聞いた話では、オッサンも朝から大概だった。
女将。
娘。
受付嬢。
それから、最近知り合ったショートカットのムキムキ女戦士。
「いやぁ、充実した朝でしたぞ」
「四人じゃん」
「そうでしたかな?」
「数えろ!」
女将と娘は宿。受付嬢はギルド。女戦士に至っては、相変わらず「私は屈してない」と言いながら、自分から次の勝負を要求してきたらしい。
「薬草取り行く前に何してんだよ」
「ギャルさんも三人でしょう?」
「うちは三人! そっちは四人!」
「似たようなものですなぁ」
「一人差あるから!」
まあ、人のこと言えないけど。
*
森へ入る。
今日は魔物狩り。
腰には雄化した木剣と、黒く脈動する親鞘。手甲も持っているし、なぜかオホ声聖書まで鞄へ入っていた。
「オホッ……」
「朝から元気だね」
聖書の隣で手甲まで小さく震える。
「オホォ……」
「お前ら最近、距離近くない?」
二つを離しても、いつの間にかまた寄っている。
木剣と黒鞘なんて、もっとひどい。木剣を収めれば、黒鞘がすぐ吸着する。
「オホッ……!」
「オホォォ……!」
「はいはい。お前らはもう分かったから」
最近、この二つは完全に一組だった。
木剣は鞘へ入りたがる。
黒鞘は木剣を離したがらない。
戦闘の時だけ、うちが無理やり引き離してる。
「夫婦かよ」
「オホッ!」
「返事すんな」
*
森の少し奥まで進んだところで、身体が先に気づいた。
「……あ」
いる。
近い。
あいつ。
向こうも同じだったらしい。木々の向こうから、見慣れた最悪の顔が現れた。
「いましたなぁ」
「いた」
眼鏡。
ネクタイ。
腹。
薄い頭。
脂っぽい顔。
何回見ても全然好みじゃない。
「……最悪」
「おじさんも同感ですぞ」
「顔見ただけで身体反応すんだけど」
「奇遇ですなぁ」
他の相手とは違う。
今朝だって三人とした。ちゃんと気持ちよかったし、また会えばしたい。
でも、こいつを見ると、身体のもっと奥にある別のところが急に足りなくなる。
「今日もう三人としたんだけど」
「おじさんも朝から四人ですぞ」
「だから一人多いって!」
「ドゥフフ」
「笑うな!」
二人で言い合う。
それなのに、オッサンが近づいた瞬間。
「……あ」
「どうしましたかな?」
「匂い」
汗。
体温。
オッサン特有の、決して上品とは言えない匂い。
普通なら好みじゃない。
なのに、身体だけは別の答えを出す。
深く吸い込んだ途端、肩や腹に入っていた力が自然に抜けていく。身体の緊張がほどけて、熱が増す。
「またこれ」
「何かありますかな?」
「お前の匂い嗅いでると、身体が勝手に準備始める」
「ほう」
「嬉しそうな顔すんな」
「ドゥフフ」
「笑うなって!」
でも、この反応は同意とは別。
嫌なら嫌。
やめるならやめる。
そこは全然変わらない。
ただ、うちが欲しいと思っている時だけ、身体の方までオッサンを受け入れるために勝手に緊張を抜き、潤いまで増やしてくる。
「性神、そこまで世話焼く?」
「安全第一なのでしょうなぁ」
「やってることの割にそこだけマジメなんだよな」
オッサンがもう一歩近づく。
身体。
さらに。
「……オッサン」
「はい」
「まだ足りない」
「おじさんもですぞ」
これ。
いつもの。
他の人じゃ埋まらない場所。
「やる?」
「もちろんですぞ」
「嫌だったら止める」
「おじさんも」
「それ以外?」
「遠慮なしですなぁ」
「うん」
決まり。
*
そこからは最初から全力だった。
「オホッ……! オホォォッ……!」
「んお゛っ……! オッ……!」
向かい合って抱き合う。
座ったまま。
次は立つ。
抱き上げる。
また向かい合う。
背後から。
今度は低い姿勢。
また向かい合う。
一つの姿勢で落ち着く気なんて、どっちにもない。
「もっと……! オホォォッ……!」
「んお゛ぉっ……! ギャルさん、朝から三人相手した身体とは思えませんぞ……!」
「そっちこそ四人だろ!」
「んお゛っ……! まだいけますぞ!」
「じゃ来い!」
他の相手では、ここまで続かない。
虎も元気。
マジメメガネも体力ある。
元童貞だって前よりずっと持つ。
でも。
オッサンだけは別。
「オホッ……! オホォォォッ……!」
「ん゛お゛っ……! んお゛ぉっ……!」
オッサンが歯を食いしばる。
「何その声」
「耐えておりますぞ……!」
「何を?」
「ギャルさんをですぞ……! んお゛っ……!」
「意味分かんない!」
オッサンの匂いを吸い込むたび、身体の力がさらに抜ける。
怖さ。
ない。
痛さ。
ない。
むしろ身体の方が、もっと来いと言ってる。
「オホォッ……! もっと奥まで響かせろって……!」
「んお゛っ……! そんなに求められては、おじさんも耐えられませんぞ……!」
「耐えんな!」
「はいな!」
*
最近。
うち自身も変わった。
胸や尻が大きくなっただけじゃない。
興奮すると、乳首だけじゃなく、その周りまで一緒に反応する。
「……また」
「何ですかな?」
「見るな」
「無理ですぞ」
「じゃもっと見ろ!」
「どっちですかな!?」
乳輪そのものが、以前よりはっきり隆起する。
その中央で乳首もさらに硬く立つ。
二段階。
自分でも分かるくらい。
「オホッ……! まためっちゃ立ってる……!」
「ギャルさん、以前より分かりやすくなりましたなぁ」
「お前の前だと特に!」
「光栄ですぞ!」
「喜ぶな!」
下腹部の反応も同じ。
興奮すると、外側まで以前よりふっくらと肉厚になり、熱を持つ。そこへオッサンの匂いが加わると、身体全体がさらに緩み、潤いも増す。
「性神、うちを分かりやすい雌にしすぎなんだけど!」
「素晴らしいですなぁ」
「お前にだけは言われたくない!」
「んお゛っ……!」
*
だって。
オッサンも。
変わってる。
顔。
腹。
薄い頭。
そこは全然良くなってない。
むしろオッサン度は増してる。
でも、雄としての特徴だけは明らかに強くなっていた。
「オッサン」
「何ですかな……んお゛っ……!」
「前よりヤバくなってない?」
「何がです?」
「分かってるくせに」
「ドゥフフ」
「その笑い方やめろ!」
血管や筋の隆起。
以前よりくっきり。
硬さ。
熱。
張り。
全部。
強くなってる。
単純に大きくなるだけじゃない。
元からあった特徴が、雄としてどんどん極端になってる。
「硬いし……熱いし……前より存在感エグい……オホッ……!」
「褒めておりますなぁ!」
「身体だけ!」
「それでも嬉しいですぞ!」
「オホォォォッ……!」
オッサンの声も崩れる。
「んお゛っ……! ギャルさんも前より絡みつく感じが強くなっておりますぞ……!」
「身体が欲しがってんの!」
「離す気がありませんなぁ……!」
「じゃ離れんな!」
「もちろんですぞ!」
*
オッサンが耐える時の声。
それも。
最近。
なんか好き。
「んお゛っ……! んお゛ぉっ……!」
「それ」
「何ですかな……!」
「もっと声出せ」
「ギャルさんほどは無理ですぞ!」
「じゃうちが二人分出す!」
「それ、虎獣人さんにも言っておりませんでしたかな?」
「細かい!」
もう一度。
「オホッ……! オホォォォッ……!」
「んお゛っ……!」
「もっと!」
「んお゛ぉぉっ……!」
「そう! それ!」
「おじさんの声で喜ばれる日が来るとは……!」
「声じゃなくて耐えてる感じ!」
「微妙ですなぁ!」
「オホォォォッ……!」
*
そして。
オッサンも。
完全に煽り始める。
「出ますぞ!」
「来い!」
「濃いのが出ますぞ!」
「来いって!」
「孕めぇ! イケぇ!」
「オホッ……! オホォォォォォッ……!」
もちろん。
うちはオッサンとの間では妊娠しない。
二人とも知ってる。
だから、ただの煽り。
雄と雌として。
そう叫びたいだけ。
「来る来る来る……! あっ、ダメ……! オッホォォォォォッ……!」
「んお゛ぉぉっ……! オッ! オッ!」
一度。
限界。
でも。
離れない。
「……もう一回」
「奇遇ですなぁ……」
「まだ奥が足りない」
「おじさんもですぞ」
また。
*
何度目か。
途中から、キスの仕方まで普通じゃなくなった。
どちらからともなく顔を寄せる。
唇が触れる。
そのまま。
舌。
絡む。
「んっ……オホッ……!」
「んお゛っ……!」
唾液がこぼれても気にしない。
一度離れる。
糸が切れる。
でも、すぐまた近づく。
「もう一回」
「もちろんですぞ」
唇。
舌。
唾液。
交換するみたいに何度も。
「んっ……オホッ……!」
うちはそのまま、オッサンの頬へ舌を這わせた。
「うわ」
「何」
「顔まで舐めますかな?」
「マーキング」
「犬みたいですぞ」
「お前が言うな」
頬。
顎。
首。
耳。
耳の縁。
そのまま耳までしつこく舐める。
「っ……んお゛っ!?」
「ここ弱い?」
「反則ですぞ!」
「じゃもっと」
「話を聞いておりますかな!?」
今度はオッサンがお返し。
頬。
額。
耳。
首筋。
「んっ……オホッ……!」
「お返しですぞ」
「顔中舐めんな!」
「ギャルさんが先ですなぁ!」
二人とも笑ってる。
でも。
止めない。
*
そのうち。
キスだけじゃ足りなくなった。
「オッサン」
「はい」
「ここ」
首。
「跡つけて」
「キスマーク?」
「それじゃ足りない」
「ほう」
「噛んで」
「本当に?」
「甘噛み」
「了解ですぞ」
首筋。
かぷ。
「んっ……オホッ……!」
「痛くありませんかな?」
「もっと」
もう少し。
歯。
触れる。
強すぎない。
でも。
ちゃんと跡が残る。
「……これ」
「何です?」
「お前の印」
「ドゥフフ」
「その笑い方やめろ!」
今度はうち。
オッサンの肩。
噛む。
「んお゛っ……!」
「痛い?」
「大丈夫ですぞ」
「じゃ」
もう一回。
かぷ。
「おじさんにも印ですかな」
「うん」
「番みたいですなぁ」
「それ言うな」
でも。
否定しきれない。
他の相手にはここまでしない。
顔を舐めて。
耳まで舐めて。
唾液を交換して。
噛んだ跡まで残す。
「オッサン」
「はい」
「もっと」
「何を?」
「全部」
「大雑把ですなぁ」
「キスも、舐めるのも、噛むのも」
「マーキング?」
「そう」
顔。
近づける。
「他の奴にはここまでしない」
「おじさんもですぞ」
「じゃ」
また唇。
「んっ……!」
舌。
絡む。
唾液。
こぼれる。
頬。
耳。
首。
甘噛み。
「オホッ……!」
「んお゛っ……!」
「もっと……!」
「はいな!」
キスマークだけじゃ足りない。
触れた証拠。
噛んだ跡。
互いの匂い。
全部。
残したい。
雄と雌として。
相手を自分のものだって示したい。
*
「オホッ……!」
「オホォォォッ……!」
「……」
うち。
止まる。
「オッサン」
「何ですかな?」
「周り」
木杯。
薬草袋。
「オホッ……!」
「オホォォォッ……!」
黒い薬草袋が木杯へ入り込んでる。
木杯も嬉しそう。
「お前ら何してんだよ!」
「オホッ!」
「オホォォッ!」
「返事になってない!」
少し離れたところ。
木剣。
黒鞘。
「オホォォォッ……!」
「オホッ……!」
「お前らはいつもじゃん!」
さらに。
「オホッ……!」
「オホォォッ……!」
「……」
聖書。
手甲。
「お前らまで!?」
手甲が聖書へぴったり絡みついてる。
「オホォォォォッ……!」
「何で聖書と手甲なんだよ!」
「道具同士にも相性があるのでしょうかなぁ」
「オッサン、冷静に分析すんな!」
木杯と薬草袋。
分かる。
薬草水。
木剣と黒鞘。
分かる。
一組の武具。
「聖書と手甲は?」
「……」
「……」
二人。
見る。
「オホッ……!」
「分からん!」
*
ようやく一通り落ち着いた頃、二人で木へ背中を預けた。
「……今日、魔物狩りなんだけど」
「おじさんは薬草採取ですぞ」
「まだ一匹も狩ってない」
「おじさんも一枚も採っておりませんなぁ」
「何しに森来たんだろ」
「雄と雌を満たしに?」
「最初からそれ目的みたいに言うな」
「結果的には」
「……否定できない」
少し静か。
道具達のオホ声を除けば。
「そういやさ」
「何ですかな?」
「最近、周りの人変わってない?」
オッサンが頷いた。
「変わっておりますなぁ」
「やっぱ?」
*
まず。
受付嬢。
「前から強い方でしたが」
「ドS?」
「はい」
「そこ即答なんだ」
最近はもっと鋭い。
目つき。
雰囲気。
近づくだけで圧がある。
なのに。
「妙に艶っぽいのですぞ」
「あー」
「何もしていない時でも御主人様感がありますなぁ」
「分かる」
ドS。
色気。
鋭さ。
全部強化。
*
「元童貞は逆」
「どうなりました?」
「男らしくゴツくなるかと思ったけど、違う」
男なんだけど。
前より。
なんか。
可愛い。
「庇護欲そそる感じ」
「男性なのに?」
「男だから余計に」
「なるほど」
真面目。
素直。
赤くなる。
でも逃げない。
「本人らしさが強くなった?」
「たぶん」
*
「女将さんは?」
「素晴らしいですぞ」
「即答すんな」
胸。
尻。
前よりボリューム。
でも、若い娘みたいにパンパンに張るんじゃない。
「丸み?」
「そうなのですぞ」
「柔らかそうな?」
「はい」
「熟女方面に進化してるじゃん」
「熟れた魅力が増しておりますなぁ」
「性神、性癖に素直すぎない?」
*
「娘さんは逆ですぞ」
「健康的?」
「まさに」
胸。
尻。
大きくなってる。
でも。
張り。
活力。
「エロ健康優良児」
「言い方」
「オッサンに言われたくない」
*
「マジメメガネも変わった」
「女将さんが気にしておりましたなぁ」
「何を?」
「最近、神父さんの身体が良くなったと」
「女将さん見てんじゃん」
「そりゃあ見ますぞ」
元々細い。
今もムキムキじゃない。
でも。
「細マッチョ」
「ほう」
「服着てると分かりにくいけど、脱ぐとかなり引き締まってる」
「詳しいですなぁ」
「今朝したから」
「なるほど」
肩。
腹。
腰。
無駄なく締まってる。
「マジメに鍛えたみたいな身体」
「実際は?」
「性神」
「ズルですなぁ」
*
「虎はもっと分かりやすい」
「ムキムキの?」
「うん」
普通に一回りデカくなった。
「元から筋肉すごかったけど、今は立ってるだけで筋が浮いてる」
「虎獣人らしさが強まっておりますかな」
「たぶん」
肩幅。
腕。
背中。
全部。
雄として。
もっと強そう。
*
「女戦士さんも似ておりますぞ」
「あのショートカット?」
「はい」
元からムキムキ。
腹筋。
腕。
脚。
「今朝会ったら、さらに筋肉が増えておりましたなぁ」
「下手な男より?」
「普通に上ですぞ」
でも。
「女っぽさ消えてない?」
「むしろ増しておりますなぁ」
胸。
尻。
締まったまま。
大きい。
筋肉質。
女。
両方。
強くなってる。
「本人喜んでそう」
「屈してないと言っておりましたぞ」
「まだ言ってんの!?」
*
二人で考える。
「共通点あるね」
「ありますなぁ」
その人の性質。
そこ。
強くなってる。
受付嬢なら、ドSと艶。
元童貞なら、庇護欲。
女将なら、熟女。
娘なら、健康的な若い女。
マジメメガネなら、細く引き締まった男。
虎なら、巨大な筋肉。
女戦士なら、筋肉質な女。
「あと、みんな性への抵抗減ってる」
「ありますなぁ」
でも。
そこ。
大事。
「嫌な相手でも平気になるわけじゃない」
「そうですな」
「嫌なことは嫌って言う」
「受付のお姉さんなど特に」
「絶対言うね」
「女戦士さんも」
「殴りそう」
だから。
洗脳じゃない。
嫌なことを受け入れるようになるんじゃない。
好き。
したい。
欲しい。
そこを隠さなくなる。
「その人なりの雄とか雌としての魅力も上がる?」
「そう見えますなぁ」
「性神の加護かな」
「おじさん達が成長しているのと同じでしょうかな」
*
うち自身も、かなり分かりやすく変わってる。
髪。
肌。
胸。
尻。
腰。
全部。
でも、それだけじゃない。
「うちさ」
「はい」
「最近、興奮すると見た目ですぐ分かるようになってない?」
「なっておりますなぁ」
「即答すんな!」
乳首だけじゃない。
乳輪そのものまで隆起する。
そこから中心がさらに硬くなる。
下腹部も、興奮すれば外側から分かるくらいふっくら熱を持つ。
そしてオッサンの匂い。
「これが一番ヤバい」
「おじさんの匂い?」
「そう。普通に臭いのに」
「酷いですなぁ」
「身体は好き」
「複雑ですぞ」
匂いを吸う。
身体が緩む。
熱くなる。
潤いが増す。
同意して欲しいと思っている時なら、その後も無理なく受け入れられるよう、身体が勝手に安全側へ適応する。
「これ、うちだけ?」
「女将さん達にも似た反応がある気がしますなぁ」
「マジ?」
「おじさんへ近づくと『臭い』とは言われますが」
「うん」
「そのまま離れないのですぞ」
「最悪じゃん」
「ドゥフフ」
「褒めてない!」
*
「オッサンも」
「何です?」
「前よりオッサンになってるよね」
「褒めております?」
「全然」
「ひどいですなぁ」
「顔とか腹とか、むしろ悪化してる」
「そこまで言います?」
「でも」
雄として。
身体。
そこだけ。
明らかに進化。
「前より血管とか筋とか目立つし」
「ドゥフフ」
「硬さも熱さも増してる」
「褒めておりますなぁ」
「身体だけ」
「それでも嬉しいですぞ」
「あと形も前より極端」
「ギャルさん好み?」
「身体だけは」
「そこ絶対付けますなぁ」
「大事だから」
オッサン。
顔。
最悪。
性格。
スケベ。
腹。
出てる。
頭。
薄い。
なのに雄としての身体だけは、うちに合わせるみたいにどんどん完成度が上がる。
「意味分かんない」
「奇遇ですなぁ」
「お前が清楚系イケメンだったらよかったのに」
「性別まで変わっておりますぞ!」
「じゃパリピイケメン」
「もっと違いますなぁ!」
*
「そういえば」
オッサンが木杯を見る。
「道具達も変ですぞ」
「今さら?」
「いえ、そうではなく」
木杯。
薬草袋。
寄り添ってる。
「オホッ……」
「オホォ……」
「最近、子供を産んでおりませんなぁ」
「……あ」
そういえば。
前。
親鞘。
子鞘。
三つ。
祝福を受けた道具は翌日に子供を産んでいた。
でも。
今。
ない。
その代わり。
木杯。
薬草袋。
木剣。
黒鞘。
聖書。
手甲。
「……番?」
「そうとしか見えませんなぁ」
「子供作る段階終わって、相手見つけた?」
「可能性はありますなぁ」
二人。
見る。
「オホッ……!」
「オホォォッ……!」
「性神って道具にまで婚活させんの?」
「壮大ですなぁ」
「絶対違う」
*
しかも、番になった道具は、ただくっついてるだけじゃない。
木杯と薬草袋。
合わせれば。
甘露の薬草水。
木剣と黒鞘。
合わせれば。
異常な高速抜刀。
回転。
鞘殴り。
即納刀。
「聖書と手甲」
「……」
「……」
二人で見る。
「オホッ……!」
「オホォォッ……!」
「何ができんの?」
「分かりませんなぁ」
「そこだけ未知?」
「いずれ何か起きるのでは」
「嫌な予感しかしない」
*
二人で立ち上がる。
「そろそろ仕事する?」
「そうしますかな」
「うち魔物狩り」
「おじさん薬草採取」
「別々?」
「その方が早いですぞ」
「じゃ」
一歩離れる。
「……」
「……」
二人とも止まる。
「オッサン」
「はい」
「もう一回だけ」
「奇遇ですなぁ」
「仕事は?」
「その後で」
「同意」
*
「オホッ……! オホォォォッ……!」
「んお゛っ……! んお゛ぉっ……!」
周り。
「オホッ……!」
「オホォォッ……!」
木杯と薬草袋。
「オホォォォッ……!」
「オホッ……!」
木剣と黒鞘。
「オホッ……!」
「オホォォォォッ……!」
聖書と手甲。
「オホォォォォォッ……!」
「んお゛ぉぉっ……!」
「うるさぁぁぁい!」
森。
四組。
オホ声。
響く。
うちとオッサン。
木杯と薬草袋。
木剣と黒鞘。
聖書と手甲。
「これもう何の集会だよ!」
「んお゛っ……番の集いですかな……!」
「耐えながら答えんな!」
「オホッ……!」
「聖書まで肯定すんな!」
「オホォォォッ……!」
「お前ら全員うるさぁぁぁい!」




