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種付けオッサンとビッチギャル ~二日に一度ヤらないと死ぬ二人の異世界転生~【注目15位、日間217位ありがとうございます】  作者: 黒瀬 量衡
第一章 種付けオッサンとビッチギャル

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第二十七話 薬草籠を抱えていたら、腹筋女戦士が屈しないってオホ声で煽ってきましたぞ

 その日の冒険者ギルドも、朝からいつも通り騒がしかった。依頼板の前では冒険者たちが仕事を選び、受付には短い列ができている。


「おはようございますぞ」

「おはようございます。本日も薬草採取でよろしいですか?」

「いつものをお願いしますなぁ」


 受付嬢は慣れた手つきで依頼書を出した。


「北東の森です。今回は止血草と鎮痛草を中心にお願いします。危険区域へ入る必要はありません」

「承知しましたぞ」

「それから、怪我をしても無理をしない。危険な魔物を見つけても追わない。勝手に妙な物を孕ませない」

「最後だけ薬草採取と関係ありますかな?」

「あなたの場合はあります」


 いつもの受付嬢。


 なのですが。


「今日は少しマイルドですなぁ」

「何がです?」

「いやぁ。何となく」

「余計なことを言うなら依頼を取り消しますよ」

「十分怖いですぞ」


 そうしていると、ギルドの入口から見覚えのある若い神父が入ってきた。


「あ」


 元童貞神父。


 向こうもおじさんに気づいて軽く頭を下げる。


「おはようございます」

「おはようございますぞ。今日は教会のお仕事ですかな?」

「少し用事がありまして」


 受付嬢が顔を上げた。


「神父様」

「はい」

「先に奥の部屋へ行っていてください」

「……分かりました」

「すぐに伺います」


 元童貞神父は妙に素直に頷き、そのまま奥へ消えていった。


「……」


「何です?」


「いえいえ。おじさん、他人様の事情へ首を突っ込まない大人ですぞ」

「そうしてください」

「では、薬草を取ってきますなぁ」

「お気をつけて」


 受付のお姉さん。


 元童貞神父。


 奥の部屋。


「世の中、いろいろありますなぁ」


 深くは聞かない。


 大人ですからなぁ。


     *


 北東の森は、もう何度も来ている場所だった。


 腰には木杯。荷物には、黒々として血管のような筋が浮いた薬草袋。


「オホッ……」


「今日は静かにお願いしますぞ」


 止血草。


 鎮痛草。


 解毒薬へ使う葉。


 採取した薬草を袋へ入れるたび、薬草袋が小さく反応する。


「オホォ……」


「いちいち返事をしなくてよろしいですぞ」


 午前中だけで依頼分の半分ほど集まった。


 魔物もいない。


 危険区域にも入っていない。


「今日は実に平和ですなぁ」


 このまま帰れば、非常にまともな薬草採取依頼。


 そう思っていた時だった。


「……誰かおりますかな?」


 木々の向こうから荒い息が聞こえる。


 枝を掻き分けて進むと、大木へ背中を預けて座り込んでいる女戦士がいた。


 短く切った髪。


 太い腕。


 盛り上がった肩。


 袖のない革鎧から覗く身体は鍛え抜かれており、腹を覆う装備の一部が外れているせいで、はっきり割れた腹筋まで見えていた。


「いやぁ」


「見るな」


「申し訳ありません」


 女戦士は片脚を伸ばしている。太腿から膝にかけて傷があり、血は止まりかけているものの、歩くには少々厳しそうだった。


「魔物ですかな?」

「少し油断した」

「歩けます?」

「歩ける」


 立とうとする。


「……っ」


「歩けておりませんなぁ」

「うるさい」


 おじさんは少し距離を取ったまま傷を見る。


「薬草ならありますぞ」

「効くまで時間がかかるだろ」

「まあ、そうですなぁ」


 女戦士がじっとおじさんを見る。


 顔。


 腹。


 薄くなった頭。


 ネクタイ。


「……お前」

「はい」

「ギルドにいる種付け豚だろ」

「随分と呼び名が広がっておりますなぁ」

「噂は聞いた。女とやると傷も疲れも馬鹿みたいに治るとか」

「性神の加護ですな」

「本当か?」

「本当ではありますが、同意なしには何もしませんぞ」


 女戦士は自分の傷を見る。


 森を見る。


 おじさんを見る。


「……やれ」

「はい?」

「治るんだろ」

「かなり」

「なら、やれ」

「本当に?」

「私が頼んでる」


 女戦士は真っ直ぐこちらを見る。


「ただし一つ条件がある」

「何でしょう?」

「嫌になったら私が止めると言う。その時は絶対に止まれ」

「もちろんですぞ」

「それ以外で私が何を言っても、役だと思え」

「役?」

「そういうのが好きなんだよ」


「なるほど」


 理解しましたぞ。


「では、あくまで合意の上で」

「くどい」

「大事なところですからなぁ」

「分かったから来い、豚」


     *


 傷へ負担がかからないよう場所を整え、性神が認める正式な形で向き合う。


「始めますぞ?」

「早くしろ」


 行為が始まった。


「オホッ……!」


「おお」


「何だその顔!」

「いえいえ」

「勘違いするなよ……オホッ……! 私は屈してないからな!」

「はい」

「殺せ! 豚にやられても心は屈しない……オホォッ……!」


「言葉だけ聞くと大事件ですぞ!」


「そういう役だって言っただろ……オホッ……!」


「確認しただけですなぁ」


「黙って続けろ!」


「はい」


「オホォォォォッ……!」


 よく響く声ですなぁ。


「こんなので私が屈すると思うな!」

「思っておりませんぞ」

「全然……大したことない……オホッ……!」

「はい」

「全然……オホォォォッ……!」


「少々無理がありますなぁ」


「うるさい!」


 言葉では威勢よく抵抗しているのに、表情は完全に楽しんでいる。


     *


 しばらくすると、女戦士の傷は見る間に塞がり始めた。腫れも引き、脚へ力も戻っている。


「女戦士さん」

「何だ……オホッ……!」

「もうかなり治っておりますぞ」

「だから?」

「治療目的なら、そろそろ」

「誰が止まれと言った」


「ですが」


 おじさんが少し離れようとする。


「おや?」


 女戦士の脚が絡み、こちらを逃がさない。


「離しませんなぁ」

「逃げるな、豚」

「もう治っておりますぞ?」

「私はまだ屈してない」

「目的が完全に変わっておりますなぁ」

「変わってない!」


「オホォォォッ……!」


「声はかなり喜んでおりますぞ」


「黙れ!」


 さらに力強く引き寄せられる。


「まだだ! 私は負けてない!」

「いつから勝負になりましたかな?」

「今からだ!」


「急ですなぁ」


「もっと来い!」


     *


「オホッ……! オホォォッ……!」


 身体はもう元気そのものだった。


「こんなので私が屈すると思うな!」

「はいはい」

「ギルドの男連中より凄いからって……オホッ……!」

「比較対象がおりますかな」

「ずっと力強くて……熱くて……オホォッ……!」

「褒めておりますぞ」

「褒めてない!」

「かなり褒めておりますなぁ」

「うるさい! 気持ちいいからって負けじゃない!」


「その理屈なら永遠に負けませんなぁ」


「そうだ!」


「オホォォォォォッ……!」


 女戦士は完全に調子に乗っていた。


「どうせこの後も変態なことさせるんだろ!」

「予定はありませんぞ?」

「嘘つけ!」

「なぜです?」

「もっと酷いことして、私を屈服させる気なんだろ!」

「しておりませんなぁ」

「首輪だけで町を歩けとか言うんだろ!」

「言いませんぞ」

「言え!」


「願望になっておりますぞ!?」


「違う!」


「オホォォォッ……!」


「完全に願望ですなぁ」


     *


「まだ私は屈してないぞ……!」


「はい」


「もっと酷いことされても絶対負けない!」


「する予定がありませんぞ」


「何でだ!」


「怒られましても」


「もっと豚らしく煽れ!」


「おじさん、既に十分豚扱いされておりますが」


「ならもっと豚になれ!」


「難しい注文ですなぁ」


 女戦士は息を切らしながらも、ずっと笑っている。


「まだだ……!」

「はい」

「私から止めろって言わせてみろ!」

「挑戦状ですかな?」

「そうだ!」


「では、無理をしない範囲で」


「そこだけ急に常識人になるな!」


「おじさん、現代日本人ですからなぁ」


「オホォォォッ……!」


     *


 ようやく二人とも落ち着いた頃には、女戦士の傷は跡形もなく消えていた。


「……」


「生きておりますかな?」


「殺す気か……」


「ありませんぞ」


「心は屈してない」


「まだ言いますかな」


「当然だ」


 女戦士はしばらく寝転がったまま荒い息を整えていたが、やがておじさんを見る。


「……待て、豚」

「まだ何かありますかな?」

「そのまま帰る気か」


「はい?」


「こういう時は最後まで後始末させるんだろ」


「おじさん、何も言っておりませんぞ?」


「分かってる。私に綺麗にしろって命令するんだろ」


「しませんなぁ」


「しろ!」


「だから願望になっておりますぞ!?」


「違う!」


 顔を真っ赤にしたまま、女戦士は自分からおじさんの前へ身を寄せる。


「これは屈辱だからな……!」

「はいはい」

「豚なんかの後始末までさせられて……私は絶対に屈してない……!」

「全部ご自分で始めておりますが」

「黙れ!」


 それでも女戦士は、自分で言い出した後始末を最後までやり遂げた。


 途中。


「オホッ……!」


「まだ声が出ますかな?」


「うるさい……!」


 余韻が戻ってきたらしい。


「こんなの屈辱なのに……オホッ……!」


「嫌なら止めてもよろしいですぞ?」


「やめない!」


「なぜです?」


「私が決めたからだ!」


「強情ですなぁ」


「オホォッ……!」


 終える頃には、女戦士はまた息を乱していた。


 しかも興奮が完全には収まっていないらしく、自分の身体を抱え込むようにして、その余韻を自分で鎮め始める。


「……」


「大丈夫ですかな?」


「見るな」


「見ておりませんぞ」


「絶対見るなよ」


「はい」


「でも離れるな」


「難しい注文ですなぁ」


 しばらくして、ようやく女戦士が立ち上がった。


「……よし」

「落ち着きましたかな?」

「私は最初から冷静だ」

「そうですかなぁ」


 それから自分の身体を見る。


 行為の痕跡は完全には拭っていない。


「そのまま町へ戻りますかな?」


「何か文句あるか」


「かなり目立つと思いますぞ」


「見せてやればいい」


「何をです?」


「私が豚なんかに屈してないってところをだ!」


「その状態で主張しますかなぁ」


「オホッ……!」


「まだ喜んでおりますぞ」


「うるさい!」


     *


 女戦士は本当にそのまま街道を歩いた。


 脚取りは軽い。


 怪我をしていたとは思えない。


 むしろ以前より調子がいいらしく、歩きながら何度か脚を曲げ伸ばししている。


「本当に治ってる」

「性神の加護ですからなぁ」

「変態な神のくせに性能だけは腹立つくらい高いな」

「よく言われますぞ」


 数歩。


「オホッ……!」


「まだですかな?」


「うるさい……!」


「町まで響きますぞ」


「聞かせればいい!」


「何をです?」


「私が屈してないってことをだ!」


「余計に誤解されそうですなぁ」


 町の門へ近づく。


 門番。


 通行人。


 ちらちら見る。


 女戦士は一瞬だけ赤くなった。


 しかし胸を張る。


「何見てんだ! 私は屈してないぞ!」


「そこを説明するから余計に怪しいのでは?」


「うるさい、豚!」


     *


 ギルドへ戻る。


「お帰りなさい」


 受付嬢はもういつもの顔に戻っていた。


「依頼品を確認します」

「こちらですぞ」


 薬草籠。


 止血草。


 鎮痛草。


 数量。


 問題なし。


 その横。


 ショートカットの女戦士。


 朝とは違い、傷一つない。


「怪我をされていたのですか?」

「少しな」

「現在は?」

「完治した」


 受付嬢が女戦士を見る。


 次に。


 おじさんを見る。


「……」

「……」

「何ですかな?」

「何も」


 女戦士が腕を組む。


「こいつに治してもらった」

「なるほど」


 全部理解した顔。


「でも心は屈してないからな」


「聞いておりません」


「次も負けない」


「聞いておりません」


「もっと酷いことされても絶対屈しない」


「聞いておりません」


「首輪だけで街を歩かされても――」


「だから聞いておりません!」


 ギルド中。


 こちらを見る。


「……」


「……」


 女戦士が顔を赤くする。


「何だよ!」


「なぜ私へ願望を報告するのですか!」


「願望じゃない!」


「では黙ってください!」


 おじさんはそっと受付嬢を見る。


「いやぁ」


「何です?」


「お姉さん、やはり今日はいつもよりマイルドでしたなぁ」


 ぴく。


「……余計なことを言わない」


「はい」


「依頼は完了です。報酬はこちら」


「ありがとうございますぞ」


 受付嬢の視線が、一瞬だけ奥の部屋へ向いた。


 おじさんも見る。


 しかし。


「では帰りますかな」


 深くは聞かない。


 大人ですからなぁ。


 その背後。


「次は負けないからな!」


「はいはい」


「もっと酷いの考えてこいよ!」


「やはり願望ですなぁ!」


「違う!」


「オホッ……!」


 ギルド中。


 また。


 こちらを見る。


「……」


「……」


「……」


「今のは誰ですかな?」


 女戦士。


 顔。


 真っ赤。


「知らん!」


「明らかにお姉さんですぞ!」


「屈してないからな!」


「それで全部押し切る気ですかな!」

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