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種付けオッサンとビッチギャル ~二日に一度ヤらないと死ぬ二人の異世界転生~【注目15位、日間217位ありがとうございます】  作者: 黒瀬 量衡
第一章 種付けオッサンとビッチギャル

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第十三話 鞘を孕ませて聖書でオホ声、森で豚と止まらなくなったんだけど

「……うわ」


 受付の前にいたオッサンが振り返った。


「お嬢さん。第一声がそれですかな!?」


 脂っこい。


 腹が出てる。


 頭も薄い。


 背だって高くない。


 昨日より清潔には見えるけど、だからって格好よくなるわけじゃない。


 朝から見たい男かって聞かれたら、普通に見たくない。


 なのに。


 見つけた瞬間、身体だけは勝手に反応した。


 あ。


 いる。


 って。


 マーキングのせいだけじゃない。


 昨日より、また少し濃くなってる。


 何が濃いのかは説明できないけど、オッサンとしての存在感だけが無駄に増している。


「何ですかな、その顔」


「今日も汚いなって」


「朝から酷い!」


「でも風呂入った?」


「入りましたぞ」


「珍し」


「女将さんに入れられましてなぁ」


「……女将?」


「はい」


「ふーん」


 何で女将と風呂入ってんの。


 聞こうとしたところで、受付のお姉さんが依頼書を一枚差し出した。


「お二人とも、こちらをお願いします」


「二人?」


「はい」


 森での薬草採取。


 鎮痛薬に使う葉と、川沿いに咲く解熱用の白い花。


 依頼そのものは普通。


「うち一人でよくない?」


「昨日、ゴブリンに遭遇しましたね」


「倒したし」


「倒せることと、安全に依頼を遂行できることは別です」


 受付のお姉さんが、今度はオッサンを見る。


「それに、この人を一人にすると何を変質させて帰ってくるか分かりません」


「いやぁ」


「否定してください」


「難しいですなぁ」


「ほら」


「じゃ、うちが監視すんの?」


「互いに監視してください」


「絶対無理じゃん」


「同感ですぞ」


「そこだけ意見合うな!」


     *


 森に入ってからしばらくは、拍子抜けするくらい普通だった。


「そこ、白い花」


「見えておりますぞ」


「踏むなよ」


「おじさんを何だと思っております?」


「昨日ゴブリンに殴られてた人」


「あれとこれは別ですなぁ」


 しゃがんで花を摘む。


 オッサンが籠を差し出す。


 次は鎮痛葉。


 少し移動して川沿いへ。


 鳥が鳴いてる。


 水が流れてる。


 風も気持ちいい。


 魔物もいない。


 普通。


 めっちゃ普通の採取依頼。


 このまま終われば、今日こそ普通の冒険者っぽい一日になる。


 そう思った頃だった。


「……」


「……」


 急に。


 二人ともしゃべらなくなった。


 近くにいるだけで分かる。


 向こうも来てる。


「おっさん」


「はい?」


「来てる?」


「何がですかな?」


「とぼけんな」


「ドゥフ」


「笑うな」


 こっちも落ち着かない。


 四十八時間の期限なんて、まだ全然先。


 でも、あれは死なないための最低条件でしかない。


 欲しくなる時は、もっとずっと早い。


「……最悪」


「奇遇ですなぁ」


 オッサンの視線が下がった。


 うちの腰。


 木剣。


 その鞘。


「何見てんの」


「いやぁ」


「やめろ」


「まだ何も言っておりませんぞ」


「目が全部言ってる」


「これは、ちょうどよさそうですなぁ」


「人の鞘見て言うな!」


 即答した。


 したけど。


 周りを見る。


 誰もいない。


 依頼品も、あと少しで規定量。


「……手早くね」


「お嬢さんも大概ですなぁ」


「うるさい」


     *


「オッホォォォォッ!」


 森の静けさが、一発で消し飛んだ。


「声でか!」


「元気ですなぁ」


「おっさんのせいだから!」


 うちの鞘が雌化した。


 傷んでいた革まで妙に艶を取り戻して、木剣を収める道具としては明らかに性能が上がっている。


 その代わり。


「オッホォォォォォッ!」


「だから響くって!」


 オホ声。


 いつもの。


 性能は最高。


 挙動は最低。


 しかもオッサンは、そのまま正式な種付けプレスまで始めた。


 どん。


「オッホォォォォォッ!」


 どん。


「オッホォォォォッ!」


「森中に聞こえるじゃん!」


「出ますぞ」


「オッホォォォッ!」


「濃いのが」


「オッホォォォォォッ!」


「オッ! オッ! オッ!」


「その決め台詞、絶対毎回言う気じゃん!」


 とか言ってる場合じゃなかった。


 うちも完全に来てる。


 荷物から聖書を取り出した。


「持ってきておりましたなぁ」


「文字の勉強用!」


「本当に?」


「うるさい!」


「オホッ……!」


 四隅が返事した。


「お前も黙れ!」


 身体の奥から、祝福の波が一気に上がってくる。


「来る……!」


 息が詰まる。


「来る来る来る……っ!」


「あっ、ダメ!」


「オホッ!」


「オッホォォォォォッ!」


 うち。


 聖書。


 鞘。


 どれがどの声なのか、途中から分かんなくなる。


「静かな森でしたのになぁ」


「誰のせいだし!」


     *


 一区切りついた。


 鞘は静かになった。


 聖書も黙った。


 なのに。


「……」


「……」


 うちらだけが終わってない。


 目が合う。


「お嬢さん」


「何」


「まだですかな?」


「そっちこそ」


「まだですぞ」


「……うちも」


 一秒。


「最悪」


「奇遇ですなぁ」


 帰ればいい。


 頭では分かってる。


 残りの薬草を取って。


 ギルドへ戻って。


 報酬もらって。


 それで終わり。


 なのに身体は、帰る気なんて一ミリもなかった。


     *


 ざっ。


 草の上へ二人で転がった。


 葉が擦れる。


 服がこすれる。


 すぐ近くに、オッサンの体温。


 汗の匂い。


 絶対好きじゃないはずの匂い。


 なのに、身体にはめちゃくちゃ刺さる。


「……」


「……」


 言葉はいらなかった。


 ちゅ。


「オホッ……!」


 唇が触れる。


 ちゅっ。


 離れる。


 すぐまた近づく。


 くちゅ。


「オッ……!」


 舌が触れた。


 くちゅっ。


 ちゅぷ。


「オッホォォォォッ!」


「オッホォォォォォッ!」


 声まで重なる。


 顔が近い。


 呼吸も。


 汗も。


 体温も。


 全部近い。


 ちゅ。


 くちゅ。


 ぺろ。


 離れて。


 また。


 ちゅぷ。


「オホッ……!」


 頭ではずっと思ってる。


 汚い。


 脂っこい。


 腹出てる。


 頭薄い。


 全然タイプじゃない。


 なのに身体だけ。


 もっと。


 近く。


 まだ。


 って言ってる。


 ざっ。


 ざっ。


 草が揺れる。


 衣擦れ。


 乱れた呼吸。


 湿ったキスの音。


 それだけで。


 また熱が戻る。


     *


 ふっと目が合った。


 何も言わなかった。


 オッサンがうちを仰向けにする。


 正式な種付けプレス。


 どん。


「オッホォォォォォッ!」


「オッホォォォォッ!」


 同時。


 ちゅっ。


 くちゅ。


 ちゅぷ。


 唇を離した瞬間には、また舌。


「オホッ……!」


 頬。


 ちゅ。


 顎。


 ぺろ。


 首。


 ちゅっ。


 また唇。


 くちゅっ。


「オッホォォォォッ!」


 会話なんて無理。


 する気もない。


 どん。


 ざっ。


 草が揺れる。


「オホッ!」


「オッホォォォッ!」


 ちゅ。


 くちゅっ。


 首を舐める。


 頬へ吸いつく。


 また唇。


「オッホォォォォォッ!」


 一回。


 区切りが来る。


 でも。


 離れない。


 ちゅ。


 また。


 くちゅ。


 どん。


「オッホォォォォッ!」


 もう一回。


「オホッ……!」


 さらに。


 また。


 途中から何回目なのか、どうでもよくなった。


 何度終わっても。


 少し息を整えるだけで。


 顔を見る。


 体温を感じる。


 ちゅ。


 また欲しくなる。


 首。


 ぺろ。


 頬。


 ちゅっ。


 唇。


 くちゅ。


「オッホォォォォォッ!」


 終わらない。


 まだ。


 次。


 また。


     *


「……」


「……」


 気づいた時には、二人で空を見ていた。


 木の葉の隙間から青空。


 鳥の声。


 川の音。


 普通の森。


 さっきまでの騒ぎだけ、完全に場違い。


「おっさん」


「はい」


「依頼」


「……」


 二人で籠を見る。


「あと少しですなぁ」


「先にほとんど集めててマジよかった」


「ですなぁ」


 立ち上がる。


 身体は全然疲れてない。


「性神、そこだけほんと優秀」


「同感ですぞ」


 ふと。


 オッサンの首が目に入った。


「……」


 赤い跡。


 一つ。


 二つ。


 三つ。


「あ」


「何ですかな?」


「何でもない」


 うちの。


 絶対。


 さっき吸ったやつ。


「帰るよ」


「お嬢さん?」


「早く!」


     *


 残りの薬草を摘んで。


 ギルドへ戻った。


「確認します」


 受付のお姉さんが籠の中を見る。


「鎮痛葉、規定量」


 次。


「白花も問題ありません。状態も良好です」


「やった」


「こちらが報酬です」


 普通。


 完全に仕事モード。


 だった。


 視線が。


 オッサンの首で止まるまでは。


「……」


「あ」


「どうしました?」


 笑顔。


 いつもの笑顔。


 なのに。


 なんか怖い。


「森で」


「はい?」


「悪い虫に刺されたようですね」


 オッサンが自分の首を触る。


「いやぁ、これは」


「赤くなっています」


 受付のお姉さんが。


 一瞬だけ。


 うちを見た。


「……」


「何」


「いえ」


 またオッサンへ。


「後で治療しましょう」


「治療ですかな?」


「はい」


 笑顔のまま。


「かなり念入りに」


 オッサンの顔が引きつる。


「管理では?」


 うちが聞いた。


「管理です」


「やっぱり」


「お嬢さんはこれで結構です」


「うん」


「この人は残ってください」


「おじさんだけですかな?」


「はい」


「悪い虫の治療?」


「そうです」


 受付のお姉さんが、もう一度オッサンの首を見る。


「ずいぶん性質の悪い虫だったようですから」


「……」


 絶対。


 うちのこと言ってる。


「じゃ、おっさん」


「はい?」


「頑張って」


「お嬢さんのせいでは!?」


「知らなーい」


「酷い!」


 受付のお姉さんが静かに微笑んだ。


「では」


 オッサンを見る。


「後で、しっかり管理します」


「怖いですぞ!」

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