39話 『すーぱーもふもふぱらだいす』
◇
投獄生活一日目。
布団もないし水は腐ってるし臭いし看守はめちゃくちゃ冷たい。
地面は濡れてるし泥々だし蹲ってたら看守が覗いてきて何も言わずに去っていく。
せめてなんか言ってくれ。
近くで投獄されてる別の人たちは、生きてるのか死んでるのかもわからないくらい何も喋らない。
気が狂った人とかいるものなのかなと思っていたけど、その領域すら超えてるのかも。
けれど居るならせめてなんか言ってくれ。
人間味が無さすぎて辛い。会話したい。
あと、とにかく寒い。くしゃみが出てきた。
投獄生活二日目。
朝起こされるとか、そう言うのはないけど、夜は寒すぎて眠れるわけがなくて、ずっと隅っこでぶるぶる震えていた。ジェットに毛布になって貰いたかったけど、看守が寝ずの番をしているので、あまり変なことはできなかった。というか、ジェットのことがバレるのはまずい気がする。仕方ないからただのアクセサリーとして指に嵌めておこう。ジェットも察しているのか、大人しくしている。
あとは、一応飯的なものは出るらしい。カチコチのパンと水のような臭いスープ。
こっそりアイテムボックスに一回仕舞って説明を見てみたけど、毒はなさそうだったので食べてみた。
クソまずかった。
今日看守はやたら人懐こかった。新しい囚人に興味深々なのか、檻の前に貼り付いて一日中話しかけられた。
誰かと話したいとは言っていたけど、ここまでとは言ってない。
おかげで水も飲めなかった。
投獄生活三日目。
寒すぎて寝れないと思っていたけど、流石に眠気の方が勝ったらしい。寝れはしたけど、喉が痛い。
頭も痛い。咳が出る。
ずっと蹲ってるので身体のあちこちが痛くなって来た。
今日の看守は冷たい方。俺がどれだけ咳き込んでもガン無視。まあ、こんな環境に放り込まれてたら誰だって病気になるよな。
ずっと寒いし。寒いんだけど、流石に慣れて来たのか、よくわかんなくなって来た。
なんだかふわふわする。
とうごくせいかつよっかめ。
さむい。
とうごくせいかついつかめ。
ふるえる。
投獄生活六日目。
風邪はマシになったのか熱は下がった。
けど咳が止まらない。
夜中ずっと咳してたら流石にうるさかったのか、近所の囚人に壁ドンされた。壁ドンってあれね、隣人が抗議の意を込めて壁をぶん殴って主張してくるお気持ちの方ね。万が一にもトキメキのドンじゃないからね。
こんなこと書けるくらいには回復したようだ。
しかし飯がまずい。
まあ、こんな環境じゃ食欲も湧かないんだけどね。
投獄生活七日目。
うるさい方の看守が毛布をくれた。天使。丸顔のくりくりの目をしたおじちゃんの天使。
演奏家なんだよって言ったら演奏してって言われた。どこからともなくアコギを取り出したら怒られないかな? と思ったけど普通に拍手された。
調子に乗って演奏してたら他の囚人からも拍手をもらった。やったぜ。
まあ喉が痛くて一曲しか弾けなかったけどね。
激しく咳き込んでたら天使の看守が内緒だよと言って飴玉をくれた。こいつ聖人すぎんか?
ハッカ飴みたいな味がして最高だった。
投獄生活八日目。
風邪は治ってないみたい。壁の苔の数を数えていた。今日の看守は冷たい方。
心なしか、牢獄の雰囲気も冷たい感じがする。
とうごくせいかつここのかめ。
さむい。
とうごくせいかつとーかめ。
よるになるとしろくてふわふわしたなにかがとおりすぎる。
ひかっててきれい。
とうごくせいかつなんにちめ?
さむくなくなってきた。
とうごくせいかつほにゃららめ。
こえがする。だれにもきこえてないこえ。
あきらめるな。だって。
なにを? もうわからない。
てんしがいうには、おれのいのちは、あとすうじつくらいなんだとか。
さいごのひにはせいだいに、くそまずいすーぷににくをいれてくれるんだって。
いらねーよいまさらそんなもん。
とうごくせいかつほにゃららめ。
ひかりがおりのなかにいる。
そいつはじっとおれをみつめて、またたきもせずたたずんでいる。
ときおりさびしそうにそらをみあげて、すてられたこいぬみたいななきごえをあげる。
そいつはてんしのかんしゅにはみえなくて、つめたいかんしゅにはむしされた。
だれにもみえない、かわいそうなひかりに、せめてものうたをおくろうか。
これがゆいごんになるかもしれないから、すこしじかんはかかるだろうけど、まっていてくれるかな。
さいごにのこすなら、どんなうたがいいだろうか。
◇
あー全部やんなっちゃうな
壊れちまえ 世界を呪うけど
でも頑張らなくちゃな
諦めるな 呪いみたいな声がする
こんな夜には目を瞑って
遠い世界を思い浮かべて
なんなら雲に浮かんだような世界で
ふぁんしーぱれーど かませばいいさ
すーぱーもふもふぱらだいす
僕が求める癒しの空間
そう すーぱーもふもふぱらだいす
ストレスフリーが格言さ
もー全部やんなっちゃうな
馬鹿だなあ 世界が笑うけど
でもしんどくなってきたな
理不尽だ 救いはないようだ
こんな夜には目を瞑って
幸せな世界を思い浮かべて
なんならアニマルあふれるような世界で
ふぁんしーぱれーど かませばいいさ
すーぱーもふもふぱらだいす
僕が求める癒しの空間
そう すーぱーもふもふぱらだいす
好きなだけもふもふしていいよ
もっと すーぱーもふもふぱらだいす
時間の感覚も無くなって
やば すーぱーもふもふぱらだいす
何を呪ったか忘れたよ
あヨイショ すーぱーもふもふぱらだいす〜
ストレスフリーが格言さ!
◇
投獄生活最終日。
嵐が来た。
それは、女の形をしていた。




