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35話 幕間〜とある傲慢の終焉〜

ザマァ回です。この物語の主眼ではないこともあり、胸糞表現もあるため、苦手な方は飛ばしてください。

 

 ◆




「……ハ?」


 端末に映る文字の羅列を目にした時、思わず画面をかち割りたくなった。

 握りしめたところで、彼女の握力ではヒビの一つも入らないが、かと言ってぶん投げては、また画面がバリバリになってしまう。親に買い換えてもらうにしても、相応の言い訳が必要なのだ。


『……っ!』

『キャハハハハ!! ザッコ!! こんなんで泣くとか男として恥ずかしくないわけ!? 耐えてみろや雄ならよォ!!』


 ガスッ! ドスッ! と鈍い音が鳴る。モザイクはあるが、蹴られているのは下僕二号だ。


 場面はすぐに変わって、忌々しい朴念仁が蹴られている映像。朴念仁は情けない顔で笑って誤魔化すばかり。彼女の悪意に気付いてすらいない。


「一体いつ誰が撮ったのよ……ッ!!」


 結局キレて端末をぶん投げてしまった。壁に消えない跡が残り、端末の画面も大きくヒビが走った。


「こんな映像撮れるなんて、内部犯しかありえない……アイツらァ……ッ!!」


 元メンバーたる下僕どもの顔を思い浮かべる。その誰もが、彼女の側に控えていない。


 苛立たしげに端末を拾い、片っ端から電話をかけるも、誰一人繋がらない。


 ガシャンッ!! 再び端末が暴力の捌け口にされる。


「なんッで、繋がらないのよォ!!!」


 怒りのあまり近くのソファにあったクッションをハサミで滅多刺しにする。

 中の綿が飛び散り、部屋はあっという間にゴミ屋敷になる。

 見るに耐えないが、片付けは下僕どもにやらせれば良い。


「ショウ!! どこに居るのよ!! 早く来なさいよ!!」


 近くの部屋に待機しているはずの男を呼び付ける。だが、今日になって呼びかけに応じない。


 腹立たしくドスドスと床を鳴らしながら隣の部屋を乱雑に開ける。だがそこはもぬけの殻。


 彼の荷物がない。


「ハ?」


 慌てて客間としているもののほぼ下僕二号の部屋にしている場所も見たが、そこももぬけの殻。


「何これ。どうなってんの? アイツらどこに行ったのよ」


 部屋に戻り、端末を見れば、一通のメールが来ていた。


 そこには。


「…………嘘でしょ?」


 たった一言。これまで傘に着ていた権力者たる彼女の父親からのメール。


『今回ばかりは庇いきれない。然るべきところで反省してきなさい』


「ハァ!? ふざけんなッ!! いつもみたいに揉み消せよッ!! 何が揉み消せないよ!! こんなの動画消させれば充分でしょ!?」


 彼女の見込みは甘かった。そもそも、ろくな情報収集能力のない彼女ですら目についた動画なのだ。それだけ目立つ位置に掲げられているものを、削除したくらいで無かったことになどできるはずもない。


 彼女には、理解できないことなのだが。


「そうだ、あれよ、名誉毀損! アレで訴えれば良いじゃない! 勝手に投稿してるんだし、そうでしょう!?」


 怒りのままにメールに返信する。

 しかし、返事は来ない。


「あ〜〜〜〜ッ!! もうッ!!」


 ガシャンッ!! 端末も哀れである。


 ――――――そこに。


 ピンポーン。


 無機質なインターフォンが鳴る。

 誰もいないので仕方なく自分で画面を確認すれば、見知らぬスーツの男が二人。


「ハ? 誰これ。出るわけないでしょ。ウザ」


 ピンポーン。


 男たちはドアまで叩き出した。


「カリンさん。警察です。お話があります。ここを開けてください」


 ドンドンドン、ピンポーンピンポーン。


「ハ? 警察?」


 なんでこんな程度のことで警察なんて呼ばれてんの? 意味わかんないし。


「私が何したっていうのよッ!!」

「いるんですね? あなたには数々の傷害容疑と脅迫容疑がかけられています。署までご同行願います」

「うるさいわねッ!! 行くわけないでしょ!? 帰ってよ!! ヘンタイ!!」

「あー……あまり我々に暴言を吐かれますと、裁判で不利になる可能性があります。また、あなたの親御さんからは、こちらの部屋に立ち入る許可もいただいております。無駄な抵抗はなされないほうが賢明です」

「ハァ!? 何それ!? 知らないわよ!?」

「すみません、お願いしてもよろしいですか?」


 ガチャガチャと鍵を開ける音がする。

 こいつら勝手に入って来やがった。


 彼女は咄嗟に手近にあった鉄バットを掴んで剣のよつに構えた。悪漢を退治する心境で。


 ドカドカと入り込んできた男達。

 彼女が襲い掛かろうとして、すぐに固まった。


 バシン!!! と引くくらいデカい音がした。

 耳がキーンとなって、気が付いた時には彼女は地面に倒れていた。


 目の前の男に頬を叩かれたのだと気付いた時には、男は彼女に失望の眼差しを向け、踵を返していた。


「パパ……なんで……どうして……」


 警察に頭を下げる父親に、声をかける。

 彼女の父親は、涙を流す娘を気遣うでもなく、射殺すような視線を向け、低く言葉を吐いた。


「もうお前は勘当だ。二度と家の敷地を跨ぐな」


 それだけ言うと、再び警察に頭を下げて去っていってしまった。


「そんな……」


 力なく、さめざめと泣く彼女に、警察が近付き、腕を掴んで無理やり立たせる。

 そのまま連行するようだ。

 彼女は抵抗の意思を無くし、ただ茫然と、着の身着のままパトカーに押し込まれる。


「カリン様」


 そこに、聞き慣れた声がした。探していた、下僕の声。


「ショウ……」


 彼女の表情が怒りに満ちていく。


「アンタ……どこに行ってたのよ……! アンタのせいでパパに叱られたじゃないの……!」


 噛みつきそうな勢いだった彼女を、警察が押さえる。

 下僕……ショウは、そんな彼女の姿を見て。


「…………」


 背筋がゾッとするほど恍惚とした笑みを見せた。


「あぁ、カリン様……お労しい。牢獄の中でしっかりと反省なさってください。あ、面会は毎日伺いますね」

「ハ……?」


 無理やりメンバーとヤらせた時でさえ一度も見たことがない下僕の顔に、困惑する彼女。


「ご安心ください。出所後の生活は私が整えておきます。えぇ、それはもう。あなたが二度と愚かな行為が出来ないように、二度と陽の目を浴びられないように、しっかりと管理いたしますので」


 そもそも、この男はこんなに喋らない。いつも無口で、何を思っているのかさえわからない。


 そんな男が。


「――――――楽しみにしていてくださいね?」


 こんな歪んだ笑みを見せるのか。


「…………」


 開いた口が塞がらない。

 パトカーは無情にもそのまま発進し、完全に放心状態となった彼女を乗せて走り去る。




 果たして、どこから間違ったのか。

 誰が狂っていたのか。


 いや、自分の行いが彼を狂わせたのか。


 彼女の処遇は想像の通り。余罪があまりにも多かったが、そこまで長くはかからなかった。


 ただし、出所後の彼女の行方を知るものは、唯一忠誠を誓っていた下僕しかいない。

メリバ? いえ、ハッピーエンドです。

彼については全く語られませんでしたが、歪みまくったヘキを持つショウくん大勝利エンドでした。

というかまだ任意同行っぽく見えるのにまあまあ無理やり連れてったところとかツッコミどころ満載ですが雰囲気なのでスルーしてください。


また、キスプラの人間関係はドロッドロすぎるのでご想像にお任せします。興味ないか! あはは!

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