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Spring In  作者: Casino
Ⅰ 記憶の証明
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3/12

02話 後の証

夜になれば太陽も消えひんやりとしている。

代わりに空には満月が寂しそうに遠くに浮かんでいた。

夜の10時ぴったり、晴輝はとある公園に来ていた。そこには荷物を持った優も一緒だ。回りにある木がざわざわと揺れる。ただその音が公園を満たしていた。

「ささ、行こうかー!」

「はぁ、行こうか」

相変わらず優は上機嫌だ。木刀を腰につけている。先生か警察に見つかったら問題になるのは間違いない。苦笑いをしながら晴輝は彼の右を歩くのであった。

「話によるとこの山みたいだな」

問題の山に近い公園で待ち合わせをしていたので少し歩くと着いた。

「もうこんな時間なんだし早く済ませてくれよ」

自分も優も家はこの辺りだが時間が時間だ。一刻も早く帰りたい。その反面楽しみという思いもあるのだから困ったものだ。

「分かってるよ。じゃあ行こう」

アスファルトの道を逸れ山道に入る。目の前を貸してもらった懐中電灯で照らす。その先には整備されていない土の細い道が続いている。これを進んでいけば山を越えられる。そこまで大きな山ではないので往復で一時間ぐらいだろうか。

「なんかテンション上がってきたぜ」

「あーそうか良かったなー」

何でそんなに機嫌が良いんだよ。気味が悪い。木葉が擦れザザザ、といった音が辺りに広がる。時間が止まっているように思った。動くものは2人だけ。少し早足になる。足下に光を向けながらつまずかないように気を配る。


先にチラチラと明かりがある。

「見えた、あれがこの道の端か!」

「多分そうだろうな」

山道をひたすら歩いて反対側まで来た。が、あるのはあまりにも静かな住宅地だけ。シャツは汗で湿っている。額の汗を拭いながら早くシャワーを浴びたいと思った。

「ほんと疲れた。てか、何もなかったよな」

「ああ、何もなかったよな...」

ありゃ、珍しく優がへこんでいる。これは少し励ましてあげた方が良いのかな。

「ま、まぁ、楽しかったよ。だからさ、あんまり落ち込」

「よっしゃ!帰るぞ!なんとしても手がかり見つけてやる!」

聞いちゃいねぇ。このやろう人の善意を無視しやがって。考え方が単純すぎるというかバカというか。

「はいはい、早く帰ろうか」

ため息をつきながら携帯を手に取り時刻を確認する。10時40分。まあ予想してたぐらいの時間には帰れそうだ。喉も乾いてきたし小腹も空いてきた。家の近くのコンビニで何か買おうか。どちらにしろ早く帰りたい。

「行くぜい。ついて来い、晴輝ー!」

有り余る気力を放散する優の後を追い来た道を引き返す。まぁ楽しかったのは事実だ。疲れたけど、暑いけど。


はぁ、せっかく部活休みでゆっくりしようとしたのに何やってんだか。そんなことを考えながら上り坂を歩く。月の光が木々で遮られているので明かりといえばやはり懐中電灯の光のみだ。もしここで電池が切れたりしたら大変だろうなと考えた。

「おーい、もう少しペース上げようぜ」

前から優の声が飛んできた。我に返り少し早足になる。

ガツッ-

「うあっ!?」

見事にこけた。ろくな事無いな、ほんと。

「お、おい、大丈夫かよ?」

わざとらしく笑いながら近づいてきた。腹を立たせながらうつ伏せになった体をゴロンと返す。

そこで気付いた。顔の横、地面に長いつばの青い帽子が転がっていた。もちろん晴輝も優も帽子は持ってきていない。となると落し物か。こんな山中にか?

「優、これなんだろ」

重い体を起き上がらせ、その帽子を拾い上げる。

「晴輝!これあの失踪した奴のじゃねぇか!?」

そんな訳無いだろう。だが見ると土埃もあまり被っておらず濡れてもいない。3日前辺りには雨が降っていたはず。とすると、ごく最近のものということか。優のほぼ当てずっぽうに聞こえる推測を否定する事は出来ない。

「優、あれ...」

晴輝の声は震えていた。

「ん?どうした?」

小刻みに震える人差し指の先を辿る。道を少し外れた所にある木。目で見ると普通の木だ。しかし何と言うか、この世にあってはいけない物のような気がするのだ。逃げろ、そう晴輝の本能のようなものがそう告げている。

「あの木がどうしたよ?」

「優はおかしくないか?何か、違和感が、」

そうだ、木の種類が違うんだ。幹の色、葉の形。これだけ周りとは全く違う種類なんだ。しかも1つだけ。相変わらず危険信号は点っている。

「そんなことないだろ?ほれほれ」

優は軽い足取りで木に近づいてポンポンと叩いた。

「ちょ、やめ...」

その瞬間、辺りは黒で塗りつぶされていった。懐中電灯の明かりも見当たらない。そして体が鉛になったかのように重くなる。たまらず膝から崩れ落ちる。

「く...そ...」

目の前では優も自分と同じ体勢になっていた。

そして意識が遠くに逃げていく。暗く、暗くなっていく。底なし沼に飲み込まれていくような感覚。

それがこの世界での最期となった。

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