平行線
ルビが上手くいかないから無理矢理に振ってみたものの……。
―― 美結side ――
「ねぇ。アレは一体どういう事?」
私の問いに、ユアンスはいつものように何も読み取れない薄っぺらい作り笑顔を貼り付けて答えた。
「“アレ”って言われても僕にはどれの事か分からないなぁ。」
……。
ユアンスが素直に話すなんて、期待していなかった。
――――それなら、自力で調べるだけ。
アイクの先端から球を発射させて、ウザいことを考えているクソ虫を黙らせると、目を瞑って意識を集中させる。
ギィーンとした激痛と共に、たくさんの声が頭の中で響き出す。
クソ虫は痛みを堪えている。
美代と麻美花は楽しく雑談。
ユアンスとミーリャからは案の定シーンとした沈黙のみ。
――――ゆっくりと範囲を広げる。
3軒隣の青果店のおじさん。私たちを嫌っているわけではないけれど、女性群――特に向かいのパン屋のおばさんとその隣の薬品店のおばさんに、逆らうことができない事に罪悪感を感じている。――振りをして自分を偽っている。
その、パン屋のおばさん。秩序を乱す余所者を排除したくてしかたがない。
さっきの暗殺者、ユンゴさん。妻と娘に会いたいと思っている。が、悪者側なので会うことは許されない。
雑貨屋の女性。娘を役立たずで邪魔と感じている。
商人の男性。経営悪化で火の車、ヤバい仕事に手を出し始める。
違法奴隷にされた子供。家に帰りたい。家族に会いたい。
などなど。
その他、兄姉に劣等感を感じる弟妹。男女トラブル。
ぐちゃぐちゃに入り乱れ、混ざり合う感情。明より暗の方が、圧倒的に多い。
余計な情報はある程度無視して、グーっと範囲を広げていく。
暗闇の中の心の叫び。苦しみの中の喘ぎ。絶望の中の悲鳴。
様々な思いが交差し、歪んだ国。
小さな幸せにも気が付く事ができない人々。
立場を無視して互いの声を聞けば、解決するであろう問題。しかしそれはできない。
心が乾いて砂漠の様。水を欲している。
そして、ユアンス達は何者なんだろう……。
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集中力を切って声の聞こえる範囲が弱まっても、鈍く重い頭痛は続いていた。
激痛に耐えられず、机に項垂れるけれど、それで頭痛が収まるわけじゃない。
そこへ、ふとこちらを真剣な眼差しで見るミーリャと視線が合う。
私と目を合わせたミーリャは途端に怯え、1、2歩退く。
しかし、それに気が付いたユアンスが元気付けるように背中を押した事により、ミーリャは私のすぐ側まで来ていた。
「ぁ、ぁ……あの、だ、だ、だ、大丈夫です……か?」
「うん、大丈夫。平気平気~♪」
心配そうに声をかけてくるミーリャに、笑顔を作る。
――本当の事なんて言わない。
「無理はダメです。」
急に真顔になったミーリャが、スッと私の肩に手を伸ばして呟く。
「【ヒール】。」
「え?」
普通の頭痛と違い“気持ち悪い能力”を使ったことによる頭痛等の痛みに、魔法での治癒は効果が無い。
しかしさっきまでの激痛が、嘘のように消えていた。
「私のオリジナル魔法です。元ある魔法を、なぜ素直に真似なきゃいけないんでしょうね?自分なりに使いやすくしたって良いでしょうに。」
ボソリと、吐き捨てるように呟いたミーリャは、ユアンスの影へと戻る。
オリジナル魔法を作ってはいけない理由。――――それは、法律でそう決められているから。
もっと言えば、悲劇を繰り返さない為。
それなのに彼女は普通に使った。
――――ホント、彼女達は一体、何者なんだろう。




