敵味方
「んー。まず、この人達は街の人たちから見れば悪者ではあるよ。うん、一応いろいろと不味い事もやってるからねー。」
「ん??なのに敵じゃないってどういう事だ?」
悪者なら敵だろう。普通に考えて。
「えぇと、うーん……。……あー。あんた、根本的な事を認識してなかったねー。」
美結は何かを理解したらしく納得したように頷くが、また、疲れたように溜め息を吐いた。
そんなに溜め息を吐いてると幸せが逃げて行くとか行かないとか……。
「あんたがアホなせいで、こっちは苦労してるんでしょうが……。」
「それでー?わかるように説明ヨロシク~。」
溜め息を吐く美結に、俺は説明を促す。
ちなみに、彼が偉そうに上から目線の言葉という事に気付いてはいない。完全な無意識。
「ハァ。…………あのね、まず、この国はイカれてるの。いろんなモノが歪んだり崩壊してるの。」
「ふーん。」
だから何なのだろう。
「で、一般市民は間違った情報を信じて、……言っちゃえば、力を持つ人達に操られてるの。」
急に話が飛んだ気が……。
まぁいいか。
「んー、違うか。えと、力を持ってるやつが自分の都合のいいように一般市民を操ってる、か。
そんで、その操り人形の一般市民から悪者と認識されているからって、それが本当に悪者とは限らないって事。集団心理ってやつかしら?」
「そうそう。厄介な奴、逆らう奴は、悪者にして消しちゃえばすべて解決。邪魔をする奴がいなくなって、信者達からの株も上がる。良いこと尽くしだねぇ。」
「本当、自分勝手……。」
「なるほど?」
たぶん理解できた。
「……ん?」
あれ?
「そういえばユンゴさん、他の方達と女遊びに行かないのですか?」
「うん。俺には妻も子供もいるからねぇ。浮気はできないよ。する気がないんだ。」
「……!?」
いつの間にか、黒装束に身を包んだ長身の若い男性が美結と談笑していた。
「一途なんですねー。」
「アハハ。なんか照れるなぁ。」
「おーい。美結、誰なんだー?そいつ。」
「そいつとは酷いなぁ。」
「ユンゴさんはこの一般認識悪者集団<サドグラッシン>のメンバーの一人で、役割は暗殺者。怪しい二人……つまり私達に気が付いたから様子を見に来たんですよね?」
「そこまでバレちゃってるのかぁ。で……――――――君は一体何者?」
ユンゴの間延びしていた声と一転、殺気を帯びた低い声へと変わる。
「美結って言います。こっちのクソ虫は優馬。これを団長さんに届けに来たんですよ~。」
ニコニコとそう言って、袋を差し出す美結。
「見本用に、って事ですよね。たぶん。」
「そっかー。お頭が帰ってきたら渡しておくよ。」
「ありがとうございます!では、私たちはこれで~。」
にこやかに笑って背を向ける美結の背後に、サッとユンゴが現れて首元にナイフを付き出す。
「……最上級の鑑定スキル持ち?」
「まぁ、そんなところです~。」
殺気を振り撒くユンゴと、笑顔の崩れない美結。
背後でそんなことが起きている事に気付かない俺は、さっさと店に帰りたくて歩を進めていた。




