閑古鳥
ミキラカ街。
そこは前世界でのいわゆる商店街と同様の仕様で、太い道を挟んだ両脇に多くの店が軒を連ねる。道は縦に3本、横に5本の太い道が中心となり、店と店の隙間にある細い路地は至るところ無数に張り巡らされていて、地元の者でも下手をすれば迷子になる。
以前、王様の手下らと鬼ごっこをした際、彼らが容易く捕まったのはこの路地が複雑で迷いやすく、行き止まりが多い為でもあった。
閑話休題。
午前9時。
この時間にはもうすでにほとんどの店が開店していて、通路は買い物客らでごった返している。
ミキラカ街は国内最大の街。東西からの幸が集まり売り買いされていく。
その中で唯一、不自然にポッカリと空いた空間。まるで、見えない壁でもあるかのように人群はそこを避けていく。中には穢らわしいものでも見るような視線を向ける人もいる。
その店の名はマユヨカ。
本日新しくできた店だった。
----------
「お客さん、来ないね……。」
「ねー。」
「それ、もう29回目だねぇ。」
雛菊と美代、そしてユアンスの何度目かわからない会話が交わされる。
「だから、29回目だよ。ユウマくん。」
――心が読めるやつは2人も要らねえと思う。
「僕、心読めないんだけどな……。」
ユアンスは、目尻を下げて困ったような表情を作る。
「や、やっぱり名前がダメなんだよね。『マユヨカ』なんてかなり変だよね。
私がこんな提案しなければ…………。」
しょんぼりと俯いた雛菊がポツリと呟く。
優馬の『ま』、美結の『ゆ』、美代の『よ』麻美花の『か』。
確かに、『他に良いのがあるだろ!』とも思う。
「マミカちゃんだけじゃなくてみんなで決めたんだよー?」
ユアンスが優しく、雛菊を庇う。
「で、でも、他に何も案が出なかったからで…………。」
「他に意見を出さないってことは、『それでいい。』って賛成したことと同じだよ?
みんなが賛成してくれたんだからマミカちゃんだけが責任感じる必要はないと思うな。」
「………………うん。」
ユアンスの言葉に雛菊は、納得していなさそうながらも小さく頷いた。




