氷
遅くなりました。
その分長いですw
長いので誤字脱字、意味不明文章、多いかもしれません。
「じゃあ、僕達は今度こそ行くね。」
そう言って再度黒い壁の中に入っていく4人。
残ったのは緑色の腕輪をつけた28名の〈氷が溶けて服がびしょ濡れになった男〉らとオレ。
―――――すると。
「ししょー!今のって、何ですかぁー?」
子供みたいに飛び付いてくる黒服濡れ雑巾8名。
「い、今のって・・・何のこt―――。」
「もー。とぼけないでくださいよー。ししょー。今もやったでしょう?
透明でキラキラ光って触ると冷たいヤツで僕らを閉じ込めたでしょう。アレ、何ですかー?」
黒服。フード取れてる。金髪。チビ。碧眼。7歳くらい、多く見ても12歳。―――が、
キラキラ瞳で見つめてくる。
周りの7名もチビ。
・・・子供でした。
「氷・・・。」
彼らの質問に答えたのは、彼らがチビ・・・いや子供であることに気を取られていたオレではない。
いつの間にか後ろに立っていて俯いている・・・えっと、名前は―――
――――あ、いや、深緑色のローブの奴―――――――だった。
「ミーリャです。心は読めません。」
いや、読んでるだろう。オレが名前聞いてないのに名乗った時点で。
「ユアンスさんに言われたんです。きっと、彼は君の名前を忘れているだろうから、・・・と。」
――――――あ、ハイ。そーですか。気遣いどーも。
「ししょー!コーリって何ですかー?」
「・・・水が凍ったもの。・・・か?」
「ししょー。コールって何ですかー?」
「・・・、・・・ミーリャ、頼んだ。」
また名前が、完全に飛びかけた。
「はい。・・・では、あそこでボンヤリしている彼らの服を乾かしてあげてください。風邪引かれたら困るので。」
ガキの世話を押し付けたら、大きい奴らの世話を頂いてしまった。
仕方なく、暖かい日差しの中で灰になりかけている男らに近づく。
「お、“どーてー”のヘタレガキじゃねぇか。なんか用か?」
・・・・・・・・・。
「ミー・・・ミーリャにお前らの服乾かしてやれって言われてきたんだけどよー、
・・・その様子じゃ、また氷漬けにされたいみたいだな。」
「コーリヅケ?」
「きっとあの、俺らを一瞬で捕らえた冷たいやつだろ。」
「マジかよ。あれはちょっとな・・・。」
「・・・・・・・・・でも、乾かせって言われてるから仕方ねぇ。
火球直接ぶつけて乾かすか。まぁ、火がついちまったら運が悪かったと思え。」
「ちょ、まっ。」
「【ファイヤーーボーーールー】。」
わざわざ声に出してゆっくりと唱えてやる。
「うわぁー。」
「逃げろー!」
何故か追いかけっこが始まった。
めんどくさいのでその場に座り込むと、火球を叩き込まれたいのか、俺を煽ってくる。
仕方がないので、火球を水球と風球に切り替え、360°適当に撃っていく。
すぐに当たった奴が数人出てきたので交代を告げると彼らが今度は当てる側にな、楽しそうに他のやつらを追い回す。
―――――――鬼ごっこだ。
オレは周りに風壁を張り完全防御。
ガキらも加わり、ミーリャもオレのそばで完全防御に徹する。
「・・・何か話してください。」
唐突にミーリャが言う。
「お喋りしましょう。何か話題を振ってください。」
・・・・何かって言われても・・・・・・・・・。
「お前が話題振ればいいんじゃねえか?」
オレが提案してみるとミーリャは「そうですね・・・」と言い少し考え込んだ後、言葉を発した。
「氷魔術が使いたいです。コツを教えてもらえませんか?」
「はぁ?」
コツって言われても、ただ普通にやってるだけだからなー。
「ユアンスさんに教えてもらおうともしたんですけど、彼は<小精霊>が17もあるのですが、私は0なので差が大きいんです。しかし斎藤くんはが1と、私と近いので私にも<小精霊>の使い方を理解することができるんじゃないかと思います。」
・・・・・・あ、ハイ。こっちが全然意味理解できないデス。
「・・・あ、すみません。えっとまずですね、<小精霊>というのは、魔術や魔法を使うときに力を貸してくれる<精霊>さんのことです。他の、火、水、風、土、空間、時間、時空、武。これらにもそれぞれにその属性を持つ<精霊>さんがちゃんと居ます。
しかし、―――例えば、<小魔術>だと―――<小精霊> さんが0である人はは使えないのです。
しかしですよ?理屈上はそうなります。ですが、0にもかかわらずその魔術を使うことのできる人が稀にいるんです。 ―――えっと、そうなる理由を今は言えないのですけど・・・。」
ミリャが周りを視線を上げ、苦笑いしながら周りを見渡す。
いつの間にか、ピンク色の妄想に浸っていそうな顔のおっさんらと好奇心旺盛なキラキラした瞳のガキらに囲まれていた。
「・・・というわけで、教えていただけませんか?」
ミーリャの透き通った蒼い瞳が、オレを真正面から見つめる。
それと一緒に、嫉妬や憎悪のこもった視線も周りから浴びせられる。
「・・・って言ってもさ、オレは何すりゃいいんだ?氷なんて適当に作ってるだけだし、コツなんてわからねぇぞ?」
「お、教えていただけるのですか?やった♪ありがとうございます。」
「あー、こいつらのいないところでな。」
観客らを見回し苦笑いしながら、オレは言った。
―― 麻美花side ――
真っ黒い扉の中に入ると、そこは真っ白な廊下だった。
急な変化にビックリして両側の2人同様足を止めてしまう。
しかし、ユアンスさんはそんなこと気にも止めずにスタスタと先に行っちゃうから私達は再び足を前に出す。
白い廊下は1本道。両壁にはドアも曲がり角もない。
後ろを振り返ってみると、いつの間にやら入ってきたはずの黒い扉はもう見えず、遠くに黒い点があるのみ。
前を向くとフードを被ったユアンスさん。
そのユアンスさんが足を止める。そうすると、必然的に私達の足も止まる。
ユアンスさんの向こうに見えるのは、前に来た王様さんの所。前と同じように両壁にはずらっと兵隊さんも並んでいる。
でも、あっちにはこっちが見えていないみたい。
王様さんの前には膝を床につけた、それなりに偉そうな人。
大きな刀と盾を背中に背負っていて、重そうな鎧も着ている。
「あの人が出ていったら行くからね?」
ユアンスさんが真剣な顔をして言う。
そういえばさっき、作戦会議をするとかって言っていたけれど、私達は何も聞いていない。ただ、全面ガラスの部屋に入ってゆうま達を見ていただけ。
声は聞こえなかったけどゆうまが少し怒ったのはなぜだかわかった。
「もうそろそろだ。」
ユアンスさんが呟く。
「ねぇ。」
今までずっと黙っていた美結ちゃんがユアンスさんに聞く。
「私達、どうすればいいの?」
「・・・別に。全部俺がやるから何もしなくていい。ただ後ろに居てくれ。」
ユアンスさんは私達を振り返らずに答えた。
いつの間にか全面ガラスの1.5m四方程の部屋になっていたことにようやく気がついた私達のすぐ横を、跪いていた人は王様さんに向かって一礼してから通りすぎていった。
「行くよ。」
その人が出ていくとすぐにユアンスさんは私達に声を掛けてガラスの部屋から出ていく。もちろん私達も少し遅れて付いていく。
突然現れた私達に兵隊さん達からは動揺の声が上がるけれど、すぐに状況を理解して私達に手に持った槍を突きつけてくる。
でも、気がつくのが遅かった。
槍は兵隊さん達の指の間からサラサラとこぼれ落ち、足元に砂山を作る。
たぶん、私が以前ここに来た時やったことと同じ。<小魔術>で槍を粉砕するのだけれど普通に粉砕したらバレちゃうから、崩れないギリギリの状態にしておく。そうすると、動かしたり力をいれたりするだけで崩れちゃう槍の完成。
「あれあれ?新品の槍がもう壊れちゃった?駄目だよ、手入れはちゃんとしておかないと。」
「お、おまえはこの前の・・・。」
「へぇ、覚えててくれたんだ、ダメ王さん。ああ失礼。デァイメ王さんでしたね、すみません。」
「テメェ、ワザと言ってるだろ。クソガキ。」
「ユアンスです。サルさn・・・、失礼、サーリウスさんは耳が悪いのですか?『ユアンス』を『クソガキ』と聞き間違えるなんて。」
「な・・・。」
「まぁ、そんなどうでもいうことは置いといて、取りあえず本題に移りましょう。」
そう言って、ユアンスさんはニヤリと笑った。
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―― 優馬sade ――
「・・・ってわけでお前らどっか行け。」
「「「「「えー」」」」」
ブーイングの嵐。しかし―――
「さて、質問タイムにしよっか~。」
それを遮るように、後方から声がかかる。
振り返ると、いつの間にやらユアンスら4名が後ろの方に立っていた。
ユアンスは笑顔で言う。
「はい、質問ある人ー。」
「ハイハーイ!」
「ハーイ!君は彼女いるのかー?」
「恋人いますかー?」
「ミーリャの姉御とはどんな関係?」
「d―――(モゴモゴ)!なんだよ、コレ。」
「コーリって何ー?」
「オレらには言えないって何でー?」
「君がいない間にコイツらイチャイチャしてたけど、お前的にはよかったのか?」
「コオリ、どーやるの?」
おっさん&ガキらから嵐のように質問が飛んでいく。
「一度にたくさん質問されても答えられないなぁ。だから――――――――――【黙ろうか】。」
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「はい、質問ある人ー!」
「nーー、nゥーーー。」
「n~~~ー!!」
「nn、nnnー。」
口にガムテープを貼られたかのように、唇を閉じたまま何かを喋ろうとする男ら。
「さて、うるさい彼らには黙ってもらったんだけど、本命の君たちからの質問は何も無いのかな?」
「それよりも、成果の報告が先だと思います。」
表情を凍らせたミーリャが言う。
「しかし、彼らの前で言うわけにはいかないでしょう。だから、彼らにまず氷というものを説明してあげてから今日は家に帰っていただき、話はそれからにしませんか?」
「うん、そうだねぇ。―――――――ハイ、氷の出来上がり〜♪」
ユアンスはいつの間にか、縦1m横1m高さ50cm程の大きな氷をみんなの前に出す。
そしてそこから小さな氷の塊を切り出して、いつの間にか手に持っていた木製の道具で氷を削っていく。
「麻美花ちゃん。前に言った『かき氷のシロップぽいもの』ある?あったら持ってきて。」
「はーい♪」
そう言って嬉しそうに家の中に入っていった麻美花はいくつもの色とりどりのビンをお盆に乗せて戻ってきた。
「はーい、この地域ではチョイと食べたいとは思わないかき氷ですー。どうぞー。―――――――あぁ、。ついでに焼きそばもあるから。これ、昼飯な。」
「おぉ~!」
「うめぇ~!」
「冷てぇ~。」
「うぉー。頭が、頭がキーンってするぞ?」
「焼きそばうめぇ!」
「オレ、ししょー呼ぶ!」
「オレも!」
「オレも、オレも!」
「あー、ハイハイ。」
ユアンスはガキらに絡まれ、面倒くさそうにしている。
―――――――40分ほどたち、昼飯も終わって少し落ち着いた頃。
「オイ、コーリとやらが小さくなって水になってるぞ?」
誰かはわからないが、男らのうちの一人の声に他の奴らの視線が大きな氷に集まる。
「そういえばユウマくん。これに火球を当ててくれるかな?小さいのでいいから。」
「は?何で?」
「僕には使えないからに決まっているでしょう?」
目を細めてこちらを睨みつつ、優しい口調でオレを説き伏せる。
―――――しゃぁねぇな。【火球(小)】。
氷は火球の熱風に触れ、ジュワっと溶ける。
後に残ったのは僅かに滴り落ちる水滴と丸い凹みのできた氷。
「うぉっ。」
「すげぇー。どーなってるんだ?」
「水だー!」
「氷は水の温度が低くなった状態のもの。だから氷を暖めれば水に戻る。ちなみに、雪も氷の仲間。―――以上。
氷は<小魔法>が使えれば簡単に作れるからなー。―――――こんな説明でいいのか?ミーリャ。」
「私に聞かないでください。まぁ、説明不足な気もしますけど、彼らにはそれ以上言っても理解できないと思うのでよしとしましょう。」
「<小魔法>が使えるのは・・・ガウスとホーンレとファグの3人だな。オイ、やってみろ。」
「えー。」
「無理っしょ。」
「無理ですよー。」
リーダーらしき奴の言葉に拒否を示す3人。
あの金髪碧眼のガキと美結が拐われたときにオレらに変な魔法をかけた奴と、
あと、特に記憶にはないおっさん。
「うん。取りあえず氷魔法はまた明日。君たちはみんな家に帰ってね?
これから僕らは君たちに聞かれちゃいけない秘密の話をするから。」
「俺らに聞かれちゃまずい話ってなんだ?」
「そーだよ。オレらに話してくれないことばっかり。」
「「「「「そーだ、そーだ!」」」」」
「s―――。」
「俺らを信用してねぇだけだろ。」
ユアンスの言葉を遮り、美結が拐われたときに小屋の中にいた、あの4人のうちの一人が冷たく言い放つ。
「まぁ、昨日今日で出会った人を信じろって方が無理な話だ。それに俺らは、こいつらにとっては人拐い。だから俺らはこいつらに殺されてもおかしくないのに、俺らはみんな生きている・・・だろう?」
「アウスさん・・・。」
「だから、こいつらにはおとなしく従った方がいい気がするな。俺は。」
「オシ、野郎共。帰るぞ!」
「「「「「オー!!」」」」」
リーダーらしき奴を先頭に、男らは街の方へゾロゾロと歩いていった。
「さて。家の中に入ろうか。」
ユアンスに促され、ユアンスを含めた5人全員が家に入る。
「あれ?美結・・・さんは?」
最初に気がついたのは意外にもミーリャ。
「あぁ。・・・1時間・・・27分と41秒前に家の中に入っていったよ。」
「ユアンスさん。まさか、ウケ狙いで時間を計っていたりしませんよね?」
「もちろん!計ってたよ。」
「・・・ハァ。そんなことじゃ、みんなに笑われまs―――。」
「すっっっっっごぉ~い!」
ミーリャのセリフは雛菊のキラキラの視線と声にかき消される。
「だろ?」
「うんうん!!ずっと数えてたってことだよね?しかも喋りながら!すご~い♪・・・私も練習すれば出来るようになるかな~?」
「ま、麻美ちゃん・・・。」
「雛菊さん。も・・・盛り上がっているところに水を差すようで申し訳ないのですが・・・・・・。」
「はい?」
「ユアンスさんはあっちの世界から持ってきたストップウォッチを使っていただけだと思うのですが・・・。ねぇ?」
ミーリャがユアンスを上目遣いで軽く睨む。
「ん?べ、別にそんなことどうでもいいじゃないかー。」
「どうでもよくないですよ!」
「麻美花ちゃんが喜んでくれたんだから結果オーライだね。」
「ユアンスさん!!」
「私、部屋行ってる・・・。」
ユアンスとミーリャの言い合いを見ていた美代はポソリと呟くと、2階へ上がって行った。
「全く、何やっているんですか・・・。」
「悪ぃ悪ぃ。・・・・・・ところで鈍感ユウマくん。君も〈小魔術者〉だから氷を作ることができるんだよねー?(棒読み)」
語尾にわざわざ語尾に|(棒読み)とまでつけて、ユアンスは急にオレに話を振った。
・・・・・・って、は?意味わかんねぇ。オレが〈スモールマジシャン〉?
「は?意味わかんねぇ、って感じかな?・・・あ、説明してあげるから身分証明書出してね。」
―――――――心を読んでるかどうかなんて、もうつっこまない。
言われるがまま、ポケットを探り身分証明書を出す。
「あらかじめ言っておくと、身分証明書は持ち主以外は見ることができない。ただし例外もあり、いわば主従関係である主さんが下僕さんのを見ることは可能。また特別な機械を使えば見ることもできる。その場合その機械にカードをかざさねばならないのだが、かざすことができるのはそのカードの持ち主のみ。ちなみに、もしカードを落としてしまい、他人がパクろうとカードを触ったりでもしたら即持ち主のところへ飛んでいくよ。」
そこでユアンスは話を止め、いつの間にか目の前に置かれていたコーヒー|(麻美花の目の前にはカップの他にもポットがある)をズズッと飲むと、困ったように首をかしげる。
「理解できてないようだけど・・・・・・次いくね。」
コーヒーをもう一口飲んだユアンスは、話を続ける。
「身分証明書は他人からはそこにかかれた文字が見えないため、ただの白い板にしか見えない。それじゃあ身分証明書の意味がないかもしれない、って思うだろうけどそこの説明は面倒くさいからパス。見方の説明行くよー。はい、自分の身分証明書見てねー。」
自分の身分証明書を覗き込むと白いカードには銀色に淡く光る灰色の文字。
「そこに、火、水、風、土、小、武、時間、空間、時空。この9つの項目があるだろう?これはその人に力を貸してくれる精霊の数だ。」
へぇ。
「その中の〈小〉の項目が君は1だろ?だから少しだけ〈小魔術が使えるんだよ。
ってか、なんかこいつと話すの面倒くさいわ。いろいろと・・・。」
急にユアンスが疲れたようにため息を吐く。
「・・・ゆ、ゆうま。・・・氷、普通に作ってたけど。・・・無意識?」
間を開けて雛菊がびっくりしたように聞いてくる。
「ん?どういう事だ?」
「つまり、水魔術だけじゃ氷は作れねぇってことだ。」
「お水さんたちをギュって固めないと氷にはならない・・・でしょ?」
―――確かに。
ユアンスと雛菊の交互の説明に少々納得。
「その『ギュ』って行為が〈小魔術〉だ。わかったらさっさとミーリャに氷の作り方でも教えてやれ。んでそれ終わったら、宝石でも作ってろ。」
「宝石?」
「〈土魔術〉で土を出してその中から〈小魔術〉でキラキラを取り出し固める。」
言われた通り、土を出してみるがキラキラは見当たらない。
「土によってキラキラが無かったりキラキラの種類が変わったりするからいろいろ試してみるといい。
・・・ってわけでお前とミーリャはそっちで氷か宝石でも作ってろ。僕はマミカちゃん達と相談があるからねぇ。」
「はいー。では斎藤くん、行きましょうか?」
そう言ってミーリャはオレを奥の部屋へと促した。
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ミーリャはあっさりと<小魔法>を使えるようになった。
といっても、洗面器いっぱいに張った水のごく一部しか凍らない、その程度だ。
「ミーリャ、帰るよ。」
せめて水面に氷を張るだけでもと熱中していた矢先、ユアンスにそう声をかけられたミーリャは、子供がおもちゃを取り上げられたような顔をした。
「じゃ、またね。」
外へ出、そう言って来たときと同じようにミーリャをくっつけたユアンスは、オレらに軽く手を振ると真っ黒い空間へと入っていった。
「さて、夕御飯作らないと♪」
家の中に入った雛菊は楽しそうにキッチンに向かう。
「ま、麻美ちゃん・・・。帰っ・・・た?」
いつの間にかそこにいた美代がそっと顔だけ出して階段の方からこちらを覗きながら聞く。
「うん、帰ったよ。」
「よかった~。」
雛菊の返事ホッとため息を吐いた美代は、安心したようにリビングに降りてくる。
「・・・で?なんで、〈お店〉と〈学校〉と〈後ろ楯〉なの?」
「あ・・・えっとその前に・・・ゆうま。今の〈お店〉〈学校〉〈後ろ楯〉の3つは、ユアンスさんが国内のバドリムを全部退治したご褒美として王様さんに要求したものだよ。・・・って、ユアンスさんが『ユウマくんに言っておいてあげてね。』って言ってた。」
雛菊がキッチンから出てきてオレに言う。
―――ってあれ・・・。同じようなことを昼間も言われた気が・・・・・・・・・。
「でね、それを要求した理由なんだけど・・・・・・えと、美結ちゃんは?」
「・・・何?」
「ぅわぁ!!いつの間に!?」
「さっきからいる。・・・それで?」
美結がぶっきらぼうに先を促す。
「えっと〈お店〉は、『命をかけなくてもお金入る手段もあった方がいいから』ってユアンスさんが。
〈学校〉は、『勉強は大事だよ。』って。
〈後ろ楯〉はね、えぇと・・・『将来、他の国へ行くこともあるかも知れない。そこで「あのイカれた王国を滅ぼすため、我々に力を貸してくれ。」とか言われて断りきれなかったときの切り札になればいいな、と思って。』って言ってた。」
雛菊はユアンスの言葉(らしきところ)だけスラスラと言う。
「じゃ、あれでバドリム全部倒したってどういう事?」
ん?いつの間に全部倒したんだ?・・・っか、倒したご褒美って言ってたからまぁいいのか。
「えっと・・・ユアンスさんが、あそこに全部のバドリムを集めたらしいよ!すごいよね!!」
美結の問いに答えた雛菊の目がキラキラし始める。
「で、それを倒したゆうまもすごいっていうか!混合魔法を編み出したユアンスさんもすごいっていうか!
っていうか、面白いね。火と水で水蒸気。火と土ならマグマかな。火と風は熱風?水と土なら泥か。水と風なら台風とかかな。土と風なら砂埃♪」
テンションの上がり始めた雛菊をチラッと軽く睨む|。
「・・・ぅう。ごめんなさい。」
オレの視線に気付いたらしい雛菊はショボンとしてキッチンに戻っていった。
「ねぇ、クソ虫。あんた軽ぅ~く睨んでるつもりだろうけど、元々の作りが睨んでそうな目なんだから、より怖いんだって。
睨まれたひなぎくちゃん、怖くて泣いちゃうよぉ〜?」
そう言いながら、美結はさっきまでとは打って変わって楽しそうにケラケラ笑う。
「わ、私は大丈夫だよ。ゆうまが目付き悪いのは昔からだから。今は軽く睨んだだけだって、・・・か、観察してたから見分けつく・・・・・・・・・。」
・・・・・・ん?観察? 「あ゛?」
「!!!」
「ほらほら、クソ虫がガチ睨みするから麻美花が怯えて、声出なくなっちゃってんじゃん。」
「ガチ睨みなんかしてねぇし。」
「ガチ睨みはしてないと・・・。」
雛菊と、言っていることが被った。
「あら、そう。残念。」
美結は肩を竦めて言った。
「えぇと・・・、い、今までいっぱい観察しててごめんなさい。」
雛菊が謝ってくる。
「うん。あぁ、別に。」
素っ気なく返すが、何故か彼女はパァ~っと笑顔になり、包丁片手に嬉しそうに野菜を切り始めた。
「あ、そうだ。忘れるところだった。」
そう言って雛菊は持っていた包丁を置き、オレらの方を見る。
「あのね、私達9月から学校行くんだって。で、その準備とかこれからいろいろあるんだけど・・・。―――あ、あと、それまでの2ヶ月はお店やりながら、ギルドの討伐依頼受けて実践練習ってことでやるんだって。―――それと、携帯使えるようにするからみんな貸してね?あると便利だからってユアンスさんが・・・。」
そう言って、雛菊は調理を再開した。
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「ごちそうさま。」
そう言って、一番に食べ終えた美結が席を立つ。
「あ、そういえば・・・。」
ポソリと呟いた雛菊に美結は、2階へ行こうとしていた歩みを止める。
「あ、あのね、ユアンスさんが『ミユちゃんに伝えて。』って言ってたんだけど・・・。『君はイラナイ人間だからこちらの世界に呼ばれたんじゃない。《あちらの世界に居場所がないから、こちらの世界で新しく居場所を作ってあげよう》ってことで呼ばれたんだよ。』って。で、『それはミヤちゃんも同じ。彼女も居場所がないからこちらに呼ばれたんだよ。』って。
―――あ・・・あとね、これ美結ちゃんに、って。」
そう言った雛菊から小さな紙袋を渡された美結は、「ん。」とかなり不機嫌そうに2階へと上がっていった。
「みや姉は親の自慢・・・。みや姉だけは、私達三つ子の中で唯一あっち側の人間なのに・・・。」
美代のか細い呟きを聞き流しつつ、オレは箸でつまんだトリロを口の中へ放り込だ。
ダラダラ続きまくっているのですが、カットするのはどうも下手なので1本にまとめてしまいました。私的な感覚としては10話分です((汗
一応これで2章は終わりです。(閑話は入りますが。)
(2章、上下合わせて39話・・・。時間の流れ的には6日間・・・。恐ろしいボリューム・・・。)




