実験台
現在、地面にうずくまって呻く男ら計28名を回収中。
―――もちろん、オレとユアンスの2人きりで。
何せ、オレ以外にバドリムの毒霧に耐えられるのが〈空間魔術者のユアンスしか居ないからだ。
〈空間魔術者〉なら、美代もそうではあるが、バドリムに食べられた動物のおぞましい声が聞こえるとかで、ユアンスの張ったバリアの管理と称して異空間の中にいる。
手下になった奴らの中にも〈空間魔術者〉は何人か居たが、「バドリムの毒を体験しましょう♪」というユアンスの提案の元、現在は地面に這いつくばってしまっている。
という訳で現在一人ノルマ14人を200mくらい離れたバリアの中へ連れていかねばならない。
ユアンスは〈空間魔術者〉だから、バリアと臨時で開いた空間とを繋いで楽をしているのだが・・・・・・。
「つーかこれ、バドリム倒しちゃってからの方が早くね?」
―――ノルマを達成し終えオレを手伝いもせず、のほほんとしているユアンスへ、五度目の提案。
「うん、そうだねぇ~。」
「・・・・・・・・・。」
・・・。
―――――――五度目の『真面目に聞いていません。ただ適当に相づちを打っているだけです。』という感じの返事。
「あの・・・、バドリム倒しちゃってからの方が早くないっすか?」
「うん、そうだねぇ~。」
「・・・・・・・・・。」
六度目の提案もあっさり撃沈。
「―――――やれやれ。」
ユアンスが呆れたように首を振る。
「君は本当に鈍いねぇ。君が倒してきてくれれば、それでいいじゃないか。どうしてわからないかなぁ。」
バカにしたように首を竦めて嘲笑うユアンス。
オレはそいつを睨み、火矢雨を放つ。
火矢雨は見事飛ばした10本すべてが刺さり、消えていくバドリムと一緒に霧散していく。
「お見事。」
そう言って、負ノ種を拾いに行くユアンス。
しかし―――。
「森の中で火を使うのは感心しないね。ボヤが起こったらどうするんだい?
・・・それに今回のは10本も要らない。7本で十分だよ。」
難癖を付けてきやがった。
「―――バドリムはすべての攻撃、魔法に弱い。しかし、火魔法には特に弱いんだ。そして―――」
ユアンスがポヨヨンと水球を出す。
「――――水魔法にはちょっとだけ耐性がある。まぁ、耐性があるっていったって。打ったうちの3%分がバドリムに取り込まれちゃうだけなんだけどね。」
「・・・何が言いてぇんだ?」
ユアンスを睨み付けるが彼は笑ったまま。
「―――相乗効果ってわかるかな?
――――あぁ、君は理解できなさそうだから、簡潔に言うと『水蒸気で作った矢でやった方が効率がいいよ』って話。―――では、頼んだよ。」
そう言ってユアンスは、残りの奴らをサクッと回収すると、バリアの方へ逃げていく。
と、バリアのある方とは反対の側からズズッと音がし、泥色の物体が姿を現す。先程のよりも大きい。
―――――あ、そういうことですか。・・・【水蒸気の矢】。
とりあえず、まずは1本。
―――少し小さくなる。
2本目。
―――また少し小さくなる。
3本目。
―――また少し小さくなる。
4本目。
―――消えた。
「うん。予想通り4本だな。」
この声はもちろんオレじゃない。
ユアンスだ。
「次はあっちだよ。」
オレの後ろ―――木の影に立っていたユアンスは、左手の方でもうすでに姿を見せていたバドリムを指差す。
「水蒸気の矢の必要本数は2だろう。ほら、どうぞ。」
【水蒸気矢×2ぃー】
ピュンピュンと飛んでいった矢はバドリムに突き刺さるとシュワっとバドリムと共に消えた。
「ほら、まだまだいるよ。あっちとあっちに計2匹。あっちの方にはこっちに近づいてきているやつが3匹いるからね。」
「・・・・い、居すぎじゃね?」
「僕が呼んだんだよ。みんな。こっちに誘導するの、結構大変だったんだから。」
「・・・な、なんでそんなこと・・・・・・。」
「一番はデータ収集かな?」
おどけたようにユアンスは笑顔を作る。
「ほら僕、水魔術は使えるけど火魔術は使えないから。」
そんな話をしながらも、バドリムは一掃されていく―――。




