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腐った世界で異世界生活(ライフ)  作者: たんぽぽ
第2章(下) 闇
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心の声

 ―― 美結side ――




「ねぇ、そういえばさ・・・。」

「あ?」

「いや、クソ虫。あんたじゃなくて・・・ねぇ、麻美花。」


まだ微熱の残っているクソに、持ってきた氷水でキンキンに冷やしたタオルを乗せてあげている彼女に声を掛ける。


「うん?なぁに?」


言おうか言わないか迷っていたのだが、やはり教えることにしたのだ。


「ネット内で友達いた?」

「う、うん・・・。」


「その子の名前は?」

「えっと・・・『弥生(やよい)』ちゃん・・・だけど・・・。」


「え?」


少し開いたままのドアに隠れていた美代は、驚いたような疑問系のようなよくわからない声を上げる。


「美代。あんたは?」


私は今度はその彼女に質問を投げ掛けた。


「え・・・えっと、ミルちゃn・・・『ミルフィーユ』ちゃん・・・だけど・・・。」






「・・・・・・はい。感動の再会完了。」


ぶっきらぼうに言い捨てる。

『弥生』と『ミルフィーユ』。この2人があるサイトで友達であったことを今日の昼間、知った。



しかし当の本人らは目をシパシパさせたまま。


「チッ・・・。―――色鉛筆の白、単2の乾電池。」


舌打ちをし、追加の情報を与える。






「ほ、本当に弥生ちゃんな・・・の?」


驚きと疑い、そして嬉しさの混じった小さな声で、麻美花が美代に聞く。


「ミルちゃんなの?・・・本当の本当に?」


最後の言葉は私への質問。

わかりきった事実を与える。


「あんたらの心を読んだ上の結論。お互いの名前、お互いの呼び方、同一の話題があることなどなど、それらの事実を踏まえると、あんたらがネットでの友達であった可能性の方が高い・・・っていうか、間違いないでしょ。」


個人的感情が入り、吐き捨てるような言い方になる。

しかしそんなことには気にも止めず、彼女らは嬉しそうに部屋の扉の近くで盛り上がる。


―――美代が部屋に入って来ようとしないからだ。



「色鉛筆の白と単2の乾電池、これは美代が小説で使った表現。『男なんて色鉛筆の白、同然。』みたいな感じで。色鉛筆の白って、使い道がそうそう無いからね。存在意義がわからない、ってことで。

私がこれ知っているのは、私が昼間、―――あ、捕まってるときね。―――ずっとあんたらの心読んでたから。私、集中すれば距離がかなり離れてても聞こえちゃうんだよ。」



クソに解説してやる。

それを聞いたクソはただ『なるほど。』と呟いた。



それを聞いて、私は残念に思う。

なぜなら、こいつはツッコむという行為をしようとしない。・・・というか、ツッコミ方やタイミングがわかっていないんじゃないかと思ってしまう。

しかし、立ち位置的、性格、などにおいて彼はボケとツッコミならばツッコミ役だ。

その証拠に、たまにツッコんで来ることもある・・・・・・のだが、あくまで『たまに』なのだ。




「クソ虫。」



仕方ないので、ツッコまないことにツッコむことにする。


「『男なんて色鉛筆の白、同然。』ってことは、『男なんて存在意義がわからない。』ってことだよ?わかってる?」

―――――理解していないことなど十分にわかってはいるが・・・。






「・・・あぁ。なるほど。」


数秒たった(のち)、彼は先ほどの言葉を繰り返す。


今度は何を考えているのか、わからない。

水面下・・・いや、負の感情が混ざりまくった沼の中で、考えていたのだろう。

蓋をされたソコからは、心の声は聞こえない。


私にとってはそれは楽なことであり、また()()でもあった。




なぜなら―――――――。



普通なら、普通にその人の考えていること、思い出していること、感想、なんかがすべて()()()()

その人が意図せずに、また私も力をコントロールできないために拒否出来ずに、範囲内にいるすべての人の思考が聞こえる。


人の密度が高まる人混みなんかだと、特にキツい。

四方八方から老弱男女問わず、わんわんと頭の中に声が鳴り響く。


おまけに、1人1声でないのが最大の問題。

1人につき3、4声は普通だ。


つまり、範囲内に10人いれば聞こえる声はその3、4倍。

それは、学校の教室でクラスみんながワイワイ騒いでいる程度に匹敵するだろう。


さらに、悩んでいる人の声の数なんかは1.5倍~2倍程度にまでなる。






―――しかし、彼の場合は違う。


心を閉ざした彼の声は1つ。


以前―――本人曰く、お面を被っていたとき―――は偽りの声、そしてそれを蔑む本当の声。その2つが聞こえていたが・・・。

―――それが今じゃ、感情を消した薄っぺらい1つの声が聞こえるのみ。



感情的な声は、蓋をされて聞こえない。


それは私にとっては楽。

―――しかし、そのことが少し苦痛でもあった。







―――――――聞こえる声は少なければ少ない方がいい。


けれど、声が聞こえないというのは、聞こえるのが普通である私にとっては『恐怖』。

何を考えているのかわからないことに対する怯え。



彼という()()()()()()()()に初めて出会って芽生えた、初めての感情。



《相手が本当はどう思っているのかが分からない》



――――――それがわかったとき、麻美花とクソが言った『羨ましい』という気持ちが少しわかった気がした。

















----------







「ねぇ、クソ虫。・・・あんたは誰に※※※※って言われたの?」







上を向いて天井を眺めている彼に、私は静かに問いかけた。

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