記憶
「...で?いい加減、消してくれないかな〜?ホント、鬱陶しいから。」
あの時、最後に彼女が言ったのだ。
“彼”を消してくれ、と。
どうやら、オレの心からは2つの声が聞こえて、鬱陶しいらしい。
1つは“彼”の声。
もう1つはそれを蔑む“本来のオレ”の声。
「じゃー、用事は終わり!またね、麻美花。」
美結は雛菊に向かって手をヒラヒラさせると、オレをキッと鋭く睨み付けてから帰っていった。
美代も麻美花にバイバイと小さく手を振ってから、美結を追いかけて行った。
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「………ね、ねぇ、ゆうま。……美結ちゃんが言ってた、何かを消せ…っていうの……
…な、何を消すの………かな…?」
扉が閉まると、雛菊が恐る恐る聞いてきた。
彼女の瞳には不安の色が見隠れしている。
「……………。」
「もしかしたら、その…………何て言うか……
…その…わざと明るく振る舞っているゆうまくん……っていうのかな?
………そ…それを消せって言われたんじゃ……………。」
……………。
「………ウザっ。」
「ひゃぅ!」
オレが睨むと、彼女はかわいい悲鳴をあげて半歩程後ずさった。
「………あのさー、朝も言ったけど、
オレのこと何っっっにも知らないくせに、知ったような口聞くの、やめてくんないかな〜?」
「………で、でも、…わ、わたしは、無理してる斎藤くんは好きじゃないっていうか………。」
はい?
「……こ………個人的には……その………『冷めてる』って言われてた時のゆうまくんは
ちゃんと自分の…意見っていうのかな?………そういうの持ってて、
な、なんか、大人っぽくていいなって………s……。」
「……ウゼぇから黙れし。」
彼女をより睨み付けると、雛菊は口を閉じて俯いた。
……………つかこいつ、何でそんなことまで知ってんだよ。
「なぁ、お前とクラス、同じになったことないと思うんだけど。」
ぶっきらぼうに問う。
「あ…っ。」
しまった!とでも言いたげに、雛菊は声を上げてしゃがみこんだ。
「噂で聞いたのか?その話。」
聞くと、数秒後にコクンと頷いた。
「…お前、情報通だとは思えねぇけど。」
さらに突っ込んで聞いてみる。
「一体、誰に聞いたんだ?」
「…………く………クラスの人が話してるのを聞いたの………。」
「お前、西小か?」
「あ……うん。」
「3年何組だ?」
「3年……………えっと、……い、1組。」
へぇ。
「じゃあ、4・5・6年は?」
「……えっと……………さ、3組。」
オレの通ってた小学校は、3年から4年に上がるときにクラス替えがあるのみ。
オレは、1・2・3年は2組。
4・5・6年は6組。
やっぱり、同じクラスのやつじゃなかった。
そりゃ、そうだ。
オレの記憶してる中に、雛菊という名はない。
浅井、池田、伊藤、伊藤、伊東、上原、岡崎、柏木、北澤、北沢、小林、西藤、西藤、
斎藤、斎藤、西藤、坂本、佐藤、佐東、佐藤、潮崎、末松、鈴木、高橋、田口、田仲、
田中、中村、前田、増田、南野、三原、山田、吉田
計34名。
1・2・3年の3年間、毎朝出欠を取る度に担任がそう呼ぶから、
いつの間にか記憶に刷り込まれてしまい、何故か今でも覚えている。
4・5・6年は担任が教室内をざっと見て出欠を確認するだけだったから、覚えてはいないが………。
というか、同じ小学校ということは、同じ中学でもあるのか……。
知らなかった…。
名前に偏りがある…。




