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腐った世界で異世界生活(ライフ)  作者: たんぽぽ
閑話章 彼が彼になる前の話。
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静かに凍り付く話。

今なんて言った?

……もう一人の前世持ち。……名前は斎藤優馬?



「ねぇ。クソ虫が前世持ちって、それどういう事!?」


食い気味に詰め寄る私を一瞥し、彼は相変わらず抑揚の無い冷やかな声で告げる。



「君には関係無いよ。」


心に刺さる言葉。でも今度は怒りの方が勝った。



「関係ある!一応、私のパーティーメンバーなんだけど!?」


「それはただの成り行きの末の関係。君に……君(・)達(・)に、彼の前世なんて関係無いだろ?」


むっ。そりゃ、そうかもしれないけど……、でも。



「じゃあ、私はクソ虫の前世に興味がある。聞きたい。話して。」


「熊木くん、貴方は私を、その方のギルドカードの保証人にするのでしょう?私もその方には興味があります。……話してくれますよね?」



私を支持するような浅海さんの一声に、ポチは『はぁ。』と諦めた様にため息を吐く。……むっ。なんで浅海さんの言う事は素直に聞くワケ!?なんか腹立つ。



「彼の前世……って言っても話せる事はほとんど無いよ。特に変わった事など何もない、平坦な人生だから。唯一、女運は頗る悪かったのだけど、それはまぁ良いか。……ちなみに彼自身は、前世の事なんてほとんど覚えていないよ。何せ、思い出す価値もないくらいに何もないから。」


「ふぅん。」


クソ虫は別に、前世を持っている事を私達に隠していた訳じゃなくて、ただ覚えていないだけ……。確かに、あのクソ虫にそんな大層な隠し事が出来るワケないか。……でもなんか、余計に腹立つ。ポチに腹立つ。その程度なら、わざわざ隠す必要ないじゃん。むっ。



「……熊木くん。貴方の『分かる』能力は一体、どんなものなのでしょうか?本人さえ知らない事実を、貴方はどうやって知ったのでしょう?」


「…………。」



いつの間にか浅海さん達の事を見ていた彼の視線が、さっと逸らされる。


「……熊木くん?」






「…………これだよ。」


不機嫌そうにしながらも、浅海さんに逆らえないらしいポチは服の下から何かを取り出した。


「それは……?」


「『分かる』能力への対策石。ミユちゃんに思考を読まれると、こちら側に不都合が起こる可能性がある。だから付けていた。……でも“知”とやらまでは防げないようだし、改良が必要みたいだな。」


「……そうなの。では尚更、貴方が知る事が出来た理由が気になりますね。」


あ、確かに。

ポチってば何でも知ってるから今まで気にしてなかったけど、言われてみれば確かに、何で色々知ってるんだろ。







「…………何で、ミユちゃんは異世界召喚される人間に選ばれたと思う?」


暫しの沈黙の後、ポチが口を開いた。

その唐突過ぎる質問に、私の心には重いものが転がり込む。



「え。……それは、私達が『イラナイ人間』だからじゃないの?……そう、アンタが言ってたんじゃん。」


声が震えないよう、何でもない風に表情を取り繕う。

イラナイ人間だから。居なくなっても、悲しむ人なんて居ないから。



「それも一理ある。けれど実は、それ以上の理由があるんだよ。」


「……それ以上の、理由?」


彼の発す言葉が、不穏な響きを持つ。



「強い『能力』を発現している事だよ。血が薄まっても尚、先祖にも勝る完璧な力。ミユちゃんとミヨちゃんには『分かる』の能力。マミカちゃんには『共鳴』の能力。両方、君達の祖先がニホンに渡って、そして繋いで来たチカラ。……君達が召喚されたのは、一種の里帰りなんだよねぇ。」


は?ちょっと待って。意味が分からない。


「ただ、ユウマくんが選ばれたのは『能力』ではないよ。彼の祖先に能力持ちは居ないからねぇ。……彼が選ばれた理由は『前世の記憶持ち』だから。それも、この世界の住人の。……本人は覚えていないんだけどねぇ。」


ポチが私に向かってニコニコと笑う。



「彼が『前世持ち』である事を僕が知っているのは、僕も召喚する対象探しに関わったからだねぇ。ちなみに彼だけじゃなく、君達の情報も、今回召喚されなかった微弱な能力持ちの情報も、僕は全部知っているよ。」


彼から向けられる笑顔に、今はなぜか寒気が走る。ニコニコといつもの様に笑ってるはずなのに。……あぁ、瞳の奥が笑って無い。

先程までとは様子の違う彼に怖じ気が走る。



「ではどうやって、その様な詳しい情報を手に入れる事が出来たのです?一体、裏では何が起きているのでしょう?」


「僕はこれ以上、何も喋りませんよ、牧田さ(・)ん(・)。」



これまでと違い、質問をバッサリと切って捨てたポチに、浅海さんは目を見開く。



「それよりも僕、貴女にどうしても聞きたい事があります。いくら考えても、どうしても分かりませんでした。……ですので、本人達に直接聞いた方が良いと思いまして。」



彼の発したあまり大した事では無さそうな質問に、またもや部屋の空気は凍りついた。







「熊木直弓が貴女方に掛けた『魅了の呪い』を、一体貴女方はどうやって解いたのですか?」

ちなみに、優馬くんの前世は白髪くんではありません。


優馬くんが枯れているのは、前世の女運の悪さ?を魂が覚えていて、無意識のうちに拒絶するからだったり。(今世でも早々、女という性別の人間に捨てられ、裏切られてますし。)


(実は書き始めた頃の作者が男性恐怖症気味で、欲望丸出し系は絶対に無理過ぎたという説があるとか無いとか。)


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