大人しく連れて行かれる話。
※元サブタイトル:ドナドナ
「ねぇ、フィッスノーって誰?どんな知り合い?」
豪華な馬車の中。
今から、そのフィッスノーとかいう人に会いに行くらしい。
『こっち側なら酔いにくいから』と私に席を譲り、自分は進行方向に背を向けて座ったポチ。4人が横に並んで座っても余裕がありそうなくらい広いのに、ポチはこちら側ではなく私から一番遠い対角の位置を選んだ。
「…………。」
私の問いに、やはり彼からの反応はない。
私に軽く背を向けて壁に凭れ、黒ローブに付いたフードを目深まで被り、……まるで寝ているかの様に彼は振る舞う。
「ねぇー。」
「……。」
こうなったら意地でも、返事するまで声を掛け続けたくなるから不思議。
「……まぁ別に、元から返事に期待はしてなかったから良いけどさ。」
――でも、この人が私を無視するなんて珍しいんじゃない?……でもたぶん、それだけその人に会いたくないって事だろうけど。
窓の外では、景色が物凄い勢いで流れていく。
森を切り開いた街道。両サイドはもちろん森に囲まれてる。……そんな変わらない景色を眺めていても面白くない。
――ポチの観察をしている方がずっとマシかも?。
深緑色の服と紺のズボン、黒い靴。それらの上から、若干丈の長めな黒いローブ。
以前のポチは深緑色のローブだったけど、今は諸事情で予備の黒を使ってるっぽい。うっかり口を滑らせたルミちゃん曰く、なんかビリッビリに裂けたらしい。え、何したの?部屋に籠ってる間、何があったワケ?……ちなみに私も、水色のローブを着せられているという……。まぁポチほど丈は長くないし、全然動き易いから良いんだけど。
理由はなんか、他人から認識されずらくなるとか。特に、相手が知り合いならば効果は絶大。……うん、確かに。麻美花達に私達の存在はバレてなかったぽいし?まぁ、顔を見られてないっていうのもあるけど。
さてと。
ポチのローブの丈見てたら気付いた。ポチってば、自分の服の裾を握り締めてるっぽい。まるで、何かを耐える感じに。
……それと、肩の位置が若干高いかも?緊張で力でも入っているのかね。
フィッスノー。――ポチの知り合いはどんな人なんだろうね?
フィッスノー家ってのは、かなりのホワイト貴族みたい。
他者の心から適当に拾った情報によれば、闇奴隷市場をぶっ壊したり、そこにいた元奴隷の子供達の為に孤児院開いたり、裏で悪どいことをして利益を溜め込む貴族を徹底的に潰したりと、異常なくらい良心的な家みたい。
なんでも、二代前の領主が起こした改革がなんか凄かったとか。それが今も受け継がれてる。
……とっても偉い貴族サマと会うにしたって、ポチがここまで緊張するわけ無いよねー?……いや、するのかな?うーん。……でもなんか、緊張してるっていうのはちょっと違うかもしれない。……怒りを抑え込んでいる的な?……少し違うか。……怯え?……じゃないしなー。
…………あー!!もう!わかんない!謎!すっごく謎!!心、読んでやりたいよ!!考えてる事、洗いざらい吐いてくれれば良いのに!!
腹立った。私も寝るっ!
……馬車が揺れる度に壁に頭ぶつけるから寝れないんだけど。




