偶然すれ違う話。
以前のあらすじ。
ユアンスさんの愛称が、美結ちゃんの独断により『ポチ』になりました。
※元サブタイトル:カタカタ
「身分証作ろうか。」
それは唐突。
「え?……あっ。」
急に言葉を発した彼にビックリして、私は持っていた箸をカランと落とす。ついでに、今食べようとしてた豆腐も下のお皿に落ちた。……あ、セーフ。床に落とさなくて良かった。
今日の朝ごはんは、白米、豆腐の味噌汁、焼き魚、お浸し、デザートにペコっていうオレンジみたいなカットフルーツ。
作ったのはもちろんユアンスことポチ。当の本人は今、皿洗いしてる。
「えっと、……もう一回言って貰える?」
水の音がうるさくて、聞き間違えたかもしれない。
彼も察したのか雑音の元凶である水道を閉め、私の方に振り返るとハッキリ言う。
「今日はギルドに行って冒険者登録して来ようか。ギルドカードは身分証になるからね。」
----------
そうして今、ギルドにいる。
ポチに半強制で連れて来られた。いや別に、断る理由も無いけどさ。
「では、この水晶に触ってくださーい。」
手数料の支払いもろもろをポチが終えて、受付の人が丸くて透明なガラス玉を差し出してきた。うん、すごく水晶玉っぽい。
「ミユちゃんからどうぞ。」
「……あー、ハイハイ。」
自己犠牲の塊であるコイツが先にやるわけないよね、うん。
ヒンヤリと冷たい水晶に触れれば、目の前が白い光に包まれた。
---
名前 ミユ・ヤシロ
性別 女
種族 人間
歳 17
体力 3000
魔力 100000
火属適性 30%
水属適性 12%
風属適性 98%
土属適性 44%
光属適性 21%
闇属適性 28%
無属適性 42%
加護 <心の声が分かる> <宝玉の光> <???の呪い>
---
目の前に浮かぶのは銀の文字。
なんか、前と若干違う!? <???の呪い>って何ソレ怖い。文字化けして読めないんだけど。
「ギルドカードを発行する際に見られたくない項目がある場合は、今のうちに隠してくださいねー。」
うーん。そのままで良いかー。……受付さんの心をチラッと読めば、呪いってやつは多々ある事らしいし。呪いといっても完全に悪であることは滅多にない。その人を守ってる事も多いとか。……なら、放っといても良いじゃん。
「大丈夫です。」
「はいー。」
目の前から光が消えて、今いる景色へ戻ってきた。……それより。
「……ねぇ、ポチ。麻美花達がこっち来るみたいなんだけど。」
受付さんが処理しに席を外した間に、私は彼に告げた。
――さっき受付さんの心を覗いた時、外から流れ込んで来た声の中に麻美花の声があったんだよね。……正直、受付さんの心を覗かなかったら気付かないままだった。
「……だから今日、ギルド行こうなんて言い出したんだ?計画通りってやつ?」
「は?」
「……うん?」
え、どしたの?
「……俺、そんな詳しく未来を知ってる訳じゃねーんだけど。」
不思議に思って彼の顔を見上げれば、口をポカンってして固まってる。……え、ちょっと。素が出てるよ、素が!!
「次、どうぞー。」
「……マジかよ。今、鉢合わせるのはマズイだろ。」
なんか、戻ってきた受付さんの声が聞こえてないみたいなんですけどー。
「ポチ、水晶。」
「…………あ。あぁ。」
彼女達がギルド内に入って来たのとほぼ同時。
彼が触れた水晶が赤い光を放つ。
「……あ、これアレか。」
赤い光で我に返ったらしいポチは、何かやらかしたらしい苦い顔。
受付さんも微妙な顔。
「えっ。……えぇと。」
……ふむふむ。水晶が赤く光るのは、大抵犯罪者なんだ?
もう一度、受付さんの心を読んでみたらそんな新情報が。
――塔に行った後くらいから読心術、何か調節利くようになったんだよねぇ。知らない間に何かあったのかね?……まぁ、無条件に周囲の声を拾い続けなくなった分、かなり有り難いよね。あー、でも麻美花達が来てた事に気付けなかったのは痛いか。もし物陰に隠れて私達を狙ってる人が居たりしたら、何かあるまで気付けないじゃん。……一長一短かぁー。
「えぇと、あの、…………あっ!」
思わぬ犯罪者との遭遇に怯えてた受付さんは、ふと何かを思い出したみたい。
「……黄色い瞳、青い髪。……あの、『朝焼けのシロツメ草』という言葉に心当たりはありませんか?」
「……げ。マジかよ。……あ、知りません。」
いや、絶対知ってるでしょ!――受付さんも同じ結論に辿り着いたっぽい。……まぁそうだよね、普通に気付くよね。
「フィッスノー様から話は伺っております。少々込み入った話になるそうなので此方へどうぞ。」
そう言って、受付さんは受付の一番端にある扉から私達を招き入れた。急に畏まった感じ。
……え。何なの?何したの、ポチ?
ユ 「……帰りてぇ。」




