ヒワヒワ
「ん……。」
――またか。
いつもの闇世界。
悲鳴と鳴き声と怒声が絶え間なく漂う世界。
「……んー?」
……だが、いつもと何かが違う。
斑な床。
三辺の壁の鉄格子と背後の冷たい壁。そこから伸びる鎖。
「あぁ。」
なるほど。やはりいつもと、何かが違う。
――意識が明瞭だ。
見て体験したものを、ただ受け入れていた今までとは違う。俺は俺で、僕じゃない。
見れば、体も俺の身体だ。
おまけに、枷も鎖も付いていない。
――歩いてみた。普通に歩ける。
近付いて、鉄の格子に触れてみた。……冷たい。
触れた瞬間には何も感じなかったが、ジッと触っていれば無機質な冷たさが指の腹を冷やした。
「……そういや、何処だ?ここ。」
囲われた鉄格子の先。鉄格子と同様、“コ”の字のように三辺を囲うコンクリ床の通路。大きな人一人が通れる程度の幅。――出っ張った風な作りが何だか無意味に見えて。……なんか見せ物にされているみたいだ。
扉は左右の角に一つずつ。片方は外へ続くもので、もう片方は『僕』が何度が連れ出された先。……詳しい事は知らない。ただ、怖いモノがあるとしか。
「……お?」
元居た場所に戻ろうかと振り向けば、そこには『僕』が立っていた。
白髪の重たそうな髪にボロボロの服。嵌められた手枷足枷、首輪からは鎖が伸びる。
「……ん、あれ?お前確か、迷路の案内してくれた奴か?」
『僕』はコクリと頷いた。
……なるほど。この姿を正面から見るまで、気付かなかった。
「なー。ここ、何処だ?」
鉄格子の先にはコンクリの壁がある。
なのに壁の向こうで拷問している様子も見えるし、悲鳴も聞こえる。
『……。』
「ほー。お前の記憶世界、か。んで、これは透視、っと。」
実際は何も言っていないが、『僕』はそう言った様に思う。
「じゃあ、アレは何してんだー?拷問して、敵の情報でも聞き出してるとか?」
『……。』
どうやら違うらしい。
そして、俺が知る必要もない、と。……なるほどね。
確かに、知ったから何だってんだろうな?俺にあの人達を助けられる訳じゃないし。
「じゃあ、なんで俺にこんなもの見せるんだ?必要あるか?」
『……。』
「ふぅん。」
見せる必要は無し。たまたま波長が合ってしまっただけ。
「じゃあさー、お前はぶっちゃけ何な訳?なーんか、完全な赤の他人って感じがしないんだけど。」
『……。』
「へぇ。なるほどわからん。」
俺の中に僕はいるけど、僕の中に俺はいないらしい。僕がいたから俺が生まれた。俺は僕だけど、僕は俺じゃないとか。
さっぱりわからん。
『……。』
「ほぉ。」
具体的で詳しい説明はしてくれないらしい。……なんか、俺の何かが壊れるからとか。すごく心配してくれてるっぽい。知らない方が良いってことだな。
『……。』
「まぁ、良いんじゃね?俺は特に気にしてないし。」
何かが原因で、僕と俺は強く繋がってしまった。
繋がった事により、断片とはいえ悪夢を見せてしまった事を、『僕』はものすごく申し訳なさそうに謝ってきた。
気にしてないと伝えても、それでも謝ってくる『僕』に気まずくなって視線を逸らし、そして俺は見つけた。
「んー?なんだアレ。」
真っ暗い世界で唯一、怪しい光を放つ“ソレ”。綿毛の様にフワフワと宙を漂い、禍々しい赤の光を放つ“ソレ”に俺は魅せられる。
鉄格子の隙間から、俺は“ソレ”に手を伸ばす。通路はそこまで広くない。あと30cm、20cm、10cm――
『ダメ!!』
――5cm、3cm、1cm。
『僕』の声に振り返ると同時、“ソレ”は俺の指に触れ、そして消えた。
「おぃ、どうした?」
『僕』は、まるでこの世の終わりとでも言いたげに、ブルブルと体を震わす。
『ダメ。目を合わせちゃダメ……。』
すがるように『僕』は顔を上げ、俺と視線が合う。
赤い瞳が俺を見つめる。
『それを使って、誰かと目を合わせちゃダメ!!お願いっ。』
――世界が鮮血に染まり、そして灰色に塗りつぶされた。
一つ、お知らせ的な何かを。
作者は説明がヘッタクソいので、何か疑問点があれば質問を気軽にどうぞー。とか言ってみる。感想欄の一言にて、文の始めに『Q』と付けていただければ、『A』で返したいなー。なーんて思ってます。
但し、質問は簡単な文章でお願いします。長々と語られると、アホの作者は解答が迷走しますので。




