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腐った世界で異世界生活(ライフ)  作者: たんぽぽ
第6章 微かな鈴の音
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モグモグ


「ごちそうさんでした。」

箸を置いた俺は呟き、席を立つ。


「部屋、戻る。」


心配そうにチラリとこちらを見たミーリャに、一応告げてからリビングを後にした。



2階の端。俺専用みたいになっている部屋。


ベッド以外何もない。

ソファもテレビも何もない。

大きい窓があるだけの部屋。



ベッドにゴロンと寝転がる。


そしてすぐに。……また。







意識が落ちた。










----------



鎖の世界。檻の中。



目の前に差し出されるスプーン。僕が口を開ければ流し込まれる。

トロッとした液体と、辛うじて形を保つ柔らかい粒。

――誰かの知識を使って言えば、『お粥』っていう料理と近いのかな。

胃に優しくて、噛まなくてもスルスルと入っていく。


味は……よく分からない。味覚なんて、とうの昔に忘れちゃったな。

コクリと喉を鳴らせば、ヒヤリと冷たい液体が胃へ向かって滑り落ちていく。


――冷たい。

温かい料理は贅沢。僕には勿体ない。

例えお湯を温めるだけであっても、手間も燃料も掛かってしまう。

だったらいらない。僕じゃない、他の人に回れば良い。


この場所にいて、なのにちゃんとしたご飯を与えて貰える。

それだけで僕は、十分恵まれているよ。それに。






――それに








「オラァ!餓鬼の癖に生意気なんだよ!」


叫ぶ男の蹴りが、見事に僕の鳩尾にめり込む。

手の枷と足の枷はそのままだけど、壁から伸びる鎖からは一時的に解放されてる僕は、蹴られた勢いで面白いくらいに宙を飛ぶ。


ガシャン!と硬い壁に叩きつけられてドサリと床に落ち、僕はその場に丸まって嘔吐(えず)く。


「オラ、出せ出せ!お前なんかに食わせるメシは無ぇんだよぉ。」


さっき食べたばかりの食事を吐き出す僕。それを手伝うように男は僕を乱暴に踏みつける。


――食べたものを全部吐き出すまで、終わらない時間。

この男の、有限で貴重な時間を無駄にさせない為に、僕は一秒でも早く全部吐き出さなきゃいけない。


でも。

僕の意思に反して、体は言うことを聞いてくれない。

少しでも……一粒でも一滴でも多くの栄養を自身の糧にしようと、僕の胃は抵抗する。


「早くしろよ、ノロマぁ!」


ごめんなさい、ごめんなさい。

悪い子でごめんなさい。

素直に言われた事が出来なくてごめんなさい。抵抗してごめんなさい。





たくさん蹴飛ばされて、たくさん踏みつけられて、やっと吐き出す事が出来て。


また壁の鎖に繋がれた僕の前には、吐瀉物で斑模様に汚れた床。



(もったいないな。)


――またこうやって。

折角作って貰った贅沢な食事は、ほとんどが僕の糧になること無く床に染み込むんだ。



別に。


……別に、殴られるのは苦じゃない。僕は痛みを感じないから。お腹は空かない。僕は化け物だから。

でも。……無理矢理吐き出させるという苦痛を与える為だけに、僕は食事を与えられる。檻の外には飢えに苦しむ人がいっぱい居るのに、……僕にだけ。


もったいないな、もったいない。


もったいないけど。

それが僕に与えられた罰で罪ならば。


僕があの人達に逆らう事はないし、与えられた物が毒であろうと僕はただ受け入れる。


それが僕にできる唯一の――






――――償い。







『僕』の世界はまだ過去の“貧しい小さな国”なので、餓死が身近です。




※体調不良なぅなので、体調良くなってから文章の調整します。今は、どこかが絶対変。気づけない。

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