モグモグ
「ごちそうさんでした。」
箸を置いた俺は呟き、席を立つ。
「部屋、戻る。」
心配そうにチラリとこちらを見たミーリャに、一応告げてからリビングを後にした。
2階の端。俺専用みたいになっている部屋。
ベッド以外何もない。
ソファもテレビも何もない。
大きい窓があるだけの部屋。
ベッドにゴロンと寝転がる。
そしてすぐに。……また。
意識が落ちた。
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鎖の世界。檻の中。
目の前に差し出されるスプーン。僕が口を開ければ流し込まれる。
トロッとした液体と、辛うじて形を保つ柔らかい粒。
――誰かの知識を使って言えば、『お粥』っていう料理と近いのかな。
胃に優しくて、噛まなくてもスルスルと入っていく。
味は……よく分からない。味覚なんて、とうの昔に忘れちゃったな。
コクリと喉を鳴らせば、ヒヤリと冷たい液体が胃へ向かって滑り落ちていく。
――冷たい。
温かい料理は贅沢。僕には勿体ない。
例えお湯を温めるだけであっても、手間も燃料も掛かってしまう。
だったらいらない。僕じゃない、他の人に回れば良い。
この場所にいて、なのにちゃんとしたご飯を与えて貰える。
それだけで僕は、十分恵まれているよ。それに。
――それに
「オラァ!餓鬼の癖に生意気なんだよ!」
叫ぶ男の蹴りが、見事に僕の鳩尾にめり込む。
手の枷と足の枷はそのままだけど、壁から伸びる鎖からは一時的に解放されてる僕は、蹴られた勢いで面白いくらいに宙を飛ぶ。
ガシャン!と硬い壁に叩きつけられてドサリと床に落ち、僕はその場に丸まって嘔吐く。
「オラ、出せ出せ!お前なんかに食わせるメシは無ぇんだよぉ。」
さっき食べたばかりの食事を吐き出す僕。それを手伝うように男は僕を乱暴に踏みつける。
――食べたものを全部吐き出すまで、終わらない時間。
この男の、有限で貴重な時間を無駄にさせない為に、僕は一秒でも早く全部吐き出さなきゃいけない。
でも。
僕の意思に反して、体は言うことを聞いてくれない。
少しでも……一粒でも一滴でも多くの栄養を自身の糧にしようと、僕の胃は抵抗する。
「早くしろよ、ノロマぁ!」
ごめんなさい、ごめんなさい。
悪い子でごめんなさい。
素直に言われた事が出来なくてごめんなさい。抵抗してごめんなさい。
たくさん蹴飛ばされて、たくさん踏みつけられて、やっと吐き出す事が出来て。
また壁の鎖に繋がれた僕の前には、吐瀉物で斑模様に汚れた床。
(もったいないな。)
――またこうやって。
折角作って貰った贅沢な食事は、ほとんどが僕の糧になること無く床に染み込むんだ。
別に。
……別に、殴られるのは苦じゃない。僕は痛みを感じないから。お腹は空かない。僕は化け物だから。
でも。……無理矢理吐き出させるという苦痛を与える為だけに、僕は食事を与えられる。檻の外には飢えに苦しむ人がいっぱい居るのに、……僕にだけ。
もったいないな、もったいない。
もったいないけど。
それが僕に与えられた罰で罪ならば。
僕があの人達に逆らう事はないし、与えられた物が毒であろうと僕はただ受け入れる。
それが僕にできる唯一の――
――――償い。
『僕』の世界はまだ過去の“貧しい小さな国”なので、餓死が身近です。
※体調不良なぅなので、体調良くなってから文章の調整します。今は、どこかが絶対変。気づけない。




