アミアミ
ヤディン・メアグさん。
彼はサナカルア国の英雄です。
彼は、貧しい小国に魔法技術をもたらし、国を豊かにしました。
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入れて掛けて引いて、掛けて引いて。
入れて掛けて引いて、掛けて引いて。
入れて掛けて引いて、掛けて引いて。
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幼い彼の住む小国は当時、作物が録に育たない土地でした。
大地は固く、苦労して耕した畑に雨はなかなか降らず、田畑は干上がり、かと思えば急な豪雨に作物を流され、残る実りはほんの僅か。
隣の大きな国から定期的に支援物資が届きますが、一部の富裕層にて構築された小さな『都市』にて大半を消費され、国の隅々まで行き渡る事はありません。
当然餓死者は多く、人々は皆常にお腹を空かせていました。
それは、貧乏である彼の家でも同様でした。
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入れて掛けて引いて、掛けて引いて。
入れて掛けて引いて、掛けて引いて。
入れて掛けて引いて、掛けて引いて。
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しかし、彼が18歳の時。
同じ村に住む16歳の子と結婚したことを切っ掛けに、突如彼は大金持ちになります。理由は不明。相手がお金持ちだった訳ではありません。
何にしろ、それなりに大金持ちになった彼らですが、何故かその後も貧しい暮らしを続けます。
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入れて掛けて引いて、っと。
……『一時の金』だったのかもしれませんねぇ。何かの事業を始めた訳では無い様ですから。
……はい、チョキンと。これで13個目完成です。
14個目を始めましょう。
――編み物は好きではないのですがねぇ。
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時は過ぎ、彼には娘が生まれ、その子が9歳になった頃。
彼の娘は重い病気にかかりました。
ゆっくりと進行し、やがては死に至る病気です。
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入れて掛けて引いて、掛けて引いて。
入れて掛けて引いて、掛けて引いて。
入れて掛けて引いて、掛けて引いて。
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彼は娘を助けるべく、国中の医者を当たりました。
お金はあります。治療代には困りません。
しかし、そこは貧しい国。
医療技術は当然乏しく、娘の病気を治す事の出来る医者は、一人もいませんでした。
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入れて、掛けて、引いて。掛けて、引いて。掛けて、引いて。
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諦めかけた、旅の途中。彼は一つの希望に出逢います。
それは一冊の本。魔法の事が書かれた大国の本です。
中には当然、治癒魔法の事も書かれていました。
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入れて掛けて引いて、掛けて引いて。
入れて掛けて引いて、掛けて引いて。
入れて掛けて引いて、掛けて引いて。
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彼は早速家に帰ると、自室に籠って研究を始めました。
以前の大金を少しづつ使い、何度も失敗を繰り返しながら試行錯誤を重ね、数年後。遂に『精霊』を作り出しました。
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精霊とは、謂わば魔法を具現化する機械です。難解なプログラムを組み込んだ精密機械。
それを、本があるとはいえ一人で一から作ってしまうとは……。凄い事ですねぇ。編み編み。
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魔法は完成しました。
しかし娘の容態は、もう既に手遅れでした。
娘を亡くした彼は失意の中、何処か遠く――誰も自身の事を知らない場所へ引っ越し、その姿を消したそうです。
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詳しく調べてみれば魔法を完成させた後、彼は余ったお金で研究所を設立した様です。他者の力も借り、更に治療魔法を極めて手遅れの娘を助ける為に。
それは無駄に終わった訳ですが、そのお陰で今のサナカルア国の治癒魔法は他の国に劣る事のないトップクラスの物だとか。
――彼が引っ越すと共に使われなくなった研究所ですが、その建物は今も丁寧に保存され、中に入る事も可能だそうです。……今度行ってみましょうか。ここから近いですし。
入れて掛けて引いて、掛けて引いて。
入れて掛けて引いて、掛けて引いて。
そんな取り留めの無い思考を続けながらも、私はクルクルと単純な作業を繰り返します。
そして、遂に15個目の編みぐるみが完成しましたぁ!
さすがに疲れましたよ。時刻を見れば、もうそろそろ夕方です。……えぇ!?そんな長時間、私は作業していたのですか?
「ん。綺麗に出来てる。」
「ひゃわ!?」
ララさん、いつの間に居たのですか!?
……いや、あの、それより……“綺麗”ですか?縫い目が?縫い目が機械的に整っていて綺麗と言いたいのですか?……機械的、です、よね。1ミリの狂い無く、機械の様に。機械の様に。……どうせ私は機械です。真面目ロボットですよ、えぇ。
「……綺麗な方が喜ぶ。……当たり前。」
暗雲を放出し始めた私へ、フォローをしているのでしょうか?縫い目が綺麗云々では無く、相手が最大限に喜ぶものを作った、と?……気を使わせてしまいましたかねぇ?
とはいえ一応、ララさんの頼み事は完遂しましたよ。
編みぐるみのお人形。
ネコが5匹、ウサギが3匹、イヌが2匹、ネズミが2匹、クマ、ニワトリ、シカが1匹づつ。
イヌを狼に見立て、ウサギを食べても良し。ネズミをネズミ型の魔物に見立て、『ガオー!』としても良し。
図面も無く、勘を頼りに適当に編みましたが、上手く形になりました。
ララさんはこれを、知り合いの孤児院へ持っていくそうです。……何故自分で作らないっ!!
まぁ、私は暇人ですから良いですけど。
「……あ。……フワくん探して来て。……外にいる。」
ふと、ララさんが思い出したように呟きます。……ハイ、了解しましたー。
ササッと上着とマフラーを着用し、私は外に出ます。
もうすぐ日が沈む時間。真冬の外はとても冷えます。
さっさと、フワくんこと斎藤くんを探し出し、暖かいお家に帰りましょう。




