ポンポン
ポンポン→毛糸の帽子に付いてる丸いやつ。
ショートカットの赤毛に蒼眼のニャルさん。
頭に生えた小さな猫耳は、髪の流れに上手く隠されています。
エメラルド色の長髪を後ろで束ねたスレイさん。キリッとしたオレンジ色の瞳に和風な服装。侍みたいです。……しかし、口調は普通の様です。『拙者は』とか似合いそうなのにー。
最後の一人はシュツライン・アティオさん。水色の髪にレモン色の瞳。……ユアンスさんっぽいです。
いえ。髪色はユアンスさんに比べてかなり明るい色ですし、瞳はユアンスさんのように優しげに垂れてはいません。
しかし、……何と言うか、雰囲気が似ている気がするのです。パッと見の雰囲気は全然違いますが、根底が同じに思えるのです。
朝ご飯が終わった所で昨日の話を詳しく聞いたのですが、どうやらこのシュツラインさんことシュラさんが、塔の周りに倒れていた私達をここへ運んでくれた様です。
――その時には既に、ユアンスさんと美結ちゃんはいなかったそうです。やはりはぐれたのでしょう。
この家はララさんと言う方の家ですが、彼女が数日出掛けている間ニャルさんがここに来て、家の事をしているそうです。
私が『迷惑なら出ていきますが……。』と言えば、ニャルさんに『ララが帰って来るまではここに居て欲しいニャー!』と泣き付かれました。……雛菊ちゃんが。
ニャルさん、正直家事は好きではないそうです。雛菊ちゃんに任せたいのですね、分かります。
スレイさんは、ニャルさんとよくこの家に来るそうで、今回も同様遊びに来た様子。
シュラさんは騎士団に所属しているそうで、普段は寮に寝泊まりしているらしいです。しかし昨日は私達の事もあり、ここに一泊したそうです。
人の寄り付かない塔。
“何故そんな場所に倒れていたのか。”そう、厳しい顔のシュラさんに聞かれました。
「んー。その近くに転移で飛ばされたから?」と、疑問形の美代ちゃん。
「シー君に会う為?」と、雛菊ちゃん。
「ユアンスさんが塔に行きたがっていた為中に入ったのですが、最上階にて塔が崩れてしまい、私達は落ちて気を失っていたのかと。」と、私。
そんな私の言葉に、『行きたがっていた、だと……?』と、シュラさんは思わずといった感じに聞き返してきました。――顰めっ面で。
「何か気にかかる事でもあるのですか……?」
私は気になって聞いてみたのですが、シュラさんは『何でもない。』と。
……まぁ、そうは言われても気になるのですがね。確実に何かありますので。勘的に。
「*****。」
シュラさんが呟きました。
独り言でしょう。通訳もされません。
勘で訳せば、『……怪我は無さそうか。』という感じですかね?私達に怪我の無い事に安堵しているように思います。
そこへ。
ボーン、ボーンと。
時計が6時を告げました。
『そろそろ行ってくる。』と、シュラさん。騎士団へ出勤する時間の様です。
聞きたい事はありますが、仕方ありません。またの機会に。
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シュラさんが出掛けたのが切っ掛けでしょうか?慌ただしく一日がスタートしました。
ニャルさんは雛菊ちゃんを連れ込み、手始めに朝ごはんの片付け方を教え始めます。スレイさんは外へ素振りに。
私と美代ちゃんは……何しましょう?
「スレイさんと同じように、軽く運動でもしましょうか?」
ダラけた末に鈍ってもいけませんし……。
「んー。私はそんな気分じゃないなー。」
「そうですか。」
やはり、美結ちゃんの事が心配なのでしょう。……私が異常なだけで、これが普通かと。
……あ。良い事思い付きました。
「しばらく、ボーッとしましょう。」
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小さな桶とタオルを2枚貸して貰い、私達は2階のとある一室を訪れました。
一面雪景色の絶景が見渡せる大きな窓のそばにはベッドが一つ。
魔術を用いて桶に水を張り、一部を凍らせて氷水を作ります。そこへタオルを浸した後、しっかりと絞ってから彼の額へ乗せました。
「綺麗ですねー。」
「だねぇー。」
窓の方へ視線を向けた私は思わず呟きました。日光を反射し、キラキラと輝く新雪が綺麗です。
ボーッと。
時折彼のタオルを代えつつ、ひたすらにボーッとします。
――まぁ、無意味なのですけど。
無意味です。全部が無意味です。
シュラさんに軽く見てもらった結果。
原因不明。治癒魔法も効きません。少し齧った程度の知識しかない彼では、斎藤君を別室に移し、汎用性の高い治療魔法を部屋全体に掛ける程度しか出来ません。
原因を取り除かなければ、熱も下がりません。ですから、氷水にタオルを浸しては絞り、彼の額に乗せる作業に意味なんてありません。
無意味です。こんな時間に意味なんてありません。
無意味な時間を、私達は過ごします。




