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腐った世界で異世界生活(ライフ)  作者: たんぽぽ
第6章 微かな鈴の音
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ドキドキ

「あ、あの……。」


「***?」


雛菊ちゃんが赤毛の女性に話しかけ、赤毛の女性は『何?』という感じで振り向きます。


『料理、手伝いますよー?って思ってますよー。』


人見知りしている雛菊ちゃんの言葉を代弁したのは、雛菊ちゃんの妖精さんです。


「あ、あぅ……。」


照れて俯く雛菊ちゃん。


「*****!****。」


「???」


赤毛の女性はそんな雛菊ちゃんの手を取り、嬉しそうにブンブン振ります。しかし何て言っているかが分からず、雛菊ちゃんは首を傾げました。


『ありがとう!嬉しい。って言ってるですよー。』


助け船を出したのは妖精さん。赤毛の女性もうんうん!頷いています。


――アレですね。

妖精と言う生き物は、人間と同じ言葉で喋っている訳ではないのです。ですから普通なら、言葉は通じません。しかし妖精の言葉には『言霊』が含まれている為に、その人がどんな言語を話そうとも意志疎通が可能なのです。

つまり妖精の発する言葉は、赤毛の女性も私達も同じ様に受けとることが出来るのですよね……。


これ、妖精さんに私たちの発した言葉を繰り返してもらうだけで、一時的とはいえ言葉の問題は解決するのではないですか?


――と、私は提案してみます。


「えと……、頼める……かな?」


『仰せのままにー。』


雛菊ちゃんが遠慮がちに言えば、妖精さんは間延びした声で軽い笑顔を見せました。




----------


キッチンに並ぶ赤毛の女性――ニャルさんと雛菊ちゃんは、なんだか楽しそうに手を動かしています。微笑ましいですー。


ちなみに私は、あの中に混ざれません。料理は大の苦手です。

……それに私、包丁持つのが怖かったりするのですよね。とある幼い頃の、些細な出来事がトラウマにでもなっているのでしょうけど……。

ですから、こちらの世界に来てから料理はすべてユアンスさんに丸投げです。……ああ見えて(?)あの人女子力高いのですよ?!料理、洗濯、家事全般こなせるとか、一家に一台欲しいですっ!!……私、凹んでもいいですか?


――あら。誰かがまた起きてきたようです。足音的に……ユアンスさんでは無いですね。ショボン。

っていうか、あの人って普段はかなり早起きですけど。なんか遅くないですか?

……きっと、疲れているのでしょうね。結構具合悪そうでしたし。



「あ、おはよー!」


「おはようございます。」


扉から顔を覗かせたのは美代ちゃんです。相変わらず可愛いです。癒されます。


個人的に、雛菊ちゃんはハムスターの様に愛らしいですが、美代ちゃんは猫っぽく感じます。モフモフして癒されたいです。

対して、美結ちゃんは犬ですかね?一匹狼って感じですし、サバサバしていて一人ででも生きていけそうな強さを感じます。きっと、簡単にはモフらせてくれないでしょうね……。


さて、可愛い可愛い美代ちゃんです。

美代ちゃんも料理は全然ダメなので、あちらの料理組ではなくこちらに来てくださいました。


――ちなみに、タイムリミットは後5ヶ月です。仲良くなりたいです。お友達になりたいです。しかし最初の一歩を踏み出すのに躊躇していたら、いつの間にか後5ヶ月なのです。


「あの……。屋代美代さん、お願いがあります。」


私はザラザラした絨毯の上で正座します。


「え、……え?な、何かな、ですか?」


日本語おかしいです!私のせいですね、ごめんなさい。



「あ、あの!……わ、私とお友達になってください!」


私はペコリと頭を下げます。

正直、一番始めに仲良くなる方は美代ちゃんが良いと思うのです。美代ちゃんとなら、気楽に話せそうですし。


「5ヶ月だけで良いのです。どうかお願いします!」


「あ、え、えーと?……う、うん、とりあえず頭上げようね?ね?」


おろおろとする美代ちゃんに促され、頭は上げます。正座は崩しませんが。


……何か間違えましたかね?いやきっと、間違えているのでしょう。普通友達というのはお願いしてなるものではありません。自然とそういう関係になっていくものです。

しかし、こうやって明確に示さなければ、きっと私は彼女達と『友達』になれないと思うのです。いつまでも『知り合い』のままでしょう。



おろおろしたままの美代ちゃんに『……友達、嫌ですか?』なんて。


私は相当意地悪な事を言いました。卑怯です。

しかしそうでもしないと、美代ちゃんとの話が前に進みそうにありません。


「い、いや、そんな事無いよ!ってか凄く嬉しいよ! ご、ごめんね。急だったからちょっと驚いちゃって……。」


優しいです。相変わらず美代ちゃんは優しいです。



「嬉しいです。ありがとうございます♪」


本音です。私は嘘つきですけど、これは本音です。嬉しいです。


「……あっ。」


視線を感じて振り向けば、雛菊ちゃんがチラチラとこっちを見ていました。



「雛菊ちゃんも、お友達になってくれませんか?」


ついでとばかりに雛菊ちゃんにもお願いします。


「……うん♪」


わーい!!です。嬉しいです。

お友達、二人もゲットです。

後は美結ちゃんにお願いするだけです!怖いですけど頑張りますよ! ……ってあれ?ハードル高くなってません?



「ミーリャちゃんは、元の世界で友達いなかったの?」


少し困ったような表情で、美代ちゃんが聞いてきました。


どうしましょう。少し答えにくいです。

……正直、元の世界には余り良い思い出は無いのです。


「友達……ですか。……“表面上だけの付き合い”というものばかりだったと思います。」


相手の喜ぶ言葉を与え、好感度を上げる。相手の事を心配して励まし、好感度を上げる。完全にゲームです。

そうやって作った『友達』なんて、正直苦痛なだけです。一緒にいても楽しくありません。


「あー。私もー。」


美代ちゃんが苦笑いを浮かべながら同意してきました。


「本当はその人達の事大っ嫌いだったけど、そこのグループ抜けちゃえば他にはもう仲良くなれそうなとこ無かったんだよね。だから表面取り繕って仲良くして。……アレ、本当ストレスぅー!思い出しただけで腹立つ。」


美代ちゃんは敷かれた絨毯をペシペシ叩きます。相当なストレスだったようです。

……以前に美代ちゃんが、『周りに調子合わせて、表面だけの友達ごっこしてただけ。思った事を正直に言わないで、勝手に苦しんでただけ。』って言っていたやつですかね?


「えぇと、……何があったのでしょう?」


聞いて良い事か迷いましたが、思いきって聞いてみました。


「んー、えっとね。最初は普通だったんだけどさー、途中から段々美結姉の悪口言い始めるようになっちゃったんだよねー。……あ、中学の時の友達ね?

 そんでさー、私は別に美結姉の事嫌いじゃないっていうか割りと好きだったし、なのに目の前で悪口言われるとか本当ストレスで絶交レベルでキレかけたんだけど。」


ふむ。そんな事が……。


「でも、美結姉が言うんだもん。『私の側に来るよりそっちにいた方が良い。』って。」


群れた女性達は、敵と見做した者に対して冷たいですしねー。


「だからさ、そのグループで頑張ってみたんだけどねー。……もー、美結姉のバカー!って感じ。でも、美結姉の言うことをそのまま鵜呑みにしちゃった私の方がバカだけど。美結姉よりも、美結姉の悪口言う子達よりも、あの時の自分に腹立つぅー!」


「あらら……。それでは、高校の時はどうだったのですか?」


「美結姉じゃなくて別の子の悪口だったけど、美結姉の事じゃないって分かっててもやっぱり不快で……。……でも曖昧に合わせてました。ハイ。」


グタリと、絶望したように床に潰れる美代ちゃん。

大変だったのですね……。




その時。


ボーン、ボーン、と。

時計が5時を告げました。


「*********。」

『そろそろご飯の時間だから寝てる奴らを起こしてきてほしいニャ。だそーですよー。』


「なら、私行ってきます。」 と、私。

『なら、私行ってきます。』 と、妖精さんが復唱します。


「私もー。」 と、美代ちゃん。

『私もー。』 と、妖精さんが復唱します。


「***。*****。*******。」

『あ、ニャーも一緒に行くニャ。きっと部屋わからないのニャ。あとは頼むニャー。』


ポンと手を打ち、ニャルさんはいそいそとエプロンを外します。


「はいー!」『はいー!』


元気なお返事の雛菊ちゃんを残して、私、ニャルさん、美代ちゃん、問答無用で雛菊ちゃんの妖精さんの4人で行く事になりました。


私達は先程下りてきた階段を上ります。


ニャルさんがパチリと電灯を点け、2階の左側へ。そのまま一番奥の扉を開けました。



「*******!*****!」


威勢良く部屋に乗り込むニャルさん。急に明かりの点いた部屋に、右側に寝ているお二方は呻きます。


『通訳拒否ですー。』


え。『起きやがれ!』的な事を言っていると思うのですが、自主規制する程酷い言葉なのですか!?

……まぁ、良いのです。それよりもです。



「美代ちゃん、ちょっと良いですか?」


左側には一つのベッド。私は美代ちゃんを手招きしてから近付きます。


「斎藤くんですねー。」


「だねー。」


「顔、赤くないですか?」


「赤いかも。」



私は彼の額に手を伸ばします。

……やっぱりです。酷い熱です。


『あっちの子、具合悪いみたいですよー。』


「****!?」


妖精さんの言葉に、ニャルさんが飛んできました。

そして、恐る恐る斎藤くんの額に手を置き……。


「**!!」


すぐに引っ込めました。

……猫舌ならぬ猫手ですかね?


「****。******!!」

『不味いニャ。たぶん不味いニャ。でも今、ララはいないのニャ。早くても帰ってくるのは明日ニャ。どうするニャ、どうするニャぁー!」


ワタワタと、頭を抱えるニャルさん。後ろでは理解が追い付いていなさそうな男性二人が、呆れたようにニャルさんを見ています。ちなみに通訳役の妖精さんは普段通りにフワフワしています。慌てているわけではないので、ある意味言葉に感情がこもっていません。


さて、ニャルさん曰くララさんという恐らく医療知識のある方が今は不在で、結構危険そうな斉藤君の容態を見ることができる人が今はいない様です。


「ねぇ、ミーリャちゃん。」


美代ちゃんが遠慮がちに声を掛けてきます。


「ユアンスさんって、何でも出来る気がするんだけど……。」


「……ダメです。」


美代ちゃんナイスです!そうです!ユアンスさんに斎藤くんの容態を見て貰えば良いのです。ユアンスさんならちゃちゃっと……私は今何と?

ユアンスさんに見て貰うのはダメ?……いや、無理なのです。……え?



ゾッとしました。

ダメです。これ以上考えてはダメです。



「ニャルさん。一つ、聞いてもいいですか?」



周りの景色が遠退き呆然としながらも、私の口は勝手に言葉を紡ぎます。


「私達って何人でしたか?」


周りの音が何も聞こえません。

視界が真っ白で何も見えません。

頭がボーッとして何も感じません。


ですが、その声だけは自然にスッと、私の中に入ってきました。



『4人だそうですよー。』


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