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腐った世界で異世界生活(ライフ)  作者: たんぽぽ
第6章 微かな鈴の音
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トロトロ


フッと意識は覚醒しました。

瞼を開けば、そこは真っ暗です。どうやら夜中……みたいですね。


……今、何時でしょう?

スマホを探り、画面を確認します。


「3時26分……。」


発せられる光に目を細めてしまいました。眩しいです。



――段々に思い出してきました。

そうです。塔が崩れ、私達は落ちたのでした。

私の勘では恐らくあそこは最上階だったのですが、……痛むところはありませんね。怪我等はしていないようです。


――では、ここは?


体を包むのはフカフカなお布団です。ベッドの上……ですよね?仄かにラベンダーのような香りがして落ち着きます。


……あ、良い香りのせいでお腹がペコペコな事に気付きました。


そういえば昨日は、お昼も夕御飯も食べていませんでした。そりゃお腹も空きますね。

私はベッドを降り、スマホの明かりを頼りに部屋の外を目指します。

他人の家の中を無断でうろつくのは良くない事ですが、ここに居ても無駄に時間を過ごしそうです。


私のベッドの隣では美代ちゃんが寝ていました。きっと他の皆も、誰かがここに運んでくれたのでしょう。

私は美代ちゃんとは反対側にある扉へ向かい、部屋の外へと出ました。


「寒っ。」


えぇと確か、こちらはもう冬真っ只中の筈です。太陽の昇る前の、一番寒い時間ですしね……。


凍える空気の廊下を進みます。

廊下はまだ薄暗いですが、近くの階段から下階の明かりが見えました。こんな朝早くに、誰かが起きているようです。



私は下階へ降りました。そして、光の漏れる部屋を覗きます。

そこはキッチン兼リビングのようでした。赤毛の女性が、鼻歌混じりに青物を刻んでいます。


……寒いです。冷たい廊下と接する足が冷えてきてます。なので、行きましょう。


「お邪魔しますー。」


ソローっと、暖かな部屋の中へ滑り込みます。そしてパチパチと音を立てる暖炉のそばへ。

温(ぬく)いです。幸せです。なんだか眠くなってきました。さっきまで寝ていたのに。


「******。」


私の声が届いていたのでしょう。赤毛の女性が手を止め、こちらへ来て下さいました。


「****?」


しかし、言葉が分かりません。

失敗です。ユアンスさんに言葉の問題を聞くのを忘れていました。正直、この事は思い至りませんでした。シュム国では普通に話せていましたし……。ユアンスさんからも言われる事はなかったので、彼も忘れていたのだとは思うのですが。


そして、ユアンスさんと斎藤くんなら問題無く言葉が分かるでしょう。ですから彼らに通訳して貰えば良いのです。……しかし、こんな朝早くに起こすのは少し申し訳ないですね。この案は却下です。……さて、どうしましょう。


「******?」


あ、なんか、首を傾げて心配そうな表情で、彼女は何かを聞いてきている気がします。



「ごめんなさい。言葉が分かりません。」


言っている事は分からないでしょうけど、意味は通じる筈です。


っていうか正直、勘(・)で言葉を補填していけば言っている事の意味は理解出来ますけど、それは一方通行で私の言いたい事は伝わらないんですよね。しかも曖昧なので誤解を生む可能性も。



「****。」


『どうしたらいいかな。』という感じですか。……本当、どうしましょう?



「あ。」


直感が働き、私は彼女に知らせるべく彼女の後ろを指差し示します。

彼女は慌てて飛んでいきました。鍋が吹き零れそうだったのです。

……いえ、間に合わず吹き零れてしまいましたが。

私に構ったせいですね……。

心の中で『ごめんなさい。』と呟きます。ユアンスさんにも注意されましたが、自己否定の癖は治りそうにありません。



しばらく暖かな暖炉の前でポーとしていれば、次に起きてきたのは雛菊ちゃんでした。

扉の隙間からそっと覗いていた彼女においでおいでをすれば、小動物のように此方へ小走りで駆けてきます。何だかそれが、可愛らしくて和みました。


私と同じく暖炉の前に座る雛菊ちゃんですが、私と彼女の間には妙に距離があります。

私に近付くことを遠慮しているのでしょうか?これが心の距離ってヤツですか!……うぅ(泣)


――仲良く……なりたい、です。


しかし私はダメな人間です。ですから、誰かと仲良くなれる自信がありません。


正体を隠しているという後ろめたさからでしょうか。

隠しているものがある今、心を開(ひら)けと言われても全てを曝け出す訳にはいきません。


“時期が来るまで” それがユアンスさんとの約束です。

時期が来てしまえば、私は私に戻るのです。戻らなければいけません。それは、……嫌、ですね。


……せっかく生まれ変わった気がしていたのですけど、……やっぱり私は私のままです。臆病で、常にビクビクしているままなのです。

でも、変わりたい。仲良くなりたい。終わりが来るまではせめて、私じゃない私のままで……。


暖炉の中の、オレンジ色に揺らめく炎を見ながら、そんなことを思います。



――私は嘘つきです。 昔も今も。


一旦休載したいなー。 って考えるほどに、5章のせいで燃え尽きてストック0文字……。次話はいつも以上に遅くなるかもしれません。(って言っておけば、筆が進むはず。天邪鬼。)

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