付いて来なくていいわ。
【優馬、ヒィリ、ショコラ side】
「あ、雨……。」
ザーッと言う音と共に、木々の葉に当たる雨粒が単調な音を鳴らし出す。
静かだった森は雨音に包まれ、少々騒がしい。
だが幸いにも、周りの木々に生い茂るたくさんの葉が傘代わりになっている。
しかし100%雨避けになってくれているわけじゃなく、水滴がちらほら落ちてきた。
「ん?あそこに建物あるよな?」
辺りを見渡すと木々の隙間に、高層ビルの様に天高く伸びた真っ黒い建物が見える。
「え。あそこ……へ行くのですか?」
「やだやだー!」
「ん、嫌ならここにいて良い。俺は雨宿りがしたいから行くぞ。」
そう言い捨て、俺は建物へと走る。
近づいてわかったが、塔のような形をしたソレは滅茶苦茶ボロい。
石製の壁には苔が生え、蔦が絡まり、木製のドアはボロボロに朽ちかけている。
普段だったら入る事を躊躇っていただろう。だが雨が降り、もう木の生えていない所にきてしまっている為に、入る事を躊躇うわけにはいかない。
取っ手らしい取っ手も無い扉を押し開ける。
中はヒンヤリとしていて、少しだけ濡れた体が寒さを訴える。
「ん?」
「モゴモゴ、プハァ!ゆぅゆぅ、あったかい♪」
「……入ってしまいました。……遂に入れてしまいました。」
なんかモゾモゾすると思ったら、こいつらが服の中に入り込んでた。
まぁ、勝手に付いてきたんだから、いざとなったら囮にするかゴミ箱に放り出すか。――今やっても付いてくるだろうから面倒臭いかな。
「え?あ。ちょっと、何処に行くんですか?」
「ん?ちょっと奥まで。」
「何ですか?そのちょっと散歩して来るみたいな軽いノリ!」
「ただジッと雨が止むのを待つのは面倒臭い……気がした。」
あれ?普段なら探索する方が面倒臭くなるハズなんだが……。まぁいいか。
ふと、奥には何かがある気がしただけ。変な奴等といるせいで、調子狂ったのかもな。
俺は石造りの廊下を歩いていく。
外はボロかったが、中は意外ときれい。
石壁はツルッとして、間隔を開けて設置されている光源の光を跳ね返す。床も磨かれ、歩く度にコツコツと良い音を立てる。
「わー。すごい!」
「何かしらの魔術が掛かっているのでしょうか?でないと、ここまで綺麗な保存状態な訳がありません。 それと、この感じ。どこかで似たような経験をした事がある気がするのですが……。うーん、思い出せません。
――っていうか!」
何かブツブツ言っていたショコラが、急に大きな声を出す。
「何で私達、ここに入れちゃってるんですかぁー!?」
「ショコラ煩い。……あ。でも、結界?が張られてる……から、普通この塔には入ることが出来ないんだったっけ?」
……へー。そうなのか。
「そうです。普通は入れないんです!なのに、何で貴方は入れちゃうんですかぁ!!」
……って聞かれても。
「知らね。」
俺、ここ来た事ねぇし。
……あれ?そういや、ここって何処なんだろう?俺、学校いたよな?確か。
そんで、召喚中にピカッとなって――
まぁどうでも良いか。
「あ、扉だー!」
廊下の突き当たりには扉。
「わーい!」
ヒィリは楽しそうに俺の肩からピューンと飛び出した。……と思ったら地面に墜落してた。
「うー。飛べないよぅ。」
「コラ!力が弱まっている事に気付かなかったのですか!」
「むうー!」
――コツ、コツ、コツ、コツ。
「え?あ、ちょっと?置いてかないでよぅ!ゆぅゆぅ~!!」
「え?」
「『え?』じゃないよぅ!拾ってよ!」
「……ちぇ。」
置いていけるチャンスだと思ったんだがな。
仕方ないから拾ってやる。
「ねぇ、なんで舌打ちしたの?ねぇ、なんギョェ!?」
涙目で訴えてくるが、煩いのでフードに放り込む。
「ううッ。舌噛んだ……。」
うん。存在を無視するか。
ようやく廊下の突き当たりに辿り着き、真っ黒な扉を開ける。
――なんかここまで、地味に距離あったな。
塔を外から見た時に感じた大きさよりも、廊下の方が長い気がした。
まぁ、気のせいか。




