使い魔召喚の授業
サナ 「Aクラス、『姉御ブーム』なんだって。」
優馬 「ふぅん。(どうでもいい。)」
「……楽しそうだな。」
「……楽しそうだね。」
教室のあちこちで、お喋りの花が咲く。
『使い魔召喚』の授業がある日。みんな浮き足立っている。
「私、契約出来るかなぁ。私の呪いが邪魔するかもしれない。」
ポツリと呟くサナ。視線は窓の外、青空を見ている。
「……知らね。」
「む。……そこは『大丈夫だよ!』って元気づける所じゃないの?」
「いやだって、未だにこの世界の事分かんねぇし。呪い?が、どう作用するとか知らねぇもん。」
魔法?じゃなくて魔術?だったか?
それ自体が未だによく分からない。
摩訶不思議現象を見て、自分で生み出す事が出来ても、いまいちピンと来ない。
何かがモヤモヤする。視界に薄く霧が掛かった様。
――雛菊らみたいに、喜べない。
「君は素直なんだね。」
「……ん?何が。」
黒い瞳と金の瞳が、俺を真っ直ぐに見つめる。
そのまま数秒。
フッとサナの口元が緩み、金の瞳は黒い長髪に隠れた。
「……何でもないよ。」
会話の終わりを告げた彼女は、青空を眺めに戻る。
「ふーん。」
呟く俺はサナとは反対を向き、意味もなく教室の中を眺めていた。
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加護
〈全言語理解可能〉〈****〉
――なんか付いてた。
使い魔召喚の説明中。
どうやら、契約した使い魔は〈身分証明書〉に自動的に記載されるらしく、『ふーん。』って感じに久しぶりに〈身分証明書〉を出して確認してみたら……。
〈****〉
……加護欄に、何か新しく付いていた。
一応文字化けしているのだが……何故か読める。
〈全言語理解可能〉の影響か?……いやコレ、何処かの言語なのかよ?――まぁいいや。
前回見たときは、こんなのついていなかった。
――前回?そういや、最後に見たのってこの街入る時の検査所で提示した時か。
全く、いつの間に付いていたんだか。
列が進む。召喚契約はAクラスから始まり、一人づつ行われる。
俺の前は茶色く細長い尻尾を揺らす緑髪の女の子。うん。頭にはちゃんと三角の耳が生えている。
彼女はもちろん、E組の子なんだろう。そして俺はD組。ちなみに俺の後ろに人はいない。
――何故か、俺が一番最後だった。
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散々待ちくたびれた後、ようやく俺の番になる。
部屋の外には幾人かの教師達。
彼らは俺を見ると、疲れたように溜め息を吐いた。
「やっと最後か……。」
何か呟いた一人が開けた、部屋の扉。
俺が中に入ると、外からバタンと閉められた。
部屋の中央の床には、白く光る魔方陣。弱々しい光が強弱を繰り返している。
手前には、10?四方で高さは腰くらいの……台?図形で言う四角柱ってやつ?
台の上には透明な水晶。
「……えぇと、ここに手を置くんだっけか?」
そうポソリと呟き、水晶に手のひらを乗せる。
水晶はヒヤリと冷たい。
数瞬の後、体内の何かが抜け出るような、魔術を発動するときと同じ感覚がした。
じんわりと熱を帯びた水晶は、魔方陣と一緒に眩しいくらい赤・く・光り出す。
紅色に近い鮮血色。魅惑的な雰囲気を醸し出す。
……え?赤く?
水晶は白い光、魔方陣の白い光も強くなるって、聞いたはずなんだが。
――ってか、なんかヤバくね? 魔方陣に体が引き寄せられている気が……。
「みんな、逃げろっ!!」
部屋の中で、誰か男の人が叫ぶ。
後ろを振り返ると、ユアンスが部屋の扉を開け、外に向かって叫んでいた。
外はキャーキャーバタバタと騒がしい。
……なんか、廊下が煙に包まれてねぇか?
扉の下方からこちらにも、白い煙が流れ込んできている。
――それよりも。
「ゆうま!」
雛菊が俺を呼ぶ。
一人で入ったはずの部屋に、何故かみんながいる。
雛菊、美結、美代。ユアンスとユアンスにくっついたミーリャ。
「……ぅおっと!?」
一人で首を傾げていると何故かバランスを崩し、後ろに転倒した。
――と、部屋が白い光に包まれた。……否。いつの間にか魔方陣の所まで引き寄せられていたらしい俺は、床の消えた魔方陣の中に背中から落ちた。
すぐに部屋の天井は見えなくなり、視界が光に侵食される。
「飛び込めー!」
ユアンスの言葉が聞こえるが、視界は眩い白に埋め尽くされて何も見えない。
――『逃げろ!』って言ってた奴が『飛び込め!』って……。
まぁ、問題はそこじゃない。
「……何が起きてんだよ、これ。」
いつぞやに体験したことがあるような浮遊感。
背中から、どこかへ引っ張られていく感覚。
心地よい温かさが眠気を引き起こす。
次第に遠退く意識の中、微かに女性の声を聞いた気がした。
『この、……裏切り者ぉー!!』
また貴方は、私を置いていくんだね。
貴方は『ずっと一緒だよ!』って言ってくれた。 あれは嘘なの?
私は貴方と離れたくない。 それでも貴方は逃げてしまう。
それなら今度こそ、貴方を捕まえる。 捕まえたら、もう二度と離さないから。
貴方は私を捨てたの。 だから貴方には、相応の報いを受けてもらいたいな。
ウフフフ。 次会う時が楽しみだなぁ。




