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腐った世界で異世界生活(ライフ)  作者: たんぽぽ
第4章 異世界の学校
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過去からの情報

「〈ワールの民〉って言っても、崇高な獣と心を通わせたって言う山リンゴちゃんの、お母さんが元いた民、みたいなやつじゃないからね?」


「それ、誰にも理解できないと思いますよ。」


「じゃあ、秘密の秘宝を守るあの民でもないよ?ほら、その国の王族に狙われていて、捕まれば非道なる拷問に掛けられるという……。」


「それ、誰かさんがボツにした小説なのでは?」


「あれ?『いつか出すもん!』言ってた気がするけどなぁ?」


「とりあえず、誰も付いてこれない話は良いんですよ……。」



溜め息を吐くミーリャ。室内であると言うのにフードは被ったまま。



「……それで〈ワールの民〉とは何ですか?」


「森の中で密かに隠れ住む民。あらゆる知識を持ち、彼らは未来まで見通せるそうな。」


「ダウトです。」


「……って言われているけどねね、ほ、本当は国の動向を監視し、過ちを阻止する為の監視係。機械だけでは漏れがあるかもしれないからね。」



ミーリャに嘘と断言されたユアンスの目は空を泳ぐ。



「民の正体は?」


「も、森主及び、森に住む妖精達と一人の協力者(サポーター)かな。ちなみにお供え物の『ピージュの蜜』は、妖精さんの好物だね。」


「そしてその協力者(サポーター)の正体が、青い髪をした貴方とかいう嘘は要りません。」


「え?ちょ……。」


「『誤解を解いてないだけだよー。』とか言わなくて良いですので。」


「あ、ハイ……。」



「まぁ、そんな事はどうでも良いので、早くお茶をくださやっぱり要りません。」


「えぇ?!どっち?っていうか、いきなりボケタイム?」


「さぁ?何の事でしょう?忘れました。貴方の名前も忘れました。貴方はトムですか?それともハムですか?ハムは好きです。今度そのハム千切って私にください。」


「忘れないでよ!覚えてて?! あと、僕の顔はハムで出来て無いからね?お腹の空いた子供達に、自分の顔を千切ってあげるなんて出来ないからね? それにアレはパンだよ?真似するにしても、少し無理があるんじゃないかな?」


「真似ではありません。パクリです。」


「同じだよね?!」



無表情でクールなミーリャに、困ったよう表情でツッコミ続けるユアンス。


二人の駆け引きに、麻美花と美代からは微かに笑いが漏れる。美結は少し頬を緩めるだけ。

ちなみに、この場に優馬は居ない。空気が読めないというか、タイミングが悪いというか……。いつもの事である上に、別に呼ぶ理由も無いだろう。



「脳みそが餡子な話はもういいです。とりあえず、私に柏餅を差し出しなさい。要りませんが。」


「だから、どっちだよ?!」


「私はミタラシ派ではなく、ずんだ派です。」


「だから何?!」



「……貴方は未来が分(・)か(・)る(・)のですか?」


「ッ!?」



いきなりの真面目な話。

それでもミーリャの表情は一ミリも変わらず、無表情のまま。



「本にはこう書かれていました。『使い魔召喚の授業中、事故が起こり勇者二人は姿を消した。』と。

 2週間後、私達にもその授業があります。そして、ユアンスさんの臨時講師期間もその日で終了します。」


ミーリャのその言葉に、ユアンスの臨時講師の期間を具体的には知らされていなかった3名は驚いたような顔になる。



「『貴方は未来が分かる。』そう発想せざるを得ない状況は、今までにも多くあります。そしてそう考えれば、その日にまた何かが起こり臨時教師を続けられない事態になるからこそ、迷惑をかけないようにその日やめるのではないですか?」


「そ、それは考え過ぎじゃないかなぁ~?」


苦笑いのユアンスをスルーし、ミーリャは続ける。


「これは私(・)の(・)勘(・)で(・)す(・)が(・)、また事故が起こるんですね?そして私達は、他(・)国(・)に(・)飛(・)ば(・)さ(・)れ(・)る(・)。」



「え?勇者さん二人って、他の国に飛ばされたの?」


麻美花は好奇心に瞳を輝かせた。


そんな麻美花を見、ユアンスは困ったように肩を竦める。



「……ミーリャ。後で話をしようか。」


「いいえ。彼女達も知っておくべき事だと思います。

他国に飛ばされるのなら、短期間で帰っては来れないでしょう。それなら彼女達にも心の準備をする必要があります。ここで仲良くなったクラスメイトさんにも、お別れを言う必要があるかも知れません。

――かつて私達が、この世界に召喚される際に事前通告をしてもらった時のように。」



ミーリャに指摘されユアンスはしばらくの間、目を瞑る。



「……うん、わかったよ。」


仕方ないな。とユアンスは話し出す。



「――確かに、2週間後の使い魔召喚の授業で、僕らは他国に飛ばされるよ。

ロサピト歴134年。今から67年前に、二人の異世界人が使い魔召喚の魔方陣を通して、他国に飛ばされたのと同じように。……いや、あの時正確には片方が引き寄せられ、もう片方はそれに巻き込まれたんだよね。まぁそれはどうでもいいか。」


ユアンスは一旦言葉を切り、また続ける。


「この国は他国の存在を知らない。鎖国を決めたのは昔の人だからね。まさに籠の鳥、井の中の蛙、ってところかな? 異国に降り立った彼らは、この国には戻らずにその国に留まる事を選択したんだ。だから、この国にとっては消息不明。元の世界に戻ったのか、死んだかのどちらかと考えたんだ。……あ。でも、君達はこの国に帰る事を選んでもいいんだよ?別に追い出される訳じゃないんだし。」


「……あの、何でその人達は他国に留まる事にしたんですか?」


不思議そうに聞く麻美花の質問に、ユアンスは目尻を下げる。



「うーん。そこまでは知らないなぁ。この国の対応に嫌気が差したのかな?」


「……。」



ミーリャは『ダウトです。』と言いかけて止めた。

今のは嘘。彼は本当は理由を知っている。


けれど彼女の勘(・)が、“嘘である”と同時に“それを指摘しては駄目”とも告げていた。

つまり、彼女達に知られてはいけない事だから嘘をついた、と。


その証拠にユアンスは、一瞬だけ不安そうに横目で彼女に視線を送っていた。





「ねぇ。その召喚された二人も、“イラナイ子”だったの?」


口を開いたのは美結。


ユアンスは少し思案した後、首を左右に振った。



「いや。……彼らは、どちらかと言うと人気者だったかな。 まき……えぇと、女性の方は真面目で成績も良くて、クラスメイトから慕われる学級委員長で。 もう一人の男の方は、いつも皆の輪の中心にいる元気な奴……かな。」


つい名前を出しそうになった彼は、誤魔化しつつ複雑そうな苦笑いを浮かべる。


「あ、でも女性の方は『親が私ばかり構ってそれを妹が妬むから、妹とは仲良く出来ない。』って、心を痛めていたかな。『だから私がいなくなった今、親は妹をちゃんと見てくれるかもしれない。だから、いなくなれて良かったかも。』って。」


少しウルウルとしている麻美花と美代。

しかし美結は顰めっ面のまま、口を開く。



「……その女の人、偽善者?」


「うん?」


「自分がいなくなったからって、親が妹を見るようになる訳なくない? 居ない姉を美化して比較されて、ハードルが高くなった状態で余計に幻滅されるだけなんじゃないの?」



美結の指摘に、スッと目を細めるユアンス。



「…………それ、本人に言えば言いと思うよ。……たぶん、会えるから。」



予言めいた言葉に、今まで黙っていた美代が呟く。



「……未来が見えるの?」


静かな問いに、彼は首を振る。


「僕は未来を見ることは出来ない。」


「……じゃあ、何で?」


「僕は……。」







彼は言葉を切り、少し考えてから言った。



「僕は、未来から来たんだよ。だからこの先何が起こるか、ある程度は知っているんだ。」


目尻を下げ、彼はのほほんと笑う。







「……未来から来た、猫型ロボットですかッ!!」


「いや僕、ちゃんと耳あるからね?齧られて無くなってないからね?」



ミーリャの鋭いツッコミに、3人から微かに笑いが漏れた。













「……ッ。」


「ミーリャ、大丈夫……じゃなさそうだね?」



二人きりになった途端しがみついてきたミーリャに、ユアンスは心配そうな声を掛ける。



「……っく。」


微かに聞こえる嗚咽。

泣き虫な彼女は、彼のローブを涙で濡らす。彼は彼女の頭を優しく撫でる。


いつもの事だ。







「…………怖かった、です。……すごく、怖かったです。」


ローブの下から、くぐもった声が聞こえた。


ユアンス以外の他人を非常に怖がる彼女は、心を凍らせ表面を取り繕い、あの場で必死にボケ続けることでしか平常を保っていられなかった。



「でも……、そうじゃなくて……、それだけじゃなくて。」


ブルブルと首を振るミーリャ。

彼の腰に回された腕に、グッと力が入る。



「わ、私も……妹と、仲良くしたかったんです……。」


その言葉だけで、彼は彼女がさっきの話がきっかけで、より心を痛めている事を悟る。



「……。」



『ごめんね。僕らの都合に付き合わせて。』

その言葉を、彼は呑み込む。

彼女はそんな言葉を求めてはいない。逆に、より自分を責めるだろう。



「……大丈夫だよ。大丈夫。」



彼は優しく、彼女の頭を撫で続ける。

不器用な彼には、それしか出来なかった。

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