第64話 今度は上から行きます
ナデシコ城の上空…炎竜は、ゆっくりと高度を下げてナデシコ城に近づきました。
「ほんとうに屋根の上でよいのか?」
「えぇ…下からはダメだったから、上から攻めるのよ…。」
そう言いながら、私はナデシコ城本丸の屋根に降りました。
「まぁいい…ある意味じゃいい方法だろう…。」
そう言ってヴァーテルも炎竜から降ります。
それに続いて、アウラを降ろして、その後に竜也が降りました。
「こんな場所とはいっても、地面に足が着くって幸せだよね!」
竜也が地面に足がついている喜びを感じている横で、炎竜は深刻そうな顔で緑の谷の方を眺めていました。
「心配なの? お姉ちゃんのこと…。」
「うむ…しかし、解せぬな…牡丹殿は主のことをどう思っておるのだ? 最初にこの世界で再会した時には、毛嫌いしていた気がしておったが…主と別れたときの態度を見る限りそうでもなさそうだからな…。」
炎竜が私の方を見ながらそう言いました。
「…好きか嫌いかで言ったら、好きだよ…お姉ちゃんのことは…ずっと好きだった…だから、お姉ちゃんに見てもらいたい、認めてもらいたい、もっと話がしたい…そう思ってた…でも、お姉ちゃんは違っていた…お姉ちゃんは私を見ていなかった…。」
「そうなのか?」
「えぇ…お姉ちゃんはさ、いつも別のところばかり見ていた…何でだろうって、何で私のことを見てくれないんだろうって、そう思ってた…そう考えているうちに、お姉ちゃんが別のところを見ているなら、私も他のところを見て生きて行こう…そう思っていた…。」
私は、そう言うと立ち上がり、炎竜が眺めていた方を向きました。
「でもね、気づいたのよ…お姉ちゃんは、私のことを見ていなくなんかない…私のことを見てくれていたんだって…だから、助けに来てくれたんだろうし、あの場所に来れたんだと思う…。」
そう言ってから炎竜の方を向いてこう言いました。
「こうなってからじゃないと気づけないなんて、ダメな妹よね…。」
「ダメな妹か…。」
炎竜は、どこか遠い目をしながらそう言いました。
その眼は、何かを懐かしんでいるような眼でした。
「どうしたの?」
「いや…主がいつか似たようなことを言っておったのを思い出してな…私は、ダメな姉だと…。」
それは意外でした。
あのお姉ちゃんがそんなことを言っていたとは…案外わからないものです…
「そうなんだ…お姉ちゃんが…。」
私は、炎竜の方に向き直りました。
「だったらさ…そのダメな姉を助けに行ってくれる? まぁ私は、あなたの主じゃないからあくまでお願いだけど…。」
「…そうだな…まぁよいだろう…また、どこかで会おうぞ!」
そう言い残して、炎竜は飛び去って行くのでした。
「お姉ちゃんをよろしくね…。」
私は、あっという間に遠くの方へ飛んでいく炎竜の背中がみえなくなるまで、見ていました。
「お別れは済んだのですか? まぁすべて終わるまで出てこなかった私に感謝してほしいものですよ…。」
その声に、私や竜也たちが振り向くと、そこには1人の男が立っていました。
「トパーズを緑の谷から出れなくして、オパールの技を完全に封じる…よい戦法だと思います…まぁオパールを連れて行かなかったトパーズの失態が大きいようですが…私は、他の3人のようにはいきませんよ…王国復興委員会常務委員のアメジストがお相手しましょう…。」
アメジストと名乗った男は、頭を下げて、再びこちらを見ています。
「なるほど…私たちが上から戻って来るってわかっていたわけなの?」
「えぇ…トパーズから連絡をもらいましたから…あなた方が炎竜に乗って飛び去ったと…まぁ本当に屋根の上に来るなんて思っていませんでしたよ…なにせ、ここは私の特等席なんですから…上からのんびりと戦いを見ていようかとも思っていたのですが、気が変わりました…。」
アメジストは、私たちの方へ歩いてきて、2mほど離れた位置で立ち止まりました。
「さて、ここでヒントをあげましょう…スティーリア様は、この城の最上階…つまり、この真下のフロアにいます…まぁ副委員長のマラカイト様も同じフロアにいますから、どちらに出くわすかは知りませんがね…さて、長々と話してしまいましたが、勝負は一瞬で決着を付けようじゃありませんか! 当然、あなた方は勝つことも引き分けることもできませんが…。」
両手を広げたアメジストの周りにたくさんのシャボン玉のような物が集まり始めていました…
読んでいただきありがとうございます。
「ひだまりの国」の外伝にあたる「ひだまりの国 外伝 アウラの奮闘記」を投稿しました。お時間ありましたらそちらの方も読んでください。
これからもよろしくお願いします。




