第55話 お姉ちゃんの目的は…
ここは、氷結の島の高台…
このすぐ下に、私とアウラ、ヴァーテル、竜也そして、お姉ちゃんはいました。
「…で、お姉ちゃんは何しに来たの?」
「え~と…観光とか? 牡丹にようがあったりとか?」
「主がすまぬのう…。」
炎竜はもうわけなさそう(?)な顔をしている。
そんな横でもあかねはいつも通りの調子で、どこからか取り出した椅子(おそらく魔法で生成したのだろう)に座っていました。
なお、何もない空間に椅子などの形ある物を出す…つまり、無から有を作り出すことが出来るのは、かなり難しい魔法だと知ることになるのはずっと先です…
「僕個人の意見として言わせてもらうと、あなたほどの人物が、観光目的とはいえ炎竜に乗って直接乗り付けるようなマネはしないと思うんだけど…。」
「あらら~私がどんな人物に見えているのか知らないですけど、私だってその程度のことはしますよ~まぁ向こうでは、北上グループ次期総裁としての立場がありましたから、控えるようにはしてたんですけどね~」
お姉ちゃんの言う通りなのだろう…北上グループ次期総裁と言うのは、上代、向島、堀口、翠川、雪草の5つの家を分家とする北上家の次期党首であるということを意味しているので、いくら親しいとは言っても分家の人間の前で、このような行動は慎んでしかるべきなのであろう…まぁこの世界では、そんなことを気にしなくていいので、好き勝手やっているのだと思いますが…
「まぁほんとに観光だけならいいけど…私たちは、もうすぐ出る定期船で帰るから…。」
そう言って港の方に行こうとしたとき…
「それは、あまりお勧めできませんね~」
「どうして?」
「大陸側の港で何かあったらしくて、この島を出た船はこちらに引き返している始末ですよ~なにせ、他の港まで行くには、流氷を割って進めないといけませんからね~」
状況を整理しようと思います…
ここは、大陸の近くではあるが、離島…そして、大陸との連絡船が不通…つまり…
「この島から出られないってこと!?」
「そー言う事ですね~あっでも、私は炎竜さんに乗ってひとっ飛びなので、関係ありませんがね~どうしてもって言うなら、乗せないこともありませんが、どうします?」
やばい…いつの間にやら話が完全にお姉ちゃんのペースになっている…このままじゃ一体何をさせられてしまうんほでしょうか?
「まぁ一緒に乗るのに対して対価は要求しないので、ご安心くださ~い」
あれ? なんだか珍しいような…
そんなことを考えながらふと、竜也の方を見ると…
「えっ炎竜ってことは…空を飛ぶんだよな…。」
「当然じゃないですか~」
なんだか、竜也の顔が真っ青な気がします…
「えっと…竜也、大丈夫?」
「大丈夫だよ…。」
そう言いながら竜也は、あははははと乾いた声で笑っていました。
なんとなくお姉ちゃんの狙いがわかってきた気がします…
変人にして、戦略家にして、天才にして、ドS…それが、お姉ちゃんの特徴と言ったところでしょうか…ドSに関しては、つい最近まで知りませんでしたが…
「すごーい! ドラゴンさんに乗れる!」
前回会った時の警戒はどこへ行ったのやら…アウラは、手を上げて喜んでいます。
「まぁ炎竜にのれる機会なんてそうそうないからな…結構いいかもな…。」
「えっ…いや…いっそ、船が動くまで待てば…。」
竜也が必死になってやめさせようとしますが、彼は空中迷宮に挑戦したとき、かなり余裕で(一回落ちましたが)クリアしていたので、ヴァーテル達はただ単にあかねの事が苦手なのだという程度の認識だったようで、炎竜に乗って大陸へ戻るという方向で話がまとまりつつありました…
「いや…ほんとにさ…。」
なんとなしてくれと目で訴えてきた竜也に対して私は、軽く彼の肩をたたきながらこう言いました。
「あきらめたら? お姉ちゃんに勝つことなんて不可能なんだから…。」
この一言で、竜也も抵抗するのが無駄だと察したのか、うなだれるだけとなってしまいました。
炎竜の背中に、お姉ちゃんと私、アウラ、ヴァーテルの順に乗って、最後にしぶしぶ竜也が乗りました。
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