第54話 美しい島に行きます
さて、私たちは今、ラーウスから少し西に行ったところにある島に向かっています。
ヴァーテルが言うには、この島の全域もラーウスの範囲内だそうで、ラーウス観光をするなら欠かせないスポットが多数存在するそうです。
「それで、その島はどんなところなの?」
「あの島は、もともと無人島だったんだが、ラーウスの市長が買い取って観光者向けの施設を建てたんだ…もともと島の風景もきれいだったから、施設と言っても展望台や休憩所なんだがな…。」
ヴァーテルは海の向こうを見ながらそう言いました。
美しい島ですか…そう聞いて真っ先に思いつくのは、ハイビスカスが咲いている常夏の島と言ったイメージでしょうか?
「楽しみだね…。」
「うん! アウラも楽しみ!」
私たちを乗せた船は、島へ向けて一直線に進んでいきました。
さて、船はゆっくり速度を落としていき、島に接岸しようとしていました。
「それにしてもまぁ…何となく予想はついていたけど…。」
目の前に浮かぶ島は、雪で真っ白となっており、周りには流氷が浮かんでいます。
ラーウスの範囲内ならば当然ながら旧王国領内なので、冬のまま季節が変わらないという現象が起きていなければおかしいです…仮にそうでないとしても、今が暦上も冬だと言う事をすっかりと忘れていました。
「見えてきたなネーヴェ島…別名は氷結の島…その名の通り島のほぼ全域が万年雪と氷に覆われた美しい島だ…。」
あぁ…これが、通常の状態なんですか…年中夏のようなところを常夏と言いますが、この場合はどうでしょうか?
…常夏の真逆だから、常冬でしょうか?
そんな言葉があるかは知りませんが、目の前に広がっている風景はそう言う事なのでしょう…
「年中冬ねぇ…僕の場合、ほとんど旧王国領にいたから実感わかないな…。」
「私も同意見…外に出てもすぐに戻って来ちゃったし…誰かさんのおかげでね…。」
私が竜也の方を見ると、彼は、自分だけのせいではないと必死になって首を横に振っていました。
まぁそんなことは置いといて、ネーヴェ島到着のアナウンスが船内に流れ始めた。
こうして私たちは氷結の島に足を踏み入れたのです。
島に上陸すると、小さな港の近くに待合所とお土産屋があるぐらいで、他には何も見当たりませんでした。
「本当にすごいところね…。」
「あぁ…展望台があるのはここから少し離れた位置に立ってるから歩いていくぞ…。」
そう言ってヴァーテルが歩き出しました。
それに続くようにして、私たちもついて行きました。
先ほどの場所から少し離れた場所にある高台…その上にその展望台はありました…
「へーでも、何でこんなところに?」
「さぁな…聞いた話だと、港や土産屋は確かに当時の市長の指示だったそうだが、ここだけ違うらしい…その人物がだれかは明かされていないがな…。」
「そうなんだ…。」
そんな会話をしている間にもアウラと竜也が一番上まで登っており、上から手を振っていました。
「今いくよ!」
そう言って私も上に向けて駆け出しました。
「俺をおいて行くな!」
ヴァーテルもそれに続くように走り出しました。
「わーこれは、絶景ね…。」
息を切らしながらも最上段にたどり着くと、そこには、氷と万年雪が織りなす風景が広がっていました。
手前には、凍った湖があり、雪をかぶった森があります。
ここで重要なのが、この展望台が、島の中央にある高台の一番頂上に立っているという点です…これにより、展望台の上から島の全景を望むことができます。
「今日は天気がいいからな…ほら、向こうの方には真っ赤なドラゴンが…ってドラゴン!?」
竜也がラーウスのある方を指差してそう言いました。
真っ赤なドラゴンって…まさか…私も竜也が指差した方を見ました。
「やっぱり…。」
少し向こうの空に、こちらに向かって飛んでくる真っ赤なドラゴン(おそらく炎竜だと思います)が飛んできているのが確認出来ました。
「あれ…もしかしたらあかねさんじゃない?」
おそらく竜也の言うとおりでしょう…
炎竜はものすごい勢いで飛んでいるようで、そんなことを言っている間にも長い髪を風になびかせながら、竜にまたがっているお姉ちゃんを目視で確認することができました…
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